フェンリル横浜支部「team coyote」   作:ざま菓子

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apex end

 夜10時頃、外は暗く、雨が降っていた。月明かりが僅かながらぼんやりと地面を照らしている事から、にわか雨なのかも知れない。

 その大地を闊歩するオウガテイル コクーンメイデン ザイゴート ヴァジュラテイル等の小型アラガミ。今夜はやたらその数が多いように思えた。

 アラガミが物を喰う音と雨の音が広がるその地に、どこからか車のエンジン音が聞こえてくる。その音は聞こえてくるや否やその音を大きくしていき……やがて高速でアラガミの前に現れた。フェンリルマークのワゴン車だ。

「――!」

 車に気づいたザイゴートが咆哮、その存在が周囲に伝わりアラガミを引き寄せる。

 車はそんな事など気にも留めない勢いでアラガミの間を駆け抜ける。もちろん、機動力の高いアラガミがそれを逃がすはずもない。数体のザイゴートが全速力で後を追う。

 すると車の後部扉が開き、そこから神機の刃先が覗いたかと思うと、突如神機から大蛇の頭のような物が伸びた。その頭の部分は、神機の捕喰形態のそれとよく似ていた。

「!」

 ザイゴート達がそれに気づいた頃にはもう手遅れ。大蛇は空間をうねり大きく口を開け、的確にザイゴート達を食い潰した。大蛇は神機の中に籠るように戻っていき、神機もワゴン車の内部に収納された。

 周囲のアラガミも絶え間なく攻撃を試みるが、ワゴン車の荒々しい運転と時折覗く射撃や大蛇による捕喰で全てが意味を持たなかった。

 ワゴン車はさらに速度を上げ、どこかへ走っていった。

 

 

 

 

 一方、天野達はようやく横浜支部から出発しようというタイミングだった、遅くなったのは、ありとあらゆる準備に時間がかかる山ノ丈のせいである。

「皆用意はいいッ!?」

「ああ、でも天野さん、これってどういう……」

「走りながら説明するよ!」

 いきなり駆り出された藤牧の質問にも応じずに天野はアクセルを踏み込んだ。これもフェンリルマークのワゴン車だ。藤牧や山ノ丈を含めて、間以外のチームコヨーテメンバーと天野が乗っている。

 天野は車のキーを折れんばかりに捻ると、間髪入れずにアクセルを踏み込んだ。普段は模範的な運転をする天野でも、今ばかりは間並の荒々しさでハンドルを握っていた。

 出撃ロビーから車を出すと、カーナビをつけてどこかの住所を素早く入力した。後ろから青桐が身を乗り出す。

「そこどこだ?」

「レイザー……ざまさんとソフィアちゃんが捕らえられていた施設だよ」

「は? そんな情報どこに……」

「これ見て」

 天野が揺れる車内で後ろに差し出したのは、佐々木が回収してきたカードだった。山ノ丈が洗ったため、今は血痕もない綺麗な状態だ。

「そのカードの後ろに小さいけど住所が書いてあった。私が思うにそれは施設の住所だよ」

「…………東京湾の近くかな」

 カードを見ながら今度は佐々木が聞いた。

「でもざまさんがなんだってここに向かうんだ? ざまさんは記憶消されて施設の場所なんか知らねぇだろ?」

「思い出したんだよ、感応現象によってね」

「え……?」

 ハンドルを切る天野、サイドミラーを確認しつつ、話を続ける。

「ソフィアちゃんの記録にはレイザーの場所を知ってるというような記述はなかった。でもそれはあくまでも『書いていなかっただけの事』で、知らないとは言ってない。確かに一部の記憶は消えていたようだけど、夏美さん含むレイザーの連中は元々ソフィアちゃんを連れ帰るつもりでいたみたいだから、多分住所の記憶は残ってたんじゃないかな」

「そんな器用なマネできるもんなの?」

「さぁね、幸運にも記憶が残ったのかもしれない事を考えると一概にそうだとは言えない……本人すらも中々思い出せなかったのかもしれない。でも感応現象は相手の記憶を奥深くまで鮮明に見ることができる……もしソフィアちゃんがどこかで施設の名前を見ていたとして、その記憶をざまさんが見たんなら……?」

「感応現象によって住所を確認できた……って事か」

 青桐が本人より先に結論を言う。天野はコクリと頷くと前髪を掻きわけた。

「ざまさんが何を思ったかはわからない。でも私なら……記憶が戻った時、真っ先に施設に向かう。そして自分とソフィアちゃんを巻き込んだ奴らを皆殺しにする」

 皆殺しという台詞に誰かが固唾を飲んだ。しかし、理性が飛んだ人間ならやりかねない。

「ざまさんの最後の状態記録を見てきたけど、最後の最後で凄まじい数値の上昇を記録した後、不正規な手順による制御解除のエラーメッセージが表示されていた。明らかに何かに覚醒した証拠……もしかすると感応現象は継続してて、ソフィアちゃんが何らかの原因で覚醒を引き起こし、それに呼応してざまさんも目覚めたのかもしれないね」

「ごめん何言ってるかさっぱりなんだけど」

 藤牧が欠伸混じりに愚痴をこぼす。天野より先に、隣にいた山ノ丈が結論を出した。

「つまりだ、今ざまさんは怒り心頭で敵のアジトに突っ込んでるんだよ」

 

 

 

 

 天野達が出発して十分後、外出準備を整えた高堂は赤島と出撃ロビーに到着した。二人は早速フェンリルマークの普通車に乗り込み、後部座席に赤島の神機が積まれた。

「行きましょう、隊長達の居場所をGPSで追跡します」

「それの後ろについて走ればいいと……よし、頼むぞ赤島」

 赤島はどこからか持ってきたノートパソコンを開き、色々なソフトウェアをいっぺんに立ち上げた。その間に高堂はエンジンをかけて車を出す。

「しかし……夏美本部長はなんだって…………」

「支部長、一つ質問が」

「なんだ?」

 赤島はパソコンのキーボードを叩きながら、視線も移さずに話す。

「夏美本部長のしたことが公になれば、フェンリルとしても、東京本部にしても我々神機使いにしても、良い評判にはなりません。恐らくフェンリル全管轄から見ても、夏美本部長に下される判決はわかりきっているようなものです。本部長がどこまで準備しているかわかりませんが、もしかすると、自分の命さえ犠牲にする手段を講じている可能性もあります。ですがもしそうでなかった場合……」

「私の手で本部長を裁けと?」

「裁かなくても、一部始終を見れば今後の報告を担うのは支部長です」

 高堂はなんとなく、赤島の言いたいことがわかってきた。

「……まぁいいさ、全てはなるようになる……それに私達だって生きて帰れるかどうかわからないぞ」

「それもそうですね、精々生きて帰れるよう頑張りましょう…………あ、隊長達の居場所が割れました」

 赤島はパソコンとカーナビをコードで繋ぎ、カーナビに佐々木達の車の居場所を表示させる。大分距離が離れていて、佐々木達は高速で移動していた。

「速いな……少し速度を上げるぞ」

「了解」

 高堂たちの車もまた、速度を上げ始めた。

 

 

 

     旧東京湾付近

 

 天野が運転する車は、速度こそ速いが、戦闘だけは一回もなかった。というのも、車の窓からはアラガミの残骸しか見えなかったからだ。

「なんだこりゃ……まさかざまさんが?」

「十分にあり得る……」

 天野は山ノ丈の方を見る。

「丼さん。終わった?」

「ちょっと待って……出来た。終わったぜ天野さん」

「報告お願い」

 山ノ丈は膝に乗せたノートパソコンに何かのデータを映していた。

「天野さんの言った通りだ」

「え……何がだ?」

「ざまさんは常にリンクバーストしてる状態なんだ」

「やっぱりか……」

 天野は山ノ丈に、可能な限りで間のバイタル情報を調べるように言っていた。フェンリルの衛星を通じて間の居場所を特定するとともに腕輪の情報を読み取ると、間は時間無制限のリンクバーストのような状態になっているとのことだった。

「でもこれ……理性はあるのかな。リンクバーストの最大レベルを超えた数値だけど……」

「車を運転してる以上ある意味冷静だね。だからこそ危ないんだ」

「丼さん、ざまさんの数値はリンクバーストのレベルに直すとどれくらい?」

 天野の呼びかけに山ノ丈は指折りで数える。だんだん焦りの表情が見えてきた。藤牧が結論を促す。

「ど、どうなの……?」

「レベル……15」

 山ノ丈の計算結果に天野の額に汗が浮かぶ。

「マズイ……もしその計算が合ってるなら、ざまさんの身体には今凄まじい負担がかかってることになる」

 天野はハンドルを回し埠頭の近くまで来る。間の姿は見えないが、近くで転がっているアラガミの様子から見ると、もう大分距離を縮めているようだ。

 車は桟橋のような橋に乗った。

「住所はこの先! 一気に行くよッ!」

 緩めかかっていたアクセルを、再度限界まで踏み込んだ。

 

 

 

 

     施設前

 

 旧東京湾にいくつかある埋立地の中に紛れるようにして造られた施設……レイザー。周りの建物と比べて綺麗で、アラガミに捕喰された跡が微塵もない。施設だけで一つの埋立地を支配しており、その大きさを暗に示している。複数ある大きな出入り口以外は塀で囲まれていて、なんとなく囚人施設を想起させる。

 そんな囚人施設のようなレイザーに向かって、招かれざる客……あるいは帰らざるべき住人が乗った車が高速で走ってきた。

 塀の前で番人のように構える二人の黒服が通信を開いた。

「こちら北西門、ワゴン車がこちらに向けて真っ直ぐ走ってきている。高速だ」

『了解、扉を閉じ塀の内側で待機せよ』

「了解」

 黒服の片方がもう片方に顎で合図すると、二人は塀の内側に入った。直後、それまでは開いていた門が両サイドからのシャッター扉によって閉ざされた。さらに不幸なことに、塀の前に何体かのアラガミが現れた。

 それでも車は速度を緩めず、真っ直ぐシャッターに直進していく。塀の内側から煙を尾に引く何かが数発撃ちだされ高く飛び上がると、今度は塀の前に着弾し爆発した。そこまでされてもまだ車は動じず、ついに車はシャッターを突き破った。元々厚い装甲のあるフェンリルマークのワゴン車は、シャッター如きではびくともしなかった。

「う、うわあ……うわぁぁあぁぁぁぁ!!!!」

 黒服の悲鳴が響く。それは車に対してではなく、車と一緒になって入ってきたアラガミ……コンゴウへの悲鳴だった。黒服二人はハンドガンを取り出して連射するが、コンゴウはエアブロウ一撃でそれを忍ぶと、黒服二人をたちまち殴りつぶしてしまった。

 それと同時に、一人の神機使いが車から出てきた。その腕はもはや人間のものではなかった、腕輪も腕に溶け込んでしまったらしくどこにあるのかわからない。その手は神機を手にしていた。紫色のオラクルが瘴気のように身体にまとわりついているその神機使いは、間だった。

 

 

間 遼太郎

剣:クレメンサー真(ロング)

銃:虎銃新改(アサルト)

装甲:抗汎用シールド改(シールド)

 

 

 間が神機を一振りすると、神機は姿を変え始めた。瘴気が集まり、その姿を侵喰していく、やがて神機は黒と紫が毒々しい煌きを放ち、形をそのままに色だけを一変させた。間はその正体を知っているのか、少しも動じない。

 間から発せられる瘴気を嗅ぎ付けたコンゴウが間に向かって突進する。間はギリギリまでコンゴウと接近し跳躍、コンゴウを踏み台に空高く舞い上がった。空中で体勢を変え、足を天へ向ける。コンゴウが間の姿を見たとき、間の神機から大蛇が伸びていた。

「――!!!」

 コンゴウが避ける隙もなく、大蛇がコンゴウを喰い裂いた。大蛇を神機の中へ戻すと。間はまるで勝手がわかるかのように足を進めていった。

 中心部の建物の扉を銃撃で破壊し、駆け足で中へ侵入する、赤いサイレンと警報が鳴り響くが気にも留めない。

 廊下や通路が複雑に入り組んでいたが、間は何一つ迷わず走っていた。黒服が現れて銃弾を浴びせるが、装甲壁で弾き、間の拳や蹴りが黒服を無力化する。強化されたのは神機だけではない、身体能力も格段に上がっていた。

 さらに突き進み、建物突き当りの扉を蹴り開けた。

 そこには……学校の体育館のような空間が広がっていた、周りは柱ばかりで壁がないが高い天井がある。近代的とも言えるし、逆に古代的と言えなくもない。

 間はゆっくりと、広場の中心部まで移動する。神機を両手で構え、周囲を警戒する。

 周囲の柱の間からは左側から海が見えており、右側には施設の一部であろう広場が見える。柱一本の直径は太く、しっかりと天井を支えていた。間の正面には見物席のようにも見える、数メートル高く設置された踊り場のような場所があった。その上にいる人物に気づき、間は顔をしかめた。

「よく来たな…………いや、おかえりというべきかね? 間少尉……【失敗作】め」

 踊り場にいたのは、フェンリル東京本部長の夏美だった。小型マイクでも使っているのか、声が大きく籠っている。いつもの制服とは違う制服に身を包み、その口端は邪悪につり上がっていた。間がようやく口を開いた。

「失敗作で悪かったな、歪んだサイエンティストめ! あんたらの腕が悪いからこうなったんじゃないのか!」

「口を慎めよ失敗作……お前にはもう用がない。私の手元には既に【完成品】があるのだから」

 夏美が少し後ろを向くと、そこに待機していたソフィアがゆっくりと夏美の前まで歩いてきてその姿を見せた。表情こそないが、その腕や神機の状態は間と似ていた。違う点は、間の神機や腕が黒と紫なのに対し、ソフィアは黒と赤だったことと、ソフィアやその神機が間以上に禍々しく形を変えている点だ。

「ソフィアッ……!!」

 夏美はソフィアの耳に何事か吹き込むと、ソフィアはコクリと頷き、神機を握って高所から降りた。そして……。

「……!?」

 ソフィアはものの5秒足らずで間の至近距離にまで近づくと、神機を振り下ろした。回避があと一歩遅ければ間の身体に傷がついていただろう。

「ソフィア私だ! わからないかッ!?」

 ソフィアの断続的な攻撃を間は的確に避ける。身体能力が上がっているのは両者ともに同じ、しかし、失敗作と完成品では質が違うのが当然。

「うぐっ……」

 ソフィアの刃が間の脇腹を掠めた。大した傷ではないだろうが、間はソフィアとの実力の差が表れ始めていることに気づく。

 ソフィアの攻撃が降りかかる。上からの振り下ろし、下段の振り抜き、身体の回転を利用した蹴り、間の裏拳を受け流し、みぞおちに膝蹴り。倒れる間に刃を突き立てようとするも、間は横に転がって回避。再び上からの振り下ろし、薙ぎ払いを二回。

 全ての攻撃を避け切った間は、わずかに息が上がっていた。

「どうした失敗作、その程度でもう体力的にダウンか?」

「……」

 夏美の煽り文句にも耳を貸す気が起きなかった。間は既にソフィアの記憶を通じて真実を知っている。ソフィアがどんなに苦しい思いをしてきたか知っている……! 今、倒すべきはソフィアではなく夏美、しかしそれをソフィア自身が阻害している。助けたい相手が敵にまわっている!

 間はソフィアの隙を突き、神機を持つ手を蹴り上げた。神機が空を舞い、地面に突き刺さる。ソフィアの腕が届く範囲には無い。これで形勢は逆転する……と思われた。

「しまった!」

 ソフィアは間の蹴りの隙を突き返し、間の神機を強引に取り上げて投げ捨てた。お互い神機をなくし、一旦距離を取った。

「……」

 お互いに、静かに、間合いとお互いの内を探る。その沈黙に夏美が介入してきた。

「フン、流石エイペックス・プレデターと言ったところか、失敗作でもそれなりに出来る…………ソフィア、一旦戻れ」

 夏美が支持すると、ソフィアは抵抗する様子もなく従った。もう既に、彼女の心は奥底に沈み、ただ操られるがままとなっているかのようだ。

「君は……どこまで知っているんだ?」

 夏美は口調を変え、間を正面に見据えて話しかけてきた。間も戦闘態勢を解いて、真っ直ぐ立って応じる。

「ソフィアの知っていることは全て知っている……何を今更?」

「君も気づいているかもしれないが、ソフィアも君もAPだ。ただし君は制御の安定しない【失敗作】だ」

「だから、開発の途中で私を捨てたのか……」

「そうだ、しかし、これも気づいているかもしれないがこの組織は非合法的な組織だ。フェンリルの情報を勝手に持ち出し許可なく個人開発することは禁じられている」

「……?」

「それがフェンリルにバレるとマズい。だから、君をただ放り出す訳にはいかなくなった。そこで、私はAPの実用試験を君に課していたわけだ。フェンリルの管轄下で動いても大丈夫かどうかの試験をな」

「そんなの、私は聞いてないぞ」

「だから良いんじゃないか、抜き打ち検査のようなもんさ……そして、君の試験中に、ソフィアが完成した」

「……貴方が完全に制御できる。下僕が出来たってことか」

「言い方が悪いがおおよそ間違いではない。これで私の目的はほとんど達成されていたのだよ」

「何?」

「そもそも……何故私がAPを作ることになったか……知っているかね?」

「知るわけないだろ。貴方の目的なんか」

「そうか……では……まぁいい。話してやろう」

 そう言って夏美は、自分から過去語りを始めた。

 夏美は元々軍人だった。アラガミが繁栄した直後は軍や自衛隊が総出で鎮圧に当たったものだが、生半可な銃器ではアラガミを牽制するのが精いっぱいだった。 

 そんな時、夏美の妻と娘が死亡したという知らせが夏美の元へ届いた。二人は夏美が留守の間に、派遣されたゴッドイーターを護衛係にフェンリルが管理するシェルターに向かっている途中だった。アラガミの襲撃に遭遇し、護衛のゴッドイーターも二人を守ることができなかったのだ。本来アラガミが繁栄、侵攻してきた当初はゴッドイーターという存在すらも不安定だった時代だ。当然今のような統制システムもないし、ゴッドイーターと言っても神機の扱いが人類の理解の全く及ばない頃の話なのだ。無理もなかった。

 夏美はアラガミに激しい憤慨を覚えると共に、ゴッドイーターの無力さを恨んだ。その時点でフェンリル東京本部長の就任が決まっていた夏美は、これを利用し、ゴッドイーターを超える対アラガミ兵士【Apex predator】(エイペックス プレデター)を作り出そうとしたのだった。しかしそのあまりに強行的なやり方にフェンリルからの了承がなかなか得られず、自分が個人的に支配する私設軍と、秘密裏に募った有志達と共に研究を進めていたのだった。だが研究は難航を極めた。犠牲者は増え続け、組織の士気が下がっていた矢先、変化が起きた。奇跡的に安定した個体が現れたのだ。それがソフィアであった。

 夏美はソフィアに自分の娘を照らし合わせ、大事に育てると共に重要な研究資料として検査や研究を重ねていた。

 夏美のしてきた事は、言わば神を作ろうとしたようなものだった。荒ぶる神を超える神を……人の手で作ろうとした。捕喰者の頂点、食物連鎖の頂点を人工的に作ろうとしたのだ。

「この思いが君にわかるか……? 亡き妻と娘の仇を討とうとする男の気持ちが、君にわかるかッ!!?」

「わからないとでも思ったか?」

 口調が激しくなる夏美に比べて、間の声は落ち着いていた。

「もしわからないと思ってるんなら大した間違いだ……私だってな、失ってるんだよ……貴方の実験に付き合わされてる最中に……一緒にいた奴らを……」

 間はソフィアの記憶から、一緒にいた子供が死んでいったのを知っている。

「貴方が被害者だってんなら……貴方に巻き込まれる私達もまた被害者だ……貴方のしてることは被害者を増やしただけじゃねぇかッ!!」

「黙れッッ!! お前如きに何がわかるッ! 失敗作如きが知ったような口を聞くなッ!!」

 激昂する夏美。間は拳を握り言い返す。

「じゃあ一つだけ教えてやる……【ソフィアは完成品じゃない!】感応現象でわかるんだ、ソフィアは完成品のように振る舞っているだけだッ!」

「ふざけるな! そんな根拠もないことを……!!」

 その時、間の後ろから別の声が聞こえてきた。

「いいや、ざまさんの言ったことはあながちデタラメじゃあないぞ」

 そこには、天野と、チームコヨーテのメンバーが揃っていた。

 

 

 

佐々木竜太郎

剣:真竜小刃新(ショート)

銃:クラリオン砲零(ブラスト)

装甲:尾盾キンキ改(シールド)

インフォ眼鏡(仮)装備

 

藤牧圭助

剣:神斬りクレイモア改(バスター)

銃:アトラス砲真(アサルト)

装甲:臥龍大甲改(タワーシールド)

 

青桐拓馬

剣:鉄乙女剣真(ショート)

銃:スワロウ真(スナイパー)

装甲:抗貫通バックラー硬(バックラー)

 

山ノ丈絃汰

剣:カースピック(ショート)

銃:強化レールガン改(スナイパー)

装甲:強支援シールド改(シールド)

 

 

間遼太郎(AP)

装備:神機のような物

特性:APくずれ(捕喰形態が遠距離攻撃可能型になる)

 

ソフィア・P・コーデリア(AP)

装備:神機のような物

特記:完成されつつあるAP(間に同じ)

 

 

 

「くそっ、お仲間か……」

 夏美は天野を睨む。天野も夏美を睨み返す。

「夏美さん、ここに来るまでにここの機械の情報を見てきました。貴方の研究についても……」

「それがどうした?」

「私から言えば、ソフィアちゃんは貴方の制御下にあっても、不定期で暴走します。それもただの暴走じゃない。【民間人ですら襲うようになる強力な暴走】です」

「何だと……ッ!!?」

「理由はいくつかあります、代表的なのが……ソフィアちゃんとP91偏食因子は強固に適合しすぎた……その結果オラクル細胞との適合率が飛躍的に上昇し、よりアラガミに近くなった。これ何を意味してるかわかります?」

 天野の言わんとするところに、夏美の表情が変わる。

「…………まさか」

「そうです……アラガミ化です。貴方はアラガミを作ってたんですよ、アラガミを超える存在でなく、単にバカみたいに強いアラガミを作ってたんですッ!」

「嘘だッ!! そんなの信じないぞ……!」

「まぁそんなことだろうと思いました。貴方は研究の腕はいいのですが、若干見直しを怠る癖がある」

「くッ……ソフィア! 神機を!」

「あ、逃げるぞ!」

 佐々木が叫ぶのと同時に、ソフィアは間の居る広場まで飛び降り、素早く自分の神機を取ってバックステップをとった。

「! ソフィア!」

 間の呼びかけに一瞬応じたように見えたソフィアだが、すぐに踵を返し奥へと姿を消した。

 間の近くに、チームコヨーテと天野が駆け寄る。

「ははははは! お前らみたいなお邪魔虫は駆逐するしかないなッ! ……アルダノーヴァ!」

 夏美が叫ぶと、どこからか音が聞こえてきた。地鳴りの音のような……爬虫類を思わせる甲高い音か……音は次第に大きくなり、その姿を現した。丸型の大きな球体に丸太のような腕、王者を思わせる背中の帯……それに追従するように寄り添う、長く帯のような『刀髪』にスレンダーなボディや天使のような天輪を持つ女形……ピンク色に灯るそれが一見何なのかわからない。

「アルダ……ノーヴァ……」

 青桐達はぼんやりと、パソコンで見た『人造アラガミ』の話を思い出した。人造アラガミアルダノーヴァ。これのことに違いなかった。

「ぐう……ッ! うッ……く……」

 突如、間が頭を抑えた。その動作を見て、夏美は補足するように言った。

「あぁ、失敗作……お前が開発されるきっかけとなったのは、これの試作型が暴走し君を気絶させてしまったからなんだ。見られてしまったのかもしれないと思った私は君を回収し、ここで育てたんだ。貴重な実験資料としてね」

「……そうだ……あの時……」

 間は、時折夢に出てきた存在を思い出した。フェンリル支部へ向かっていたあの日の事を……。青い長髪のアラガミに襲われた時の事を……!

「まぁ、あの時拾った少年が結果的に惜しいところまで来たんだから、あの時暴走して良かったのかもしれんがね」

「いい加減にしろよ、ざまさんはお前らの遊び道具じゃねぇぞッ!」

 佐々木の怒鳴り声にうるさそうに顔をしかめながら、手元の何かをいじると、人造アラガミ『アルダノーヴァ』が動き出した。

「行けアルダノーヴァ! 奴らをぶっ潰せ!」

 そう命令すると、ソフィアを連れて奥へ姿を消した。それと同時に、アルダノーヴァがチームコヨーテに敵意を向けた。

「天野さん、離れろ!」

 青桐の指示にしたがい、僅かに距離を取る天野。夏美達が消えた方向へ注意が向いている間を見ると、こう叫んだ。

「ざまさん以外のチームコヨーテはここをお願い! ざまさん! ソフィアちゃん達の後を追うよッ!」

「あ……あぁ! すまない!」

「あ、ちょ……!」

 天野は青桐の横を通り過ぎ、間を率いて駆け抜けた。そんな二人を止めるべく振り払われたアルダノーヴァ女型の刀髪は、青桐の放ったレーザーによって撃ち抜かれた。

「オラ! こっちだこっち! 相手してやるぜ!」

 佐々木の挑発に乗ったアルダノーヴァは、咆哮と共にチームコヨーテに向けて戦闘態勢を取った!

 

 

 

 

 アルダノーヴァとの戦いは互角を極めた。アルダノーヴァは男型と女型の二体一組で戦う。それに対し、こちらは佐々木、青桐、藤牧、山ノ丈の四人。数では倍だが、戦力が桁違いだった。

「あぶなっ!」

 アルダノーヴァの放ったレーザーが佐々木の脇を掠める。太いレーザーが辺りを一掃しにかかる。

佐々木:『皆ッ! 大丈夫かッ!?』

山ノ丈:『俺と青さんはOK!』

藤牧:『俺も大丈夫!』

 佐々木は無線を聞いて相手の攻撃を避ける。青桐と山ノ丈がバックアップで狙撃しているとはいえ、佐々木と藤牧の二人だけで前線を守るのは苦しかった。なかなか捕喰するタイミングが伺えないし、少しでも隙を見せると男型か女型のどちらかに襲われる。

(こんなのが表に出たら……大変なことになるな……)

 青桐はスコープを覗きながらふとそう思った。この絶大な戦力を持つ人造アラガミが世に出たら……ただでは済まない。

「せやぁぁぁッッ!!」

 藤牧は神斬りクレイモア改を女型に振り降ろした。だが。

「……何ッ!?」

 藤牧の振り下ろした神斬りクレイモア改は確かに女型の頭を捉えていたが、男型の大きな手が藤牧の神機を掴んで受け止めていた。

「しまった!」

「マッキーッ! 離れろッ!」

 佐々木の叫びを聞き取ると、藤牧は自分の神機を蹴り放して後方へ下がる。間髪入れずに佐々木の爆破系バレットがアルダノーヴァに直撃した。

「……!」

 バレットの爆風が晴れると、そこには藤牧の装甲を開いたアルダノーヴァが佇んでいた。

「あいつ……神機を使って防ぎやがった……!」

「人型アラガミってのは要するに人型神機みたいなもんだからな……使い方まで知ってるとは驚きだが!」

 佐々木と藤牧は揃って後退し、藤牧は佐々木の後ろへ身を隠す、すると……軽い炸裂音が響き、佐々木と藤牧の目の前が白く染まる。スタングレネードだ。

「――!」

 アルダノーヴァも顔を手で覆い、動けないでいる。その両側から、青桐と山ノ丈が走り込んできた。

「うぉおぉぉぁぁぁッッ!!」

 山ノ丈は飛び上がり男型を、青桐はそのまま走り込んで女型を攻撃した。鉄乙女剣真とカースピックがアルダノーヴァを攻撃する。二人はそのまま走り抜き、もう一度スタングレネードをかます。

「――!」

「いいぞ丼さん青さん!」

「今の内に神機取れ!」

 未だアルダノーヴァの手には藤牧の神機が握られている。そのアルダノーヴァは今、顔を覆って悶えている……チャンスだ。

「っおおおぉッッ!」

 藤牧は一直線にアルダノーヴァに突っ込み、神機を持っている方の手を思い切り蹴っ飛ばした。衝撃で神機が手から離れ、近くに転がる。

「よしっ!」

「……! マッキー危ねぇッ!」

「!?」

 藤牧の身体を、何かがいきなり鷲掴みにした。見るとそれはたった今自分が蹴り飛ばした手だった。スタンから回復したアルダノーヴァが藤牧の身体を捕らえたのだ。

「! ……まずっ!!」

「くそっ!」

 アルダノーヴァに照準を向ける山ノ丈を、青桐が制する。

「待ちなよボーイ、お前の照準能力じゃマッキーに当たるのがオチだぜ」

「はぁ? でもあれじゃマッキーが!」

「まぁ見てな……」

 焦る山ノ丈に反して青桐はゆっくりと、冷静に神機を構え、スコープを覗いた。

 その間にも藤牧の身体は確実にアルダノーヴァに握りつぶされようとしていた。

「ぐっ……あ……うぐぁ……ッッ!」

 アルダノーヴァの男型は見た目だけではなく、出せる力も非常に強い。いかに神機使いであろうとも、その握力に長く耐えられない。さらに胴体を鷲掴みにされ身体を持ち上げられているので、腕はおろか脚もろくに使えない……!

「マッキー!」

 佐々木が救助に向かおうと足を向けると、その目前を女型が遮った。刀髪の先にはエネルギー体がまとわりついている。

(攻撃の予備サイン……!)

 佐々木はとっさに銃形態の神機を突き出した。ガガガガッというチェーンソーにも似た衝撃と共に佐々木の神機が激しく振動した。

「チッ……!」

 素早く後退、神機を剣へ変えた佐々木が藤牧を見る……すると素早い光線が飛来。藤牧を掴んでいるアルダノーヴァの腕を的確に貫いた。

「……!」

 隙と見た藤牧は一瞬弱まったアルダノーヴァの拳を力で無理やりこじ開けると、直下にどてんと転がった。佐々木はスタングレネードを投げつけると、うろたえるアルダノーヴァの下から藤牧を抱えて下がった。

「すまんなタロス……」

「別にいいけど……お前の神機は?」

「あっち……」

 藤牧が指さした方向に神機が転がっていた。アルダノーヴァはまだ気づいていないようだが、気づいて取りに行くのは時間の問題だろう。取りに行くなら今しかない。

「マッキー下がれッ! 俺が行ってくるッ!」

 藤牧は頷き、回復しかけた身体で後ろへ下がる、ムズムズと動きだし始めているアルダノーヴァを尻目に、佐々木は藤牧の神機目がけて走った。

(あれを奪われると戦力のバランスが大きく違ってくる……なんとしても取らねぇと!)

 佐々木は後ろも顧みずとにかく走った。藤牧の神機まであと数十メートル……十数メートル……数メートル……。

 ふと、視界が薄暗くなった。

「……あ」

 佐々木のすぐ後ろに……アルダノーヴァの女型が迫っていた。佐々木が気づき身体を翻そうとした時には、既に女型の拳に光が集まり、その拳が佐々木を正面から捉えていた。

(……し……く……じ……っ……た……ッ!!)

 刹那、打撃音と共に女型の拳から光が撃ち出され、高速のエネルギー球体が佐々木の頬を掠めた。佐々木の瞳には、横に倒されそうになっている女型と、女型に跳び蹴りを決めた藤牧の姿が映った。

 倒れる女型、それを踏み台に跳躍、神機を取る藤牧、佐々木と藤牧は神機を銃形態に変えて素早く照準を合わせる。狙いはもちろん……倒れた女形だ。

「これで」

「くたばれぇぇえッッ!」

 佐々木の爆破系オラクルバレットと藤牧の弾丸系オラクルバレットを発射、発射、発射、発射発射発射発射!! 大量のバレットが女型に叩きつけられる。

「……。」

 オラクルを使い果たし、しばらく無言で待つ二人……煙が晴れてくると、そこには刀髪で身体を覆った女形がうずくまっていた。

「くそっ! まだやられないのかッッ!」

 女型は刀髪を解き、再び二人の前に立つ。しかし、流石のアルダノーヴァでも一斉射撃には耐えられなかったのか、刀髪はボロボロになり動きもどこかぎこちなかった。

 一方、青桐と山ノ丈の方も苦戦を極めていた。男型は力が強く装甲も厚い。二人は銃撃と斬撃を繰り返し与えているが、弱る気配すら見せなかった。

「……。」

 ふと青桐は動きを止め、眼を閉じる。

(今までの戦闘で得られた情報は、まずアルダノーヴァは二体とも【攻撃中あるいは攻撃動作の前後にしかこちらの攻撃をまともに受けない事】これは隙さえ見ていればタイミングを合わせて狙える。もう一つ、【全ての属性が有効】これもでかいな……しかし問題なのが……)

 男型がゆらりと身体を揺らし青桐に向かって両腕を振り下ろそうとしたその瞬間、青桐は眼を見開き、両腕の軌道を正確に読み、出来る限り少ない動作でそれをかわしつつ神機の銃口を男型に押しつけ……。

(問題なのは……その隙がほとんど見られねぇってことだ!)

 レーザー射撃! 貫通こそしなかったが、至近距離射撃を食らった男型はひどく呻いた。

(ったく……あそこまで引きつけないと隙が見えないなんて……厄介極まりないしこっちの身が危ねぇっつうの)

 そこまで考えてふと青桐は山ノ丈の姿がない事に気づいた。男型に数発レーザーを撃ち込んでから周りを見渡すと、斜め後ろ少し先に山ノ丈が倒れていた。

「……何やってんだか」

 青桐は振り返りざまにアルダノーヴァへスタングレネードを放り、閃光を背に山ノ丈に駆け寄った。男型の呻き声が背後から聞こえるが、青桐は無事に山ノ丈を真上から見下ろした。

「ほれ、起きろこの出っ歯野郎」

 そう言いながら山ノ丈の身体をポンポンと叩く、すると青桐の腕輪から緑色の粒子が飛び出し、山ノ丈の腕輪へ収束、吸収された。山ノ丈の身体がピクリと動き、やがて立ち上がる。神機使い同士で使える緊急蘇生法【リンクエイド】だ。

「出っ歯野郎は余計だっつーの……まぁいいやサンキューな」

「寝てる暇はないぞ、何せ……」

 言いながら青桐は銃形態の神機を肩へ担ぎそのまま引き金を引いた。放たれたレーザーは曲線を描き男型の中心を穿つ!

「予備動作がバレバレだぜ」

 青桐と共に山ノ丈も神機を構えた。青桐が再び引き金を引こうとしたその瞬間……。ふと男型が身体の向きを変えた。

「……?」

 男型はゆっくりと浮遊したかと思うと、同じくゆっくりと浮遊してきた女型に追従し、そのまま上へ浮いた。

佐々木:『……お前ら固まれ…………高エネルギー反応出たぜ』

 佐々木が静かにそう伝えた。四人はひと固まりになってアルダノーヴァの出方を窺う。

 アルダノーヴァは静かに上空で停滞した直後、巨大なエネルギービームを撃ちだした。

 

 

 

 

    レイザー 通路

 

 佐々木達と別れた直後、天野は間を連れて建物の通路を走っていた。

「大丈夫天野さん? 私は全然だけど天野さんはあまり無理しちゃ……」

「今朝まで寝てたのはどこのどいつじゃッ!」

 天野は走りながら振り向き、笑って見せる。実際体力はまだ余っているくらいだった。

 実を言うと天野はソフィアを追いかけるためだけに間を連れてきたのではなかった。…………覚悟を決めさせるためだった。

 通路を左へ曲がり、右に見える扉の前で止まる。扉の横には何か平べったい機械が取り付けられている。

「ん? 天野さんどうしたんだ? 早くしないとソフィアや夏美が……」

「ざまさん、下調べはしといて損じゃないよ」

「……?」

 天野はポケットから佐々木が回収してきたカードを取り出すと、扉の横の機械にかざす、電子音が鳴り扉が開いた。

「ほほう、カードキーか」

「こんなことだろうと思った。持ってきといて正解だったね」

 天野はしたり顔で中に入っていく。

 部屋の中には壁に沿うようにディスプレイや機械が設置され、柱の如くそびえ立つ機械がいくつか稼働していた。部屋は真っ暗で、機械の明かりだけが妖しく灯っている。

「ざまさん、ここで待機……」

 部屋の入口に間を待たせると、ポケットに手を突っ込み、ゆっくりと……慎重に中に進む。すると……。

 ガタッ。

「!」

 物音と共に何かが陰から飛び出てきた。 天野は素早くポケットから手を出し、その腕先から火花を散らした。短い悲鳴が聞こえ、飛び出してきた何かが崩れ落ちる。天野の手には、USP(ハンドガン)が握られていた。

「天野さん、それは?」

「フェンリルが非常時に私達従業員に支給してくれる拳銃だよ、念のため持ってきといて良かった」

 間は壁の照明のスイッチを探り当てると、電源を入れた。部屋が明るくなり、室内が見渡せるようになる。

「これは……!」

 機械の前には黒服が血塗れの状態で座っていた、機械の前に倒れ伏す者もいれば、椅子に身を預ける者等、上半身の無い者、その逆の者……様々な死に様を飾っていた。

 天野が撃ったのはその中の生き残りだったようで、天野の銃撃以外の傷は見当たらなかった。天野が銃口でつつくと軽く呻く。天野が肩を狙ったということもあり致命傷ではないようだ。

「ねぇ」

「く……来るな! 化物め! お前なんか……!!」

「落ち着いて、少なくとも私は化物じゃな…………化物?」

 天野は引っかかるものを感じ、聞き返した。黒服も少しは冷静になったようで、天野を見据えて口を開いた。

「お、お前ら……あいつらとは違うようだな……あいつめ……育ててやった恩を仇で……!!」

「あまり力んで喋ると傷が悪化するよ……あいつっていうのは、ソフィア・P・コーデリアの事だね?」

「あぁそうだ! ソフィアって奴だ! あいつはもう人間でも神機使いでもねぇ……化物だ!」

「……。」

 間はどこか余所を向いて黙っている、聞こえないふりなのか、怒りを抑えているのか、表情や様子からでは心の内がわからなかった。

「あまりこの人の前でそういうこと言わない方がいいと思うよ……それより……ソフィアちゃんがここに来たの? これ全部ソフィアちゃんが?」

「あぁ……! あいつと夏美さんがここに来た。そしたらこの有様なんだッ!」

「……?」

 ソフィアや黒服の一人がつけていた記録に、一般人を襲うなんて記述はあっただろうか……? それとも夏美の命令で仕方なく? 

「ねぇ、ここの機械は何なのか教えてくれる?」

 黒服は呻きながらも応答を渋ったようだが、間の姿と天野のUSPを見て観念したようだった。

「し……施設内の各部情報とデータをリアルタイムで受信するデータベースみたいな役割の部屋だ……」

「ふーん……他を当たる手間が省けたかもね……あの機械の情報を見たいんだけど、何か必要な物は?」

「し、施設関係者の指紋と暗証番号が必要だ……」 

「指紋……か」

 間はふとそうつぶやくと、機械を操作して暗証番号入力画面と指紋認証画面を出す。そして脇に転がる死体をチラリと見ると、その腕を神機で叩き斬った。

「ひぃっ!!」

 黒服が怯えたように後ずさる。天野は眼を塞ぎつつも、間がすることに予想がついた。

 間は何も言わず、切り取った腕の指先を指紋センサーへ押し当てる。指の凹凸を認識し、画面に[accept2―第二認証完了―]の文字が映され、指紋認証画面が消えた。暗証番号の入力は第一認証だったようだ。

 天野は目を開き、黒服に呼びかける。

「ほら、次は暗証番号入力だよ」

「ふ、ふざけるな! ここの情報は門外不出なんだぞ!」

「なら、あなたも半殺しにされたい?」

 天野の奥で返り血を浴びた間の姿が黒服の視界に入る。

「う……クソッ!」

 黒服は肩をかばいながら機械の前に歩み寄り、乱暴に数字キーを打ち込んだ。するとまた画面に[accept1―第一認証完了―]の文字が映される。

 天野はそれを確かめると、黒服を後ろに突き飛ばした。

「どうもありがとう。もう用は済んだよ」

「ふ……ふざけんじゃねぇ!!」

 黒服が無事な方の手を腰へやったのを二人は見逃さなかった。二人の銃撃が同時に黒服へ直撃する。まだ息はあるようだが、両肩と左足をやられ満足に動けなくなった。

「天野さん、お願いできる?」

「任せて」

 天野は少しの間、機械を撫でるように触れ回ると、全ての勝手が理解できたように手先を走らせた。画面にいくつもの情報が開かれては消え開かれては消えを繰り返した。

 やがて、ディスプレイにいくつかのウィンドゥが現れたところで天野は手を止めた。

「これは……」

 ディスプレイには、二つの人型3Dモデルと、その横にゲージやパーセンテージなどの情報単語が並んでいた。

「天野さん、これは?」

「ざまさんとソフィアちゃんのバイタル情報をより詳しくまとめたものみたい。ここの機材は相当高機能のようだね」

 間はもう一度ディスプレイを見上げる。なるほど確かに3Dモデルの上にはそれぞれ[hazama][sofia]の表示があった。二つの間で違いがあるのは、間の方のデータは全体的にオレンジ色がかっていて、ソフィアのは赤く点滅している事だ。

「……天野さん、それぞれの情報を解説してくれるか?」

「……その前に、ざまさん」

 天野が、ゆっくりと手を間の肩に置いた。

「今から聞くことは冗談じゃない。真剣な質問だよ、真面目に答えてね」

 天野の口調は落ち着いていて、まるで何かを諭すような……決意を促すような……そんな口調だった。間は変に意識してしまい身体を強ばらせる。

「……何だ?」

 天野は手を降ろし、深く俯いて、言い切った。

 

 

 

 

「……ざまさんは、ソフィアちゃんを殺せる?」

 

 

 

 

 間は一瞬、何を聞かれたか理解に苦しんだ。ソフィアを? 殺す? どういうことなのか。

「……なんだって?」

「ざまさんはソフィアちゃんを殺せる? いや……殺す覚悟がある?」

 聞き間違いではない。今度は目を見て、しっかりと言ってきた。間違いなくそう聞いている。間は言葉を詰まらせた。

「殺すって……それは技術的な話をしてるのか? それとも……」

「覚悟の話だよ、ざまさん。この画面の説明を聞けば少しはわかってくれるかな」

 天野はディスプレイを見上げる。画面には相変わらず二つの3D人体モデルがオレンジ色と赤色に表示されていた。

「二人の情報はどちらも同じことが表示されていて、違うのは数値とバイタル状態だけなんだ。主要部分だけ解説するよ」

 間も困惑する頭でディスプレイを見上げる。

「まずオラクル細胞の侵蝕率、どちらも危険レベルで高いんだけどソフィアちゃんは規格外どころかバケモノ級。多分フェンリルの機械じゃ測定できないレベルに侵蝕されてる。アラガミと言っても過言じゃない……いや、アラガミ以上かもね」

 間は自分の腕と神機を見る。自分でもこれなのだから、ソフィアはこれ以上……ということになる。

「次にP91偏食因子制御率、ハッキリ言って低すぎる。文字通りP91偏食因子の制御率を表してるんだろうけど……いつ暴走するかわからないね…………次、これが最も重要かもしれない」

 間は固唾を飲み込んだ。天野も口に出すのに躊躇し、やがてこう言った。

「オラクル細胞とP91偏食因子の融合率……これは適合率と違って、お互いどれだけくっつき混ざり合ってるかを示す数値なんだ。これが……100%以上……それもどんどん増加してる。ざまさんのも増加してるけどゆっくりでしょ? ソフィアちゃんはあり得ない速度で融合してる…………そしてオラクル細胞の侵蝕率も規格外……ここまで言えば察してくれる?」

「…………まさか」

 間はようやく合点がいったように天野と目を合わせた。

「【オラクル細胞とP91偏食因子がソフィアちゃんの身体を完全に支配しかかってる】ってことかッ!?」

 天野はコクリと頷いた。

 オラクル細胞と偏食因子が体内を深く侵蝕し制御が利かなくなると、暴走したオラクル細胞は体細胞を侵食し始める。これが繰り返され細胞侵蝕が進むと、神機使いは【アラガミと化する】普通P53偏食因子を過剰投与するか、あるいは逆に不摂取が継続するとオラクル細胞が侵蝕を開始するのだが、今回の場合、P91偏食因子の作用――あるいは副作用というのが正しいのかもしれないが――によりオラクル細胞が強制的に暴走し、体細胞への侵蝕を開始したと思われる。

 アラガミと化した神機使いの決定的な治療法は見つかっていない。強い意思の力である程度進行を遅らせることができたという報告があるが、それでも焼け石に水。しかもソフィアの精神は極めて不安定な状態にあり夏美の手中に収まっている。

 アラガミ化を止める術が今の間には……ないのだった。

「アラガミ化した神機使いの処理方法は知ってる?」

「…………その人が所有してる神機を使って……その人を…………」

 

 

 

――――その人を、殺すことだ。

 

 

 

 間はこの時、さっきの天野の質問の真の意図に至った。殺せるかどうか、それは暗に『殺すか殺されるかどちらか選べ』と言っているようなものだった。嫌な汗と震えが全身に行き渡る。天野は間の様子に気づいてか、言葉を続けた。

「ざまさん、ソフィアちゃんはもう普通の神機使いじゃない。神機を持ったアラガミなんだよ……夏美さんの指示で動く、忠実で、最凶のアラガミなんだ」

「………………わかってる……そうだ最凶のアラガミのはずさ……だって彼女は完成された【捕喰者の頂点】なんだからなッ!」

 間は近くの椅子を思い切り蹴飛ばす。その直後、ディスプレイの間のバイタル情報も変化した。やはり意思によってオラクル細胞や偏食因子の状態は違ってくるものらしい。

 天野はなるべく冷静を装いながら、さらに続ける。

「アラガミ化した神機使いを完全な意味で止める方法は一つ、その人の所有してる神機を使って殺すこと。これはアーティフィシャルCNSの機能によるものなんだけど……知っての通り、今神機はソフィアちゃんの手に握られてる。でも、普通と違って今回は例外がある」

「……?」

「ざまさん、あなたもソフィアちゃんと同じ、P91偏食因子の持ち主ってことだよ、アーティフィシャルCNSは人的加工を施したコア……当然偏食因子も絡んでくる。二人はこれらの状態が極めて同一と呼べる範囲内にあると思うんだ」

「私の手で……ソフィアを……?」

 間の脳裏に、ソフィアとの感応現象で流れ込んできたものが次々と浮かび上がる。それは映像であり、音声であり、感情であった。ソフィアの感情、切なく、儚く、脆く、胸が苦しくなる感情。この感情が何なのか、それを理解してはならない。理解したが最後、躊躇いを捨てられなくなる。そうわかっているのに……感応現象で本人のように感じ取り、その正体を理解してしまった。

(そうか…………ソフィアは……)

「ざまさん……」

 茫然とする間に、恐る恐る声をかける。天野も大体の察しはついていた。出来れば自分の予想が外れていてほしかった。しかし、間違いは見つからない。濃厚な可能性が、絶対を示唆してくる。

『警告! 警告!』

 ディスプレイに映る文字、間はもうそれを確認する気力すら起きなかった。いや……感応現象で繋がっている間には、確認する必要がなかった。

『警告! 被検体ソフィアの制御率が低下! 制御率低下! 暴走しています! ただちに無力化してください! 警告! 警告!』

 ディスプレイに横断幕のように表示されるエラーメッセージ、直後、どこからか金切声のような叫びと、凄まじい衝撃音が聞こえてきた。

「……!」

 天野は機械をいじくり、別の画面を表示した。建物の地図だ。

「この先に巨大なオラクル反応……青さん達は……優勢じゃないけどなんとかやってくれてるか……ざまさん! 行くよッ!!」

「……ッ!」

 間は決意もまとまらないまま、天野の後をついて部屋を出た。自分の中で渦巻くソフィアの意思を見つめながら。

 

 

 

 

     レイザー 第二実験場

 

 アルダノーヴァが出現した場所と同じように、やはりここも壁のない体育館を思わせる。構造もそっくりだが、さっきの倉庫と比べて殺風景だった。

 その中に、二人の人影。一人はスーツで身を固め、髪を手で撫でつけているフェンリル東京本部長の夏美。決して余裕ぶっているわけではないが、自分が不利だとは少しも思っていなかった。

 夏美は誰にともなく呟く。

「……例の失敗作のお仲間の悲鳴届かず……か、中々やるなぁ。流石は横浜支部の精鋭たちだ……しかし、如何にアルダノーヴァを突破できたとしても、その体力でこの子を倒すことはできない……そうだろう? …………ソフィア」

 夏美の後ろにはソフィアが、その腕を大きく変容させた状態で佇んでいた。もはや腕輪はなくなり、腕の付け根から先はアラガミのように黒く染まっている、さっきと違う一番特徴的な事は、ソフィアの神機がソフィアの腕と一体化していることだった。もう手はない。肘から先が神機と化しているのだ。その神機は黒地に細い赤線模様で染まり、その形は神機として見ても洗練されていた。

「…………。」

 最早彼女は神機使いでも、ましてや人間でもない。一つのアラガミと化していたのだ。

 自分の意識がどこにあるのか、ぼんやりと掴めても、それを自分の意識として認識できない。彼女は何を思い、何を待っているのか、何も感じていないのか。

「君は失敗作とは違い完全に私の制御下に置かれたアラガミ、地球上最強のアラガミだ。私と君の手で地球上のアラガミを一掃し、アラガミによる被害者が出ない世界に戻すんだ」

「……。」

 夏美はソフィアに呼びかけるように高説を述べる。アラガミの居ない世界、それが夏美の至上目的だった。自分の妻と娘を殺したアラガミを、ゴッドイーターに頼らず駆逐する。それこそが絶対目標。夏美を狂気に駆り立てた要因。

「…………おや?」

 ふと、いくつかの足音が遠くから聞こえてくる。直後、扉が思い切り開かれ、間と天野の二人が飛び込んできた。

「夏美さんッッ!!」

「誰かと思えば天野じゃないか、失敗作を連れてるね……僕の作ったアラガミはどうだったかな?」

 夏美はもうマイクを使っていないが、使わなくてもはっきりと言葉が聞こえる。

「ええ、チームコヨーテの皆さんが頑張ってますよ、後で残骸をじっくりと検分させてもらいたいですね」

 余裕そうに見せる夏美、なるべく不敵に装う天野。お互い虚勢を張り合い対峙する。

「ソフィア……」

 間は変わり果てたソフィアの姿を正面から見た。ソフィアもわずかに顔を上げ、間の姿を瞳に映す。すると……。

「ッッ!?」

 間の中で、何かが鼓動を始めた。そして足元から黒いオラクルの瘴気が湧きあがり、間をすっぽり包み込んだかと思うと、ミチミチと肉が擦れ合うような音を出しながら姿を変え始め、瘴気が晴れると…………間の神機は瘴気を放ち出し、その形も変えていた。ソフィアのように腕に溶け込んでいないが、辛うじて神機だということがわかる程度だ。黒地に所々の細い紫模様というところはソフィアのそれとよく似ているが、ソフィアの神機と比べると幾分不細工だった。

 夏美はそれを見て、ふっと笑った。

「ほう、失敗作でもそこまで達するか、見事なものだ。失敗作という表現を改める必要があるかもしれんなぁ」

「ざまさん、大丈夫?」

「あぁ、まだ大丈夫だ……」

 間は、さっきの説明を聞いてなんとなく理由がわかっていた。ソフィアとの距離が縮まった事により、感応現象の効果が強まってお互いに呼応しているのだ。

 夏美が手を挙げた。

「だが……頂点は一人で充分なのだ……死ぬがいい……」

「そこまでだッ! 夏美さんッ!」

 そこで別の声が入ってきた。扉から横浜支部支部長、高堂が入ってきた。

「高堂……? どうしてここが……」

「彼らの後を追ってきた! フェンリルの総轄にも連絡を入れてある! もう逃げ場はありません!」

 総轄という言葉を聞いても、夏美は動じなかった。

「はっ! だからなんだというのか、証拠も何もないじゃないか! ここを処理し、私とソフィアで逃げてしまえばもう私を言及するものはないッ! ソフィアさえどこかに隠せればな!」

「残念だが夏美さん、それは通りませんよ」

 そう言って高堂が取り出したのは、赤島の用意したスピーカーだった。しかし夏美からは小さくて何なのかわからない。

「なんだそれは?」

「簡易的な盗聴器です。でもこれ面白いんですよね、録音機能がついてました。実はこれのマイクに当たる部分を、チームコヨーテのメンバーの一人に仕掛けてたんです。もちろん、あなたがあそこで彼らに話したこともはっきりと記録されてますよ?」

「何だとッ!?」

 流石にそれは想定外だったのか、夏美は声を荒らげる。

「それから、今別の隊員がここの施設のデータベースの情報を抜き出そうと頑張っています。もし成功すれば……あなたも終わりだ」

 高堂は天野に視線を向け、小さく言った。

「君が発砲した人間がいる場所だ、君も手伝ってやれ」

「……了解です、支部長」

 天野は扉を出て通路を走りだした。夏美は冷静さを徐々に失っていき、ソフィアに怒鳴りつけるように指示した。

「くそっ! ソフィアッ! あいつらをやれ! 皆殺しにしろッッ!!!」

「……。」

 その命令を聞いて、ソフィアの身体はゆっくりと動き出した。さながら命令を聞くロボットのように、しかし、ゆっくりとした動きは最初だけ、たちまち高速で走り出した。その行先は……間だ。

「……!」

 高堂はこの隙にと思ったが足を止めた。状況的に考えて、夏美を止める前に自分が殺されてしまう。後ろへ下がり、間が勝つのを祈るしかないかった。

 ソフィアは走りながら、その腕を間へ向けた。ソフィアの腕は神機のそれだが、いちいち変形する必要もなく銃撃と斬撃が放てるのだ。もちろん装甲もついている。ある意味新型神機よりも高性能だ。

 ソフィアの神機から無数のオラクルが放たれる。赤い核に黒い瘴気をまとうオラクルバレット。

「!」

 間は装甲を開かずに、そのオラクルバレットを神機の刃で受け流す、しかし全弾を弾き飛ばした間の眼前にはソフィアが迫っていた。

「くっ!!」

 床を蹴り、右へ避ける。

 ソフィアを殺すという意志があれば、そこでソフィアを斬れただろう。現に今間の神機はソフィアの身体へ向かいかけた。しかし、脚が先に動いた。躊躇は捨てたつもりでも、心の奥底にまだ残っているのだ。

 一方ソフィアは手加減する素振りすら見せない。すぐに追撃を仕掛けに来る。飛翔、身体を回転させつつ斬りつけに来る。 対する間はまたしても回避を選ぶ。

 ソフィアはさらに攻撃を続ける。間は神機を振ることもなく回避を続け、ひたすらソフィアと距離を取った。

「……ッ!」

 直後、一瞬の隙を突き、ソフィアの足払いが炸裂。人間とは思えない素早さと威力を持つそれに足をすくわれ身体が宙に浮き、一回転しかけた間に追撃のアッパーが入り、その身体をさらに高く跳ね上げた。

(くそっ……ソフィアの攻撃に容赦が……!)

 間は天井近くまで打ち上げられ、やがて重力に従い落下していく。落ちながら我に返った間は床……ソフィアの方に顔を向けた。ソフィアは落ちてくる間を迎撃するべく、並外れた脚力で垂直に跳躍する。

 天井から……床から、接近する二人……強くなる感応現象…………お互いの目線が合い、二人の腕が動いた。

 キンッ! という金属的な音と共に、二人の神機が交差した。そして……時が止まった。

「!?」

 間の意識に、別人の意識が流れ込んだ。ぼんやりとした意識を感じる。

 別人の意識……それは他ならぬ、ソフィアの意識だった。意識というよりは一方的な意思発信に近いソレは、過去の記憶ではなく、今のソフィアから流れてくるものだった。

 止まった時間の中で、間はソフィアを見る。ソフィアの瞳は一見何も映していないように見えるが、それは一見しただけの……上辺だけの事。奥底には、別の何かが隠されている。

――……ザ……サ…………。

 

(……!)

 

――ザマ……ン……。

 

 ぼんやりとしたソフィアの意識が、ハッキリとしたものになってくる。間は察する……二人の神機が触れ合ったことにより、感応現象が起きたのだ。普通の新型神機使いでは起き得ないほどの……強力な感応が。その現象の中でソフィアが何かを伝えようとしているのだと。

(なんだ、何が言いたい? ……何を伝えたい?)

 

――ザマサン……。

 

(……)

 

――ざまサん、聞コえテル……?

 

(聞こえてる……聞いてるぞソフィア……)

 

 間は、聞こえているのかどうかわからない相手に、交信を返す。少しの沈黙の後、ソフィアの声は続いた。

 

――私ハ……私ハもウ戻れない。普通の神機使イには……戻れナイ。

 

(……そんな…………)

 

――残念ダけど、事実……私はもうアラガミとなってしまった。夏美さんが思うような忠実なアラガミではなく、ただの凶悪なアラガミに。

 

(!)

 

――今はなんとか理性で抑えてるけど、もう今日明日が限界だと思う。これ以上の侵蝕には……私も耐えられない。

 

――ざまさんのそれは、実は私の中にある偏食因子で完全な制御が可能になるの、二人で一つ、対になるようにできてたんだよ。

 

(初耳だ……それじゃあ、どっちかが勝てば、どっちかが完成するってわけか……)

 

――その通り、でも私は……完成するには遅すぎた。失敗作は……私の方だったんだよ。そして君は……私を取り込むことで完成する。

 

(…………まさか……ソフィアは……)

 

――ざマさん、最後ノ頼みでス。ワタシヲ……。

 

 

 

――私を喰い殺せッ!

 

 

 

 時間が動き出す。我に返った間は神機を持つ手に力を込め、ソフィアの神機を受け流す。ソフィアはそのまま天井まで到達、今度は天井を蹴って急降下してきた。一方で床に着地した間は神機を下ろし、思考する。

(今のは幻聴なんかじゃない、確かにソフィアの意思だった……自分を殺せと、喰えと言っていた……!)

 間の決意が固まっていく……意思の力が強くなっていく……戦う思いが、誰かを救いたいという思いが、戻ってくる。

(ソフィア……私はお前の命令を……快く受け入れてやるッ!)

 神機を構え、垂直に跳ぶ、急降下してくるソフィアに真正面から挑む……!

 ソフィアの急降下より速かった間はソフィアより強い攻撃で彼女の体勢を崩しそのまま天井に到達、反転して天井を蹴り速度を上げ、空中で体勢を崩したソフィアに真上から凄まじい威力の跳び蹴りをぶち込む。

「ッ!!」

 流石のソフィアでも衝撃と蹴りの威力で床に叩きつけられる。そんな彼女に間は上から落下しながら銃撃を放った。ソフィアが放ったのと同じような黒い瘴気をまとうオラクルバレットだ。ソフィアは反射的に装甲を開き、銃撃を防ぐ。

 間は装甲を開いたソフィアに向かってさらに剣形態に変えた神機を振り下ろした。装甲で防がれ、間は身体ごと受け流される。

(……?)

 夏美と高堂も、間の動きの変化に気づいた。しかしそれは当然だ。先ほどとは意識が違う。揺るぎない決意は、今や間を突き動かす闘志となっている。

「うぉぉぉおおッッ!!」

 間はソフィアに向かって何度も何度も神機を振りかざす。ソフィアも負けじと全て受け流すが、若干押されていた。

――それでいいんだよ、それで……。

 間の意識に、なんとなくそんな声が響いた気がした。

 ソフィアの跳躍、間の銃撃、回避、銃撃で応戦、そんな攻撃の応酬が続いた。

「支部長、どうなってますか?」

 ふいに聞こえた背後からの声に振り向くと、天野が扉から静かに入ってきた。

「間とソフィアの徹底抗戦中だ。近づくと怖いよ」

 高堂からそれを聞くと、天野は二人を見つめ、眼を瞑った。

(さっき……施設のメインパソコンに反応があった。あの反応は…………そしてあの動き……もしかして……)

 目を開く、そこにはお互い全力でぶつかりあう間とソフィア。

「……!」

 ソフィアの刺突が間を捉える。さっきまでの間なら避けるしかなかった。だが……。

「無駄だッ……」

 とっさに装甲を開き、押されながらも受け止めた。ソフィアを蹴り飛ばし反撃とばかりに神機を振り下ろすがこれも回避された。

「速いな……並の神機使いの動きじゃない」

 高堂がポツリとそう言った。隣に立ち尽くす天野が応じる。

「そりゃそうですよ……これは神機使いの戦いじゃない。捕喰者の頂点を争う戦いなんですから」

 天野は施設のパソコンから得た情報を反芻する。今の二人は感応現象によって強化し合った……apex predatorなのだ。

「頂点は二人存在することを許されない。だから……どちらかがこの戦いで……消える!」

 キンッ、最後のつばぜり合いを終え、二人は距離を取った。当事者は察する……次で最後だと。

 ソフィアは神機を捕喰形態へ変え、その口を間へ向けた。間はあえて剣形態のまま、下段に構える。十数秒の沈黙……。

 二人は合わせたかのように同時に走り出し、双方躊躇うことなく一気に距離を詰め…………一閃ッ!!

 

 

 

 

 

「……?」

「……?」

「……。」

 夏美、高堂、天野の三人がその顛末を最後まで見ていた。直後、佐々木達がぞろぞろと入って来る。唯一、赤島だけがこの場にいなかった。

 二人は一閃交えたまま動かない。しかし、ドサッという音と共に倒れたのは……ソフィアだった。

「やった……!」

「待って、まだ油断はできない」

 気持ちが焦る高堂を、天野が抑える。すると今まで黙っていた夏美が怒鳴った。

「ソフィアッ! 何をしている!! 失敗作に負けるのかッ!」

 しかし、ソフィアは何も答えない。そうとわかるや強く地団太を踏んでぶつぶつと何か言い始めた。

 間は戦闘姿勢を解き、倒れたソフィアに歩み寄る。うつぶせに倒れていたソフィアを仰向けに寝かし、その前髪を整えてやった。その表情は、大きな傷を負った身体に反してとても安らかだった。

 間は目を閉じ、腕輪に触れる。感応現象を通してソフィアと話す。

 

 

(もういいだろ? ソフィア……)

――…………。

(……やっぱり駄目か)

――あと少しなんだ……あと少しで終わるんだよ……。

(……後は何をすれば? これ以上私に何をしろと?)

――私を……私を喰え。

(喰う? ソフィアを?)

――そう、そうすれば私の成分を余すところなく摂取できる。完成すると思う……。

(もしそれで完成しなかったら?)

――その時は仕方ないかな。でも大丈夫、ざまさんなら、それでもきっと良い神機使いになれる……私みたいなアラガミもどきが敵う相手じゃない。強い神機使いに。

(私は、ソフィアの命を犠牲にしてでも……生きるに値する存在かね? 死ぬのが怖くないのか?)

――知ったことじゃない……それに私は死にはしない…………ざまさんの中で生きてやる……嫌だと言ってもね。

(……。)

――さぁ早く、そろそろ侵蝕が活動を再開する。それに夏美も黙ってないよ…………美味しくなかったら……ごめんね。

 

 間は目を開き、そっとソフィアの手を握りしめる。

――最後に一言。

 そして、ソフィアの両手をお腹の上で組ませ、神機の刃先をソフィアに向ける。

――私は多分…………ざまさんの事が……。

 神機が口を開く。

 

 

――…………好きだった。

 

 

 捕喰。

 

 

 

 

 

 後には、何も残らなかった。ついさっき来たばかりの佐々木達でも、なんとなく状況を把握する。把握したうえで、言葉に詰まった。

 青桐が天野にアイコンタクトを送る、天野は静かにうなずくと、間の方を見た。

 ソフィアを完全に食い尽くした間は、足元から湧いてきた黒いオラクルの瘴気に包まれた。その場にいた全員が眺めるなか、瘴気が晴れると、間の腕と腕輪は人間のそれに戻っていたが、腕輪のアーティフィシャルCNS物質の色が紫色に変化していて、一番変わっていたのは本人の神機だった。

 色は相変わらず黒地に細い紫線模様だが、ソフィアの神機と同じ形……銃撃、斬撃を変形なしで行える洗練された武器の形になっていた。それこそが、ソフィアの因子を間が継承した証。完成した証だ。

「ソフィアちゃんが……ざまさんに……」

 天野も驚きを隠せない。間が躊躇なくソフィアを捕喰した事も驚きだが、今目前に映るこの光景も神機整備士として信じがたいものだった。全てが新発見の連続なのだ。

「き、貴様ッ!」

 夏美ももう冷静を装わなくなった。激昂し、間に殺意を向けている。負けを促すように高堂が口を開く。

「さぁ夏美さん。もう貴方の負けだ……大人しく」

「うるさい! まだだッ!  まだ……!」

「何か戦力が? おわかりと思いますが拳銃如きでは私達ぐらいにしか効果がありませんよ?」

「う……」

 追い詰めた……ように見えた。

 突然、辺り一帯に地鳴りのようなものが響いた! 青桐が天井を見上げつつ口を開く。

「おい、なんだこりゃ?」

 すると、実験場の柱が何かによって破壊された。夜空と建物が奥に見える。

 その穴から出てきたのは…………半壊したアルダノーヴァの男型だった。女型は完全に壊れたのか、姿はない。

「ア、アルダノーヴァ!!?」

「そんな馬鹿な! 確かにさっき倒したはずだ!」

「まだ生きてたのかよ……!」

 動揺するチームコヨーテ、しかし動揺も消えぬまま、全員神機を構える。

「ふ、ふはは……そうだ! 私は負けられないんだ! さぁ行けアルダノーヴァ! 奴らを潰すんだ!」

 ぎこちない動作で場内に入ってくるアルダノーヴァ、しかしそんなアルダノーヴァが最初に襲ったのは…………なんと夏美だった。

「……え?」

「「あ」」

 その大きな腕で夏美を掴み、捕喰口に当たる部位に放り込んだ。全て一瞬の出来事だった。

「うわぁぁぁ……ぁぁ………ぁ………」

 しかし、夏美を飲み込んだアルダノーヴァは突如大きく震え、悶え呻きだした。まるで異物を飲み込んでしまったかのように。

(今だッ!)

 間はスタングレネードをアルダノーヴァへ投げつけ佐々木達の所に戻る。それを合図に、間を含んだチームコヨーテ全員がアルダノーヴァに襲いかかる!

「これで終わりだッ! アルダノーヴァァァァァッッ!!」

 下から山ノ丈が切り上げ、アルダノーヴァの体勢を崩す。

「せいっ!」

 青桐の剣栽を一撃。

「うりゃ! とおりゃぁッ!」

 佐々木の高速連撃。

「喰らいなッ!」

 藤牧の真上からの振りおろし攻撃。

 床に叩きつけられたアルダノーヴァに刃先を向けていたのは……間だ。

「……もらった」

 間の神機から大蛇が伸びる。ソフィアを吸収したことにより、大蛇――ロングプレデター――も強化されていた。

 大蛇は真っ直ぐ標的アルダノーヴァへ伸び、喰い破った。アルダノーヴァは完全に沈黙した。後にはただ、静かに降る雨の音しか聞こえなかった。

 こうして、非合法施設レイザーでの、夏美との……そしてソフィアとの戦いは幕を閉じた。

 

 

 

 

 

      フェンリル横浜支部 整備士休憩室

 

 

 アルダノーヴァやソフィアを倒してから数日後、天野は休憩室でスポーツドリンクを飲んでいた。

 あれから色々あって忙しく、ちゃんとした仕事も研究もできなかったので、一山超えた後の休憩だった。

「ふう……」

 ふと、机の上のラジオが目に止まった。気が向いたので、つけてみる。

『――――した。では次に、フェンリル東京本部長の死について、繰り返しになりますが放送します。今月未明、東京都内で謎の大爆発が起き、東京本部長である夏美氏とその他職員数名、さらにフェンリル横浜支部所属のソフィア・ペパーミント・コーデリアさんが死亡した模様です。先日フェンリル横浜支部長の高堂氏から発表があり、夏美氏は非合法な組織を形成、運用していたとのことでしたが、爆発地点がその施設があった場所であることから、何らかの極秘実験中に起きた爆発事故とされており、報道陣の殺到が後を絶たない状況のようです。また、夏美氏は強力な人工アラガミを世に放とうと計画していたようです。施設に侵入しこの邪悪な計画を未然に防いだ勇敢な神機使いとフェンリル職員がいるとのことですが、その正体は未だに判明しておりません。フェンリルはこの計画や事件について詳しく公表しておらず、情報の開示が求められています――』

 天野はラジオを切り、あの日の事を鮮明に思い出した。

 あの後、レイザーは警告音を発し、同時に施設爆発の警告放送が流れ始めた。どうやら夏美は自分に何かあった時のために、証拠隠滅の手段として施設を爆破する準備があったらしい。脱出時赤島は情報奪取を終えたばかりで、タイミング良く脱出できた。

 この事件で失ったものは決して少なくなかったに違いない。支部内のソフィアへの印象は結局最後まで良くならなかったし、間からして見れば大事な人を失った。それに組織の黒服については正体不明ではあったが何人死んだか想像もつかない。レイザー内で死亡した人間も少なくないだろう。

 しかし、得られた物もあった。レイザーから奪取した情報は皮肉にもかなり有力で、今後のフェンリル発展に大いに役立つとフェンリル総轄に認められた。レイザーの施設が爆発で消滅したため、設備類だけは残念ながら回収できなかったが、奪取した情報や知識でも十分だとの返答だった。天野も研究者として、その結論に異論はない。

 夏美の汚職や計画、ソフィアの存在、間の現在の状況は、高堂が取っていた録音により実証性と真実味を帯び、フェンリル本部へ受理された、が、なるべくフェンリル内だけの極秘情報として取り扱われることになりそうだった。一般に晒すと混乱を煽るばかりか、フェンリルへの信用問題に関わるとされたのである。高堂はそれに反して全てを公表しようと動いたようだが、その後どういう話になったのか、いまいち報告がない。

 チラリと聞いたところによると、この事件やこれらの情報は今後一括して【夏美事件】と呼ばれるようになったらしい。

 さて、チームコヨーテはというと、事件前と特別なんら変わっていない。いつもの楽しそうな五人だ。間も意識しているのか全く態度に変化を見せず、周りもそれに合わせて何も気に留めていないようだった。

 変わったことと言えば、間の身体を解析してわかったことがある。

 間の体内に残るP91偏食因子、並びにオラクル細胞の制御率が通常レベルまで安定し、自分の意思でコントロールできるようになったらしい、やはりソフィアを吸収した結果、そういう能力が備わった完成体になったという事か。

 それから、神機の色も元に戻った。ただし腕輪のアーティフィシャルCNS物質は紫色のままで、バーストした時だけは黒地に紫線模様の形に神機を変形できるらしい、形状は施設で見たときと同じ、ソフィアの神機の形だ。やはり、ソフィアの意思と力を継承したのだろう。間の元々の能力である【ロングプレデター】も問題なく使用可能だ――いや、使用できること自体が本当は問題なのだが――。

 今は亡き夏美も、やったことは極めて非人道的で非合法的だが、その本心は、アラガミ絶滅という今の人類の理想そのものだった。夏美は一概に悪い存在でもなかったのかもしれない。

 夏美と言えば、施設内で遭遇したアルダノーヴァだが、残念なことにオラクルが霧散してしまったらしく、最近ちらほらと目撃報告を受けている。困ったものだ。

 それから……それから変化したことと言えば……。

「ういーっす天野さーん!」

 佐々木。

「ども、遊びに来ました」

 藤牧。

「どもども、ちっすちっす!」

 山ノ丈。

「やぁどうも、お邪魔しますよ」

 間。

「ようちっぱい、からかいに来てやったぜ」

 と、青桐。

 そう、天野とチームコヨーテが……引いては青桐との仲が良くなったことだろうか。

「やれやれ……まぁいいか、こういうのも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

間遼太郎

横浜支部所属の神機使い、ロングプレデターでありapex predator、そしてチームコヨーテのメンバーである。夏美事件の後は特殊な神機形態になり、自身にも深い部分にP91偏食因子という特殊な偏食因子を持つただ一人の神機使い。その強さと本来の実力故に若くして少尉にまで登っていたが、それ以上は昇進する意欲を見せていない。バースト時にのみ神機を変形させる特殊能力も付属し本人の意思に反して昇進の兆しが見えてきている。

それとは関係ないが、最近飼い猫のもみじが太ってきて心配らしい。

 

 

佐々木竜太郎

チームコヨーテのメンバーでチーム内のムードメーカー的な役割を担っている。最近はサボり癖もなおってきて、こちらも昇進の兆しが見えている。その影響か、彼を信頼する部下はさらに増加傾向にあるらしい。しかし彼はチームコヨーテを第一に考えている。

華麗な短剣捌きや素早い動きには磨きがかかり、子供っぽい性格や仕草等も相重なって女性陣からの人気も上々である。

 

 

藤牧圭助

チームコヨーテのメンバー、今までバスターを主流に動いてきたが、ここ最近の任務にはロングなど、様々なタイプで臨んでいるようだ。その真摯な訓練姿勢が評価され、こちらも昇進が検討されている。ただ、いささか夏美事件の顛末を理解するのが面倒らしく、彼は事件前とあまり変わりない。しかし、佐々木のように信頼を寄せる部下が増えてきており、近々少数部隊の隊長に正式に任命されるらしい。

どんなタイプの神機で任務に出ても、強襲技術がしっかりと活かされ、人情に厚い事には変わりないらしい。

 

 

青桐拓馬

チームコヨーテのメンバーで支部内最高クラスの狙撃手、彼も事件前からあまり変化をみせていないが、整備士長兼研究員の天野雪と非常に良好な友好関係を築いており、今後の二人の展開に周囲はひっそりと期待しているようだ。事件の事もあって彼にも昇進が検討されている。

依然としてロングヘアは変わらず、バレット製作技術もプロ並。そろそろそういう担当部署を任されそうだと本人は嫌がっているようだ。

 

 

山ノ丈絃汰

チームコヨーテのメンバー、相変わらず研究職で、事件以前と大した変わりはないが、最近はちょっとずつ実戦任務に出てくるようになり、自分の神機を強化しているようだ。しかしレイザーで手に入れた情報の解析に興味があり、しばらくは実戦介入に本腰を入れてくれそうにない。情報技術が大分上達して来たので、近いうちに情報部員に異動になる可能性も出てきている。

 

 

高堂貴久

フェンリル横浜支部支部長、事件以降事件についての情報整理や対応に追われており、支部長の仕事が間に合っていない。しかしその働きを見込んでなのかそれとも事件の処理の内なのか、こちらは近々東京本部長代理に昇進しそうだ。場合によっては本部長に就任することになるかもしれないとか、本人は仕事が増えそうだと栄養ドリンクを買い込んでいるという。

 

 

天野雪

整備士長兼研究員、今回の事件以前から少しずつチームコヨーテと関わりを持ち、事件の当事者の一人にまでなった。現在は間の定期的なケアを担当しており、そのついでに青桐のバレット製作や山ノ丈の研究を手伝っている。彼女にも研究部署内の上位に昇進する兆しがあるようだ。

青桐と非常に友好的関係にある事が支部内で噂になっているようで、本人は戸惑ってばかりである。

 

 

赤島響花

チームデルタの一人、遺伝子の異常によって生まれつき赤い毛髪を持つ不思議系神機使い。元々オペレーターの資格も持っていたが、今回の事件で情報処理の面でも活躍できると見込まれ、情報部員での枠が獲得できそうである。チームコヨーテ以外で夏美事件に関わった唯一の神機使い。

 

 

夏美彰

元東京本部長でありレイザーの元総轄責任者。夏美事件で死去。

 

 

ソフィア・ペパーミント・コーデリア

元チームコヨーテメンバー、夏美事件で間遼太郎の手により処分。謎が多く、彼女について真に理解しているのは間以外に存在しない。

 

 

レイザー

夏美が創設した非合法施設、しかし夏美事件で爆散したため、いまはその痕跡を探索する事しかできなくなっている。しかしそこにあった情報の類はほぼ全て赤島と天野が持ち出したため、そもそも痕跡の探索自体無意味と言われている。

施設跡から何らかの薬品のようなものが漏れ出したのか、最近アラガミの目撃例が多発している。

 

 

フェンリル

夏美事件を受け、多少は動揺したものの、内々で処理することで方針を固め、今では表向きは何も変わっていないかのように振る舞っている。現在はチームコヨーテの五人に目をつけ、今後の動きを考えているようだ。

 

 

 

 

      ――フェンリル横浜支部「team coyote」 完――

 




この物語をチームコヨーテに捧ぐ

この物語はフィクションで二次創作です。原作、実際の地名、団体等とは一切関係がありません。


(完結後の詳細は活動報告をご覧ください→http://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=52820&uid=74480
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