先生「バキバキの記憶喪失」   作:地産地消

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第8話 それは閃光のように

 激論と謝罪と懇願を重ね、<連邦生徒会>室長各位に狐坂ワカモの独立連邦捜査部加入を認めてもらった翌日。

 哀しみを乗り越えた私は治安維持活動に協力していた。

 撤収作業を終えた<ヴァルキューレ>の生徒が困惑しながら敬礼をしてくる。

 

「お疲れ様でした、先生! 今日は平和でしたね!」

「ああ……」

「サンクトゥムタワー奪還の翌日に、ワカモと商店街の一角を半壊させた<シャーレ>の活躍には不良生徒達も怯えていますよ!」

「周辺住民もな」

 

 破壊に巻き込まれた商店街の人々には謝罪と補填を済ませている。飲食店が連なる地区でもあるので、ここで差し入れを購入し昨日の被害に遭って搬送された警察学校の生徒達にも謝りに行かなくてはならない。謝ってばかりだが、これが大人の仕事のような気もする。

 

「差し入れの手配をしたから、警備局の皆で食べてくれると嬉しい」

「ありがとうございます!」

「後でワカモと一緒に謝りに行くから」

「それは本当にやめてください!」

 

 現場で最も疲弊しているのは<ヴァルキューレ>の生徒達だ。彼女達を手伝うならまだしも、怪我人を出してしまった現状は速やかに埋め合わせなくてはならない。物資の補給と謝罪、あとは発生してしまった欠員の代わりをする。

 

「待たせたな、スズミ」

「いえ、大丈夫です。周辺に異常ありません」

 

 今日はこれから、守月スズミとD.U.のパトロールをおこなう予定だ。トリニティで<自警団>に参加している彼女はこの手の仕事に詳しい。細かい所を教えてもらえるし、連邦自治区の地理を知りたい等の事情もあり、同行を依頼していた。

 彼女は愛用のアサルト・ライフルを抱え直し、キビキビとした様子で歩きながら周辺を油断なく警戒している。

 

「思いのほか、この辺りも治安が悪いのですね」

「ああ。サンクトゥムタワー周辺に警備が集中しているからな。全体に手が回っていない」

 

 車道を<カイザー・コーポレーション>のロゴが入った兵員輸送車が通り過ぎていく。キヴォトスを代表する多角的企業で、警備や運送、製造から金融、飲食業まで手広くやっているらしい。スズミはあのグループ企業が嫌いなようだ。関係する車両が道を通るたび、私を歩道の端にぐいぐいしてくる。

 

「ゲヘナやトリニティでの違法兵器の蔓延はカイザー・グループが関係している可能性があります」

「そうなのか」

 

 ゲヘナ生に武器を流せば、それはトリニティへ向かう可能性が高い。平和を脅かされればトリニティ生も武装を強化しようとする。逆もそうだ。供給する側としては利益に繋がるが、完全なマッチポンプである。

 一企業の分際で治安の悪化を望んでいるのだろうか。

 

「数日前まで、毎日のように大規模な戦闘が発生していました。騒動に加担した不良生徒の多くはゲヘナ出身でしたが、<正義実現委員会>の動きは到底、その責務を果たしていたとは言えません」

「トリニティとゲヘナは互いに敵視しているんだったな」

 

 キヴォトスの”三大校”に含まれる<トリニティ総合学園>と<ゲヘナ学園>の二校は極めて仲が悪い。これは学園都市に住むものなら誰でも知っているほど有名な話だ。

 トリニティは裕福な生徒が多数在籍する学校で、トラブルを嫌い、歴史的な建築物や伝統を重んじる校風。

 

 ゲヘナは規則やマナーを軽んじる生徒が大半を占め、その中にはテロリストじみた活動を行う者も多数存在する。キヴォトスで発生する事件のほとんどにゲヘナが関わってくると言われるくらいだ。

 加えて最悪な事に、この二校は近隣に存在しているのだ。D.U.が緩衝地帯として噛んでいる地帯もあれば、完全に隣り合っている地帯も存在している。だからトラブルが絶えない。

 

 基本的にはゲヘナ生がトリニティの自治区に侵入し騒ぎ起こす。飲食店やアパレルショップで因縁をつけたり、カツアゲや強盗行為を働いたり、酷い時は誘拐から身代金の要求までする事もあるそうだ。

 トリニティの生徒からすればゲヘナの生徒から一方的に敵視され、迷惑をかけられ続けているという印象になる。逆にゲヘナの自治区に乗り込み、戦闘行為に及ぶ生徒もいるそうだ。

 二校の生徒会組織──とりわけゲヘナの<万魔殿>は問題解決をしようという意識が希薄で、関係の改善は難しい。大規模な紛争になっていないのは奇跡だという意見もあるくらいである。

 

「スズミはどうして<自警団>に加入したんだ」

 

 トリニティの正式な治安維持組織は<正義実現委員会>だ。自治区を守りたいなら、豊富な人員と潤沢な予算を備える方へ加入した方が良い。スズミは優秀な生徒で、正実でも充分以上に活躍できる。

 <自警団>にはスポンサーも何もいないので、活動費はほとんど全て自腹となる。成績にも反映されない。幾らトリニティ生が裕福であっても学生なら自分のために時間を使いたいはずだ。

 

「その、余り良い理由ではありません。きっと最初は憤りから行動を始めたのだと、思います。今なら」

「憤り。ゲヘナへのか」

「それもありますが、トリニティ上層部や正実への割合も存在します。先生は”エデン条約”をご存じですか?」

「いや。知らないな」

 

 落ち着いて話をしたい。公園のベンチを勧めたが、狙撃の危険があるとの事でコンクリートの屋根がある休憩スペースへ移動する。自動販売機で購入したスポーツドリンクを彼女へ渡す。私は給水のタイミングなのでミネラルウォーターだ。

 ぺこりと頭を下げ、お礼を言うスズミの表情は余り明るくない。

 

「”エデン条約”はトリニティとゲヘナ間で締結される予定だった平和条約です」

「だった」

「連邦生徒会長の失踪と共に、現在は凍結状態となったようです」

「む……」

 

 連邦生徒会長の名前に私の言葉が詰まる。失踪の前後を考えると、記憶を失う前の私が関係している可能性が高いからだ。

 

「そ、そのエデン条約がスズミの<自警団>加入に関係しているんだな」

「そうです。条約そのものは良いのですが、水面下で話し合いが進められている最中は、双方の治安維持組織の動きは制限されます」

 

 その理由は理解できた。

 相手校の生徒が自治区内で騒動を起こす時、その対応にはデリケートな動きを要求される。捕らえた生徒に課される罰則や、それに伴う引き渡し手続きは難しくなるだろう。交渉を重ねる際、相手からの心証は可能な限り良くしようと考える。落ち度があれば利用されるし、逆に利用しようともするのが政治の基本だ。

 結果としてトリニティ内部で<正義実現委員会>の動きが鈍化し、トラブルが多発。スズミのような生徒が<自警団>として独自に行動を始めたという事だろう。

 

「…………」

「先生? 顔色が悪いようですが」

 

 つまり、彼女が青春を犠牲にしているのは私にも責任があるのだ。鼓動が早まり、眩暈がした。耳鳴りもだ。謝罪をし、責務から解放するどころか、その彼女を<シャーレ>に参加させ、あまつさえ手を貸してもらっている。

 スズミだけではない。<自警団>の生徒全員に迷惑をかけている。トリニティとゲヘナの治安維持組織の生徒も含まれるだろう。

 

「なんて罪深いんだ……」

「まさか、その水に毒物が……」

「いや、違う」

 

 私は立ち上がり、スズミに頭を下げた。

 

「え……先生? どういうおつもりですか?」

「連邦生徒会長の失踪には、私も関わっている」

「そ、そうなのですか?」

「だから、スズミが迷惑を被ったのは私のせいなんだ。本当に、申し訳ない」

「話が良く分からないのですが……」

 

 連邦生徒会長と最後に会ったのは記憶を失う前の私だ。エデン条約が進まなくなったのも、大勢の生徒が我慢した事が無駄になったのも、この頼りない大人に責任がある。

 

「謝って頂く必要はないと思います」

「ある。ハスミやチナツにも謝らなければ。ちょっと行ってくる」

「先生。落ち着いてください。いきなり突撃されれば相手も困惑します」

「それはそうだな」

「それに、今日は私が当番の日です」

「うむ」

「ほら、パトロールの続きをしますよ」

「わかった」

 

 確かに仕事を途中で放り出すわけにはいかない。説明と謝罪に関してはまた機会を作って行うべきだ。

 私はスズミの後を追って歩き出す。

 

「私は今の生活に満足しています。先生に心配して頂く必要はありません」

「ある」

「意外と頑固な……。そうやって思いつめるから、自身の命を疎かにしてしまうんですよ」

「していない」

「しています」

「いや、しています」

「私は認めないぞ」

 

 ここで退くとまた謝罪会見に追い込まれる。第一、私が命を大事にしていないと言うが、どうすれば命を大事にしている事になるのだろう。そこはハッキリしているのだろうか。私は屁理屈をこねた。

 

「まずは危険物の近くをうろつかない事ですね」

「…………」

 

 一瞬で論破された私は違う話題を探す事にした。

 今日はいい天気だ。銃声や爆音ではなく、小鳥のさえずりと木々のざわめき、子供の笑い声が聞こえてくる。キヴォトスにもこんな穏やかな環境があったとは驚きだった。

 

「スズミもそう思うだろう」

「加えて、先生は危険人物に対しても無防備すぎます。どうしてワカモとトイレで二人きりになろうとしたのですか? 携帯しているのも骨董品のリボルバー銃のみ。これらの点から、先生が自身の命を軽視しているのは明らかです」

「でも今はスズミがいるから安全だ」

「……それは反論になっていません」

 

 銀髪の少女はふいっと背を向けると歩き出す。心なしかスズミの動きがぎこちなくなったような気がした。

 それから公園を出て、繁華街の近くまで来た。本屋やCDショップ、服屋にアイスクリーム屋。家電量販店

 などもある。

 そこの一角──ガンショップの前まで来たところで立ち止まると、

 

「先生は、不良が相手でも銃を使いたがらないと聞きました」

 

 そんな事を言われる。店の中には十名弱だろうか。女子生徒達の姿が見えた。生活必需品と思われるピンク色の七・六二ミリ弾やネコの顔の形をした対戦車地雷などをカートに乗せ、今は愛銃を飾るためのアクセサリーコーナーで楽しそうに話し込んでいる。

 そんな同年代の姿には目もくれず、スズミは手榴弾が扱われているブースへ一直線へ進んでいった。私もそれに追随する。

 

「……これを」

 

 差し出されたのは小型の閃光弾だ。普通ならこぶし大のサイズがポピュラーだが、これは少し違う形だ。細長い円筒型で、太めのマーカーペンと同程度だろうか。携帯性に重きを置いているものだと思われる。

 

「閃光弾に関しては色々なものを試しましたが、それはオススメの一つです。大きさも値段も手頃ですし、小型な分、威力も抑えられていて対象に不必要なショックを与えません。中堅メーカーが造っているので流通量はそこそこですが、逆に言えば目立たないという事にもなります」

「なるほど」

 

 スズミが扱う閃光弾は制圧目的だが、これはあくまでも緊急時の備えになるものだ。何か会った時、私の身を守ってくれる。

 使用方法も簡単だ。先端のキャップを外して露出ボタンを押し込むだけで数秒後に炸裂する。良いアイテムというのは触っただけで価値がわかるものだ。

 私は頷き、

 

「あるだけ買い占めてくる」

「え!?」

「命を大事にしようと思ってな」

「極端すぎます」

 

 店主に話をして、<シャーレ>宛てに在庫をまるごと送ってもらうよう依頼する。支払いは私がいつの間にか持っていた黒銀色のカードだ。どうしてか私専用の口座と連動しており、普通にキャッシュレス決済も可能なので、こうして使用できる。お得なポイントが付くのかが最大の疑問だ。

 無事に支払いが済み、領収証を受け取ると戸惑い顔のスズミが出入口で待っていてくれた。

 

「…………」

「どうした」

「いえ、なんだか既視感がありまして」

「既視感」

 

 彼女は視線を私から店内へと戻した。女子生徒のグループは未だにアクセサリー類を物色している。

 スズミの横顔からは複雑な表情が読み取れた。憧憬に近い、諦観だろうか。

 

「先生と同じで、私も買い物に時間をかけないんです。必要な物はあらかじめ決まっているのだから、悩む必要はありません。……しかし、トリニティの友人達はそうではないみたいで」

「…………」

「ああやって、装飾品や衣服にもっと興味を持つべきなんでしょうね。お菓子や勉強、ゲームについて取り留めのない話をして、皆と同じく、ただ穏やかに時間を過ごすのも大切なんだと思うのですが」

「……そうか」

 

 脳を高速回転させる。多大な負荷がかかっていた。鼻血が吹き出すかもしれない。それくらいの過負荷だ。スズミが悩みを吐露してくれている。ここは先生らしく、何か身になる言葉を捻り出さなければならない。

 

「あ、あれだな。あれだ、それは絶対に悪くない事だ。それは間違いない」

「……先生? また様子が変ですけど……」

 

 守月スズミの悩みは理解できる。彼女は周囲の同級生が好むような事象に興味を向ける事が出来ず、苦しんでいるのだ。彼女くらいの歳なら、周囲と自身を比較するのは当たり前。差異を感じてコンプレックスを抱えるのも当然だ。なにも変ではない。むしろ健全である。

 スズミは唯一、七神リンが画策した<シャーレ>の募集を受けずに駆け付けた生徒だ。説明会で私が退席した後、同校の羽川ハスミとひと悶着あったと早瀬ユウカからも聞いている。

 その真っすぐで清廉な正義感は何にも代えがたいものだろう。しかし今まで周囲との軋轢が無かったわけでもない。

 ただただ自分の感性だけを信じて歩いていけるほど、簡単な道ではないということだ。それを理解し、ちゃんと疑問に思えるという事は、スズミが確かな理性と善性を有している証拠なのである。

 

「…………」

 

 という事を簡潔に言えたら良いのだが、もっと良い伝え方があるような気がしてならない。もっとオリジナリティが必要だ。

 

「スズミは可愛いんだから自信をもつべきだ」

「…………」

「時間をかけないだけで、外見に気を向けていないというわけではない事は分かる。私は今日一日、スズミをあらゆる角度からじっくり観察したから自信をもって言える。スズミは可愛い。これは間違いない。命をかけても良い」

「……声が大きいです」

「今は<自警団>の仕事に集中したいんだろう。それは良い事だ。気が済むまでやった方が良い。それが友達を大切にすることにも繋がる」

 

 あまり気にする必要はないが、周囲の人々が私たちに視線を向けまくっていた。足を止めて興味深そうに観察する者も多く、人だかりが生まれつつある。ガンショップの中の女生徒たちも何事かとこちらを見ていた。

 いつの間にか私の背後に回ったスズミがぐいぐいと背中を押して移動を強要してくる。是非も言わせぬ凄まじい力だった。

 先ほどの公園に戻ってくる。

 

「先生はああいう所があるんですね……」

 

 疲れた様子で言われ、私は首を傾げた。心当たりが無かったからだ。

 

「とにかく」

「…………」

「私が言いたかったのは、先生が気に病む必要は無いという事です」

「どういうことだ」

「エデン条約の件です。私はその、周りの娘と違って、か、可愛い事に関心が薄いと言いますか。何があろうと、自らの意志で銃を取っていたと思います」

 

 日が沈み始め、空が赤くなってきた。スズミはどこからか愛用品の閃光弾を取り出し、両手で転がしている。可憐な女生徒が頑丈そうな手榴弾を弄ぶ様は夕暮れの公園と余りにミスマッチで、暴発の危険もあり私の意識を縫い付けて離さない。

 

「だから、気にしないで下さい」

「善処する」

「駄目です。気にしないで下さい」

「む……」

 

 とは言え、記憶を失った事で私が大勢の生徒に迷惑をかけているのは揺るがない事実だ。自責の念は、失ったものを取り戻して責任を果たすまで消える事はないだろう。スズミ達の優しさに甘えてはいけない。

 いや──その優しさに応えなくてはならないのだ。でなければ大人を名乗る資格はない。

 

「スズミ──」

「おおい!! なに公園でイチャイチャしてんだよーっ!?」

「ここぁ公共の施設なんだぜぇ!!」

「公共の福祉って知らねえのかよ、ああ!?」

 

 騒音と砂煙。公園の敷地内に違法改造されたバイクが乗り込んでくる。なんと驚きの三人乗りだ。文体を崩し過ぎてもはや読み取れない文字が描かれた旗が靡き、大きいだけで特に意味のないマフラーがガクガク揺れながら吠えていた。あまり品が良いとは言えない強めの紫で車体は塗装されていて、やはり大きいだけで特に意味の無いカウルが街灯の光を反射している。

 乗っていた三人組の不良生徒は特に意味も無く停車状態でエンジンを吹かした後、ぞろぞろと降りてきた。三人ともサブマシンガンを持っているのは片手でも取り回しやすいからだろう。

 

「こんな昼間からカップルが居て良い場所じゃねんだよ!」

「今はもう夕方だ」

「ここはアタシらの公園なんだけどさあ!」

「公共の施設じゃないのか」

「ショバ代払って欲しいなあ~、ショバ代! 公共の福祉だよっ!」

「勉学に励んだ方が良い」

「なんなんだよコイツさっきからぁ! ちっともビビらねえじゃん!」

「ここは二輪車での立ち入りは禁止されている……それよりもエンジン音に異常があるぞ」

「え?」

「ほんと?」

「困る」

「オイルの交換はいつしたんだ。定期点検は」

「い、いや、最近買ったばかりのやつ」

「安物を掴まされたな。外装だけ立派にして、ガラクタを売りつける手法かもしれない」

「ちょっと、やだぁ……」

「確かに乗ってて変かな? って思ってたけど」

「なんだかガタガタしてたもん……」

「急に早くなったり遅くなったりしてたし……」

「車両を購入する時は物よりも売り手を吟味した方が良い。どこで買ったんだ」

「ブラックマーケット……冬の大売り出しだって」

「今は冬なのか」

「違う……」

「てか、アンタ何者?」

「い、因縁つけてんじゃねえだろうな?」

「どうしてくれんだよ? すげえ不安になっちまったじゃねえか! どうしてくれんだよ!?」

「もう怖くて乗れねーよ!」

「帰り道どうすんだよ!?」

 

 不良達が不安から威嚇し始める。私たちを傍観していたスズミが歩み寄ってくると、私の前に立って何かを落とした。閃光弾だった。

 昼間になったのかと錯覚させるほどの強烈な光がまき散らされ、憐れな不良生徒達が困惑するのが分かった。

 そのまま銃すら使われず、彼女達は声も発せないままスズミに畳まれコンクリートの支柱にグルグル巻きにされる。

 早業だ。生徒を止める時間も、哀れに思う暇すらなかった。パンパンと手を叩く銀髪の女生徒は一仕事終えたとばかりに息を吐いた。

 

「さあ、先生。パトロールを再開しましょう。時間は無駄にはできません」

「わかった」

 

 私は<シャーレ>の名刺を気絶した女生徒の服のポケットに差し込んでから、スズミの後を追った。

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