アヤカシゲーム 作:αスタイル
「もしもし?私が見えていますか?」
全ての始まりは仰向けに倒れている俺に話しかけてくるフクロウの顔からだった。
おかしい、フクロウが喋ってる。ってか、俺はなんで倒れてるんだ?
見下ろすフクロウの顔を見ながら何も考えずに……というか考えるのが面倒になりボケーッとしているとフクロウはその大きな目をぱちくりと瞬いた。
「……その綺麗な目を啄んでもよろしいですか?」
「なんつーこと聞きやがるテメェ!!」
慌てて起き上がった俺を避けるようにフクロウは顔を引っ込めた。
起き上がると今自分が寝ていた図書館のような部屋と、フクロウの全体像が見えたが、それは俺の知っているフクロウのそれでは無かった。
顔は茶色が目立つミミズクの様な顔をしているに関わらず、首より下は紺色のスーツを着た人の体をしていたのだ。
「フクロウ……なのか……?」
その奇妙な容姿を見ながらそう聞くと正座をしていたフクロウ頭は膝のホコリを鉤爪のような人型の手で払うと綺麗な所作で立ち上がる。
「初めまして桐生様、お会いできて光栄です」
「……!どうして俺の名前を?」
俺……桐生の姓を口にしたフクロウ頭に驚いていると、フクロウ頭は軽くお辞儀をする。
「私、本日より桐生様のサポートを仰せつかった『オウル』です。何卒、よろしくお願いいたします」
「オウル?お前の名前なのか?」
「はい……頭がミミズクなのにとか考えてらっしゃいますか?」
「え、いや……」
心の中で(それどっちもフクロウだろうが)などとツッコんでいるとオウルは俺の事をその大きな目でジロジロと観察する。
「整っていない黒髪にケアはしているようですがどことなく潤いが無い肌と覇気のない顔、そして極めつけには黒い服と黒い三角形のピアスですか……見たところ陰キャ脱却に奮闘されていると予想しました。如何ですか?」
「お前結構容赦なく言うな?泣くぞ?」
オウルは自ら話題を振っておきながら「それはさておき」と話題を早々に切り上げる。
「桐生様、貴方は『ゲーム』への参加資格を獲得しました。これより貴方は『プレイヤー』としてゲームに参加して頂きます」
「ちょっと待て!」
勝手に進めようとするオウルを止めるとオウルは首を傾げながら「如何しましたか?」と聞いてくる。
「何勝手に話進めようとしてんだ、俺は何も分かってねーし、そもそも今言ったゲームとやらに応募した覚えも参加するとも言ってねぇぞ?」
そう言うとオウルは「そうですね……」とどこか他人事のように呟いた。
「桐生様、このゲームは神様がお決めになったものです。その内容も、参加する者も……つまり桐生様、端的に言いますが貴方は『神に選ばれ』たのです。それも『拒否権の無いゲームのプレイヤー』としてです」
「拒否権の無いゲーム?」
「はい、ですので諦めてゲームを進めてください。私に文句を言われましても私も神様からこの場を任されただけの存在、ゲームの内容に関する決定権を持ち合わせていません」
オウルのその言葉に「マジか……」と焦りの籠った声が零れる。
それを見たオウルは目を細めながら口を開いた。
「ですが、何も手が無い訳ではありません」
「!!本当か?」
「はい、私も貴方もこのゲームに縛られていますが、それを解く方法は1つあります。それは『ゲームをクリア』することです。
ゲームは無限には続きません、目標があるからこそゲームとて成り立つのです。
であれば、このゲームの終わり……つまりはゲームクリアをすれば自然と我々は解放されます」
オウルのその言葉に俺は少し違和感を持った。
「待て?縛られてるって言ったのか?お前も?」
そう聞くとオウルはコクリと頷いた。
「はい、そうです。私達は互いに神様に目をつけられたのです。だからこそ、私も自由の為にゲームクリアを目指します。ですが先程も言いました通り、私自身はゲームに対する決定権を持ちあわせておりません。つまり、プレイヤーとして行動することは出来ないと言うことです。
つまりはNPCのような存在なのです。
そんな私がこのゲームをクリアする方法はプレイヤーである貴方を支援すること……それしか道はありません」
オウルはそう言うと片手をこちらに差し出して握手を求める。
「貴方も私もこのゲームから抜け出す気持ちは同じ……であれは、協力するのが最善手。
どうか、私に力を貸してください」
オウルの差し出す黄色味のかかった硬そうな手を見ながら俺は迷ったが、やがて1つのことをオウルに聞いた。
「俺はお前も、このゲームとやらも何も知らない。もしかしたらお前がその神様とやらの手下かもしれない可能性があるのにお前を信じるに足る証拠は?」
俺がそう聞くとオウルは少し考えた後、「では、こういうのはどうでしょう?」と言葉を繋げた。
「『クソッタレな神に一泡吹かせよう』」
「!!」
ただの言葉、そのはずなのに俺は何故かオウルのその一言をひどく気に入ってしまった。裏もクソも無い馬鹿正直なその言葉に、俺の緊張していた口元が緩んだ。
「……いいぜ、やってやろうじゃねぇか」
そう言いながら俺はオウルの手を力強く掴んで握手をした。