仮面ライダーツルギ Triangle Victim SPiral   作:大ちゃんネオ

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A.A.

 魔女が嗤っている。

 勝った、勝ったと。

 思惑通りにいったと、宣っている。 

 ふざ、けるな。

 

『タイムベントで巻き戻す必要もなくなった……。今ここに、最後のライダーが決まりました! さあ私の願いを叶えるのです! コア!』

「まだだ……!」

 

 遺された最後のカードデッキを掴み取り、そう叫んでいた。

 

『燐くん……!?』

「まだここに、仮面ライダーはいる!」

 

 青いデッキに目を落とす。

 鷹の紋章。

 仮面ライダーアイズの、美玲先輩のデッキ。

 力強く握り締めたデッキを突き出し、巻かれるVバックル。

 美玲先輩のことが脳裏に浮かび上がって仕方がない。

 短い間だったけれど、愛し合って、繋ぎあった貴女のことを忘れることなど出来はしない。

 両腕を広げる。飛び立つ鳥の翼のように。

 愛した貴女のように。

 

「変身!」

 

 デッキをバックルへと納め、青い虚像が重なり仮面ライダーアイズへと変身する。

 

『無駄な抵抗はやめてください。ツルギならともかく、アイズに貴方が変身したところで……』

 

 何か、言っている。

 分からない。

 分かる必要もない。

 奴の言うことなど、どうでもいい。

 友人を奪われた。

 仲間を奪われた。

 家族を奪われた。

 恋人を奪われた。

 多くの命が、奴によって奪われた。

 その罪は、奴自身の命で償ってもらわねばならない。

 それでも足りないほどだとしても、この手で奴を引き裂かねば気が済まない。

 最早、怒りも憎しみも純白に還ることはない。

 どうしようもないこの感情すべて焚べて、己という存在を燃やし尽くしてでも、アリスを————殺す。

 

 燃えろ、燃えろ、燃えろ、燃えろ。

 

「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 この身から溢れる業火に全てを委ねる。

 焼き尽くす。

 こんな鏡の世界ごと全て、僕から全てを奪ったあの女を。

 

『この、炎は……まさか!?』

 

 蒼炎に包まれる世界。

 アイズの左手に握られる弩型召喚機ウイングバイザーが蒼い長弓、鳳召弓ウイングバイザーツバイへと変化。

 全身を覆うインナースーツとアーマーはより鮮烈な蒼となり、洗練された鋭角的なアーマーを縁取る黄金のラインが走る。

 翼を模した仮面は燃え盛る炎にも似て、ソリッドの奥の鋭い瞳が敵を睨み付けるよう金色に輝きを放つ。

 仮面ライダーアイズサバイブ、爆誕。

 

『そんな……こんな土壇場でサバイブを獲得するなんて!?』

 

 サバイブ。

 仮面ライダーを進化させる力。

 通常のライダーとは一線を画す、まさに別次元の力を与えるカード。

 ブロッサムの優位性はサバイブによるものが大きかったが、ここに来てその差はなくなった。

 更に、アリスは信じられない光景を見てしまった。

 

『————』

 

 言葉を失った。

 何故、どうしてと問いかける。

 たしかに、この手で殺したはずの咲洲美玲がアイズサバイブを、御剣燐を背中から抱き締めていた。

 

『ッ〜! 死人が纏わりつくなぁぁぁ!!!!!』

 

 アリスはブロッサムへと変身し、今度こそ確実に恋敵、咲洲美玲を葬るために走り出す。

 アイズサバイブもまた駆け出し、二人は拳を互いの胸部に殴り付け後退する。威力は互角。

 胸をおさえ、後ずさった二人。

 アイズサバイブは俯きがちに黄金の瞳でブロッサムを睨み付けていた。

 

「……して、やる」

『燐、くん……』

「お前を殺してやるッ!!!」

 

 勢い任せにカードを引くアイズサバイブはウイングバイザーツバイの持ち手の上に位置するカードリーダーを引き起こし、カードを装填する。

 

【SWORD VENT】

 

 エコーのかかった電子音声が告げると、アイズサバイブはウイングバイザーツバイを中央で分割。

 弓幹に収まる黄金の刃が伸長し、ソードモードとなったウイングバイザーツバイをアイズサバイブは舞わせて蒼炎を纏わせる。

 

「ぜあッ!」

 

 蒼炎の斬撃をブロッサムへと向けて放つアイズサバイブだったが、ブロッサムはヴィオラバイザーをアイズサバイブへと向けて炎の斬撃を鏡面に吸い込ませることで難を逃れる。

 

『燐くん……!』

「チッ……なら!」

 

 そうした攻撃が防がれるのであれば、叩き斬る。

 蒼炎の中を駆け、アイズサバイブはブロッサムへと肉薄。

 まっすぐ、ひたすらまっすぐに。

 この殺意の如く。

 回り道もフェイントも必要ない。

 ただひたすらに、斬殺することだけを考える。

 

『くっ……』

 

 ブロッサムはカードを切る。

 

【GUARD VENT】

 

 迎撃ではなく防御の札を切る。

 ヴィオラバイザーの鏡面から咲く、花のバリアがアイズサバイブの斬を受け止め激しくスパークする。

 だが、アイズサバイブは止まらない。

 

「邪魔だぁ!!!」

 

 何度も、何度も、双つの刃を叩き付けていく。

 しかし、強固なバリアは破れない。

 

『燐くん……あなたはもう私のものなのですから無駄な抵抗は!』

「ならッ!」

 

 バリアに弾かれた衝撃を利用し、後方へと飛び退いたアイズサバイブはウイングバイザーツバイの刃に蒼炎を滾らせ、左手に構えた双剣の一振りを投擲すると同時に再びブロッサムへと向かい駆け出す。

 ブーメランのように回転する炎刃の軌道は湾曲し、ブロッサムの正面からは外れて逸れていき、防御すべきはアイズサバイブに限定出来ると息巻いたブロッサムだったが、ざわつく警戒心がまさかを予見させた。

 

『無茶苦茶な狙い! ……いいえ、まさか!?』

 

 急いで後方を見れば、大きく外れたように見えた双剣の片割れがブロッサムの背後を取っていた。

 正面からはアイズサバイブが迫り、ブロッサムは選択を強いられた。

 ように見えた。

 

『正面しかバリアを張れないと思いましたか!』

 

 花のバリアがブロッサムを覆うように展開される。

 ブロッサムの背後を狙った刃は防がれたことで威力をなくし地に墜ちる。

 正面では再び衝突しあうアイズサバイブとブロッサム。

 ブロッサムはアイズサバイブの企みを潰したと息巻いていた。

 

『どれだけ策を弄そうと……私の方が強いんです!』

 

 宣うブロッサムだが、アイズサバイブはまるで聞いていないようだった。

 

『暴れる燐くんにはお仕置きが必要ですかね……ちゃんと、私の方が上だって理解せてあげ』

 

【STRIKE VENT】

 

 ブロッサムの言葉を遮り、電子音声が響く。

 当然だがブロッサムのものではない。

 アイズサバイブのもの。

 脚部のアーマーが変形し、猛禽の如き黄金の鉤爪が現れる。

 そして、アイズサバイブの猛攻が始まった。

 

「ぜあぁぁぁぁ!!!!!」

 

 剣、蹴り、拳。

 蒼炎を纏う攻撃がバリアをものともせずに繰り出されていく。

 耐え凌ぐブロッサムは頭の中で疑問符を浮かべるばかり。

 いつ、カードを使ったと。

 

『後ろを振り向かせたのは、そのため……!?』

 

 投擲した剣に気を取られたうちにアイズサバイブはもう一方の剣にカードを装填していたのだ。

 双剣の一方を飛び道具としたことで自由となった左手を使い、ストライクベントを使用。

 攻撃の手数が増え、いよいよ花のバリアに亀裂が走る。 

 

『そんな! きゃっ!?』

 

 砕け散ったバリア。その衝撃に押され、後退するブロッサムをアイズサバイブが狙う。

 振り翳された剣をヴィオラバイザーを起点として発生させたバリアで受け止める。急拵えのバリアは範囲も狭く、脆い。

 その程度の防御でアイズサバイブを止められるわけがない。

 鉤爪を纏った左足がブロッサムの右肩を蹴り飛ばし、体勢を崩したところを右足で追撃。

 吹き飛ぶブロッサム。その隙に投擲したウイングバイザーツバイの一方を足で蹴り上げて再び構え直したアイズサバイブがブロッサムへ追い討ちをかける。

 再びバリアを生成するも、二刀と両足の鉤爪を全て使いこなしてブロッサムを切り裂こうとアイズサバイブは攻撃の手を緩めることはない。

 まさに神速。

 恐るべき速さで放たれる斬撃、蹴撃にブロッサムは防戦一方。

 アイズサバイブの苛烈な攻撃全てに殺意が滾り、アリスの心を恐怖が支配する。

 

『どうしてですか……なんでこんな!』

「うあぁぁあぁぁぁ!!!!」

 

 再び、バリアが破られアイズサバイブはブロッサムの胸部を蹴飛ばすと同時に宙返り。

 すると、アイズサバイブの背からは蒼炎の翼が燃え広がり、加速。

 蒼い炎の翼がブロッサムを襲う。

 焼けていくブロッサムであるが、ブロッサムの持つタイムベントの常時発動効果によりブロッサムは再生していく。

 

『あぁっつぅぁ!!!!』

「まだだ!」

 

 反転し、ウイングバイザーツバイの刃を構えてブロッサムへと翔けるアイズサバイブの前にドラグランド・マヤヴィオラの蔦が迫る。

 

「チッ……邪魔だッ!」

 

 立ち塞がる脅威を前にアイズサバイブは更なる加速。蒼炎の尾を引きながら錐揉みし、ウイングバイザーツバイで蔦を焼き切り、勢いそのままにブロッサムを断ち切らんと剣が奔る。

 

『くっ!』

 

【SWORD VENT】

 

 ブロッサムは寸前でソードベントを使用。

 ヴィオラセイバーとブロッサムの周囲を浮遊するヴィオラバイザーから発生するガードベントのバリアでウイングバイザーツバイを受け止めるも、アイズサバイブは止まらない。

 斬撃に織り交ぜられる蹴撃、羽撃きは全て必殺の意志をもって繰り出される。それを直に感じるブロッサム=アリスは、一撃受け止めるごとに心根を腐らせていく。

 

『どうしてですか燐くん……! 私はあなたのために!』

「ぜあぁぁぁ!!!」

 

 裂帛と共に放たれる剣戟が掻き消す。

 アリスの主張を。

 

『私の方が先に出逢ったのに! 奪われたのに!』

 

 アリスの想いは蹴り飛ばされて、燐の耳には届かない。

 

『私と燐くんは……友達だったのに!』

「わけの分からないことを!」

『ッ!』

「言うなぁぁぁ!!!」

 

 独楽のように廻ったアイズサバイブ。炎の翼がヴィオラセイバーを灼き斬り、ウイングバイザーツバイの刃が再びバリアを砕く。

 防御姿勢も崩れたブロッサムへと、蒼炎を宿した左足が迫る。金色の爪が蒼の中で煌めきブロッサムの胴を直撃。

 身体をくの字に曲げ吹き飛ぶブロッサムにトドメを刺そうと翼を広げる。

 しかし、吹き飛んだブロッサムの背を優しく包むようにドラグランド・マヤヴィオラの蔦達がネットを作ると同時に再びアイズサバイブへと牙を剥く。

 

「何度来ても同じだ!」

 

【ADVENT】

 

 召喚機が告げる。

 ブロッサムのものである。

 

『キィィィィヤァァァァァ!!!』

 

 大地を裂き、轟かせながらドラグランド・マヤヴィオラの巨大が蠢めく。

 その巨躯に似つかわしくないスピードでアイズサバイブとブロッサムの戦場へと駆ける龍の姿にアイズサバイブもまた対抗手段を取った。

 左手のウイングバイザーツバイを投擲し、接近する蔦をまとめて切り裂きながらカードを切る。

 

【ADVENT】

 

 天空より急降下し現れるガナーウイングの姿が鏡が割れるようにして変化。否、進化を遂げる。

 巨大化し、蒼炎を纏う肉体と翼。

 羽の一枚一枚が刃と化して鋭さを増す。

 尾羽には鎖が連なり、背には二門の巨大な砲を備え、頭部に纏った仮面のようなアーマーからは美しい金の飾り羽が靡き、黄金の瞳は決して獲物を逃がさない。

 蒼炎翔鳳ヴォルカデス・ウイング、降臨。

 

『キュオォォォォン!!!!!』

 

 飛ぶだけで、聖山の街を焦土とし地底より街を全土を侵食していた蔦達を焼き払っていく。

 植物の特性を持つドラグランド・マヤヴィオラはヴォルカデス・ウイングとは致命的なまでに相性が悪かった。

 

『ッ……』

 

 ブロッサムはデッキに手を伸ばしカードを抜く。

 コンファインベント。カードの効果を打ち消す能力で、アイズサバイブのアドベントをなかったことにしようと目論む。

 それを見たアイズサバイブもまたカードを引く。

 装填が早かったのはアイズサバイブの方であった。

 その手に握られたカードには、青い炎に燃えるアドベントカードが描かれた。

 

【BLAZE VENT】

 

 音声が響くと同時に、ブロッサムの手にあったコンファインベントが発火。

 その熱にブロッサムは思わずカードを手放し、地面に落とす。

 

『これは……! っ!?』

 

 更にブロッサムのデッキからカードが一枚飛び出る。

 ファイナルベント。

 これもまた蒼炎が噴き上がり、ファイナルベントのカードは焼失。

 一度に二枚のカードを失ったブロッサムは驚愕し、焦りながらもカバーする。

 

【RETURN VENT】

 

 失ったカードを再度使用出来るようになるカード、リターンベントを使用する。

 だが、望んだカードは戻ってこなかった。

 ブロッサムの手に戻ってきたのは望んでもいないソードベント。

 

『なんで……!?』

「お前のカードは焼却された……!」

 

 アイズサバイブがブロッサムを追い詰めると同様にヴォルカデス・ウイングもドラグランド・マヤヴィオラを圧倒していた。

 炎の身体がドラグランド・マヤヴィオラを焦がし苦しめる。

 

「アリス。お前を殺す……!」

『燐、くん……』

 

 アイズサバイブは再度ウイングバイザーツバイを投擲。

 ブロッサムへと向けて放たれた炎刃を見て、ブロッサムは死中に活を求めた。

 あの刃がブーメランのように迫ることは分かっている。

 そして、駆けるアイズサバイブ。

 前か、後ろか。

 再度バリアを展開すればいいだけのこと。

 だが、同じ手を繰り出す御剣燐ではない。

 右手のウイングバイザーツバイにカードを読み込ませる。

 

【SHOOT VENT】

 

 告げられる、カードの名。

 ブロッサムの背後を取っていたウイングバイザーツバイが軌道を変える。

 剣ではなく弓となるために。

 弧を描いていた刃は直線軌道となってブロッサムを奇襲。

 

『ぐあっ!?』

 

 背後からの衝撃と熱に痛覚すら無くすほどの錯覚に陥るブロッサム。アイズサバイブは投擲したウイングバイザーツバイがその手に戻ると双剣を連結させる。弦が張られ、アローモードとなったウイングバイザーツバイの弓を引くことで蒼炎の矢を生成し、隙だらけのブロッサムへと向けて矢を放つ。

 左肩、腹部、右大腿部に一本ずつ命中した矢は爆ぜてブロッサムを焼く。

 

『ッ…………!?』

 

 声にならない悲鳴。

 苦しむブロッサムへと最後の矢を放とうとアイズサバイブは切札を手にし、ウイングバイザーツバイのカードホルダーへと装填。

 

「終わりだ……!」

 

【FINAL VENT】

 

 必殺が宣告される。

 ヴォルカデス・ウイングがアイズサバイブの背後につくと、アイズサバイブは蒼炎の翼を広げ天空へと舞い上がる。 

 蒼い焔を激らせ、浮かび上がったそれは蒼き太陽のよう。

 弓を構え、引き絞り、狙うは地上のブロッサム。

 ヴォルカデス・ウイングの背の砲もまた地上へと向き、嘴からは猛る火炎が今にも迸ろうとしている。

 アイズサバイブのファイナルベント。絶劫火(ぜっこうか)が今、放たれようとしていた。

 

『っ……!』

「ぐあっ……つう……殺してやる……! アリスッ!」

『そん、な……そんなに、私を殺したいですか……?』

 

 極限まで引き絞られる矢。

 限界を超越した力により、アイズサバイブの右腕のインナースーツは裂け、右肩、胸部アーマー、仮面の右半分に亀裂が走る。

 そんな状態となれば変身者の肉体にもかなりの負荷がかかっているだろうがアイズサバイブの、燐の瞳には怨敵であるアリスの姿しか映っていなかった。

 

『あれ……私、何が、したかったんでしたっけ……?』

 

 殺意、憎悪を御剣燐から向けられていることにいよいよアリスの心は限界を迎えた。

 そうまでして、そうまでして自分を殺したいのかと。

 そうして、自らを灼き尽くさんとする太陽を見上げアリスは手を伸ばした。

 儚く、淡い、愛しいあの日々を思い出しながら。

 

『燐、くん……。私、あなたに恋をしていたんです……。ようやく、気付けたんですよ……?』

 

 ずっと、分からなかった。

 この胸を締めつける想いが。

 あなたといた全ての時が幸せでした。

 あなたさえいれば、それでよかった。

 けれど、終わりはいきなり訪れて。恋を知る前に私の前からあなたはいなくなってしまった。

 もう、私の目にはあなたしか映っていなかったというのに。

 だからもう、あなたへの恋に恋するしかなかった。

 その果ての結末が、これですか?

 

『燐、くん……。っ……!』

 

 それは、幻か。

 矢が放たれようとした一瞬であったが、間違いない。

 咲洲美玲がアイズサバイブの前に立ち、彼の胸に飛び込むように、抱き締めようとしていた。

 だが、矢が放たれる。

 世界が蒼に染まり、恋敵である既に亡き少女の姿はアリスの視界から消失していく。

 衝撃が雲を裂き、蒼天を仰ぐ。

 穿つ矢は青い尾を引き光線のよう。

 ヴォルカデス・ウイングの砲火と口から吐く火焔も合わさり世界が、青に包まれる。

 世界の終焉が訪れたかのような光景。

 灼熱が地を襲い、生じる熱波がミラーワールドに生息するモンスター達を焼却、絶滅させていく。

 

『つぅぅあぁぁぁぁ!!!!』

 

 ガードベントを最大出力で展開。

 更にドラグランド・マヤヴィオラの蔦が無数に覆ってブロッサムを守護するが、それでもなお死を確信するほどの炎熱。

 終末の光の果て————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なん、で……なんで外れた!?」

 

 燐の慟哭が空を裂くかのよう。

 狙いは完璧であった。

 怒りも、憎しみも、殺意も、全て溢れていた。

 だというのに、何故。

 

『……っ、生き、てる……』

 

 膝をついていたブロッサムが、顔をあげていた。

 アリスを射殺さんと射った矢は遠くアリスを逸れたのだった。

 

「いや、まだだ!」

 

 今度こそアリスを殺すと矢を番えるアイズサバイブだったがその瞬間、Vバックルから火花が散り全身のアーマーが崩れ落ちていく。そして、仮面の右半分が砕けると共に変身が解除され、落下していく燐は、茫然としていた。

 

「なんで……どうして……」

 

 殺さなかった?

 それだけが、彼の頭と心を占めていく。

 そうして落下していく燐を、蔦が絡め取った。

 

『燐くん……』

「……アリス! うぅっ!!」

 

 蔦の上に立ち、燐のもとへ行くアリス。

 やはり、自身のことを殺意のこもった眼で睨み付ける燐に、彼女は目を逸らした。

 

「殺してやる……! 絶対に、お前を殺してやる……!」

『ッ……!』

 

 蔦が、アリスの意思に従って燐を拘束し、飲み込んでいく。

 覆われていく燐を最後に見つめたアリスだったが、その奥底より貫くような殺意の視線を幻視し、また目を逸らす。

 

『どうして、あの時……咲洲美玲は……』

 

 アリスは矢が放たれる直前に見た光景を思い返す。

 あの矢が外れたのは、彼女が原因だろう。

 馬鹿な、あれは幻だろう。

 燐にはあれが見えていないということは、彼の反応や言動から察することが出来る。

 ならばあれは幻なのだろう。

 そう断ずることは、アリスには出来なかった。

 あれがなければ、自分は確実に死んでいただろうという確信もある。

 だが、自分が庇われたわけではあるまい。

 あの行動の意味、それは……。

 

『おめでとうアリス。あなたはこれで願いを叶える権利を手に入れた』

 

 白い女の影、コアが現れる。

 

『あら? 最後の一人になったのに、まったく嬉しそうじゃないわね?』

『……本当に、勝ったんですよね……? 私、私は……』

『ええ、そうよ。貴女は勝ったの。……なに、巻き戻すの? せっかく、初めてのライダーバトルで勝ったのに?』

 

 巻き戻す……それはアリスに与えられた力であった。

 巻き戻し、ライダーバトルを仕組み、そして目的を達成したアリスにその必要はない。

 本当に、そうだろうか?

 

『燐くんは手に入れた……でも、こんな……』

『そうねぇ、巻き戻してもいいけど、どうかしら? 巻き戻したとて、この戦いの記憶が何かの間違いで蘇ったとしたら』

『っ!? それ、は……』

『また憎まれて、殺意を抱かれるでしょうねぇ』

 

 巻き戻しても、またこんな戦いをしなければいけない?

 そう考えるだけで、アリスは凍えるようだった。

 膝を抱えてしゃがみ込み、震えるアリスにコアがそっと寄り添って耳元で囁いた。

 

『この世界の御剣燐はあなたへの憎しみに染まり切った。巻き戻してなかったことになったとて、何かの弾みで思い出したらさあ大変。そんな爆弾を、あなたは抱えていられるの?』

『それ、は……』

『私が、チャンスをあげる』

 

 甘い言葉であった。

 少女を惑わせる鏡が歪な嘘を吐く。

 

『この世界の御剣燐はあなたへの怨みを忘れない。だったら、そんなことない別の世界の御剣燐を手に入れればいい』

『別の、世界……?』

『合わせ鏡が映し出す無数の可能性……別の世界でも御剣燐は御剣燐。私ならあなたを、あなたを怨んでいない御剣燐がいる世界へと連れていってあげる』

『ほん、とう……?』

『ええ。あなたはライダーバトルの勝者ですもの。願いを叶えてあげるわ』

 

 コアの傍らに広がる合わせ鏡の世界。

 無数に映し出される様々な可能性世界に、アリスは手を伸ばした。

 

『私のことを、愛してくれる燐くんがいるところへ……』

『ええ。連れていってあげる。それに、今のあなたは傷つき過ぎてしまったからこの世界でのことは一旦忘れましょう』

 

 アリスの額にコアが触れると、アリスは気を失いその場に倒れ込んだ。

 そうして、倒れたアリスに覆い被さるコアはアリスの髪に触れ、耳元で再び囁いた。

 

『偽りの記憶に踊らされ、また御剣燐に恋出来るようにしてあげたから、思い出したら感謝してね。そうして、あなたはいずれもう一人のアリスとなってライダーバトルに挑むのよ。ふふふ……あはははは!』

 

 合わせ鏡へと吸い込まれていくアリス。

 残されたコアは捕えられた燐が入る果実のような檻を見つめる。

 白貌が、不気味に微笑んだように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 桜が散る中、新しい学舎へと足を踏み入れる。

 教室にはこれからクラスメイトとなる生徒達が賑わっていた。

 とはいえ、賑わえるということは中学が同じだった人達がほとんどでしょう。

 私はクラスに同じ中学の子がいませんでした。

 友達作りに励まなければいけないと気負いながら、自分の席を探す。

 ここだと見つけた席の隣には、喧騒から取り残されたのか窓の外を見つめる男の子がいた。

 

「あの……」

「……はい?」

 

 声をかけると、自分が呼ばれたのかと不思議そうな顔をした男の子。

 綺麗な顔。

 そう思った。

 

「えっと、なにかありました?」

 

 微笑みながら首を傾げる男の子のことをつい、可愛いと思ってしまった。

 穏やかで優しそうな人で良かったとも思ったけれど、第一印象は可愛い。けれど、男の子に可愛いはやはり良くないのではないでしょうか?

 

「いえ、その! 隣の席になるので、ご挨拶をと……」

 

 ここまで畏まらなくたっていいじゃないかと思いつつも、緊張するのは仕方ない。

 同年代の男の子と関わってきた経験が乏しいのだ。

 

「そっか。僕は御剣燐。中学は東中」

 

 御剣燐くん……。

 名前まで、可愛い。

 なんて、失礼です!

 

「えと、君の名前は?」

 

 名前を尋ねられる。

 名乗ってもらって名乗らないのは失礼にあたります。

 する必要のない咳払いをして、私は名乗り返した。

 

「宮原鏡華、です」

 

 このおよそ五ヶ月後、少年は再び剣を執ることとなる。

 そして少女は巡る運命の果てに————。

 

 

 

 

 A.A.

 Alternative Alice

 

 仮面ライダーツルギTVSP 完








仮面ライダーツルギ5周年企画始動。

日本のどこかにある地方都市、聖山市。

この街は聖山高校の「聖の陣」、藤花学園の「花の陣」の両陣営による戦いであり、5人と5人の少女たちがそれぞれの野望と刃が交錯する、前代未聞の「ライダーバトル」が繰り広げられていた。

激戦の中、少年・御剣燐は、数奇な運命の悪戯によりこの戦いに巻き込まれていく事になる。

これは、誰にも語られることのない「異聞のライダーバトル」の物語である。

仮面ライダーツルギ外典 聖花大戦
執筆 ちくわぶみん
監修 大ちゃんネオ
協力 正気山脈
   熊澤しょーへい

2025年公開

読者参加型ライダー・キャラクター募集
近日募集開始
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