神ヘルメースに授けられた職業。世界アトラの人々は、自由に三つ選ぶことが出来ていた。

そして、その選ぶ三つの中の一つを極めて頂点になり〝王〟と呼ばれる者が最強の九人がいる。

そんな王に憧れた冒険者レイ・グリスは、相棒のゼル・キリアスと共に生産系の職業〝鍛冶師〟で史上初の王を目指す物語である。

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ただ、思い付きで書いた短編です。
好評だったら続きを書こうと思います。

場面的に、主人公が強敵に殺されそうな瞬間に、憧憬の存在に助けられ王へと目指そうとしたキッカケの場面です。


憧憬

 

そこには綺麗な草原があった。だが、今は、最早見る影もなく地割れが起き、草や花は燃やされ地獄と化していた。

 

そんな場所に三人の人物がいた。

 

その一人は息をしても肺が苦しく荒くなっており、右肩が先程の相手の攻撃で使いものにならなくなり、両手で持つブレードは何度も攻撃を受け流し、盾にしたせいか至るところにヒビが入って、次の攻撃で壊れるだろう。

 

そんな彼──レイ・グリスは、隣で杖でボロボロな体を支えて戦う相棒に声をかける。

 

「ハァ、ハアッ……ゼルッ。魔力(マナ)は平気か!」

 

「………これで、無事だったら、どれだけタフだよ馬鹿レイ!」

 

そう苛立ちを込めて言って返すのは幼い頃から一緒だった親友のゼル・キリアス。だが、彼も自分も元気そうに言い合いしてるが既に満身創痍である。そんな二人に少し悲しむような声音が耳に入る。

 

「ごめんなさい、二人共。ワタシのせいで、こんな事態になってしまって」

 

そう言う彼女はサラ。この地では珍しいエルフ種であり、それに白銀の髪を持つ少女だ。彼女は、目に涙を浮かばせながら二人に治療の魔法を行っている。

 

「「……サラ(さん)」」

 

どうしてこうなってしまったか、それは数十分前だった。

 

レイとゼルは、冒険者であり、二人は、ある依頼の帰り道に賊のような連中と戦っていたサラを見つけ助けに入ったのだ。二人が助けに入ったことにより賊を倒しきり一安心したその時だった。

 

自分達のいる場所に遠距離魔法が放たれ、三人はサラの魔力探知のおかげで間一髪に避けれたが、その間に逃げられように囲まれてしまったのだ。

 

自分達より遥かな存在──英雄クラス(・・・・・)に。

この世界──アトラには神〝ヘルメース〟が授けたと言われる職業(ギフト)というものがある。戦闘は、戦闘職(アタッカー)とと支援職(サポーター)生産職(クリエイター)の三つに別れており、この世界に人々は十の齢になると、自分の好きな職業を三つの中から自由に三つ選べる。

 

そして、そんな職業には〝階位(ランク)〟というものがあり、職業スキルの獲得。スキルのレベルアップ、進化することで上がることが可能である。

 

最初の階位──〝初級クラス〟

 

誰でもなれる階位──〝中級クラス〟

 

生産職の人達は、大体ここまで到達すると終える者が多い階位──〝上級クラス〟

 

戦闘、支援職の人達の大半が到達するであろう勇ある者の階位──〝勇者クラス〟

 

勇者クラスで、少数の者にしか越えられない壁を越え、偉業を成した者の階位──〝英雄クラス〟

 

そして、そんな英雄クラスでさえ到達困難である。現状最高位の階位──〝冠位(グランド)

 

の六の階位が確認されている。

 

 

そして、レイ達の前にいる三人全員が格上の英雄クラス。レイはどうこの場を潜り抜けようと思考を張り巡らすも爆撃系を放たれたら終わりなので、眉間にシワをつくる。

 

そうしていると、三人の内の一人。金色の杖を持つ赤髪の男がレイ達に話しかけた。

 

「そろそろ、諦めて貰いませんか?」

 

「な、んだと?」

 

「私達は、貴方達二人は関係ないです。ただ、後ろの白銀のエルフ種さえ渡して貰えば生かしてあげます」

 

「なっ」

 

「………」

 

男の提案にレイは声を上げ、ゼルは黙る。それそうだ。三人の目的はサラ一人のみ、レイとゼルは関係ない。振り返ればサラが二人にもう大丈夫だと言ってるかのように無言で微笑む。それを見て心が痛むが、生き残れるならと、ゼルが口を開こうとした時だった。

 

「………無理だな」

 

レイがゼルより先に口を開き、断った。ゼルとサラは驚愕の余り目を見開き、男はスっと目を細めた。

 

「……現状は理解してます?」

 

「ああ、してる。だけど、渡す?やだね。英雄クラスなら奪ってみせろよ」

 

「……そんな理由だけで命を捨てると?」

 

「は?誰がてめぇ等の攻撃で死ぬかよ?」

 

そのレイの煽りに交渉を持ち掛けた男も少し後ろにいる他の二人もレイを鋭い目線で睨む。しかし、対するレイは俄然とした態度だ。

 

「……貴方の意見は理解しました」

 

男はそう言って金の杖をレイ達に向ける。後ろの二人も男に並び立つと杖を構える。

 

「やはり、交渉など無駄だ。即始末するべきだったな、〝炎杖(えんじょう)〟」

 

男──〝炎杖〟の右に立つ黒の死装束を身に纏う男が苦言を呈する。

 

「いえ、それはどうかと〝黒杖(こくじょう)〟。相手が馬鹿なだけですよ」

 

と、〝炎杖〟を擁護するのは緑のローブの男〝風杖(かざづえ)〟。

 

三人はそう言い合いながらも物凄い速さで魔法陣を完成させて魔法を放つ。

 

「死になさい──〝獄炎の槍(レーヴァテイン)〟」

 

「嘆け──〝暗雲の闇(ブラッククロード)〟」

 

「裂けろ──〝風撃弾Ⅲ(ウィンドショット・サード)〟」

 

〝炎杖〟から十節分ほど必要な大魔法の全てを滅する獄炎の槍を、〝黒杖〟から全ての精神を狂わす呪いの霧を、〝風杖〟から初級魔法であるのに地面を抉るほどの風圧まで引き上げた風の弾丸を、無詠唱で同時に放たれた。

 

三つの魔法は突き進む内に絶妙に混ざり合っていき、更に凶悪な魔槍へと変貌していく。

 

 

自分達に向かう死を誘う魔の槍の前にレイは相棒に謝る。

 

「すまん、ゼル。変に喧嘩買っちまって」

 

「もういい、お前のことだ。ああ、言っときながら彼女を絶対に助けるんだろ?なら、いい。それに、俺は、お前と共に進むだけさ」

 

ゼルの言葉にレイは「ありがとな」と笑みを浮かべながら呟くとゼルも同じ笑みを浮かべる。すると、後ろのサラが声を上げる。

 

「どうして?!二人共、逃げて!相手はあの英雄クラスっ。偉業を成した大物なのよ!ワタシなんかの為に命を懸けなくていいっ」

 

そう言ってサラは、自分を守ろうとする二人に逃げろと伝えるもレイとゼルはサラに目を向けてフッと笑みを浮かべた。

 

「おいおい、ゼル。後ろの奴、少し勘違いしてるぞ?」

 

「ああ、そうだな。滅多にない英雄クラスと戦えるんだ。決してお前のためじゃない」

 

「───」

 

二人の言葉を聞いて、唖然とするサラを視線から外し二人はボロボロの自分の武器を構える。どうせ死ぬならサラが目の前の三人から逃げれるような時間を稼いでみようと………

「ウオォォォォォォ!!」

 

「ハアァァァァァァ!!」

 

死の恐怖を紛わらすため、震える手を抑えるため、英雄へ一撃を喰らわすために二人は雄叫びを上げて進む。

 

そして、二人の前に魔の槍が迫る直前だった。

 

「「「!?」」」

 

英雄の三人が何かを感じ取ったのか顔を上げ空を見た。それにつられてレイとゼルもサラも上を見上げる。

 

そこには、

 

「「「!」」」

 

白の閃光が巨大な魔力を放ちながら降っていた。

 

その閃光は、そのまま、レイとゼル、魔の槍の間に落ち、発生した衝撃でレイとレゼを後ろへ吹き飛ばした。

 

「っ?!」

 

「ぐうっ……」

 

いきなりの衝撃に背中に痛みが走り呻き声を上げる二人。何が起きたのかと思い閃光が落ちた場所を見ると、唖然とする。

 

落ちた場所は巨大なクレーターが出来ていた。しかし、それよりも驚愕するものが見えたのだ。空から何かが降っても消されるはずのないあの英雄クラス三人が混ざり合わさった凶悪の魔法が消滅……いや、斬られていた(・・・・・・)

 

 

英雄の一人〝炎杖〟が顔面を蒼白させる。正体に気付いたからだ。

 

「ま、まさかっ、あ、あな、貴方様はぁぁぁ!!」

 

そこにいたのは純白の鎧武者。手に持つは普通の人間が片手では持てない刀身二メートルを越える長刀。そんな人物が空から降って現れた。

 

しかし、驚くべきことはそこではない。この人物は英雄クラス三人分の魔法を斬ったのだ。鞘を付けたたまま(・・・・・・・・)で。

 

 

この世界(アトラ)に〝冠位〟の階位へ到達した者は九人しかいない。そんな彼等を大衆はその職業の〝王〟と認めこう呼んだ。

 

世界最高に到達した最強の九人の王。

 

名を、

 

至高の九公聖(ナインズ)

 

そして、その中に職業〝武士〟を極めた者がいた。

 

その者は、武を極め、

 

その者は、全てを一太刀で終わらし、

 

その者は、何もかもを刀で斬り、

 

その者は、剣鬼の如き勝負に飢え、

 

その者の神速の一撃は〝冠位〟の中で最速の一撃。

 

名を………

 

〝武王〟タケミカヅチ

 

 

「武王タケミカヅチ」

 

レイは初めて見る〝冠位〟。王国や帝国などの王とは違う意味で王都敬称される者。

 

数十秒前は死にそうだったのに、もうレイは違うことを考えてしまっていた。

 

鼓動が速くなる。

 

憧れてしまう。

 

───あのような存在へ成りたいと。

 

そして、同じ存在になって目の前の王と死を懸けた勝負をしたいと思ってしまった。

 

そして、この時からだった。

 

────王になりたいと……。

 


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