#0 人の居ない月夜
サラサラと紅き月が照る秋の夜、とある廃神社に1人の女性が立っていた。
彼女は中華風の服を着込み、さらりとした長いその金色の髪をたなびかせ、手に持っている傘をくるくると回していた。
その眼はどこへとも向けているわけでもなく、ただただ虚空を見据えていた……そんな中、ふとさわりとひと吹きの風が吹く、その瞬間彼女はピクリと眉間を歪ませ、いつの間にか彼女の背後に立つ男の首筋へと傘を突き付ける。
「……あら……随分と待たせるじゃ無い?」
彼女はそう笑顔で言って見せるが、その傘を退けることもせず、その両眼は怒りか何かが混じった様子で彼を見る。
「そう言ったって、君や私にとっては差したる問題でもないだろう?……あぁいや……君にとっては今は大問題か」
そう彼はケラケラと笑い、軽く両手をくすめて見せる。
「相変わらず知ったような物言いをするのね……それで?話って?」
そう言い彼女は傘を納め、スタスタと男から離れ廃神社の縁側に腰をかける、
「あぁ……君の運営する
「……あなたがこちらを理解してるのはもう構わないわ……けれど……もしかして、あなたこちらに関与するつもり?……言っておくけれど、私達は今回の件に関しては……」
「『排除する気はない』……だろう?……ところがどっこい困るんだよ、それはね……」
彼女は彼に発言を先取られ、不機嫌な顔になるもすぐに表情を戻す、
「困る?あなた達に何か悪影響があるわけでもないでしょう?」
そう不思議そうな顔で言って見せるが、
「いいや、困るのさ…それに、そちらもより困ることになるけれど?」
「……何に困ると言うのかしら?」
「多くの人が死ぬ……君らは、躍起になって人間を管理しているが……手遅れになってもいいのかい?」
そう彼は嘲笑うように彼女に言って見せる。
「……分かったわ……それで?一体何をするつもり?」
そうため息交じりの一言を口から漏らしつつ、彼女はそう尋ね、
「あぁ……手駒を送るのさ……そう言った事象に慣れててね……あぁ、手駒に関しては問題ないさ、2体いるからね」
そう彼はケラケラと笑いつつ、ポケットから写真を取り出し彼女へと投げつける、
その写真は1人の男性を写しており、楽しげな笑みの見える……何かの写真の一部切り抜きだろうか。
「……この子が?」
「あぁ……そしてお気に入りだよ……分かってるとは思うけど」
「えぇ……私は殺しはしないわ……『私は』ね?」
「ははは!分かってるさ!……並大抵の妖怪なら彼は負けないよ」
「うふふふ」
「ははははは!」
そう廃神社にて、2人の人間が大きく笑い……そして、
「じゃぁ、首尾はお願いするよ」
一陣の風が吹き、男の声だけがこだまする、男の姿は風にかき消えたのか、既にもういない。
そして彼女は笑みを崩さず、1人呟くようにこうぼやいた、
「……えぇ、幻想郷は、全てを受け入れますので」
妙な音共に空間が裂け、目玉の浮かぶ空間が現れる、その空間に彼女が入れば……
また妙な音を立てて空間が戻り……廃神社には誰もいなかったかのように風だけが吹きぬけた。