爆弾と銃撃の雨の中、長門は家の中に滑り込んだ。能代も被弾しながらもなんとか屋内に隠れた。ちなみにながもんハウスは木造だが、なぜ爆撃に耐えてるのかは突っ込んではいけない(戒め)。
銃撃は絶えることなく、割れた窓ガラスが降り注ぐ。その間にも長門は銃撃の方向とそこから割り出される武器をとってくる経路を割り出す。
「どこを撃たれた」
「腕だけです。大丈夫・・・うっ」
能代は中破状態で苦しそうに腕を抑える。正直戦えるかは微妙だ。
「物置から武器をとってこないと・・・しっかり見張ってろ。奴らが来るぞ・・・いいか、こっちが風下だ、近づけば分かる」
「どうやってです、電探もなしに・・・臭いを嗅げと?」
「ああそうだ」
そういうと長門は雷をベッドの下に隠れさせて、自分は倉庫に走って行った。倉庫の奥には暗証番号付の丈夫な扉がある。しかしこの扉の暗証番号は2文字までというガバガバ設計だ。長門は暗証番号を素早く打ち込むと、中から引退するときに持ち出した15.5㎝単装副砲を取り出して屋根から母屋に入った。
「!?」
戸をあけた直後に何かが倒れた。気を取られないようにわずかに視線を向けただけだったが胸のサイズですぐに力尽きた能代とわかった。長門は警戒しつつもキッチンに入ると、アルコールの臭いが鼻をかすめ、罠かと一瞬身構えるが、そこにいたのは酒瓶と、今朝冷蔵庫に貼ってあったハート形のメッセージカードを持った隼鷹だった。
「雷はどこだ・・・」
「まあ落ち着けって、砲門向けられたらビビッて話もできない」
長門は殺気を放ちながらの問いに、隼鷹は剛毅なのかそれとも単に酔っぱらっているのか、酒瓶を勧めながら答えた。長門は表情一つ変えず隼鷹を睨みつける。
「ガキは無事だよながもん。少なくとも今のうちはな・・・これからどうなるかはアンタ次第だ。無事取り戻したければ、アタシたちに協力しろ。OK?」
窓からエンジン音とともに車が去っていくのを長門は確認した。隼鷹は酒瓶を置いて勅令と書かれた謎炎を見せびらかしてにやついている。
「OK!」
長門は2もなくそう答えると、隼鷹に15,5㎝砲を浴びせて、自分の愛車に向かった。愛車はなんと2式内火艇だ。死んだ旦那の趣味が高じて買ったものである。もっとも、使わない装甲を外してエンジンを積み替えて地上時速90km/時になるまで魔改造モデルなのだが。
「!?」
しかし旦那の魔改造も空しくエンジンは破壊されてもう動かない。すると長門は何を思ったのか内火艇を勾配に押しやった。内火艇は位置エネルギーで坂道を滑り出し、長門はすかさず乗り込む。
雷を攫った襲撃者たちは、蛇行した坂道を降り切った谷底の川に到着してボートに乗り換え、そのまま川を下ろうとしていた。すると轟音と共に戦車のような何かが木々を薙ぎ払い突っ込んできた。
「追ってくるぞあのバカ!」
襲撃者の一人の眼帯少女はすぐにボートを発進させる。突進してきた戦車はそのまま沈むと思われたが、なんと船のように浮いてボートを追ってきた。ボートはエンジン付きで必死に逃げるが、戦車も追いすがってくる。
「ぶつける気だ!」
眼帯少女は必死に避けようとするが急流で行き場がなく追いつかれそうになった。すると前方の視界がにわかに開けてきた。
「あぶねぇ!」
それを滝だと気付いた眼帯少女はすぐに舵を切って岸に乗り上げて難を逃れたが、戦車はそのまま滝壺へ落ちて行った。
「・・・ハァ・・・ハァ・・・」
長門は滝に落ちた内火艇からなんとか脱出して、岸にたどり着いた。
すると月のバッジをどこかしらに着けた少女たちが襲いかかってきた。長門も素手で抵抗したが、すぐに取り押さえられてしまう。
「動くな、死にたいか?」
「くっ」
無数の砲門を向けられて長門は抵抗できない。すると一人の少女が歩いてきて長門はその姿に驚愕した。それは数日前殺されたはずの部下で、自分の姉妹艦である陸奥であった!
「陸奥!死んだはずじゃ!?」
「あら?それは残念ね・・・トリックよ!」
陸奥は愉悦の表情と同時に憎悪の雰囲気を長門に向けながら言った。
「貴女に連合艦隊を追い出されてから、ずっと復讐を思い続けてきたわ。ようやくその時が来た・・・長かったぜ」
陸奥は引き金を引いて、長門の意識は刈り取られた。