好きな死際シチュ 作:紅茶と珈琲
~実検体MREC-257の経過観察~
M43 1/31
10:30 dbp-gmehをMREC-257に投与。
10:35 MREC-257、経路形成の苦痛により叫声を発す。
10:40 MREC-257、苦痛と呼吸困難により失神。
~中略~
11:30 MREC-257の適合を確認。安静状態に移行する。
~中略~
22:50 MREC-257が覚醒。
23:00 MREC-257が魔法を使用した。
・備考
今日という日は、人類が神に近付く偉大なる1歩を踏み出した記念すべき日であろう。
◆
格子窓から見える
あの厚い天蓋は、私に物心が付いた時からずっと変わらず廻り続けている。
白く広い部屋の壁を見遣れば、描かれた大きな平原とそこに住まう動物達。
それがどうにも私には嘘臭く思えた。
自由になんてなれない。
「……」
今までの事を思い返す。
度重なる薬の注射に、味のしない食べ物。
人体実験。
私達は親に捨てられたから、データを取るのに都合の良い実験動物なんだって。
この部屋であの子達と一緒に過ごした日々。
機械がいっぱいの大きなお部屋。背の大きな人達の無機質な顔と瞳。
――そして。
扉の向こうへと連れて行かれた友達は二度と帰ってこなかった事。
あんなに狭く思えた部屋が今じゃ無性に広く感じて。
私、いつのまにか一人ぼっちになっちゃったんだ。
私一人しか居ないから、次にあの扉の向こうに連れて行かれるのは私。
そんな事はわかっていた。覚悟もしてた筈なのに。
明日が、私の番が怖いんだ。
怖がりだったあの子も、いつも泣いていたあの子も。
絵本を読んでいたあの子も、抱っこが好きなあの子も。
お話し好きなあの子も、みんなを笑顔にしたあの子も。
一人ずつあの扉の向こうに連れて行かれて、誰も帰ってこなかった。
「あの子は大丈夫かな……。私が居なくても眠れてるかな……」
私が知らないだけでホントは、あの扉の向こうでみんな元気にしてるんだ。
私が遅いから、みんなで待ってくれてるんだって。
そう願っている。
◆◆
祈りは届かない。
鳥籠の中で飛ぶ事を忘れた鳥は……。その翼を失った鳥は……。
たとえ鳥籠から出られたとしても、野には帰れず行く先も無く。
◆◆◆
扉の向こう。背の大きな人達に連れて来られた部屋の中。
手足を椅子に固定され身動きを制限され、いつも通りの注射を受けた。
――。
近くて遠い場所から大きな声がする。この声は誰の声?
体がバラバラになるような痛みの中で意識を失っていく私は、
誰かの叫び声をずっと聞いていた。
◆◆◆◆
目が覚めると、私だけしか居ない暗い部屋のベッドの上で。
なぜか私の背中に白色の翼が生えていた。
薄汚れてる私や私の服には見合わないくらい真っ白い翼が。
「……天使さまみたい」
こんなに綺麗だから、私の身体の一部とは思えなくって。
きっと神様がホントに私に与えてくれたんだって思う。
それに、なんだか空も飛べそうなんだ。
私が空を飛べる筈もないのに。
「飛んでみたいな」
そう思って私は、新しく生えてきた、手のような感覚で動く翼をゆっくりと動かした。
「むぎゃ」
思ったより力強く身体が浮き上がったから、勢いよく顔から床に倒れ伏した。
痛い。
でも、感覚は掴めたかも。
もう一度ゆっくりと翼を動かす。
身体が地を離れる。
翼をゆっくりと羽撃かせるだけで身体が空に浮かぶ。
「今の私って飛べるんだ……」
空を浮かぶ私がそこに居た。
◆キャラ設定
・女の子
dbp-gmehとたまたま適合した。
不老の天使になって空を飛ぶ魔法が使えるようになった。
翼を強く羽撃かせれば、音速を超える衝撃波が諸々を切断する。
今後の未来の可能性としては、優秀な実験体兼兵器として扱われるか。
研究所を脱走して生きながらえたあと、追手の怪物に殺されるか。
翼の生えた人間として金持ちに飼われるか。
人々に天使として崇められるか。
・あの子達(30人くらい)
女の子と同じ部屋に居た名前の無い孤児達。
dbp-gmehとの不適合故に苦痛でショック死するか、
知能を失い怪物になってしまった。
怪物になったあの子達は
様々な実験における験体としての運用が見込まれており、実戦投入も近い。
くるりんごさんの"モルモットと傭兵"に影響された死ネタ?2。
神様が居ない版(ファンタジー&SF)みたいな感じ。
画面外では沢山の子(250人)が死んでいます。