フェンリル横浜支部「team coyote」   作:ざま菓子

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港町の高速戦線

 フェンリル横浜支部、ここに所属する衛生兵三等軍曹の佐々木竜太郎、並びに強襲兵上級曹長の藤牧圭助の二人は山ノ丈から連絡を受けて、支部……もといランドマークタワーの上階にある研究室に呼び出されていた。

 フェンリルは各支部に研究部が設けてあり、日々アラガミや神機使いに関する研究を行っている。部署はいくつかあるが山ノ丈は正式な研究員ではないため決まった部署を持っていない、それをいいことに彼は気の向くままに部署を移動している。

 エレベーターを降りて研究部署に入ると白衣姿の人々がそこらじゅうを行き交っており、二人には理解し難い単語の羅列が飛んでいた。その奥のガラス壁で隔離された一室に山ノ丈はいた。周りに合わせてか、私服の上から白衣を身にまとっている。

「よう、お前らに渡したいものがある」

 二人が部屋に入ってくるなり、山ノ丈はそう切り出した。彼の背後にある机には、なにやら雑多に物が置かれている。

「何か試作品の実験をしてほしいんだっけ?」

 佐々木が事前に言われていた事を思い出した。山ノ丈は何度も頷き、手近にあった大きな段ボール箱をごそごそと漁り始める。

(ざまさんも常軌を逸して変な奴だけど・・・・・・丼さんも似たり寄ったりかなぁ・・・・・・)

 段ボールに覆い被さってうごめいている白くて丸い塊を見て佐々木はそう思った。言葉こそ出さなかったが表情と視線から察するに藤牧もそう思っていたに違いない。

「これこれ、これだ」

 山ノ丈は嬉しそうに二つほど物を取り出してきた。一つは眼鏡が一回り大きくなったような物、もう一つは山ノ丈の足下にあり、見た目からしてスケートボードのようだった。

「よし、それじゃこっちから紹介するぜ、これはHUDを搭載したHMD・・・・・・まぁいわゆるハイテク眼鏡だ、タロスの視力に合わせておいたものしかないから今のところはタロス専用だな」

 そういえば、先日山ノ丈に視力を聞かれた事を思い出した。佐々木は近視なのだ。

「ほー・・・・・・」

 佐々木がハイテク眼鏡をまじまじと観察している傍らで、今度はスケボーを持ち出した。

「こっちは多分圭助用だと思うんだけど、後部に強力なエンジン装置を備えていて、シユウの滑空攻撃の速度ぐらいは出すことが出来る。操作は全て足もとで出来るよ」

「おおー!」

 藤牧は純粋に喜ぶ一方、昔よく見ていた小学生探偵の話を思い出した。もしかして単に再現したかっただけではないのか。

「あとこれだ。以前から通信について苦情が来てたんで勝手に改良してたんだ。次の任務にもこれを使って行ってみて」

 二人に手渡されたのは改良型インカムとトランシーバーだった。

「前のヘッドセット・・・・・・インカムは電源入れないと周波数が合ってても聞こえなかっただろ?それじゃ不便だって言うんで電源ボタンをインカムから取り除いた。そのかわりにモード切り替えボタンをつけておいた。送受信可能モードと受信専用モードを入れ替えて使えるようになってる。これはもうフェンリルが量産してて、今はもう全員に配られてるけどね、それから・・・・・・」

 長々と山ノ丈を受けて、佐々木達は開発品を持って研究室を出た。出る直前に「あ、まだ試作品だからな!それだけは気をつけろよー!」という山ノ丈の忠告ももちろん聞き逃さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほほーん、これは便利だ」

 ラウンジで麦茶を貰いながら、早速山ノ丈の試作品『インフォグラス(仮)』を説明書片手にいじくっていた。確かに彼がかけていた眼鏡と度数一つズレておらず、サイズこそ大きくなったがかけ心地が損なわれるほどではなかった。ちなみに説明書も山ノ丈のお手製だ。

「それ、今まで俺たちがPDAで見ていた内容が映るのか?」

「ああ、どうもそうっぽいな」

 神機使い、並びにフェンリル所属者には必ず支給されるPDA(携帯情報端末)。そこには地図、アラガミの反応、同行メンバー等の位置情報など、様々な情報が衛生経由で受信される。フェンリルのターミナルほど情報量やスペックは大きくないが、それでも現存するものとしてはかなり進んだ技術で作られたPDAだ。ちなみにこれは一部の機能を制限しての一般購入が可能だが、どうにも不評らしい。

「なんかアニメキャラでいたよな、こんな奴」

 佐々木達が笑い合っているソファー席に、一人の女の子が歩み寄ってきた。髪を胸元まで伸ばし、フェンリル支給の衛生兵制服をきっちりと着こなしている彼女は、佐々木の後輩の一人、篠山香代(しのやま かよ)だ。

「佐々木先輩!」

「んー?なんだ? 香代ちゃんよ」

「つい先程、私達宛に任務が発注されたようです。コピーを渡すようにとの命令なので、どうぞ」

「ほー……サンキュー」

 佐々木は封筒を受け取ると、中身を取り出してテーブルに広げた。それは至って普通の・・・・・・もはや見飽きた任務書だった。藤牧が佐々木の後ろから書類を覗き見る。

「何々・・・・・・?『スピード・ウェイ』?」

 

 

 

 

タイトル:スピード・ウェイ

場所:旧横浜駅付近

特記事項:車両での出撃を推奨する

概要「旧横浜駅の近くの首都高速道路上がシユウの溜まり場となっているという苦情が寄せられた。放置すると他のアラガミが集まってしまうだろう。そうでなくとも現時点で交通に支障が出ている。アラガミの中でも高い機動力を持つシユウだ。機動力の高いゴッドイーターの出撃を望む」

報酬:3500fc その他成果に応じて多数

 

 

 

 

 

「なぁ、最近報酬の表記が適当になってないか?」

 任務書をテーブルに放って佐々木は大きく伸びをする。藤牧がそれを手にとってもう一度最初から読み直す。

「まぁ大方シユウの一部が報酬でしょう。複数体いるとなると歩合で追加報酬金が出るかと」

 篠山が弁解するように予想を口にする。

「香代ちゃんも出るの?」

「はい、佐々木先輩や私を含め、チームデルタは全員出撃する事になってます。また、今回のリーダーとされている佐々木先輩にはあと二人、追加でメンバーを加える権利が与えられています」

「いつもと対して変わらないのかぁ」

「タロス、俺が行ってもいいか? さっきのスケボーを試したいし」

 藤牧が任務書を読み終えて佐々木に提案する。

「言うと思った! 全然オッケー、うちの後輩にもマッキーに憧れてる奴がいるからな」

「俺に? なんか照れるな・・・・・・」

 佐々木と藤牧はソファーから腰を上げて篠山に指示を出した。

「よし、じゃあ香代ちゃん、チームデルタ全員に20分後にミッションカウンターに集合するように伝えておいて」

「了解」

 佐々木は時計を見た。午後5時10分を指していた。

 

 

 

 

 

 

     旧横浜駅ホーム チームデルタA班 

 

 

 フェンリルは基本的に、神機使い達をいくつかの班で分けている。軍曹や少尉クラスの人間がリーダーを努め、配属されて間もない神機使いは分けられた班で行動することを義務付けられている。これは新米兵士の生存率を上げるための措置だ。が、人員の少ない支部では部隊間での人の貸し借りは日常茶飯事なのである。部隊には支部によって名称が異なり、横浜支部の場合は軍隊式アルファベットでチーム名をつけられている。

 佐々木と藤牧率いるチームデルタは、フェンリル特注の輸送車に乗って横浜駅で降ろされた。作戦範囲内には複数体のシユウがのさばっているため、高速道路に入れないのだ。

 佐々木は改めてメンバーを確認する。チームデルタの他にもいくつかの班があるが、佐々木や藤牧はそれらの班長をいくつか兼任していて、時折班長として任務に駆り出されている。そのためか間や青桐より後輩からの信頼も厚く、同伴の依頼が絶えないそうだ。

「えーと……篠山はいいとして、栗原英(くりはら ひで) 松崎葵(まつざき あおい)……他は確か別のところから任務にあたるんだったな?」

「はい! 少し前に配属された二人もそちらに入っていますッ!」

 デニム地のホットパンツとTシャツという露出の多い服装に、黒髪のショートヘアを小さくサイドテールで結んだ。元気はつらつといった印象しか放出していない葵がはっきりした口調で答える。配属されてまだ半年も経っていないが、既に一等突撃兵の階級を手にしている。第一印象に違わず元気でテンションが高く、いつでも気合充分に任務にあたっているのを佐々木はよく目にしていた。神機をよく振るせいか、両手の黒い手袋は大分使い込まれているように見えた。

 その横に立つ栗原も葵の同期配属だ。高身長でやや小顔、フェンリルの兵士としては珍しく自分の母校の制服を着用している、細い銀縁眼鏡が白く光っているので、なんだかビジネスマンを思わせる。部員を見まわして佐々木は一呼吸して仕切る。

「よし、じゃブリーフィングを始めるぞ」

 

 

 

 

 

     旧桜木町駅駅前広場 チームデルタB班

 

 

 

「今回、チームデルタは二班に分断されて作戦にあたる。向こうをA班、こちらがB班とされているからそのつもりでよろしく……で、作戦内容だが……」

 藤牧率いる一行は旧桜木町駅からの出撃となった。藤牧の前には、彼に同行する二人の神機使いが立っている。

 動きやすさを選んだのか、半袖半ズボンを着たやや小柄な男子、弓川義太(ゆみかわ よした)と、ジーパンとフードジャンパーを着ていて、世にも珍しい『生まれつき赤い髪を持つ』女子。赤島響花(あかじま きょうか)の二人だ。

(あらかじめタロスにメモをもらって置いて正解だったかな、二人についてある程度把握出来た)

 藤牧は佐々木に渡されたメモ用紙をチラチラと見ながら、ブリーフィングを続ける。

「俺達B班は俺に従って、この桜木町駅のすぐ近くにある横羽線から北上、遭遇するシユウを残らず叩き潰すってのが作戦内容だ。今のところまだシユウ以外のアラガミはいないらしい。迅速に対応しようぜ」

「「はい!」」

 見かけによらず、二人とも元気な返事だった。といっても赤島の方は表情が硬い。

「何か質問ある?」

「他に命令事項はありますか?」

「命令かぁ……それじゃあ」

 

 

 

 

 

「さてと、作戦内容はおおよそこんな感じだけど、何か質問は?」

 佐々木がブリーフィングをほぼ終え、咥えていた煙草に火をつけると、篠山が挙手して質問した。

「佐々木班長、御命令はありますか?」

「ん、じゃあよく聞けよ皆」

 

 

 

『『必ず全員で生きて帰るんだ。絶対に無理はするな』』

 

 

 

 

「佐々木班長……」

「死にそうになったら逃げるんだ、絶対に無茶するなよ」

 佐々木は煙草の先を赤く灯しながら言った。そのままさらに一言付け加えた。

 

 

 

 

「仲間を助ける前に自分の身を守れ、身を犠牲にして何かしようってのは最悪だかんな」

 藤牧の言葉に、赤島と弓川の二人は力強くうなずいた。緊張させ過ぎてしまっても逆効果かと思い、少し砕けた口調で付け加える。

 

 

 

 

 

『『まぁとにかく生き延びろ、後は万事どうにでもなる』』

 

 

 

 

 

 

 作戦時刻、藤牧を含むチームデルタ全員が自分の神機を担ぎ、シユウがのさばっている横羽線を見やった。

 

 

 

 

 

 

作戦及び装備情報

佐々木 竜太郎

チームデルタA班指揮 

剣形態:冷却ナイフ(ショート)

銃形態:ビューグル砲 新改(ブラスト)

装甲:強支援シールド(シールド)

特別装備:インフォグラス(仮)

 

 

篠山香代

チームデルタA班後方バックアップ

銃形態:アルバトロス 改(スナイパー)

 

 

栗原英

チームデルタA班偵察

銃形態:55型機関砲(アサルト)

 

 

松崎葵

チームデルタA班突撃

剣形態:冷却チェーンソー(ロング)

装甲:抗属性バックラー(バックラー)

 

 

 

藤牧圭助

特別参加:チームデルタB班指揮

剣形態:金剛凍砕棒(バスター)

銃形態:縮地(アサルト)

装甲:強回避バックラー(バックラー)

特別装備:山ノ丈特製スケボー

 

 

弓川義太

チームデルタB班遊撃

剣形態:肉斬りクレイモア(バスター)

装甲:尾盾 イヌガミ 改(シールド)

 

 

赤島響花

チームデルタB班遊撃

剣形態:火刀(ロング)

装甲:対炎タワー改(タワー)

 

 

 

 

 

 

        旧桜木町駅 チームデルタB班

 

 

「さて……と、横羽線まで歩くのも面倒だし……早速こいつを使うか」

 藤牧は立てかけていた山ノ丈特製スケボーを手に取った。

「藤牧先輩、なんですかそれ?」

「これ? 俺のダチが作った最強スケボー。まだ試作品とか言ってたけどな」

 藤牧は自慢げにスケボーを見せる。長さ2メートル前後、幅は藤牧の肩幅より少し大きいぐらいと、スケボーにしては面積がかなり広い。それもそのはず、スケボーの裏には出来る限り薄くしたと思われるエンジンがあり、前面には足で操作できるように面積を広くしたアクセルやブレーキ、ボタンなどが付けられている。

「へぇ~・・・・・・」

 藤牧はそれを地面に置くと、地面で転がしながら弓川達に近くの車を示した。

「俺はこいつで行く! お前らそこの車でついてこいよ!」

「え・・・・・・でも俺たち免許持ってな・・・・・・」

「別に良いよそんなもんっ!」

 返事も聞かずに藤牧はスケボーのアクセルを踏んだ。後部の出力部から赤いジェットが見えたかと思うと、たちまち速度を上げていった。藤牧は初めてとは思えない使いこなしようで、横羽線に乗るためのルートを探しに向かった。

「あーあ、行っちゃった・・・・・・」

 赤島は冷静にそう言い、藤牧が示した車の運転席に乗り込んで神機を置いた。鍵は幸運にも刺さったままになっている。弓川は急いで助手席に乗り込み、同じく神機を置く。

「え、ちょっと! 赤島さん!? 免許持ってないよね!?」

 赤島は弓川と同じ19歳。赤島が無免許なのは弓川も知っている。しかし赤島本人はゆったりと言った。

「免許はないけど大丈夫だよ。ま、事故ったらごめんね」

 赤島は柔らかい微笑を弓川に向けると、鍵を捻ってエンジンを入れた。運転手が消えて久しいワゴンRは、現役ばりに稼働を始めた。

「弓川君、シートベルトよろしく」

 赤島は変わらぬ口調でそう言うや否や、藤牧と同じようにアクセルを踏み込んだ。

 

 

 

 

 

       旧横浜駅周辺  チームデルタA班

 

 

 

「しかし便利だなぁコレ」

 佐々木は山ノ丈特製のハイテク眼鏡「インフォグラス(仮)」をいじくっていた。

  インフォグラス(仮)はメガネの部品でいうリムのすぐ横・・・・・・ヨロイと呼ばれる部分に小さな立方体と小さいボタンがついており、立方体の中にマイクロコンピューターを搭載、ボタンでレンズに映るHUDの内容を切り替えられる仕様になっている。光ファイバーのごとき細さを持った線を通しているとはいえ、マイクロコンピュータまで搭載させていてサイズが大きくなっているので、当然僅かながら見た目の良さに劣るが、それでも佐々木は構わなかった。先程からHUD情報を切り替えて遊んでいるので、なんとなく足取りが危ない。

「それにしても佐々木先輩、いいんですか? 急がなくても」

 佐々木達・・・・・・チームデルタA班は横羽線に乗るため横浜駅の外を歩いていた。普段徘徊している小型アラガミが見えないところを見ると、問題のシユウ達がこの辺りを牛耳っている様子がありありと想像できた。

 前列に並ぶ佐々木と篠山の後ろでは、栗原と松崎が後方を警戒しながらついてきている。佐々木は周りの状況を見てもう一度考察する。

(驚くほど小型アラガミの気配を感じない、痕跡さえ見つからないし・・・・・・本当にいないみたいだな・・・・・・それに所々小さく火がついているのも気にかかる・・・・・・シユウはそんなに大群を成しているのか?)

 佐々木はHUDを操作して藤牧達の居場所を探る。神機使いの腕輪には生存確認用のビーコンやGPS等の機能もついており、支部から外に出る際この機能が自動的にオンになる。神機使いに渡されるPDAで見ることのできるマップやミッションオペレーターの画面にこれらの情報が表示される。

 佐々木の眼鏡に周り一帯の地図が模式図的に表示される。表示範囲を広げると、現在位置の南部に3つの反応があった。藤牧達だ。

「いたいた・・・・・・けどこの速さはなんだ?」

「どうしました先輩?」

(この速さ・・・・・・歩きじゃないな・・・・・・でも走っているにしては妙だ・・・・・・ということは)

 佐々木は藤牧に渡された物を思い出した。

「あー……マッキーも早速使いだしたか」

 HUDの表示を切ると同時に、栗原が佐々木を呼んだ。

「何?」

「先輩、あそこから横羽線に乗れそうじゃありませんか?」

 栗原が指さした先には、瓦礫で隠れて見えづらくなっているが、横羽線へ登るための歩行者用階段があった。佐々木はニヤリと笑うとその場所を示した。

「皆、あそこから登るぞ、ついてきな!」

 栗原に「でかした!」と言い添えて、佐々木は篠山達と階段へ急いだ。

 

 

 

 

 

      チームデルタB班 横羽線

 

 

「うぇぇぇぇええい!!!」

「弓川君、数は?」

「全部で3体です!」

 藤牧達チームデルタは早々に横羽線に進入しており、高速で加速する規格外スケボーでアクロバットに猛進する藤牧の後ろを、負けじとワゴンRが追走している。

 藤牧達の進む先には任務書の通り、シユウの大群が見えた。それどころか、ワゴンRの後ろにも何体かのシユウが滑空してきている。

赤島:『班長の後ろにシユウが接近してきています。注意を』

 赤島からの無線を聞き取った藤牧は横目で後ろを見ると、確かに一体のシユウがワゴンRと藤牧の間で滑空しているのが見えた。

「っ!! いい度胸だぜ」

 藤牧はブレーキを踏み込みスケボーを減速させる。速度を保っているシユウとの距離が急激に縮まっていき・・・・・・。

「カウンターだ、突っ込んできたお前が悪い」

 シユウが炎玉を撃ち出そうと向けた右翼手を、藤牧の振るった金剛凍砕棒が粉砕する。バランスを失ってバウンドしたシユウは後ろのワゴンRの屋根ギリギリを通り過ぎ、さらに後ろのシユウ達を巻き込んだ。わずかに残った追っ手を弓川がスタングレネードで抑制する。

赤島:『見事です、班長』

藤牧:『注意ありがとな!』

 藤牧は再びスケボーのアクセルを踏み込んだ、ジェット噴射を利用して速度をあげていく。やがて、前方に複数の物陰が見え始めた。

赤島:『班長。本群が見えてきましたよ』

藤牧:『あぁ見えてきたな。タロス達は・・・・・・いるか?』

赤島:『PDAに反応ありません、GPSの動きからするに、ここよりさらに北へ動いているようです』

藤牧:『まあ待つまでもねぇか、よし、奇襲を仕掛けるぞ! 二人はできる限り近くまで接近したら車から降りろ!』

『『了解』』

 さらに加速。弓川は決戦を前に一息つこうとするも、赤島が左右に急ハンドルを切り始めたのを見て緊張の糸が張り直された。

「!?  赤島さん何を!?」

 赤島はほとんど表情を変えていない。少し強引に前方を見た弓川の表情が凍る、シユウの撃つ炎玉がまるで流星群の如き弾幕密度で襲い掛かってきていたのだ。

 藤牧はスケボーの機動力と自身の運動神経を活かして攻撃を避けていたが、車に乗っている赤島や弓川はそうはいかない。この弾幕の中を徒歩で移動しようとすれば速度が激減する上、弾幕を回避するのに体力を使うので、こちらが持久戦に負けて焼かれてしまうのは目に見えている。それならば車でできるだけ接近して、破壊直前で飛び降りた方が、危険ではあるが少しはマシだ。

「赤島さん・・・・・・」

「心配いらない、弓川君は神機を構えて、いつでも降りれるように、あとどこかに捕まっていた方が良いよ」

 言われるがまま、弓川は神機を片手にドアの取っ手を握った。

藤牧:『赤島!  道を開けっから後から突っ込め!』

赤島:『了解』

 赤島は慣れた動きで炎玉を回避していく、時折遠心力で倒れそうになる車体に何度か弓川は肝を冷やしたが、赤島の表情の変えずに運転する姿を見るとなんとなく安心を感じた。

 敵の縄張りに近づいているせいか、道中の瓦礫の山が増えている事に3人は気づいた。藤牧はその瓦礫をジャンプ台として使っているが、車ではそう簡単にできない。やったが最後前面がへこんで終わりだ。赤島も回避対象が増えたことに難しさを感じているのか、先程まで余裕を持っていた運転がぎこちなくなり、額に汗が浮かぶ。

(このまま・・・・・・頼りっきりでいいのか・・・・・・?)

 弓川は気づくと神機を持つ手に力が入っていた。なんとなく自分の無力さを感じ始めたその時だった。

「! しまっ・・・・・・!!」

 不意に赤島が小さくそう言ったのを弓川は聞き逃さなかった。

 前方を見ると、左右に大きな瓦礫があり、その間の向こう側に炎玉が迫ってきている光景が映った。藤牧はどこへ行ったか、姿がない。瓦礫を越えられない車は・・・・・・真っ直ぐ進むしかない。しかしこのままでは瓦礫の真ん中で炎玉と正面衝突するのを待つばかり。かといって今飛び降りれば、慣性の法則に従い左右の瓦礫にぶつかってしまう。

(あ・・・・・・これは駄目だ・・・・・・)

 赤島が諦めてドアの取っ手に手をかけた瞬間、突然ガラスの割れる音が耳を突いた。

(!?)

 振り向くと、弓川がフロントガラスを突き破り、ボンネットに乗っているではないか。赤島は目を丸くしつつもすぐにハンドルを取り直す。

「弓川君!  何を・・・・・・!」

 しかしその直後、炎玉が爆音と共に視界を覆った。

「・・・・・・!!」

 赤島はアクセルも踏んだまま、ぎゅっと目を瞑った。しかし、しばらくしても車は進み続けていて、身体も無事だ。そっと目を開ける。

「弓川君・・・・・・」

 その瞳には、神機の装甲を開いてボンネットにしゃがみこむ弓川の姿が映った。弓川が身を挺して炎玉を防いだのだ。

 弓川はフロントガラスをさらに割って車内へ戻ると、照れ笑いしながら赤島に言った。

「あはは・・・・・・これくらいしないと役立たず呼ばわりされちゃうからね」

 赤島は静かに安堵の息を漏らすと、フロントガラスを完全に割って視界をクリアにしてから再びアクセルを踏み込んだ。既にシユウの群れは目前だ。藤牧の無線が入る。

藤牧:『二人共無事か!?』

赤島:『はい、赤島、弓川共に無事です』

 焦りがうかがえる藤牧に対し、赤島は冷静に答える。

藤牧:『じゃあ手短に言うぜ! 車を降りたら二人は遊撃に回ってくれ!特に指示はださねぇ! 以上だ!』

 一方的に言うだけ言ってプツリと通信は切れてしまった。赤島は肩を竦めると、走ったままドアを開ける。

「弓川君、出撃準備」

 赤島も自分の神機を逆手に握る。弓川は既にドアに手をかけていた。

「私の合図で出てね?」

「了解!」

 意気のこもった弓川の返事に赤島も小さくうなずくと、前方を見直す。シユウの群れの最前列を通過しようとしているところだった。

 既に70キロ近く出ている藤牧や赤島達に、シユウ達も攻撃が当てられず、群れの中心に進入を許してしまう。

「行くよ……1、2の・・・・・・3!」

 赤島の宣言通り、二人は外に身を投げた! 弓川は前転で上手く受け身をとり、赤島は逆手に持った神機を地面に突き立て棒高跳びの要領で衝撃を和らげる。周りを取り囲むシユウの群れの中心に背中合わせになった二人は、まるで昔から深い絆を持つパートナー同士のように見えた。

「どちらが多く倒せるか勝負する?」

 弓川が珍しくいたずらっぽく笑う。だが赤島はそれにも冷静に、不敵に答えた。

「無属性兵装で来たのによく言う・・・・・・いいよ、勝負してあげる。せいぜい頑張ってね」

 二人は神機を構え、お互いの反対方向に突撃した!

 一方、藤牧はシユウ達と高速戦の真っ最中だった。

(ぐ・・・・・・やっぱりシユウの中にも速いのがいるんだな!)

 アクセルを踏みながら左右に移動し、相手の照準を乱す。

 滑空してくるシユウは時折滑空状態のまま拳で攻撃してくる。それを上手く避ける事のできるのが藤牧だ。

 突如、藤牧はドリフト旋回で反対方向に向きを変えた。シユウの滑空は旋回範囲に限りがあるため、向きを変えるために一旦止まらなければならない。シユウ達が再び滑空するより、向きを変えて十分加速した藤牧がシユウに突撃する方が早かった。

「砕けろォッッ!!」

 藤牧はスケボーからジャンプし、金剛凍砕棒で回転攻撃を繰り出す。遠心力、藤牧本人の腕力、頭狙い、慣性の法則・・・・・・倍々になった破砕攻撃はシユウの頭を直撃、胸から上が陥没したシユウは地面に叩きつけられた。回転攻撃を食らわせた後、そのままスケボーの上に着地する運動神経の良さは彼が生まれながらにして持つ能力なのだろう。

「次だ!」

 他のシユウ計4体が滑空状態に入る。V字型に編隊飛行する様子はさながら戦闘機のようだ。

(4体・・・・・・殺れるべ!)

 ふっ、と不敵に笑う藤牧の表情を、後を追うシユウ4体は見ていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

          チームデルタA班 横羽線

 

 

 

 佐々木率いるチームデルタA班は横羽線を北東へ動いていた。葵のアラガミセンサー(笑)に頼って移動した結果、横羽線を北上するに至ったのだった。

「佐々木先ぱーい、結局何体殺ったんですかぁ?」

 葵がシユウの両腕を削ぎ落としながら佐々木に聞く。多少だが返り血を浴びるため見た目はかなり殺伐としているが、炎放射のオラクルバレットでシユウを丸焼きにしている佐々木も似たり寄ったりだった。

「あー? まぁざっと10は殺ったんじゃないか?」

 篠山と栗原は奥へ逃げたシユウを深追いしてさらに北上していた。佐々木は時折ハイテク眼鏡のHUDで状況を確認する。このまま北へ進むと横浜支部の対アラガミ装甲壁が高く建てられたフェンリル防護範囲となるが、恐らくそこへ到達する前に支部から防衛班が出てくるだろう。

(まぁ・・・・・・どうせ防衛班の出番がくる前に篠山あたりが片づけちゃうんだろうし、むしろ俺達は後ろからの増援で二人が挟み込まれないように後方を潰して行く必要があるだろうな)

 丸焼きにしたシユウをぺろりと平らげた後、神機を肩に乗せて葵に指示を出した。

「葵ちゃん、後方を警戒しながら着いてこい! 香代ちゃん達の後を追うぞ!」

「おっす!!」

 威勢の良い返事と共に、佐々木を先頭に二人は走り出した。佐々木はハイテク眼鏡のHUDをオンにしたまま走る。

(場所はまだそんなに遠くない・・・・・・さっさと行って片づけるか・・・・・・)

 道路脇に転がるシユウの残骸を見て、少しだけ安堵しながら先を急いだ。

 やがて熱気が感じられるところまで来たとき、佐々木は反射的に神機を構えた。辺りは燃え広がり、その中でシユウ達が舞っている。

 踊るシユウ達の隙間に二つの小さな影が見える。篠山と栗原だった。

「篠山ぁ!」

 葵が大声で呼びかけると、篠山は片手を挙げてそれに応じた。まだ多少なりとも余裕があるようだ。

(炎が強い・・・・・・これじゃ援護には入れないな)

 佐々木と葵の前には炎の壁ができあがっていた。ゴッドイーターはオラクル細胞により身体能力は上昇しているが所詮人間だ。炎の中に長時間いれば当然炭になってしまう。それどころか、アラガミから生まれた炎なら尚更ゴッドイーターにとっては脅威だ。

 炎の壁を強引に突っ切ろうとする葵の首元を佐々木が掴む。

「何ですか佐々木先輩!! 急がないと二人が・・・・・・!」

「いや、あの二人なら大丈夫だ。それより他にすることがある」

「・・・・・・?」

 佐々木は首元を掴む手を離すと、神機を銃形態に切り替えた。ビューグル砲新改の銃身が炎に向けられる。

「氷系のオラクルバレットを使って炎を鎮火するんだ。このままだとあの二人も炎に焼かれちまうことになる!」

 佐々木は薬室に当たる部分に氷系爆破バレットと氷系放射バレットをセットし、舞い上がる炎の出所に向けて放った。オラクル細胞でできた氷の粒子が散布され、炎で溶けて水となり炎に覆い被さる。

「葵ちゃん!俺はこっちをやるから警戒頼む!」

「おっす!」

 葵は佐々木の周囲でシユウが来ないか見張る。何をしているのか分かった篠山も、なるべく佐々木達の所に攻撃がいかぬよう陽動行動に出ていた。シユウが徐々に力を失っていき、炎の舞踏会場は、もはや無くなりつつあった。

「炎が大分弱まってきた! 葵ちゃんは戦闘に参加だ!」

「おっす!」

 冷却チェーンソーを引きずりながら葵は篠山の後ろにつく。

「あたしが来たからにはもう安心だよ篠山!」

「はぁ・・・・・・私はいいから栗原君を援護したら?」

 篠山が顎で指し示した先には、篠山が相手にしていたのとは別のシユウと交戦する栗原がいた。華麗な動作でシユウを牽制しつつあるが、余裕ではなさそうだった。

「全く・・・・・・これだから美意識野郎は・・・・・・」

 愚痴をこぼしながらも、冷却チェーンソーを握りしめた葵は栗原の元へ走った。

(くっ! なかなか大きなダメージが入らない・・・・・・!)

 栗原は見た目を気にした戦闘を好む、それ故上手くいかないときがしばしばあるが、今まさにそのケースだった。そこに。

「そこどけぇ栗原ぁ!」

「!?」

 突然の怒鳴り声に驚きながら後ろを向いた栗原の顔面スレスレを何かが高速で掠めた。再びシユウに視線を戻すと、葵が逆手に持った神機をシユウの胸元に突き立てていた。突然の出来事に唖然とする栗原を余所に、戦闘が続けられる。

「消し飛べッ!!」

 激しく抵抗するシユウにしっかりと食らいついた葵は神機を突き立てたまま、軍部から拝借した手榴弾を傷口にねじ込んで炸裂させた! その反動で葵は神機ごと空を舞ったが、慣れている葵はバック転で地面に着地した。胸元を衝撃で破壊されたシユウが悶えている。

「やっぱり生きてるか……まぁいいや、食べちゃおっと」

 葵の神機がシユウを生きたまま食べ始める。その後ろでようやく栗原が口を開けた。

「あ・・・・・・ありがとう・・・・・・ございます」

 冷静さを保っているつもりらしいが、その声は落ち着きを払っていなかった。

「ふん、このくらいの獲物で苦戦してるようじゃまだまだだねぇ」

 葵は少しばかりおどけて見せる。捕喰を終えて神機解放・・・・・・バースト状態となって篠山達の元へ戻った。

 篠山は既にシユウを片づけており、捕喰回収に勤しんでいた。佐々木も炎をほとんど鎮火し、虫の息となったシユウ達を捕喰しているところだった。

「焼き鳥もいいとこだよなぁ……ざまさんがいれば喜んで完食したんだろうけど」

 あまりの数に佐々木もつい愚痴をこぼす。やがて一帯の捕喰回収を終わらせると、全員に周りを警戒させてから無線のスイッチを入れた。

佐々木:『こちらチームデルタA班、マッキー聞こえるか?』

 

 

 

 

 

 

         チームデルタB班

 

 

 既に戦闘を終わらせていたチームデルタB班では、赤島達が捕喰回収に専念する間、藤牧はワゴンRの上に座ってレーションをかじっていた。

 ちなみにフェンリルから神機使い達に支給されるレーション(コンバット・レーション)は様々な形状のものがあり、効果の出方、個人の好みも様々である。

 レーションをかじる手を止め、無線のスイッチを入れる。

藤牧:『はいはい……こちらチームデルタB班の藤牧、どうしたタロス?』

佐々木:『こっちは大体片づけた、そっちは?』

藤牧:『とっくに片付いてるよ、周りにアラガミの反応もないし、多分一掃できたと思う。今は弓川達が捕喰回収してるよ』

佐々木:『そっか、こっちにもアラガミの反応は……』

 急に佐々木の無線が無言になった。

藤牧:『……おい、どうしたタロス?』

佐々木:『…………待った。任務はまだ終わってないぜ』

藤牧:『……あ?』

佐々木:『西の方からアラガミ反応だ! 速度からしてシユウに間違いない……マッキー、まだ動けるだろうな!?』

藤牧:『もち、で……俺らはどう動けばいい?』

佐々木:『そうだな……隣にもう一車線あるよな?』

藤牧:『あぁ、見える』

佐々木:『そこを通って北上してくれ! アラガミ反応は三ツ沢線を通ってる、俺達は南下して急行するぜ!』

 旧横浜を南北に通る高速道路、三ツ沢線と横羽線は旧横浜駅の近くで合流する。佐々木は西から三ツ沢線を通って来るアラガミを、北と南から迎え撃つつもりなのだ。

「わかった、急ぐぜ」

 藤牧は通信を切ると、赤島達を呼び寄せて事情を話す。

「状況からしてシユウ達のリーダーですね」

「じゃ、じゃあ行きましょう。藤牧さん!」

「お前らは隣の車線から適当に使えそうな車をパクってこい、俺はこいつで行く」

「「了解」」

 藤牧は足元のスケボーを蹴りあげて手に持つ、三人は隣車線、三ツ沢線へと飛び移った。

 

 

 

 

 

 

「どういうことです佐々木先輩?」

 佐々木が無線を切った直後に葵が質問を投げかける。

「そのまんまの意味だ、西の方から三ツ沢線を通ってアラガミが接近中だ。状況から見てシユウ達のボスじゃねぇかと思うんだが」

「リーダーがのさばっていたらいずれまたシユウ達が集まってしまうでしょうねぇ」

 篠山が冷静に解析を行う。PDAを確認してアラガミの動きを探る。

「とにかく急ぐぜ、お前ら準備いいか!?」

 佐々木はバーストした神機を振り払う。篠山が続く。

「いつでも準備出来てます」

「あたしもだぜ!」

「同じく」

 4人は地面を蹴って走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

       横羽線三ツ沢線合流地点付近

 

 

 佐々木率いるA班、藤牧率いるB班が最後の戦闘へ向かう。先に接近したのは藤牧達だった。

「流石に速ぇな!ジェット搭載は!」

 派手なドリフトを決めながら藤牧は一度停止する。赤島も藤牧に添うように車を停車する。

「班長、そろそろ佐々木先輩の指示を仰いだ方が良いのでは?」

 赤島が車内からそう言い添えると同時に、無線に着信が入った。もちろん、佐々木からだった。

佐々木:『マッキー速すぎ! スケボー乱用しすぎだろ!』

 息が弾んでいるところを見ると、どうやら全力で走っているようだ。

藤牧:『まァそう言うなよ、せっかくの装備なんだし』

佐々木:『こっちは全力疾走だっつーの! それより、こっからの流れを言うからよく聞いてろよ!』

(こっちは余裕すぎてむしろ聞き流せないんだけどな)

 藤牧はタバコに火をつけて適当に続きを促す。

佐々木:『話したとおり、あと数分しないでそっちにアラガミが到着する! 俺らも急ぐが多分アラガミの方が速い! で! 俺らはそっちについた後すぐに戦闘に入るから、マッキー達は待ち伏せしててくれ!』

藤牧:『俺たち全員でそいつをぶっ叩こうってこと?』

佐々木:『そういうこと! じゃあ頼んだ!』

 一方的に通信が切られた。その通信を聞いていたらしく、赤島や弓川も藤牧の方を向いて無言で頷く。

「よっしゃ、じゃあ各々配置につけー!」

 神機を手に持って車から二人が飛び出す。南からの合流線、三ツ沢線を三人で封鎖する。

「・・・・・・あぁ、見えてきたな」

 道路に沿って真っ直ぐに突っ込んでくる何かがいた。

「シユウ・・・・・・? いえ、シユウ堕天種です!」

 弓川が叫ぶ、アラガミには個体別あるいは分布別に何かに特化した特殊なタイプが存在する。それが『堕天種』である。例えば炎に対して強力な耐性があるとか、従来より強力な技が使えるようになったとか、特化の内容は多々ある。

「雷撃特化のシユウですねぇ、なるほど・・・・・・アレがリーダーですか」

 呑気にも赤島がふむふむと言う。

 元々極低温にも弱かったシユウが、極低温に耐性を持ち、何を思ったか雷撃を放つようになったのがシユウ堕天種だ。極低温へは多少耐性ができたが、その代わり高温には弱いままらしい。

「あぁー、こりゃあおまえ等に任せることになるかもな」

 藤牧は銃形態に切り替える。彼の剣形態は金剛凍砕棒のため、極低温へ耐性を持ったシユウ堕天種には破砕効果しか期待できないのだ。

「お任せください、焼き斬ってくれます」

 赤島はいつもの冷静さの中に高揚感を交えながら、火刀を愛しそうになぞる。

「ギリギリまで引き寄せても良いかもしれないが・・・・・・まあいいや、俺の合図で突撃してくれ」

 藤牧は片手をあげるのを見ると、赤島と弓川の二人は身構えて突撃の合図を待つ。

 アラガミの影が雷と共に正体を現し始める。シユウの翼の部分が白く、分厚くなり、放電能力を備えたタイプ・・・・・シユウ堕天種だ。それも少し成長した個体のようだった。

藤牧:『こちらチームデ・・・・・・マッキーだ。シユウ堕天と交戦寸前なんだが、今どこだ?』

 藤牧が無線を入れる。無線の向こう側で弾んだ声が聞こえてくる。

佐々木:『こちらタロス、こっちからも見えてきた! お前が右向けば俺らが見えるぜ!』

 藤牧が言われたとおりに右を見ると、道いっぱいに広がって神機を手に疾走してくる神機使い達の姿が見えた。

 先陣を切る佐々木が全員に指示を出し、道路の縁からA班が飛び出す。B班の前に着地して防戦陣形を取った。タバコをくゆらせながら立つ藤牧の隣に佐々木が着地する。

「よう戦友、生きて会えて光栄だー」

 藤牧が棒読みで佐々木に再会の挨拶を告げる。佐々木はチームデルタのリーダーとして、もはやあと数十メートルと距離の開いていないシユウ堕天に対して戦闘指揮を行う。

「銃形態組は銃撃で弾幕を張って奴を足止めしてくれ! 残りは俺とマッキーについて近接戦! アサルトは撃ち終わった直後に近接戦に参加するのをお勧めするぜ!」

 銃撃の効果を上げるために、滑空状態で急接近してくるシユウ堕天をギリギリまで近づける。やがて距離が数メートルまで近づいた瞬間、藤牧と佐々木が叫んだ!

「「今だ!撃てぇぇぇぇッ!」」

  同時に、一斉にオラクルパレットが発射され始める。炎の弾丸やレーザーがシユウ堕天を返り討つ。

「タロスッ! 受け渡し弾だッ!」

 藤牧が佐々木に向けて受け渡し弾を発射する。佐々木も藤牧に受け渡し弾を放った。相互作用によるリンクバーストだ。

 新型神機の特殊技能とも言うべき能力、アラガミバレットの発射。アラガミのオラクル細胞を取り込んで神機内で処理した後。捕喰したアラガミの特徴を継承したバレットを発射することができる機能だが、アラガミバレットを神機内で再処理すると他者の神機に受け渡しを行うことができる。神機使い達はこれを【受け渡し弾】といい。受け渡された神機使いは【濃縮アラガミバレット】の発射が可能になる事に加え、超飛躍的に身体能力が向上する【神機連結解放モード】又の名を【リンクバースト状態】となるのだ。

 佐々木と藤牧の二人は3回の受け渡しにより、一気にリンクバーストレベル3となる。リンクバースト中は通常バースト時の特徴に加え、飽和状態となったオラクル細胞が瘴気のように神機から溢れ出してくる。

 リンクバースト状態は重ねがけされることでさらなる能力強化が可能だが、基本的には3回までと教えられる。4回以上リンクバーストした例は存在せず、暴走を恐れて誰も試そうとしないそうだ。

「おおお・・・・・・!」

 佐々木はリンクバーストした感覚に軽い震えを覚える。普通のバーストとは違う感覚に、何度やっても慣れないのだった。

「よし、後ろに乗れよタロス」

 藤牧がスケボーの後方を示した。

「えぇ~? 二人も乗れるかそれ?」

「俺にしがみついてればオッケだろ、それにすぐ降りてもらう」

「は?」

 藤牧は佐々木に何事か耳打ちする。それを聞いた佐々木はニヤリと口端を上げると、冷却ナイフを逆手に持ち直して藤牧の後ろに乗る。藤牧は近くにいた弓川に対して指示を送る。

「弓川、神機構えてシユウ堕天の近くに待機しろ、いつでも強力な一撃が放てるようにしとけ!」

「あ……はい!」

 佐々木は藤牧の肩を強く掴む。丁度その頃、チームデルタの弾幕が薄くなり始めていた。少し冗談めかして佐々木は警告を送る。

「おい、味方の弾に当たるなよ?」

「は……俺の運動神経舐めてんのか?」

 藤牧は一気にアクセルを踏み込んだ。慣性の法則による強力なGが二人を襲う。藤牧は構わず速度を上げて蛇行しながらシユウ堕天とすれ違った。二人に気付いたシユウ堕天が振り向き、小さな雷球を連射する。

「うわ危なっ!」

「大丈夫だって!」

 背中スレスレを雷球がすり抜ける恐怖に、佐々木は背筋を冷やした。しかし、弾幕を直に受けたシユウ堕天は、流石に体力が衰え始めていた。

「弱ってる弱ってる……いいぞ!」

 藤牧は少しだけ減速して姿勢を安定させると、スケボーに乗ったまま神機の照準を合わせた。縮地の銃口がシユウ堕天に向く。

「タロス! 上手くやれよ!?」

「任せろォ!」

 スケボーのアクセルを踏み込んで突進しながら、藤牧の縮地が文字通り火を噴く。炎の弾幕は一点集中してシユウ堕天に降り注ぎ、悲痛の叫びらしきものがあがる。

「次でとどめだ!一気に叩くぞ!」

「うぉぉおおおおぉッッ!!!」

 シユウ堕天にギリギリまで近づいたところで、佐々木がスケボーから飛び上がり、逆手に持った神機でシユウ堕天を地面に釘づけた。

 シユウ堕天ごと地面に突き立てられた神機から手を離し、佐々木は物理法則に任せて身体を宙に放る。着地した直後、すぐに弓川に向かって叫んだ。

「いっけぇぇぇぇぇぇ!」

 弓川の肉斬りクレイモアによる連撃がシユウ堕天の翼を砕いていく。

「とどめだぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

 藤牧がスケボーから離れ、走って勢いをつけながら金剛凍砕棒を振り上げる。悶え苦しむシユウ堕天は藤牧に向けて雷玉を放とうとしたが、藤牧の方が一歩早かった。

 グシャッっという音がして、高速道路を支配していたシユウのリーダー……シユウ堕天は動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 藤牧が正確に頭だけを狙ったため、頭だけ跡形も残していなかった。昔の兵士は敵の将軍を倒すと頭だけ切り落とし、自分の上官に差し出したらしいが、これでは差し出す頭も無い。

「見事に砕ききったな、流石脳筋だ」

「言うな眼鏡猿め」

 佐々木はいつも通りの悪口をききながら、シユウ堕天の身体ごと地面に突き刺さっている神機を引き抜いた。

「しかしマッキーにしては結構頭使った作戦だったじゃん、俺の冷却ナイフでシユウ堕天を釘づけして、弓川と自分の神機で殲滅しようなんて言い出すとは思わなかったぞ?」

「俺だっていつでも力任せってわけじゃねぇよ!」

 へらへらと笑いながら二人の班長は任務の成功を喜び合う、チームデルタのメンバーもお互いの功績を称え合っていた。そんな中二人の班長のもとに弓川が話しかける。どこか興奮している様子だ。

「藤牧先輩! 最後の重要な場面に僕を使ってくれて光栄です! ありがとうございます!」

「ん、あぁー、うん、うん」

(あ、こいつ絶対大した理由もってなかったな……)

 適当な返事をする藤牧の心中を佐々木は見抜いた。もちろん口には出せまい。

「弓川は確かマッキーに憧れてんだったよな?」

「はい! 圧倒的な力でアラガミを殲滅する鬼神の如き戦いに感激しました!」

「き、鬼神?」

 鬼神っぽいから憧れた。という理解しがたい表現に藤牧も頭を悩ませたが、まぁせっかく憧れてくれてるんだしいいか。とポジティブに考えることにした。というかせざるを得なかった。

 太陽は既に沈み、暗い部分が空を覆いかけていた。藤牧と佐々木が神機を肩に担ぐ。

「さぁ、支部に連絡を入れてさっさと帰って飯だ! 今夜は俺のおごりだ!」

 佐々木の太っ腹な決定にチームが歓声を上げた。こういうところが後輩に好かれる理由なのかもしれない。

(今夜も賑わいそうだなぁ……まぁしばらく鳥系は勘弁かな)

 と、藤牧のみならず誰しもが思っていた。佐々木が今夜大量の焼き鳥を振る舞おうとしていることも知らずに……。

 

 

 

 

 

                                     ――To Be Continued――




前書き欄に何も書きたくないときってありますよね…………ねぇ?
今回はスピード命のシユウ戦でした。どうでしたでしょうか? スピード感溢れてましたか? 文章だとどうしてもスピード感に劣ってしまうのがネックです。途中で受け渡し弾やリンクバーストについてもう一度解説していますがお気になさらず……(?)


お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、途中佐々木君と藤牧君が原作のリンドウさんと似たようなこと言ってます。上官つながりということで合わせてみました。


名○偵コ○ン? …………いえ、知らない子ですね(すっとぼけ)

じ……次回はようやく物語が動き出します。そしてゴッドイーターの皆さんなら良くご存知のあのでっぷりしたアラガミも登場します。どうかお楽しみあれ。
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