イヌ科イヌ属のネコ目で哺乳類、オオカミに近いが小型
単独、ときには小規模の群れで活動する。適応力に優れていて、出没環境も幅広い。オオカミのいない地域では群れで大きな獲物を狩ることもある。
情報ソース:ウィキペディア
間が自らの謎について明かしてから数週間が経過した、山ノ丈と天野が協力して間の調査にあたったが、その後何も得られるものはなく、二人とも意気消沈、全く進展は無くなってしまった。間自身は改めて自分を認識した上で何も言わなかった。しかしそんな状況でも、旧友の仲に亀裂が入る事はなかったのだった。
そんなある朝、佐々木はけたたましく鳴る携帯によって目が覚めた。
(ったく・・・・・・起きた直後に誰だよ・・・・・・流石に今出撃ってのは無しだぜ・・・・・・)
うんざりした気分で携帯を取ると、佐々木は文字通り、飛び上がりそうになった。
『佐々木軍曹、起きたようだな』
「・・・・・・支部長!」
声の主、もとい発信主は、このフェンリル横浜支部の長、高堂だった。声色はあまり穏やかではない、不味い。と思ったときには高堂は次の言葉を発していた。
『佐々木、支度をして今すぐにエントランスに来い、いいな?』
「は、はい! 今すぐに!」
わけもわからずだが文句は言えない、急いで携帯の着信履歴を見てみると、間や藤牧、さらに高堂と続いて計5件近くきていた。時計を見る、午前9時前・・・・・・フェンリルにちゃんとした出社時間はないが、呼び出しがかかっていたのは確かだろう。佐々木は素早く寝間着から私服へ着替え、朝食を食べる暇もなく部屋を飛び出した。
横浜支部 エントランス
同刻、エントランスカウンターには数人の男達がいた。即ち、佐々木を除いた幼なじみメンバーと高堂である。
高堂がアナグラ内に姿を見せることはあまりないが、通りかかる職員や神機使い達は漏れなく全員挨拶や会釈を高堂に向けている。同じく挨拶や会釈で返す高堂は、なるほど信頼が厚い理由が少しだけわかる気がした。高堂の羽織る白いコートが間にはまぶしかった。
対する間はそれとは反対に、薄手だが丈が膝まであるワインレッドのコートを黒いTシャツの上から羽織り、下は灰色のズボンといった暗色基調の服でカウンターに寄りかかっている。
その横で長い髪の毛をいじりつつ、ポップコーンをかじっているのは青桐だった。彼は愛用のダッフルコートではなく、白黒チェック柄のワイシャツの下に白いTシャツ、ズボンは黒という。完全なモノトーンファッションだった。
その向かいでフラフラと立っているのは山ノ丈だ。徹夜明けなのかやや瞼が下がっている。白いTシャツにジャージズボン、その上から着ている皺だらけになった白衣が様になっている。
山ノ丈の隣で煙草をふかしているのは藤牧。彼は基本的に厚着せず、ただのTシャツ、ポケットがたくさんついた半袖のミリタリージャケット、下は短パンという、体育会系の雰囲気を要らん程に醸し出す服装だ。
「タロスまた遅刻かよ! 笑えるわー」
青桐が長い髪をユサユサと揺らしながらさも楽しそうに笑う。彼は黙っていれば結構モテるのだが、彼自身にそんな選択肢はない。
「あまり笑える話じゃないのだがな・・・・・・だから彼は昇進がないんだ」
高堂は溜息をつきながら藤牧の煙草から上る紫煙を吹き散らす。
今朝、支部長たる高堂が彼らを呼び出したのは他でもなく、東京本部からの連絡を言い渡すからだった。昨夜メールを出して、今ここにいる数人からは了承の返信が届き、佐々木だけがただ一人返信をよこさなかった。ただし間の報告により佐々木が部屋にいるのは確認されていて、さらに予定がないことも確認済みだ。
そんなとき、エントランスのエレベーターが開き、ジーパンに赤いパーカーを着た佐々木が走ってきた。
「すいません支部長! 寝坊しました!」
「言い訳しないその潔さは褒めてやるがなぁ……」
「高堂さん、竜には私達から言っておきますから、私達を呼んだ理由は何なのか説明してくださいよ」
間が庇いに入ってようやく話が進む、まだ話が始まっていなかったことに佐々木は安堵するしかなかった。高堂はため息をついてカウンター内から書類を取り出す。
「さて、その問題の話だが……間少尉」
「はい」
「青桐伍長」
「ウィッス」
「藤牧上級曹長」
「おす」
「佐々木三等軍曹」
「うぃーっす」
「山ノ丈兵長」
「はい……」
「以上五名は本日付で【チームコヨーテ】として動いてもらうことになった」
いきなりの通達に佐々木達全員が戸惑った。山ノ丈が片手を挙げて聞く。
「コヨーテ? 横浜支部は軍隊式アルファベットでチーム名をつけているはずでは?」
「その通り、横浜支部は軍隊式アルファベットでチームを分けている。ただ、今回のこれは私の意思ではなく、東京本部長直々の連絡なのだよ」
「何?」
ふと、青桐の脳裏に夏美本部長の顔が浮かぶ、あの老人が? 何のために?
「本部長」
「なんだ青桐伍長?」
「何故俺達なんでしょうか?」
意外な質問に、藤牧が反応する。
「いいじゃんか別に、俺は構わないんだけど」
「じゃなくてさ、なんで東京の本部長は俺達が昔一緒だったこと知ってんのかなってさ」
夏美に会ったことは藤牧達には話していない。そう天野に口止めされているのだ。藤牧が考えていると、高堂が先に答える。
「ああ、それは私が『お前たちのグループは任務の成功率が良い』という話に向こうに伝えたら、じゃあそれでチームを組めばいいじゃないかと言われてな、さっそく手続きをしてくれた。新型神機使いだけの精鋭部隊というわけで、私もこれには全面的に賛成だ」
間が高堂の書類を手に取って読み下しながら口を開く。
「コヨーテってのは狼に近いが別種類の動物だ。単独又はペア、必要であれば少数で群れを成して行動し、適応力の高いことでも有名だ。なるほど私達にピッタリだな」
「狼に近くて狼が天敵っていう……狼と狐のハーフみたいなアレか、アラガミが繁栄する前からあんまり目立たなかった生き物だけどな」
山ノ丈が自分の知識を披露しつつ、間に賛同する。この二人は揃って知識が豊富なのだ。山ノ丈は勢いに乗ってさらに続ける。
「でも北米の部族がトリックスターとして崇めていたとかいう話もあるんじゃなかったか?」
「ははは、そういうところは竜が一番合ってるな」
「なるほど、言えてるな」
チーム名の話が、いつの間にか佐々木をいじる話へと転じる。基本的にこの二人と一緒に会話をすると大抵こんな感じで話が逸れる。それどころか高堂も一緒になってからかいに入るので、もはや四面楚歌である。
「ちょ……何だよぉ! 俺そんなに悪いことしたか!?」
とはいえ、本人も実は自覚があったりなかったりである。そんな様子を見るうち、青桐の中の疑惑も押し縮んでいく、ただの気のせいだろうか。
「コホン……さて、そんなチームコヨーテの基本任務だが……精鋭部隊とは言ったが基本的には専門の任務が無い、遊軍といっていいだろう。ちなみに既に他の班のリーダーを務めている佐々木や藤牧はなるべくコヨーテの方を優先して動くこと」
「了解ですっと」
「で、早速なんだが任務に当たってもらう。お前達は旧戸塚の付近に住んでいたろう?」
「戸塚!? 何かあったんですか?」
「旧戸塚駅周辺で、ヴァジュラ1体と、それに従うコンゴウ2体の反応を確認した。旧戸塚はもうほとんど一般人がいないという壊滅街だが、ヴァジュラ一体でもこちらに流れ込むと後々厄介だ。今のうちにこれを叩け、また、その他にもアラガミ反応が出ているようだ。留意しろ」
「「「「了解」」」」
「山ノ丈には今回オペレーターについてもらう」
「了解っすわ」
「では、各自準備に入れ、本日十時に出撃ゲート集合だ」
任務情報及び装備情報
ミッションタイトル「暴獅子と双子猿」
概要:横浜市戸塚駅付近に現れたヴァジュラ1体、コンゴウ2体を討伐せよ。今現在で一般人の報告はない。周辺にアラガミ反応あり。必要があれば討伐せよ。
特記事項:この任務は高堂支部長から新型神機精鋭部隊「チームコヨーテ」に発注するものである
間遼太郎
剣:発熱ナイフ改(ショート)
銃:虎銃新(アサルト)
装甲:強支援シールド(シールド)
佐々木竜太郎
剣:獣剣陽真(ショート)
銃:獣砲 陽 改(アサルト)
装甲:強回避バックラー(バックラー)
藤牧圭助
剣:強化ノコギリ改(バスター)
銃:群豹改(ブラスト)
装甲:尾盾イヌガミ真(シールド)
青桐拓馬
剣:鉄乙女剣新改(ショート)
銃:ヤタガラス(スナイパー)
装甲:汎用シールド硬(シールド)
旧戸塚駅
高堂の言っていた通り、旧戸塚駅は既にアラガミによって壊滅状態であった。ビルは見る影もないほど損傷し、道路は荒れ、モニュメントはひしゃげて、アラガミに潰されたのであろう車は今もまだ放置されている。そして地上からは見えないが、地下は市営地下鉄を中心に大きく掘り広げられ、炎やガスなどで熱い煉獄と化している。
旧戸塚では未だに安全地点が確保されておらず、仕方なく旧戸塚駅のプラットホームの屋根の上に神機使い達は着地する。今回も例外ではない。
「「イヤッホォォォォゥゥッッッ!!!」」
佐々木と青桐がはしゃぎながら屋根の上へ降り立つ。藤牧は小さく溜息をついた。
「タロス元気すぎるだろお前・・・・・・」
「まぁまぁ、楽しみながら仕事が出来るのは良いことだ。それが死と隣り合わせであってもな」
間が上着を払いながらなだめ好かすように呟く。
ふと、佐々木が青桐の神機に目を向けた。
「あれ? 青さん銃変わってね?」
「おう、ヤタガラスだぜ!」
青桐は銃形態の神機をかざす。暗色の銃身が日の光を照り返して黒光りする。青く長い銃身を持つ『アルバトロス』を強化させると、こんな黒い銃身になるのだ。
「タロスの後輩が素材を援助してくれたんだ。感謝だぜ」
「へぇ~」
最近青桐が佐々木の後輩の支援に入っているらしいことは間達も聞いていたが、そうか彼も人に感謝されるのか。と間は不毛な事を考えていた。
「さて、タロス。頼むぜ」
藤牧が神機を肩に乗せて佐々木に顎で示す。今回藤牧は山ノ丈特製スケボーを持ってきていないが、佐々木はハイテク眼鏡を持ってきている。
「ほいほーい、さてさてヴァジュラとコンゴウはーっと・・・・・・」
佐々木はハイテク眼鏡のレーダーをつける。その間に、間は無線をオペレーターの山ノ丈に繋いだ。
間:『こちらチームコヨーテの間だ。丼さん、聞こえるか?』
山ノ丈:『あーあー、テステス、感度良好、感度良好』
間:『あぁそうかい……で、そっちの広域レーダーは今どうなってる? アラガミ反応は?』
山ノ丈:『あーちょっと待ってろい・・・・・・』
無線からキーボードをいじる音が聞こえ、答えが返ってくるタイミングが佐々木の声と同時だった。
山ノ丈:『ざまさん、コンゴウ二体がバスターミナルにいる!』「おいお前ら! コンゴウがバスターミナルのところに!」
数秒の沈黙の後、呆れて溜息をついた間は肩を竦めて無線に一言。
間:『丼さん、私はヴァジュラとコンゴウ以外の反応について聞いたんだがね』
無線を聞いたか佐々木の声を聞いたか、四人は一斉に動き出した。神機使い特有の身体能力を活かし、パルクールのような軽快さで駅を飛び出していく。その姿はさながら忍者のようだ。
バスターミナルは駅の改札前の広場の真下にある。駅ホームからそこへ行くなら一旦駅の内部へ進入した方が早いが、彼らの場合は屋根の上を跳躍して移動できるので、そちらの方が早い。
「青さん! バスターミナルに一番近い番線に止まってる電車の中から援護してくれ!」
「おいーっす」
佐々木の指示によって青桐は最もバスターミナル寄りの番線で廃線同様に止まっている横須賀線車両の中に身を投じる。
「といってもコンゴウに極低温ってあまり効果がねぇんだけどよぉ・・・・・・」
そうぼやきながら青桐は氷属性を持つ極低温バレットをセットする。その頃三人は散開して柱の裏や瓦礫の陰などに隠れていた。無線から小声で話す声が聞こえる。
間:『皆聞こえるか? PDAで全員の位置を確認して欲しいぜ』
青桐と藤牧は自分のPDAで地図を表示すると、画面には自分の反応とその他の反応が映っているのを確認した。もちろん佐々木は眼鏡、山ノ丈はオペレーターの画面で確認する。
まず、バスターミナルの真ん中の通路にコンゴウが一体、もう一体はそこから近くを流れる柏尾川に架かっている橋の上に居座っている。今はヴァジュラの反応がない。
間はバスターミナルの上、二階の駅改札を出て右側にある広場の草むらに身を潜めていた。藤牧は元々交番だった瓦礫の山の陰に身を潜め、佐々木はバスターミナルから外れたところに放置してあった半壊状態のバスの中に隠れていた。無論青桐は言うまでもなく横須賀線の中、開いているドアの中から銃身を覗かせている。
間:『皆確認した? じゃあ次に、最近のここらの地理に詳しいのは?』
青桐:『俺だな、戸塚へはよく来るし』
藤牧:『そうだね、俺らも最近はこっちに来てない』
間の通信に応じたのは青桐と藤牧だった。ほんの数秒沈黙した後、間が再度通信を開く。
間:『青さん、私がまだこっちにいたときと、今での地理的な違いは? おおまかでいい』
青桐:『違いしかねぇよ、違わないところといったら大体の建造物の位置ぐらいだろ』
間:『それがわかればよろしい。ところで・・・・・・』
間は無線を調整してオペレーターにも聞こえるように通信をつなぎ直す。
間:『丼さん、聞こえるか?』
山ノ丈:『ん? はいはい聞こえてるよ』
間:『今回の任務って誰がリーダーなの?』
間の疑問を察したのか、佐々木が通信に乱入してきた。山ノ丈も答えが頭に浮かんでこないのか、書類をパラパラとめくる音が聞こえてくる。
山ノ丈:『えーと・・・・・・特に記されてないから小尉のざまさんじゃね?』
佐々木:『えぇ~何それぇ!?』
佐々木が声のボリュームを上げて口を挟んでくる。間は頭痛を覚えた。
(私だって好きで小尉なんかやってるわけじゃねぇよ・・・・・・)
さりとて現実、小尉なのだから仕方がない。
そんな階級談義をしていると、階下と橋上のコンゴウが移動し始めた。全員我に返って声色を変える。
佐々木:『やべぇ! あいつら逃げるぞ!』
間:『ええいもう竜! お前でいいから命令しろ!』
間が怒鳴ると、待ってましたと佐々木が指揮を執り始める。
佐々木:『青さんは出来る限りその場から狙撃に集中! マッキーはバスターミナルにいる方を叩け! ざまさんはそのエリアから橋の上に移動してコンゴウと交戦しろ! 俺はざまさんを援護するぜ!』
間:『丼さん聞こえたな!? これより討伐対象のコンゴウ二体と交戦を開始する!』
山ノ丈:『了解、健闘を祈る!』
無線を切る音が、戦闘の合図となった。
無線を切ると同時に青桐が狙撃を開始した。幾何本もの極低温レーザーがバスターミナル下のコンゴウを貫く。突然の奇襲にコンゴウが喚いた。
青桐:『奇襲に成功だお!』
藤牧:『そのまま狙撃してくれ!』
バスターミナルの建物は若干柱が沈下しているため、天井が低い、こうなると藤牧はバスターである強化ノコギリ改を思うように振り回す事ができないので、青桐は狙撃して敵の注意を引き、太陽の下に引きずり出す作戦に出た。それを察した藤牧は一度線路側に逆戻りし、駅の中へと走り出す。
「こっちも行くぞ!」
間はバスターミナルの二階の電灯を蹴って宙へと飛び出した。ハイテク眼鏡でその姿を確認した佐々木も、バスのフロントガラスから飛翔。獣剣や獣砲から使用者へ伝わる効果を存分に発揮し始める佐々木の身体は文字通り宙を駆けた。空中で神機を切り替え、地を駆ける間を後ろから追う。既に二人に気づいている橋上のコンゴウの臨戦態勢、その姿はさながら縄張りを守る剛猿そのものだった。だが、神を喰らう者達はひるまない!
「!!」
ふと、後ろからの射撃音に気づき身を低くした間の頭上を、佐々木の雷を纏う撤甲榴弾ーー雷撃:トルクポウーーが掠め、コンゴウの顔面に直撃した。足を止める間と追走していた佐々木が肩を並べる。
「・・・・・・お前殺す気かよ」
「いやぁ、お前なら避けてくれると思って・・・・・・ねぇ?」
どんな事態になっても佐々木はおどけてみせる。間達にとってはそういうのもいつも通りなのだ。
(トルクポウが爆発するまでに約10秒・・・・・・それまで足止めしてカタを・・・・・・)
間が分析を行っているあいだに、佐々木が大幅ステップと共に攻撃を始めていた。佐々木はアラガミに対する煽り文句も忘れない。
「ほらほらどうした! 図体のでかいブタめッ!」
コンゴウも挑発に乗ったように雄叫びをあげる。コンゴウに限らず、アラガミは人間のような理性や知性を持たないのがほとんどだ。動物レベルの知性には挑発行為が非常に有効なのだ。間もそれを思い出す。
目の前で小賢しく動き回る佐々木に気を取られるコンゴウの背後に間は悠々と回り込んだ。神機を捕喰形態へ移行させ、コンゴウの背中にかじりつく!
(なるべく深く牙を食い込ませて・・・・・・喰い裂く!)
同刻、藤牧と青桐の方も激闘を繰り広げていた。なかなか太陽の下に出てこないコンゴウに痺れを切らして藤牧が群豹改を発砲、青桐のヤタガラスによる援護も重なって、コンゴウの身体は既に穴だらけであった。それでもまだ、コンゴウは倒れない。
「ああもうっ! いい加減くたばれよ!」
「落ち着けよマッキー、このままいけば勝てるんだぜ?」
青桐は電車の中から狙撃を繰り出し続ける。確かに彼の言う通り、橋の上の二人も青桐達も、圧倒的に有利だった……が。
橋の上から電撃が炸裂するような音が聞こえたと思えば、山ノ丈から無線が入った。
山ノ丈:『橋の上のコンゴウが顔面を損傷、結合崩壊を確認した。それと同時に、柏尾川上流からアラガミ反応、多分ヴァジュラだから気をつけろお前ら!』
間と佐々木は川の上流を見やる。そこには、凄まじい勢いで川を走ってくるヴァジュラの姿が見えた。
「あ・・・・・・これは不味いかもな・・・・・・」
佐々木がそう呟いた頃には、間も危険性を理解していた。コンゴウに背を向け橋から撤退しようとした二人の目の前に、川から飛び上がったヴァジュラが大地を揺るがすような轟音と共に降り立った。四人の耳に音と振動が響く。
藤牧と青桐には一瞬、間と佐々木に迫った危機がわからなかった、しかしそれも数秒、すぐに事態の深刻さを知る。間と佐々木の二人は今、コンゴウとヴァジュラの挟みうちの状態にあり、さらにバスターミナル側のコンゴウの意識も橋の上へと向けられている。
山ノ丈:『まずいッ! 圭助早く援護に向かえッ! ざまさん達はそこから撤退することを最優先することを提案する!』
間:『それができたら苦労はないんだがなぁ・・・・・・』
佐々木:『無理、撤退できない。完全に退路を断たれてるし、ヴァジュラはやる気満々みたいだ。交戦するわ!』
無線を切ったところに、ヴァジュラの雄叫びが空気を振動させた。背後に動きの気配を感じ、間が身を翻すと、コンゴウは二人に近づいてきたものの二人には目もくれず、ヴァジュラの前に立ちはだかった。見ればその反対側も、もう一体のコンゴウが守っている。
「竜! コンゴウが・・・・・・!」
「!?」
驚いたことに、二体のコンゴウはヴァジュラを守るように付き従い。防衛陣をとったのだ。同種のアラガミが仲間意識を持つことは珍しくないが、別種のアラガミが主従関係を持つのは例が少ない。
「ざまさん、掃射してみようぜッ!」
「おうッ!」
二人の銃口が火を噴く。しかしその銃撃がヴァジュラに届くことはなかった。
「コンゴウが・・・・・・」
「盾になってるな・・・・・・完全に」
橋の上の二人が掃射をしてアラガミ達の気を引いているのに乗じて、藤牧と青桐も攻撃を始める。掃射に対して盾に入ったのはコンゴウニ体、よってその反対側はがら空きだったのだ。
「もらったぁぁッ!」
藤牧は神機を構えて一直線に突撃する。しかしその刃先がヴァジュラに触れる前に、藤牧の身体を弱い電流が弾いた。
「おわッッ!!?」
「マッキー!!」
弾かれる藤牧をそのままに、青桐がレーザーでヴァジュラを撃つ。一本一本は着実に当たっていくものの、なかなか致命傷には至らない・・・・・・!
ヴァジュラが巨躯を翻して藤牧達に向かって走り出した。跳ね起きた藤牧がスタングレネードを地面に叩きつけると、その場が閃光に包まれる。
「竜! 今だ!」
間と佐々木は神機を剣へと変え、既に虫の息なニ体のコンゴウをすれ違いざまに切り払った。それがとどめの一撃となったのか、コンゴウはニ体ともあっけなくその場に倒れた。
スタングレネードで目が眩んでいるヴァジュラの脇を走り抜ける。ふと、佐々木が何か思いついたように足を止め、ヴァジュラに近寄って何かしたかと思うと、またすぐに走ってきた。
間と佐々木の二人は藤牧と青桐が避難していたバスターミナル上の広場へと降り立った。
「竜、さっきヴァジュラに何したんだ?」
「そろそろ効いてくる頃だな・・・・・・ほれ、あいつみてみ」
三人は言われたとおり、目が眩んでフラついているヴァジュラを見やる。一番はじめに気づいたのは、遠目の効く青桐だった。
「お前・・・・・・鬼畜だなぁ」
「いいじゃんか、アラガミだし」
嫌にニヤついている二人に遅れて間や藤牧も気づく。ヴァジュラの頭部の突起に、スタングレネードのピンが引っかかっているのだ・・・・・・。
「お、そろそろだぞ」
青桐がそう呟くと同時に、ヴァジュラがライオン特有の動作で首を素早く振った。その勢いで、突起に引っかかっていたピンが抜け、視界が戻った傍からまた閃光。これには一同大爆笑。
「りゅッ・・・・・・! 竜ッ・・・・・・! ナイッ・・・・・・ナイスッ・・・・・・! はははは!」
普段冷静な間や青桐でも、これには笑いを抑えられない。藤牧や佐々木なんかは笑いのツボにはまってしまっていた。そうこうする内にまたヴァジュラは視界を取り戻し始める。
「たまにはこうしてアラガミにイタズラするのもアリだな。さて、仕切り直しといこうか」
佐々木が神機を銃に変えて、銃口をヴァジュラへと向ける。残るコヨーテもそれに続く。四つの銃口が、雷獅子に向けられる。
「ファイアァァァ!」
誰に頼まれたのでもない佐々木の合図と同時に、一斉に引き金を引き始める。レーザー、弾丸、撤甲弾、様々なバレットが弾幕を成して襲いかかる。
しかし、ヴァジュラはとっさにマントを翻して身を守った。剣裁が通らないほど防護能力が高いヴァジュラのマントでも流石にボロボロになったが、本体はまだ健在だった。
「ほう・・・・・・多少は知恵の回る個体みたいだな」
「みてぇだな・・・・・・皆注意しろよ!」
「お前もな!」
ヴァジュラが雷の球体を発生させるのを見ると、4人はそれぞれバラバラに散開した。
ヴァジュラが発生させる雷球は威力こそどれも似たり寄ったりだが、大きさが異なることが多い。当然大きければ大きいほど被害がでかくなる。
獅子の体が滑るように動き、バスターミナルの上の広場に飛び移る。広場にいるのは藤牧だけだった。即座に戦闘態勢に入る。
藤牧は腕力にものを言わせて片手でバスターを振りかざして応戦する。しかし、その刃が体に食い込む前に、ヴァジュラは先を読んで回避、前足で反撃、藤牧の回避。一瞬の油断も許さぬ近接戦が続いた。
山ノ丈:『圭助、単騎でヴァジュラに挑むのはガチで危険だから! 一旦退いてざまさん達と合流した方がいい!』
無線を聞いた藤牧は後ろに跳び退いて距離をとる。
藤牧:『・・・・・・いや、その必要はねぇと思うぞ』
藤牧が微かに笑った。直後、ヴァジュラは地を削りながら藤牧に突進する。・・・・・・・・・・・・が、突如後ろから藤牧の脇を掠めた弾丸がそれを迎え撃った。彼の背後に……三人の仲間。
間:『チームコヨーテ、再交戦する。各員は身の安全に注意しつつ討伐対象を討て!』
「おま・・・・・・! 俺を差し置いて!」
無線で指示を送る間のすぐ横で佐々木が抗議するが、それに応じるよりもヴァジュラとの交戦が先だった。
藤牧がさらに後退する。それと入れ替えに、剣形態に切り替えた間と佐々木が前線に出る。藤牧は銃へ切り替え、青桐より少し前で爆撃にかかる。
「ざまさん! 反対側から攻撃してくれ、あいつを翻弄して自由を奪うッ!」
間は佐々木と逆方向に走る。二人でヴァジュラの周りを円を描くように走り込みつつ、流れるような動作でヴァジュラを斬っていく。
ふと、佐々木に向けて前足が振り上げられた瞬間、前足がレーザーによって撃ち抜かれた。青桐の狙撃だ。
山ノ丈:『ヴァジュラの前足が結合崩壊! いいぞいいぞ青さん!』
「へッ! まだまだこんなもんじゃねぇぜ!」
青桐がどんなに連射しても、間や佐々木はまるで見えているかのように援護射撃をかわしていく、学生時代から一緒にいたチームコヨーテは、お互いの息を知覚できている。だから……援護射撃が当たることはない!
二人の走る範囲が狭まっていくにつれて、ヴァジュラの自由がきかなくなっていく。
「そら、食らいなッ!」
佐々木がスタングレネードを炸裂させると、間がヴァジュラの背中に飛び乗って捕喰する。すぐに飛び降りてバースト。続けてコンゴウから得ていたアラガミ弾とヴァジュラのアラガミ弾をまとめて佐々木に受け渡す。
「リンクバーストレベル3!」
山ノ丈:『佐々木の神機連結解放確認! ヴァジュラは弱ってる! 一気に叩け!』
「マッキーッッ!!」
間が叫ぶと、ヴァジュラに向かって藤牧が正面から突撃する。ヴァジュラを目前に捉え、神機を大きく振りかぶり、下から上へと振り上げた。すかさず藤牧は上体を打ち上げられたヴァジュラの腹部を神機の柄で突き上げ、神機を切り替え、つっかえ棒のように地面に立てる。ヴァジュラの全体重を支え、地面に対しほぼ垂直に立った神機は銃口が下へ向いていたが、これこそが藤牧の狙いだった。
「快適な空の旅をお届けするぜッッ!」
藤牧の神機が火を噴いた。放射系オラクルバレットーー炎:エミッターーーを連続射出したのだ。
ただでさえ強い反動が付き物のエミッターバレットを、同じく反動が強いブラストで連続放射。強い反動を持った神機を出力として、ヴァジュラの体は空中に飛び上がった。
(今だ・・・・・・!)
間と、リンクバーストした佐々木がそう思ったのは同時だった。二人は双方から駆け、同時に飛翔、二人の渾身の力で斬り裂いた。
旧戸塚駅に届いた4つの音。最初の3つは足音、最後の1つは轟音。前者は三人の神機使いが天から降り立った音。後者は斬り裂かれたヴァジュラの肉体が地に墜落する音。やがて、無線から任務終了の報告が入る。
山ノ丈:『全討伐対象、オラクル反応の消失を確認。任務終了ー!』
「「「「イェェェェェェェェイッ!!!!」」」」
歓喜するチームコヨーテ。
小さい5匹のコヨーテが、大きな獅子と猿に勝った。
「いやぁ今日は頑張ったな!」
「チームコヨーテとしては最初の任務だもんな」
ヘリで帰還する最中、コヨーテの四人はお互いを誉め合っていた。佐々木の連撃。青桐の狙撃。藤牧のパワーアタック。誉める点は多い。
ふと、佐々木が切り出した。
「そういえばさ、俺ら昼飯まだじゃね?」
「あ!? そういえば!」
青桐は腕時計を見る。午後1時前、出撃したのが午前なわけだから、確かに昼飯抜きだ。間が急に力の抜けた声をあげる。
「まじかぁぁ~・・・・・・昼飯ぃ・・・・・・」
「ま・・・・・・まぁまぁ、帰ってからたらふく食おうじゃないか? な?」
佐々木が慰めに入る。ふと、向かいの席で藤牧が自分の指先をじっと見つめていることに気づいた。
「どしたのマッキー?」
「おい、タロスちょっと」
藤牧が手招きするので、佐々木は身を乗り出した。すると・・・・・・。
「いてっ!」
「おお、やっぱり!」
藤牧が近づけた指が佐々木の頬に近づくと、バチッと音がしたと同時に佐々木は弾かれたように身を引いた。静電気でも受けたかと思った間は、戦闘中藤牧がヴァジュラに電撃を受けていたことを思い出した。
「マッキーお前・・・・・・まさか地味に帯電してるわけ?」
佐々木が頬をさすりながら言う。
「このノリで芋とか焼けるかも、ざまさん、昼飯は電撃焼き芋なんてどうよ?」
「遠慮しとくわ、青さんは?」
「俺も遠慮するわ、なんかバーストしそうだし」
どっと笑いが起きた。ちなみにこの後、藤牧は静電気対策グッズによって放電したという。
ーーTo Be Continuedーー
はい、ようやく話が本腰に入ってきましたね。イェイ└('ω')┘
もうお気づきとは思いますが、今回の舞台である旧戸塚駅は、実際の横浜市にある戸塚駅をモチーフ(ていうかほとんど原型)にしています。近所だぜ!って人は是非とも実際の駅と照らし合わせて楽しんでもらえればと思います。
一つのチームとして結成されたことによって、これから様々なストーリーが間達を中心に展開されていく予定(?)です。今後もどうぞ楽しんでくだせぇ(「・ω・)「