特級呪物『夏油傑の変な前髪』   作:鳴倉

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【第2話】

 

 

 

 現代において特級の名を冠する術師は3人いる。そこに夏油は含まれない。表向き彼はすでに死んでいるため、すでに特級としては登録されていないのだ。その内2人は海外にいるので、日本国内にいる特級術師は五条悟ただ1人ということになる。

 

 夏油は思う。皆五条悟に頼りすぎじゃないかと。彼は自他共に認める最強ではあるが、それにしたって救えるものには限度がある。非術師が死ぬのはむしろ歓迎するが、等級違いの任務で死ぬ術師がいる以上、少なくても彼一人で回すことができていないのは明らかだ。せめてあともう1人特級が日本にいれば、任務中の死亡率も格段に低下するだろうにと夏油は他人事のようにそう思った。今にして思えば七海が以前に言っていた「もうあの人1人で良くないですか?」というのは、的外れだったわけだ。まぁ呪詛師になった夏油が言えた話ではないのだが。

 

 それはさておき、

 

「どんな女がタイプだい?」

 

「その質問、毎回するんですか?」

 

 夏油は特級術師九十九由貴と対談していた。

 

 場所はロンドン。イギリスは日本と中国に続いて呪霊が多い国で、高専の呪師とばったり確率は低い。だから最近手に入れた特急(・・)呪霊で遠路はるばるやってきて呪霊の収集を行っていたのだが、運がよかったのか悪かったのか、九十九に遭遇してしまった。

 

「前回は聞きそびれてしまったからね。その後は呪詛師になって、聞きに行きづらくなったし」

 

 夏油の居場所自体はそれなりに知られていた。

 

「なら私が死んだことも聞いていると思いますが」

 

「うん。だから君に会った時は驚いたよ。正直偽物なんじゃないかと疑った」

 

「その言い方が今は疑ってないってことになりますよ」

 

「呪霊操術を使えるんだから、別人ってことはないでしょ」

 

「それが今の日本には私と同じ術式を使い、同じ姿の偽物がいます」

 

「……マジ?」

 

「額に縫い目があるって言う点以外では、私と見分けがつかないでしょう」

 

「額に縫い目、ね。覚えとくよ。で、そろそろ私の質問に答えなよ」

 

「その質問で何かわかるんですか?」

 

「そりゃ色々わかるさ。性癖にはその人が全てが反映される。価値観や人生経験もそこに含まれる。性癖が完全に一致するんだったらそれはもう親友(ブラザー)だよ。例えば、前に君の後輩が答えた……ってその子の話は不謹慎だったね」

 

「……九十九さんは呪霊の生まれない世界を作るために動いているんでしたね」

 

「そうだよ。私が目指すは呪力からの脱却。伏黒甚爾のように呪力を0にすることで、呪霊の発生はなくなるって感じでね」

 

「以前は全人類に呪力のコントロールを可能にさせる方法を軸に考えていませんでしたか?」

 

「あぁ、その話ね。よく覚えていたね。それを君に話した後でそっちのプランもかなり難しいことに気づいたんだ。それを実現するためには天元の結界がいる。でも、それを利用できるのは日本だけだから結果的に日本だけが呪力というエネルギーは独占することになる。そんなこと諸外国は黙っちゃいないだろうから、その後何が起きるのか想像に難くない」

 

「ということはやっぱり非術師を皆殺しにするのが正解ですね」

 

「今でもそれはアリだと思うよ。色々考えたけどやっぱり一番イ一ジ一だ。だから私も積極的に止めようとはしなかった。君が選んだ本音がそれだったらその道を進めばいい」

 

 その言葉を聞いて夏油は彼女もやはり呪術師なのだと改めて思った。彼の大義は微塵も揺らいでいないが、その一方で彼に対立する考え方をする者が多いのが現実であることを受け入れていた。そんな中で比較的肯定的な意見を持つ九十九は少しばかり異端だ。だからこそ、夏油は彼女を信頼することにした。

 

「九十九さん、少し見てほしいものが」

 

「何かな?」

 

 ────────────────

 

 死を知ることは呪力の核心に大きく近づくことに繋がる。これは術師にとってはそこそこ有名な話だ。五条悟が死に際で反転術式を身につけたように実際に死んでなくても、その実感さえあれば事足りる。さて、夏油の場合は本当に一度死んだわけで、五条よりもさらに鮮明な死の体験をし、呪力に対する理解が格段深まった。その結果として反転術式とその応用である術式反転を身に付けた。

 

 本来は刻まれた術式に呪力の負のエネルギーを流し込んで反動するが、これを術式順転という。一方、反転術式によって生み出した正のエネルギーを術式に流し込むと順転とは逆の効果が得られる。これが術式反転だ。

 

 呪霊操術を反転して得られた効果は呪霊()術とでも呼ぶべきものだった。他者の呪力を抽出して呪霊を創り出せるようになったのだ。術師の階級換算で2級以上離れていれば無条件で呪力を搾取できる。非術師であれば尚更だ。ただし、その呪力が夏油に還元されることはない。呪霊を取り込む前のように呪力がボール状になって、ある程度の大きさになったら食べる。味のまずさは据え置きだ。そして、取り込んだ瞬間にどのような呪霊が誕生したかが分かるようになる。

 

 誕生する呪霊はおおよそランダム。たくさん呪力を込めたからと言って必ず強いのが生まれるわけではないし、そこまで呪力を込めなくても特級が生まれることもある。ただ、多い方が強いのができやすいという傾向にあることは間違いない。

 

 だから夏油は呪霊を集めるのと同時並行で呪詛師狩りもしていた。非術師からちまちま集めるよりも、呪詛師1人から吸い尽くした方が効率がいい。五条悟が爆誕したことによって表立って動かなくなった者もいるため、死体を呪霊のエサにして残穢を残さないように気をつければ夏油の生存が露呈するリスクは格段に低くなる。

 

 とはいえ、呪詛師も無限にいるわけではない。だからこうしてイギリスまでやって来ている。几帳面な性格から毎日コツコツ呪霊を創っており、今では手持ちがおよそ4000体にまで至っている。質も十分だ。

 

 さて、そんな過程を夏油は九十九に見せている。まず、すれ違う人間一人一人から呪力を吸い出す。別に触れる必要はないため、本当にただすれ違うだけで抽出は完了する。元々呪力なんてエネルギーを知らない人々は何の違和感もなく通り過ぎていく。夏油の手元にはBB弾ほどの大きさの粒ができる。これをひたすら繰り返すと、粒が少しずつ大きくなっていきやがては夏油のよく知る呪霊玉と遜色のない見た目になる。

 

「なるほど、興味深い。しかし、呪力を抽出しても0にはならないんだね」

 

 九十九は呪力を吸い出した時に非術師の呪力がごく少量残っていることに気づいた。非術師が呪力切れを起こすことは本来ありえないため、どうなるか気になったようだ。

 

「0にはできますよ。その場合死に至りますが」

 

 つまり、彼は意図的に少しだけ残るように調整していたということだ。もちろん、それは温情からではない。彼が以前に呪いを集めるために、呪霊の被害にあっている一般人からそれを取り除いたように、彼にとっては呪霊を作り出すためには今しばらく生きてもらった方が都合が良かったためだ。

 

「ということは呪力そのものが非術師の生存に必要ということかな。いや、だとすると伏黒甚爾の例に説明がつかなくなるか」

 

「彼の場合、最初から体がそういう仕様だったんじゃないでしょうか? 生まれる前から呪力がないことが決まっていたんだとすると、それに適応するように生まれてくるといった感じで」

 

「そうか、適応か。もしかすると慢性的に呪力が0に限りなく近い状態を作り出すことができれば、いずれはそれを必要としなくなるかもしれないね。なかなか面白いものを見れたよ。それで、これを私に見せて君は何がしたいんだい?」

 

 

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 〇呪霊創術

 呪霊操術の術式反転。大体日本の一般人100000人分の呪力で4級か3級の呪霊が作れる。500000人分で大体2級、1500000人分で大体1級、5000000人分以上で特級になるかもしれないという程度。呪力の抽出は別に触れたりする必要はないが、ある程度は近付く必要がある。ただ、日本でそれをやると間違なく五条やメロンパンにバレるので、主に海外で行っている。日本人に比べて外国人は呪力が少ないため、上記の人数よりも2~3倍の数が必要となるが、1週間もあれば特級1、2体を含む500体以上の呪霊の作成が可能になる。

 渋谷事変の時には計32714体を所持し、内約120体は特級。

 

 

 

 

 

 

 




続きは真人に無為転変されて弾け飛びました。
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