RJから奪った車で長門と足柄は天龍がいるモーテルに行くため夜道を走る。足柄は今日1日あったことの疲れと、自身も警察に追われる身になり、長門に一蓮托生せざるを得ない連帯感から、もう文句を言わなくなっていた。すると今度は長門の方から話しかけてきた。
「・・・お前を巻き込んですまないと思ってる」
今更な謝罪である。足柄は無視してやろうと思ったが、今まで聞いても答えなかったのが向こうから話したがっているなら、聞かない手はない。
「・・・・・・もう事情を話してくれても構わないんじゃない?」
どの道この先暫くは一緒なのだから、と足柄は考えた。
「この子のためだ」
そういうと長門は自分の財布を取り出して開いた状態で足柄に手渡す。財布には写真が挟まっていた。
「・・・かわいい子ね、あなたのお子さん?」
長門は目線だけで肯定する。
「私に汚い仕事をやらせたがってる奴らがいる。早く助けないと娘は殺される」
「その仕事をやったら?」
「どの道殺す気でいるのは分かっている。裏切りに気付かれる前に娘を取り戻すしかないんだ」
長門のハンドルを握る力が強くなる。少しハンドルが曲がった。
「この子のパパは?」
大体予想がついてしまうが、旦那がいればこんな騒ぎになるほどおかしな真似はしないだろう。
「娘の顔を見ずに死んだ。お産で私が艦隊にいない間に緊急出撃で・・・」
長門の顔が暗くなる。
「大破して戻ってきた妹が言ったんだ。私がいれば勝てたと。仇討に頭がいっぱいになって、私は退院してからすぐに部隊に戻って戦い続けた。娘が3歳の時はサーモン海に行ってた。小学校に入った時はピーコック島にいた。麻疹にかかった時はMI海域だった。この誘拐も私のせいだ。過ちに気付いて、娘のために生きると誓ったのに・・・」
そう言う長門の顔は後悔に歪んでいた。失った時間は取り戻せない。ならばせめて今と未来に最善を尽くそう、そう思えども、困難や理不尽が横行するのが人生である。
「なんであれ、私にとって雷は全てなんだ。絶対に取り戻してみせる」
長門は深い決意で再び運転に集中し始めた。足柄の心には長門に対する共感と憧れが芽生え始めていた。
モーテルに着くと、長門は車から降りた。足柄もついて行こうとするが、長門はそれを止めた。
「お前はもう来なくていい。迷惑をかけた」
長門は立ち去ろうとするが、足柄は引き留めて、「私にも手伝わせて」と言った。
長門はRJの部屋のかぎを開けて部屋に入ると、外を見張りつつ、足柄に手がかりになる物がないか探させた。
「ん?天龍だ。ベッドを乱すんだ」
「えぇ」
足柄がシーツを乱すと、今度は長門が足柄のシャツを破いた。
「にゃ!?何するの!」
長門は声を出しかける足柄の口をふさぐ。
「静かに。お前はRJと楽しんでたふりをするんだ」
「わかったわ」
足柄はそれっぽくドアに向かう。長門は扉の裏に隠れた。
「RJ、いるんならドアを開けろ」
「なぁに?」
天龍は部屋から見知らぬ女が出てきたことに顔をしかめる。
「チッ・・・RJはどこだ?」
「バスルームよ」
「お前は?」
「ルームサービス」
「・・・・・・」
本来なら役割が終わったとはいえ仕事中であることに変わりはない。妙なところで潔癖症の赤城に知れたら報酬を減らされるだろう。天龍はため息をつくと、部屋に入ろうと足柄を押しのける。
「ドアを開けろ。わきにどきな。おいRJ!」
天龍がバスルームの戸に手を掛けようとしたその時、隠れていた長門が背後から天龍の肩を叩く。天龍が振り向くとすかさず頬を殴った。
「うっ!?」
天龍は戦艦のパンチを食らって中破したが、体勢を立て直して長門と対峙する。
「フフフ・・・怖いいか?当然だ。元世界水準越え(現在は2戦級)の俺にかなうもんか」
天龍は自信満々に言った。だが相手はあの長門である。
「試してみるか?私だって元連合艦隊旗艦だ」
長門は天竜に殴り掛かる。天龍は14㎝単装砲を取り出して応戦するが、長門型の装甲故、当てても効果がなく、顔面を殴られ壁を破って隣の部屋に突っ込んだ。隣の部屋で楽しんでいた北上と大井の悲鳴を余所に、天龍は運よく部屋にあったハイパー北上様の61㎝5連装(酸素)魚雷発射管を取り出して立ち上がった。
「くたばりやがれ」
自信満々に引き金を引く天龍だが、肝心の魚雷が装填されていないのでシュポッ、と間抜けな音がしただけで何も起こらなかった。
「くたばるのはお前だ」
長門はそう言うと天竜を背負い投げし、掴みあげて放り投げ、起き上がったところを腹パンして、最後にアッパーをくらわせて倒した。
「2人ともやり過ぎだわ!」
隠れていた足柄が部屋に入ってきて言った。長門は天龍を尋問しようとしたが、魚雷が腹を貫通した天龍はすでにこと切れていた。