『飛行機はもう行ったで。ながもんも一緒や。んじゃ、うちは天龍に合流するわ』
「ええ、そのようにしてください・・・では」
赤城はRJからの報告を受けて、満足気にヨットに乗り込んだ。
「すべて計画通りです。あのながもんもさすがに飛行機から飛び降りることは無いでしょう。明日、私はバルベルデに帰還します。大統領として」
一瞬心中に慢心の言葉が浮かんだが、こちらには切り札も戦力もある、まさか負けることは無いだろう、と赤城は過信した。陸奥がつまらなそうにしているのもスルーして、赤城はボーキ片手に切り札である雷に話しかけた。
「あなたのお母さんは本当に物分りが良いですね。これが終われば貴女もながもんと特別な待遇で受け入れますよ?・・・どうです?嬉しいですか?」
「必要ないわ。だって、ながもんはきっと私を助けてくれるから。それより、何か手伝うこと無い?座ってるだけじゃ暇で仕方ないんだけど」
雷はさほど怯えているのでもなく、ボートの中を見ながらいつも通りの調子でそんなことを言った。きっと内心怖くて気を散らしたいのだろうと考えた赤城は、雷を厨房に案内させた。その日、赤城は今まで経験したことの無いほどお代わりをすることとなる。
今、足柄の気分は最悪である。フライトのキャンセルで姉妹でやっているCAの仕事がなくなったので、昔の提督(長門の旦那とは別。現在恋愛中)とディナーでもしようかと思ったが都合がつかず、さらに
「おたくみたいなええ女はもっと遊ばなあかんで」
なぜかまな板みたいな軽空母にしつこく言い寄られているからだ。
「やめて、私に構わないで。女に興味は無いの」
「ウチ実は男の娘なんや。あんたおねしょたとか絶対興味あるやろ」
衝撃の事実である。
「ありません。結構です」
足柄は歩き出すが、RJはしつこく追ってくる。
「待ちいなって、おたくにいい夢を見したるから」
「結構です。見たくも無いわ」
「絶対後悔させへんから」
(現役だったらぶっ放せたのに・・・)
「ろくでもない夢でしょう?構わないで、大声出します」
足柄がそう言うと、RJは舌打ちをして立ち去った。
(・・・早く帰ってシャワー浴びよう)
足柄は早いとこ帰宅しようと駐車場に行こうとすると、突然後ろから誰かにつかみかかられた。
「動くな」
「!?」
背後から女性の声がした。女とはいっても、重巡の自分が振り切れないほど力が強いので、おそらく戦艦クラス。逆らえば命は無い。
「何もしない。脇へどいてくれ」
「でも動くなって・・・」
「どくんだ、車に乗れ」
促されるがままに愛車の運転席についた。女が助手席に現れる。がっしりした体つきと、長い黒髪、凛々しい顔立ちの女性だった。
(男だったら上玉ね・・・)
足柄がそんなことを思っていると、女は何を思ったか助手席を引っぺがした。
「キャー!何するの」
「静かにしろ。私の言うとおりにするんだ」
「駄目よ!7時半に空手の稽古があるの。付き合えないわ!」
とりあえず出任せを言ってみるが、「今日は休め」と言われた。すると駐車場にさっきの軽空母が現れる。女は身を隠しながら様子を伺っていた。軽空母はこちらに気づかず車に乗って駐車場を後にした。
「あれを追いかけろ」
「そう来ると思ったわ・・・」
もうどうにでもなれ、足柄はアクセルを踏んだ。