フェンリル横浜支部「team coyote」   作:ざま菓子

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ある日突然上層部に呼び出され、フェンリル横浜支部に新しく配属されるゴッドイーターを迎えることになった佐々木、しかし新しい神機使いとは、かつての親友だった……。
5人の親友が揃うとき、物語は幕を開ける。


再会と影

    20××年 4月某日 10:00  フェンリル横浜支部

 

「やれやれ……世界が壊滅しても、季節だけはこうしていつも通りなんだよな……」

 数少ない新型神機使い、佐々木竜太郎(ささき りゅうたろう)は支部の屋上のヘリポートに立って春一番を全身に感じていた。空を見上げれば青い空と白い雲が広がり、下を見れば壊滅した横浜の街が広がっている。

 某年、突如出現した【アラガミ】と呼ばれる存在、それはほぼ全ての物体を【侵喰】し【吸収】する生命体。いや、細胞の塊。従来兵器でいくら攻撃しても、アラガミには対抗できなかった。世界は任せるがまま壊滅し、人類は急速に減っていった。それはもちろん日本も例外ではない。世界はアラガミに侵蝕されていくばかりであった。

 そんな中、アラガミを構成する細胞でもある「オラクル細胞」を使って開発された対アラガミ生命兵器「神機」が開発された。使用者の体質と神機そのものが上手くマッチしていなければ扱えないこの厄介な生体兵器は、確かにアラガミに対し有効だった。オラクル細胞の発見と運用は、人類存続の切り札となった。

 政府直属の下、神機使い【ゴッドイーター】に関する機関が間もなく設置された。世界各国各地に設立された対アラガミ討伐機関【フェンリル】は、まるで戦時中の徴兵制の如く生存者を集めて適合検査を行い、神機使いとして教育していったが、長く生き残れる有能なゴッドイーターはわずかだった。

 4月某日、ランドマークタワーを中心として位置する【フェンリル横浜支部】、ここに学生の時から所属している佐々木竜太郎(ささき りゅうたろう)は今朝『新しい神機使いが東京から派遣されるから出迎えろ』という指示を受けていた。

(新しい神機使い……か、話によると階級は少尉だから俺より上ってことになるが……どんな奴なんだろうな)

 普段は新兵指導に携わる立場にある佐々木は、新人兵が配属されるときには決まって資料を回されるのだが、今回は回ってこなかった。資料が回ってこないと顔も性格も戦闘能力もわかったもんじゃない、一体何故俺が呼ばれたんだと、佐々木は軽い苛立ちに駆られていた。

 ヘリポートの風が強くなり、ヘリコプターの影が見えてくる。佐々木はヘリポートから降りて、後ろで一列に控えている兵士たちの列に加わった。

「佐々木、お前が代表だ。一応、前に出ておけ」

 佐々木の先輩にあたる一等軍曹の椚田(くぬぎだ)が正面を見据えたまま指示する。佐々木は言われるがまま列前の真ん中に移動した。

(あ……? 普通こういう時の代表って上層の人がやるんじゃないのか?)

 佐々木の疑惑が増えるのも構わず、ヘリの影が近づいてくる。風が強くなり、急に肌寒くなる。

 やがてヘリが強風を伴って着陸した。プロペラの回転が弱まるのも待たずにドアが開けられる。佐々木は目を凝らしてドア付近に注目した。

(ついに来た……!さあ、新人はどんなやつなんだ…………!?)

 先に軍曹らしき人物が出てきて椚田軍曹に挨拶した後、その場から離れて何か話し始めた。続いてヘリコプターから、全身に黒いローブをまとった。自分と同じくらいの人影が現れた。フードを被っているので顔が見えないが、少しだけ見えている顎から察するに、おそらく男なのだろう。袖から、ゴッドイーターの証である腕輪が不自然に突き出ているのが見える。左右についていた二人の人物を置いて佐々木の正面に立った。そしてゆっくりと、被っていたフードをゆっくり取り去った。

(……まさか)

 佐々木は、自分が代表に選ばれた理由が分かった気がした。

「久しぶりだなぁ」

 そこにいたのは、小さい時から学生時代まで一緒にいた。間 遼太郎(はざま りょうたろう)だった。

 

 

 

 

 

「新しく配属される新人少尉ってお前だったのか!超久しぶりじゃん!」

 佐々木は自分より遥かに上の階級になっていたかつての友人を驚きと歓喜の表情で迎える。

「こら!君、失礼だぞ!」

「軍曹、申し訳ありませんが下がってください」

 佐々木の遠慮ない態度に近くの軍曹が一喝したが、間自身がそれを制した。

「少尉って階級になっちゃってるけど気にしないでくれ、いつの間にかついてた称号だからさ」

 佐々木はなんとなく敗北感を感じたが、特に気にすることはない、間は間だ。

「もう行っていいんですよね? 松山中尉?」

「あ、ああ……では、間少尉、新たな戦場でのご活躍を期待しております!」

 間と、松山と呼ばれた中尉が敬礼し合う、中尉や乗ってきた兵士たちは滑り込むようにヘリに乗り込み、逃げるように離陸の準備を始めた。佐々木はその様子に少しの違和感を覚えたが、今は親友の帰還を喜ぶため、下にいる仲間の所へ間を案内することにした。

 間は本格的に支部に入る前に色々手続きなどがあるらしく、支部長ら数人の上官に連れていかれたため別行動となった。佐々木は戻ってくるまでにかつての仲間たちを呼び出そうと思い、配属された人間に支給される携帯情報端末(PDA)を片手に、ラウンジで全員にメールを送る。

 しかし、あの間が少尉になっているということは、いささか信じがたい事実だった。能力も大したことないただの変人が何故? 嫉妬しているわけではないが、佐々木はそこが引っかかっていた。配属される前に資料を回さなかったのも気になる。

(そういえば……俺たちが離れ離れになったのはいつだっけ……そうだ、高校生の時だ……)

 まだ学生以前の頃、アラガミの脅威が一気に拡大して、その実害が日本にも出始めた。突如周りで繁殖し始めたそいつらは、仲の良かったクラスメート達さえも容赦なく食いつくし、吸収していった。街が壊され、人が喰われ……そんな光景を、その場にいた全員が見ていた。もちろん、佐々木もそうだ。その時確かに、恐怖と絶望を覚えた。

 やがて一定の箇所に避難する事態になったのだが、同じマンションに住んでいるはずの間の姿は、そこにはなかった。他の奴らは問題なく非難できているのに。

 ほとんどの友人が、逃げる途中で死んだ。という結論を出した。現に佐々木もその時は死んだとばかり思っていたのだ。間の生存を知ったのは、ついさっき、再会してからなのだから……。

 その他の仲の良いメンバーは間を除いて、ほぼ同じ進路を辿った。フェンリル横浜支部に連れていかれて、意識を失う程の苦痛を伴う適合検査に合格し、ゴッドイーターとして配属された。しかしその中にも間はいなかった。【もしかすると他の避難場所に逃げたのかもしれない】という淡い期待は、ほぼ崩れたといってよかった。

 それが自分の目の前に現れた! 色々積もる話もあるのだが、まずは全員を集合させるべきだろう。

 ロビーの待合室でタバコをふかしていると、ロングヘアを後ろで束ねた長身の男が現れた。佐々木の親友の一人であり仲良しメンバーの一人で、フェンリルでは狙撃の名手、青桐拓馬(あおぎり たくま)だ。

「おっすタロス、ざまさんが帰ってきたそうじゃないかい?」

 この個性的な声も顔も口調も、全て青桐の特徴だ。こめかみに残る髪の毛をいじりながら佐々木の隣にどっかりと座る。

「そうなんだよ青さん! あいつ帰ってきやがったんだよ!なんか変な服着ちゃってさ!あっはは!」

 言ってることこそ小馬鹿にしているようにしか聞こえないが、その声色は明らかに喜んでいた。佐々木も古くからの友人に会えて嬉しいのだろう。

「ふーん、で、今ざまさんはどこにいるんだい?」

「今はメディカルチェックとか色々手続きしてる。時間がかかるだろうからゆっくりしてこいってメールに書いたろ?」

「あぁ……あれはそういう意味だったのかよ」

 青さんは自分のバレットについての資料を、佐々木はラウンジに置いてあった雑誌を手に取って時間を過ごしていた。そうやってしばらく時間を潰していると、近くのエレベーターから二人組が現れた。片方はやや貧弱に見える身体に羽織った白衣をなびかせていて、欠伸した口内には生まれつきらしい大きめの前歯が覗く、やや角張った顔の青年。もう片方は筋肉質な体の上にTシャツとジャージズボンという運動系なのにも関わらず、やや童顔というギャップを持ち合わせた出で立ちだ。

 二人は佐々木達の所に歩いてくる。間と同じく昔からの親友である二人には見ただけでわかる。白衣を着ているほうが山ノ丈絃汰(やまのじょう げんた)、筋肉質で童顔なのは藤牧圭助(ふじまき けいすけ)だ。

「おす、丼さんにマッキー、待ってたぜ」

 佐々木は片手を挙げて二人を引き入れる。

 間は【ざまさん】、青桐は【青さん】、佐々木は【タロス】(間だけは、親しみを持って竜と呼ぶが)藤牧は【マッキー】、山ノ丈は【丼さん】、佐々木達の中ではこういったあだ名呼びが普通だった。今でもこの呼び名で呼び合う佐々木達は、永遠の親友と自称しても過言ではないのだろう。

「タロス本当なのか? ざまさんが帰ってきたって言うのは?」

 藤牧の方は、いまだに信じられない、という様子だった。山ノ丈は特別何も示してはいないが、おそらく信じてはいないだろう。

「まあ待てばわかるっしょ、メディカルチェックは結構時間がかかるって言うし」

「それでももう何時間か経ってるけどな」

 山ノ丈はふわぁぁと大欠伸をすると、佐々木達の座っているソファーの向かいのソファーに横になったが、すぐに藤牧に蹴り起こされた。

「俺の座る場所がねぇだろうがこのひきこもりニートめ」

「ひきこもってはいるがニートじゃねぇよこの脳筋め」

 かつての仲間が揃っていく、世界が壊れる前までは、これが普通だったのだ。この仲の良い平穏が。

「で、どんな感じだったんだ?ざまの奴は?」

 藤牧は懐からタバコを取り出しながら言う。佐々木はそれをもらおうと手を伸ばしたが、藤牧に素早く手を引っ込められてしまったので、口をへの字に曲げて自分のタバコを取り出しながら答える。

「なんか……変わらねぇなぁって感じ」

 当たり障りのない応えに、一同はふーんと同意するしかなかった。さらに藤牧が一言。

「まぁ、会ってみればわかるか」

「だよな」

 

 

 

 

 藤牧達が来て数十分後、ようやく間がラウンジに現れた。さっきのローブではなく、白いTシャツの上に深緑色をした長い丈の上着を羽織ってジーパンを履いている。

 パッと見てあまり冴えた顔とは言えないが、三白眼が目立っておりどこか暗い印象を思わせる。さらに髪のクセッ毛も昔からだったが、今では三白眼が少しキツくなったように見える。

「悪いな、待たせちゃってるみたいで」

「おいおい一番の挨拶がそれかよ、もっと良いことは言えねぇのかぁ?」

 早速佐々木が嬉々として煽りにかかる。それから間達は今までの報告、近況、現在の立場や状況などを話し始めた。他人から見ればそれは、他ならぬ親友が再会した風景だった。

 ざまさんこと間遼太郎、タロスもとい竜こと佐々木竜太郎、青さんこと青桐拓馬、丼さんこと山ノ丈絃汰、マッキーこと藤牧圭助、かつての親友同士が揃い、神に抗う細胞達が物語を紡ぎ出す。

 




はい、というわけで「フェンリル横浜支部『team coyote』」始まりました。
といっても第一話というわけで本当に最初の導入部分だけとなっていますが……(汗
実は既にこの「バースト編」を最後まで書き終えており、校生を終えた順に投稿していっている次第です。
なるべく早く投稿できるよう鋭意校生に励んでおります。

こういうSSをネットに投稿するのは何分初めてですので、どうか温かい目で見守っていただければなと思います。
(本作は原作のゴッドイーターバーストのシナリオとはほぼ一切関係ありません。ですが、本作の設定をなるべく忠実に引用していますので、システム用語などでネタバレがある恐れがあります)
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