フェンリル横浜支部「team coyote」   作:ざま菓子

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キノコを食すときはやっぱりよく炒めると良い、パスタに混ぜて食べてもいいし、ハンバーグなどのデミグラスソースに絡めてもいいし、ハヤシライスに使ってもいい、キノコっていうのは意外と万能の食材なんだぜ。

――佐々木の料理記録より抜粋――


見知らぬキノコにはご注意を

     フェンリル横浜支部広報誌

 

 

[謎の巨大キノコ現る! 新たなアラガミの可能性も・・・・・・]

 先日未明、横浜支部南方面にて、正体不明のキノコがいくつか発見された。

 キノコの大きさはサッカーボール大のものからドラム缶サイズのものまであり、生態地、発生原因は不明である。しかし、フェンリルのデータベースに対象はなく、またいままで確認されている菌類とも合致するものがないことからアラガミによってもたらされたものではないかという噂が飛び交っていて、現在数名編成の調査隊が正体を調べている。なお、同キノコを見つけた際には支部に連絡するようにとのことだ。

 

 

 

     フェンリル横浜支部 ラウンジ

 

 

「ほれ! これ見ろ! これ!!」

「タロス・・・・・・本が近い」

 丼さんこと山ノ丈はラウンジの二人席に白衣姿で腰掛け、アラガミに関する調査結果を眺めていたが、その知性ある風景はタロスこと佐々木によって妨害されていた。佐々木が山ノ丈の顔面スレスレに突き出していた本に、広報誌の文字が見える。

「あぁ? どれどれ・・・・・・」

 山ノ丈は佐々木の手から広報誌を取り、調査結果の横に掲げて同時に読み出す。

「器用な事するなぁ・・・・・・」

「これくらいなら余裕だわ」

 ほんの少しの間に広報誌と調査結果を読み取り、ぽいっとテーブルに投げ出す。

「ふぅむ・・・・・・正体不明のキノコ・・・・・・ね」

「なんか面白そうじゃね!? 超料理してみてぇんだけど!」

「あぁそういえばタロスって学生の頃は料理人志望だったっけ」

 爛々と眼鏡を輝かせる佐々木の顔を眠そうに見やる山ノ丈、口では面倒くさげだが、その様子は実に興味深いと言わんばかりに身体を揺すっていた。

「まぁ面白そうだな、といってもどこ探すんだ? 何処で採れたかわからねぇんじゃ探しようが……」

「と・こ・ろ・が! あるんだな探しようが!」

 不必要にテンションの高い佐々木に、山ノ丈は軽く頭痛を覚えそうだった。構わず佐々木はしゃべり続ける。

「実はこのキノコを見つけた奴を言いくるめて詳しい情報を聞いて来ちゃったのよぉ!」

「……へぇ? てことは大分範囲が絞れたんだ?」

「そう! で、その地区なんだけどさ・・・・・・」

「あれ? ちょっと待て」

 止めないと永遠に喋り続けそうな佐々木を制し、ふと疑問を口にする。

「いくらタロスでもただ料理したいからってそんなにキノコを探したいんじゃないんだろ? もっと何かワケがあるんでないの~?」

 思わずニヤニヤし始める山ノ丈、それに釣られてか合わせてか、揃ってニヤつき始める佐々木。

「さっすが丼さん。わかってんなぁ~。その通りだぜ、本命はこっちだ!」

 佐々木は先ほどの広報誌を手に取り、再びキノコの記事を開き、その下部の文章に指を置いた。そこには[なお、この正体不明のキノコの解明または発見に協力してくれた方にはフェンリルから報酬を出す方針である]と書かれていた。

「なるほどなぁ、これが狙いか」

「新種に関する事だぜ? 絶対ボーナスすげぇって!」

「うん、最近ちょっと金欠気味だしな・・・・・・おっけ、協力するわ」

「よっしゃ! さっすが丼さん! 話がわかるぜっ!」

 佐々木は広報誌片手にガッツポーズする。ボーナスの話だからかテンションが高いままだ。

「他の面子は?」

「マッキーとざまさんは別の班について任務なんだと、青さんにゃまだ聞いてないんだけど・・・・・・」

 その時、都合よくラウンジのカウンターから紅茶とパンを持ってラウンジを出ようとしている青さんこと青桐の姿が見えた。

「おう青さん! ちょっと来いよ!」

 青桐は明らかに(嫌な奴に会ったな・・・・・・)と言いたげな苦い顔をして渋々近寄ってきた。佐々木は早口でキノコの件を話す。

「というわけでさ! お前も来いよ! どうせ暇なんだろ!?」

「全然暇じゃない、これから出撃なんだ」

「はぁっ!? ふざっけんな! こっち優先だ!」

 佐々木のハイテンションかつ執拗な絡みにも、青桐はいつもの調子で冷たくあしらう。この二人、小さい頃からの親友なのにところどころで仲が悪い。

「知るか、それに今回はあのウロヴォロスの捜索、討伐任務だし、断れるもんか」

「ウ・・・・・・ウロヴォロスゥゥ!? あの超大型アラガミかッ!? お疲れだな! 頑張ってくれよッ!」

「そんな他人事っぽく言われてもなぁ、ま、とにかくそんなわけで同行できねぇわ。そっちはそっちで頑張れよ」

 あんぱんをはむはむと食べながら片手を振って青桐はエレベーターに乗り込んだ。その扉が閉まるのを確認すると、佐々木はまたさっきまでのハイテンションに戻ってしまった。会話の主導権を譲るまいと、山ノ丈が進んで話を切り出す。

「さってと・・・・・・これで青さんも駄目か、しゃーない、俺ら二人で行こうぜ」

「ちぇ、しょーがねぇなぁ」

 佐々木は口を尖らせつつ眼鏡を拭いた。

「とりあえず俺の部屋に来いよ、キノコを見つけるための資料置いてきちまった」

「了解っと・・・・・・」

 わずかに残ったコーヒーを飲み干し、山ノ丈はその重い腰をあげた。

 

 

 

 

 

 

       佐々木の部屋

 

 

 フェンリルはほとんどの神機使いに個室を提供してくれる。リフォームこそ出来ないが間取りは全て均一であり、その飾り付け等には特別な規則はなく、了承さえ取っていれば他人の部屋で過ごすことも可能である。部屋には電子錠が取り付けられており、腕輪をかざすことで開錠できる。よって他人の部屋に入るには本人が一緒に、または室内にいるか、別途に暗証番号を入力するか、暗証カードをかざすかする等、色々解錠にバリエーションがある。

 佐々木の部屋は全体的にちらかっているが、台所だけは非常に整理整頓されていた。脱いだ服がベッドの上に放り投げられていることから察するに、実は結構ものぐさなんだろう。

 山ノ丈はベッドの端にどっかりと腰を落ち着けると、一呼吸置いて切り出した。

「それでその資料ってのは?」

「あぁちょっと待っててな・・・・・・ええとあれどこやったかな・・・・・・」

 佐々木はターミナルの横に積まれた書類やらなんやらの山を適当にかき分けると、くしゃくしゃになったA4紙の束を取り出した。

「ほれ、これだこれ」

「・・・・・・?」

 山ノ丈は書類をのぞき込み目を細めた。

 

 

 

 

       正体不明のキノコについて

 

 ●月×日未明、チームアルファによる超大型アラガミ、ウロヴォロスの先遣調査の途中、旧戸塚付近にて正体不明の巨大キノコを発見した。本来のキノコの数倍のサイズであり、今までに確認されていた菌類のどの種類にも情報が一致しなかったので、全く未知の発見である。生えていたというより落ちていたという感じで、環境による突然変異やアラガミが植えたものであるという事情ではないらしい。地理的な分布情報が無いので再発見が難しく、しばらくは発見箇所を中心とした調査が主になるだろう。

 

 

 

 二枚目の書類には、問題のキノコの写真が二枚と、発見した場所一帯の地図が印刷されていた。キノコはかさの部分が深い緑色で、他の部分は全て黒い、毒々しい色合いだった。

「で、これを見つけて正体を暴いて情報料を取ろうと」

 山ノ丈がニヤリと微笑むと、佐々木は台所の缶ジュースを放り投げる。

「そゆことだ。ホントはコヨーテ全員で探して報酬は山分けにしようと思ってたんだけど・・・・・・まぁ二人で山分けってんでどう?」

「おっけ賛成、じゃあターミナル使わせてくれ、神機調整するわ」

「あ、ちょっと待って俺もするわ」

 山ノ丈は佐々木がターミナルをいじる間、彼から受け取った『青春ジュース:男汁』を飲むことにした。

 

 

 

装備情報

佐々木竜太郎

剣:鉄乙女剣 真(ショート)

銃:ビューグル砲 真(ブラスト)

装甲:強回避バックラー硬(バックラー)

 

山ノ丈絃汰

剣:トックスピック(ショート)

銃:強化レールガン(スナイパー)

装甲:対属性バックラー硬(バックラー)

 

 

 

 

       旧戸塚南方面

 

 

 アラガミが繁殖する前は住宅地が広がり人で溢れかえっていた戸塚方面も、今や朽ちるに任せ閑散としている。その南方面、即ち大船や鎌倉があった場所では、時折下水処理場から繁殖したアラガミが異臭を放っている事があり、一般人はおろか神機使いでさえも接近を拒むという。

 そんな閑散とした旧大船方面に、一台の装甲車が走ってくる。車は瓦礫や陥没した場所を避けるように、極めて安全運転で走行していた。

 車は廃墟の一角に停車し、中から小振りな神機を持った二人の神機使いが降りてきた。佐々木と山ノ丈である。

「さて、このあたりから南にかけて探していこうぜ、といってもなんだかんだで鎌倉に近いところまで来ちまったけど」

「OK でも資料を見るに発見が地理的な情報が何もないんだろ? どういうところを探せばいいのかわからんぞ? 何か考えでもあんの?」

「正直無い、とにかくその辺ウロつくしかないな。別に今日中にやらなきゃいけないとは言わねぇしグダグダ行こうぜ!」

 山ノ丈はため息が出る思いで、曇った空を見上げた。雨が降りそうな暗雲が頭上に広がっていた。視線を戻すと、佐々木は既に神機を肩に、忍者の如く飛び跳ねていた。

「やれやれ……ま、行きますか」

 山ノ丈は神機を銃形態へ変えつつ、助走をつけて空中へと踊り出た。

 二人は分担して廃墟群を移動しつつ手がかりを探す。本来のキノコの生息環境を本に、湿気が強く不潔という理由で廃れた下水処理場を数件当たってみたが、見つけたのは不気味に泡立つ汚水と無数のザイゴート程度だった。その後、東へ進路を変えつつ調査したが、これまた手がかりは得られなかった。

「駄目だ、ちょっと休もうぜ!」

「了解、こりゃぁ難航するな」

 近くの瓦礫山に腰掛けつつ、山ノ丈がそう呟いた。佐々木も少しずつ面倒になってきたらしく、うんと体を伸ばす。

「えーとここは……なんだかんだで鎌倉の方まで来ちまったのか、ゴルフ場が見える。あそこはまだ割と当時に近いな」

 佐々木は瓦礫の上からかつてゴルフ場であった所を眺める。山ノ丈も一緒になってそちらを見やる。山ノ丈はふと、何か脳裏にひらめくものを感じ、携帯とPDAを手に取る。

「なぁタロス……この辺って前からサリエル種の発見報告が多いらしいんだが」

「あぁ……それが?」

「今回のキノコ騒動、サリエルが関係してたりしねぇかな?」

 佐々木は首を傾げ、眼鏡を拭きながら唸る。

「それは~……どうかなぁ? サリエルが撒き散らすのは鱗粉だろ? キノコが鱗粉で育つんならともかく……」

「そっか……流石に無理があるよなぁ」

 頭を掻き毟る山ノ丈を他所に、PDAがゴルフ場付近にアラガミの反応を捉える。

「お、噂をすればサリエルか? ちょっと素材狩りでもして来ようぜ丼さん、丼さんの説があってるんなら調べる価値もあるし!」

 神機を逆手に握り、佐々木は瓦礫の山を蹴ってアラガミの影を追った。思考に耽っていた山ノ丈も慌ててそれを追っていった。

 

 

 

 

        旧ゴルフ場

 

 

 そこはかつて大型フィールドタイプのゴルフ場だったらしいが、アラガミの侵攻により整備する人間がいなくなったために木々や雑草が伸び放題になっていて、辛うじて本来のフィールドが見える程度の荒れ様だった。頭上にはどんよりとした雲が相変わらず浮かんでいる。

 反応の正体はやはりサリエルだった。本来ザイゴートを引き連れているか、他の大型アラガミにくっついて行動するため単独で現れる事はあまりないというアラガミである、その身体から発せられる鱗粉には幻覚作用があり、浴びようものなら神機使いでさえ翻弄されてしまうという厄介なアラガミでもある。

 サリエルは旧ゴルフ場の木々をくぐるようにフィールドを回っていく、その後ろから、なるべく音を立てないように、二人の神機使いが追尾する。風が出てきているということもあってか、植物が風に揺らぐ音で佐々木たちの移動音が相殺されて聞こえないようだ。

 ふと、山ノ丈が佐々木の背中をつんつんと突く、音を立てぬようゆっくりと振り向く。

(な……なんだよ)

(周りだ、周りを見てみろ)

 佐々木は伝えられた通り周りを見渡して見ると、なるほど、今二人が追っているサリエルの他にも2、3体サリエルが集まっていた。中には堕天種も混じっている。

(どういうことだ?)

(わからん、ただ向こうに何かあるのかもしれん)

(! 不味い気づかれる。一旦隠れるぞ!)

(ラジャッ!)

 大きな風が吹いたその瞬間の騒音に紛れ、佐々木が木の枝の上に、山ノ丈がその木の根元に素早く陣取った。山ノ丈は伏せ、佐々木はできる限り気配を殺す。サリエル達は気づかなかったらしく、一回後ろを向いただけで、さっさと背を向けゆっくりと飛行を再開していった。しかし、追っ手がいると見て佐々木達はまだ警戒を解かない。サリエルをギリギリまで捕捉して足による移動であとを追う。

(他のサリエルも同じ方向に向かってるな……同じ場所に向かってるのか? とするとこの先に何が……)

 山ノ丈が移動しつつ考えを巡らせる、その答えは案外早く見つかった。

「「……ッッ!?」」

 大きな広場へと抜けると、二人は思わず声を上げそうになった。何体ものサリエル達が向かっていた先、広場の中央にのっそりと佇んで……いや、居座っていたのは。超巨大アラガミ、ウロヴォロスだった。しかも二人の知るウロヴォロスとは一見違っていた。ウロヴォロスの背中に、深緑のかさと黒身を持つキノコがぽこぽこと生えていたのだ。

「タロス……一旦隠れて……」

 山ノ丈の小声の合図で、二人は背後の木に隠れる。久しぶりの未知への興奮で息が荒くなる。

(おいッ……! おいッ……! 見たかアレ!? すげぇよなッ!?)

(バカッ……声がでかい! 待て、もう少し観察だ)

 幸いサリエル達に気づかれることなく、二人はじっと観察姿勢に入った。

 じっとして動こうとしないウロヴォロスの背中に数体のサリエルが群がり、ぶわっと鱗粉を浴びせる。すると、ウロヴォロスの苔が急激に変化し、例のキノコへと変貌したのだった。まるでサリエルが苔に水をやるような、そんな光景が目の前にあった。

(とりあえず写真写真……)

 佐々木は携帯を取り出し、素早く何枚か写真に収めようとする。その時だった。

 

ピロリ~ン♪ ピロリ~ン♪

 

 何故無音で写真を撮らないのか、何故そんなに大きな音なのか、そしてなぜこの音にアラガミが反応したのか、山ノ丈は事態を恨みに恨んだ。

 

 サリエルの群体とウロヴォロスが二人に気づいてしまった!

 

「丼さん! 結構綺麗に撮れたぞほらほら!」

「いやそれどころじゃないだろ! 気づかれちゃったじゃねぇか!」

「構うもんか! 俺はあのキノコを持って帰んだよッ!」

「はぁぁッ!?」

 佐々木は神機を下段に構え、真っ直ぐにウロヴォロスへと直進した! サリエル達は幾本ものレーザーで佐々木を射抜こうとするが、まるで佐々木を捉えられないでいる。任務ではないという理由で無線を持ってこなかった山ノ丈は携帯でオペレーターに繋ぐ。

山ノ丈:『こちら山ノ丈! ウロヴォロスに遭遇! これより交戦します!』

白花:『ウ、ウロヴォロス!? そんな……撤退してください!』

山ノ丈:『サーセン無理っす!』

白花:『えっ……えっ……ちょっ!』

 強引に電話を切る。今頃白花は腕輪の反応を探り対応を練っているに違いない。その間にも佐々木は猪突猛進してウロヴォロスとの距離を詰める。仕方なく山ノ丈も後を追うように突撃していく。

 二人の突撃に気づいたウロヴォロスは重そうな体を持ち上げ、長く太い触手で大地を薙ぎ払う。二人の神機使いは素早く伏せて交わしたが、攻撃に巻き込まれたサリエルが何体かどこかに吹っ飛んでいくのが見えた。ウロヴォロスとサリエルは一見仲間関係にあるように見えたが、その実友好関係などあんまりなかったのかもしれない。

 攻撃をやり過ごすと、サリエルの攻撃を装甲で交わしつつ、さらにウロヴォロスとの距離を詰める。すると今度は、ウロヴォロスは全ての触手を地面へと突き刺して静止した。

「ッ! まずいタロスッ! 急いで高い場所にッ!」

「!!」

 山ノ丈はこの攻撃パターンに見覚えがあった、ウロヴォロスは自分の触手を地面に指し、地中から攻撃できると! 山ノ丈は手近なサリエルにトックスピックを突き刺して飛び乗り、すかさずスタングレネードをかましてサリエルを制止する。佐々木は静止しているウロヴォロスの身体にガッチリとしがみついた。傍から見るとコアラの子供がくっついているようで何とも可笑しな光景である。

 地中から無数の触手が次々と突き出てくる。山ノ丈はなんとかサリエルを抑えて高所に留まり、佐々木はウロヴォロスの体に神機を突き立ててなんとか体勢を保つ。

「っぶねぇ!!」

 攻撃が止むと同時に佐々木はウロヴォロスの身体をさらに登り、不気味に光る無数の眼まで到達。ウロヴォロスは少し頭を震わせたかと思うと、力を溜めるように眼を光らせた。今度ばかりは佐々木にも覚えのある攻撃、レーザーカノンだ。

(マズイ……狙われてる!)

 山ノ丈は自分がレーザーカノンの射線上にいることに気づく、急いでウロヴォロスの足元に回ろうとするが、照準はピッタリと山ノ丈を狙っていた。佐々木もようやくそれに気づく。

「ッッ!!」

 佐々木は神機をビューグル砲真へ変え、ウロヴォロスの角を掴んで側頭部にぶら下がる。ウロヴォロスは頭が動かせないので、佐々木はそのまま銃口を外側に向けて放射バレットを放った! 反動による反作用効果でウロヴォロスの頭部を反対側に押しこむ。照準が完全にズレたウロヴォロスのレーザーカノンは躊躇なく虚を穿ち、またしても何体かのサリエルが犠牲になった。その間にウロヴォロスの足元に避難していた山ノ丈はスタングレネードを放り投げ、佐々木のいる位置まで駆け登る。

「丼さん! スタングレネードあといくつあるッ!?」

「あと二つだけッ!」

「俺がまだ5個ぐらい持ってる! とにかく今の内にキノコを刈り取るぞ!」

(結局キノコ目当てか……)

 数が少なくなったサリエルは各々で撤退を始めていた。狩っておきたがったが今はキノコが優先だ。二人はウロヴォロスの背中に密集する毒々しいキノコを切り落としていく。感覚は繋がっていないらしく切り取られてもウロヴォロスは何も反応しなかった。やがてスタングレネードの効果が切れ、ウロヴォロスは巨体を大きく翻す。

「うわっ……!!」

「やべっ!」

 見た目からは想像もつかない機動力で振り払われた二人は宙に放り出された。なんとか着地して体勢を持ち直す……その時、山ノ丈の携帯が鳴った。

山ノ丈:『はいこちら山ノ丈!』

白花:『白花です! 現在そちらに討伐班が向かっています。予想ではあと20分弱です! それまでの間そこにウロヴォロスを足止めするか、連続スタンで離脱してください!』

山ノ丈:『了解!』

 山ノ丈は通信を切り、手短に佐々木へ伝える。その間にもウロヴォロスはレーザーカノンの第二射目を準備していた。

「オッケ! キノコを回収してスタンで逃げる!」

 佐々木が即答した直後、弾かれるようにその場から飛び退いた。すかさず山ノ丈も反対方向に飛び退き、ホフク姿勢になる。一瞬の閃光の後、二人のいた場所をレーザーカノンが焼き払った。思わず身が震える。

 さっき二人はキノコを回収する際、わざわざ手元に回収せず地面に落としたのだ。よってまだキノコはウロヴォロスの足元に落ちたままだ。

 二人は一気に走る。レーザーカノンを撃った後はウロヴォロスの動きが鈍くなる、それを二回、かなり近い頻度で撃ったため、ウロヴォロスには相当な負担がかかっているはず、接近するチャンスは今しかない。

 佐々木はどこからか取り出した小さい何かを大きく広げる。人間数人ぐらいは入るのではないかと思えるそれは、フェンリルの公衆ゴミ箱などに使われるゴミ袋だった。きっと佐々木が清掃員からちょろまかしたのだろう。佐々木は山ノ丈にも同じものを渡し、素早くキノコを袋に放り込み始める、二人がかりということもあってなんとか全てのキノコを回収した。

「よし! これだけ集まればいい! 逃げるぞッッ!!」

「まだあいつの背中にいくつか残ってるけどいいの!?」

「いいよ! これだけで充分だろ!」

 二人は頷き合い、袋と神機を持って一目散に逃げ出した! ちょうど力が戻ってきたウロヴォロスは、二本足で二人を追い始める。巨大アラガミと小さい人間との徒競走が始まった!

「連続スタンッ食らいなッ!」

 佐々木はスタングレネードをウロヴォロスの顔面めがけて投げつける。足を止めることはできなかったがわずかに速度が緩んだ。

 しかし、スタングレネードを投げるために一回立ち止まっているから、これでは意味がない。

「クソッ! 丼さんこれ持って少しでも走ってよ! すぐ戻る!」

「は!? おいちょ……!」

 佐々木はキノコを詰めた袋を山ノ丈に押し付けると、神機を剣形態に切り替えてウロヴォロスに向かって逆走し始めた。

 二本足で走るウロヴォロスとの正面衝突、普通ならば勝ち目はない、だが佐々木には勝算があった。

 飛来してくる幾本の触手の攻撃を避け、ウロヴォロスの腹下を通り過ぎざま、巨体を支える二本足を切りつけたのだ! 巨体は大きくバランスを崩し、のめり込むように前方へ倒れ込んだ。後方へと抜けた佐々木はウロヴォロスの背中の上を駆け抜け山ノ丈に合流する。

「ナイスだなタロス」

「あとは任せるわ」

 走りながら、山ノ丈は邪魔なサリエルを撃ち落とす。後ろから銃撃と斬撃の音がしていた。

 こうしてなんとか二人は旧ゴルフ場からの脱出に成功したのだった。

 

 

 

 

 

       支部内研究室

 

 

 ウロヴォロスとサリエルによる追撃を逃れ、命辛々アナグラへ戻ってきた二人は早速キノコの調査にかかった。山ノ丈は白衣に着替え、研究エリアの一室を借りる。なんのことはない、いつもやっている事だ。

 含有成分解析、細胞組織解析、オラクル含有量測定、その他ありとあらゆる分析を行ってみることにした。分析が終わるまで、佐々木はラウンジで一足先に休憩することになった。

(サリエルはウロヴォロスの意思に関係なく勝手に鱗粉を植えつけた。その結果あのキノコが生えてきた……? いや、それにしては今まで収穫されていなかったのが気になる、ターミナルの情報にそれっぽい記録はなかったし、第一キノコそのものが初発見だ。サリエルが特殊だった……というより、ウロヴォロスが特殊だったと言う方が正確だよな……)

 佐々木はコーラを喉に流しながらぼんやり情報を整理してみるが、いまいち納得のいく結論が出せなかった。仕方なく、山ノ丈の解析を待っていた。

 分析には1時間もかからなかった。エレベーターから書類を持った山ノ丈が現れ、佐々木の所へ歩いてきた。

「どうだった?」

「それがなぁ……」

 山ノ丈の表情は芳しくない、山ノ丈の分のコーラを手渡し二人席に着く。座るや否や山ノ丈は早口に話しだした。

「解析の結果、あれはオラクル細胞でできたキノコだった。が、含有量が多いというだけで別に何かに応用できそうにないし、食用になりそうもない、正直料理には使えないな。それから、どうもこれはあのウロヴォロスだけの特徴らしい。キノコの表面に付着していた苔を分析した結果そう出てきた」

「うそぉ!? マジで!!?」

「マジもマジ、まぁ情報料はもらえはするだろうけど大した価格じゃないだろうな、これじゃ」

「マジかよぉぉ~……あんだけ苦労したのにぃ……」

 佐々木はガックリと肩を落とす。その時、エレベーターから見慣れた顔が入ってきた。間と青桐だ、その肩にはサンタクロースの如く大きな袋が抱えられている。二人は直感的に嫌な予感がした。

「よっす、竜に丼さん!」

「よ、よう……」

「なぁ……何? それは」

 山ノ丈は恐る恐る袋を指した。間は上機嫌に袋の中身を取り出す。案の定、それはつい先ほど二人が大量に回収してきた毒々しいキノコだった。

「実は今ウロヴォロスの討伐に行ってたんだけどさ、そのウロヴォロスの背中にいくつかひっついてたんだよ、ミッションリーダーに聞いたら持って帰って良いって言われたから、全部そぎ取って来ちゃったぜ」

 ニコニコしながら袋にキノコを戻す間を見て、ふと佐々木はある事に思い至る。

「え、そのウロヴォロスって倒しちゃったの?」

「当然だ」

「お前以外の人もキノコは持って帰ったの?」

「あぁ、そうらしいぞ、そりゃもう皆競うように持って帰ってきてたなぁ」

「もう一個も残ってなかった?」

「無かったなぁ、それがどうしたんだ……」

 佐々木はもう一度、ガクリと肩を落とした。山ノ丈も意図を察する。

 キノコの発生はあの個体だけの突然変異であり、その個体は既に討たれ、キノコも全て回収されてしまい。そのキノコは使い物にならない。しかも、自分たち以外にもキノコを入手した人間がいる。

「もう情報料も期待できそうにないな……さ、このキノコの処理方法考えようぜタロス」

「……………………はぁぁぁぁぁぁ~~~」

 大きなため息が漏れた。佐々木はこれから、大量に入手した使い道の無いキノコをどう処理したものか頭を抱えるのだった。

 

 

 

―To be continued――




皆さんキノコ狩りに出かけた時にはちゃんとガイドをつけていますか?
見知らぬキノコにはどんな作用があるかわかりませんから注意しないといけませんね。かくいう私は一度もキノコ狩りに出かけた事が無いのですがww

どうも毎回間が出てるような気がするので、今回は山ノ丈と佐々木が主体のちょっと変わった話でした。原作でもねぇよこんなエピソード……

マンネリ化……かと思いきや、次回からついに物語が動き出します。
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