好きな死際シチュ 作:紅茶と珈琲
最初は登場人物を吸血鬼にしようかなとか思ったり。
あるいは、鬼や竜が死に瀕した愛する人を丸ごと食べるとか。
そこら辺、序盤の描写に若干の影響が残ってる。
怪物には怪物の道理がある。
きっとそれは愛より重くて、曲げられないものなのだろう。
だけれども、私のような一般人に怪物の道理を受け入れられる程の度量はあるはずもなく。
情けなく身体を震わせて神へ祈りを捧げる以外の抵抗手段を持ち得なかった。
「貴方が一番好きだったの。この日が来るのをずっと待っていたわ」
嫌だ。まだ死にたくない。こんなのやめてよ。誰か助けて。
「ようやくよ。ようやく。やっと一つになれるわね」
包丁を持つ怪物の潤んだ瞳が、その優しい眼差しが、ただじっと私を射竦める。
「愛してる。愛してるわ。愛してるのよ。こんなに愛してるんだもの」
そんなの聞きたくない。見たくない。目と耳を塞いで閉じて。
「ずぅっと、ずっと、一緒になりましょうね」
両手を掴まれて無理矢理、唇を奪われた。
そうして抱き竦められ――――。
喉を食い千切られ、怪物の白シャツに鮮血が舞い散った。
闇に覆われた室内に声なき声が、掠れた空気が響き渡る。
哀れな獲物は痛みに藻掻き、血液で溺れ、息が出来なくなって。
心臓の鼓動は耳に煩く鳴り響く。
その様子を、怪物はただ慈愛に満ちた目で見つめ、もう一度唇を重ねた。
「さようなら、愛した貴方」
私は大嫌いだったよ。
「どうか、幸せな夢を見られますように」
おやすみなさい。
◆
死は永遠の眠り。貴方と私。永遠を共に。
身勝手でしょう? 許してとは言わないけれど。
貴方が私に愛をくれたように。
私も貴方に、愛を返してあげたかった。
けれども、一緒に居れば居る程、貴方の心は遠く遠くへ離れていって。
いつか私を置いてどこかへ行ってしまうくらいなら、こうしようってずっと思ってた。
もう独りになるのは嫌だったの。
だけれども、本当は知ってるわ。
死は永遠の眠りだなんて嘘よ。
死はただの死で、それは私が私を騙すためについた嘘だって。
だって、一緒に過ごしたこの部屋で、今はただの独りぼっち。
泣きながら、笑いながら、苦しみながら、怒りながら、独りぼっち。
もしかしたら貴方が、今にも「おはよう」って起き上がって来るかもしれないだなんて思うはずもない。
血を流して死んでいるのだもの。
いいえ、私が殺したんだから。
二度と貴方は私に喋りかけてくれはしない。
二度と貴方は私の言葉に耳を傾けたりはしない。
二度と貴方は私を見つめ返してはくれないの。
私はただ、胸に空いた穴を取り戻したかった。こんなことは望んでいなかった。
本当は貴方と一緒に笑い合えるだけで良かったのに。
一体、私たちはどこで間違ったんだろう。
貴方と出会う前から? それとも、出会ったこと自体が間違いだったのかしら?
でも今となっては、考えても、もう取り返しが付かないのだから。
正解なんて無くって、最初からきっと、こうなる運命だったのよ。
だから、ごめんなさい。
さようなら。楽しかった日々。
さようなら。大嫌いな私。
さようなら。大好きな貴方。
愛しき貴方の頬に優しく触れ、もう一度、血の口付けを交わす。
「今から貴方の所に行くから、もう少し待っててね」
持ってきた包丁を首に突き立て、貴方の隣。
おやすみなさい。
◆キャラ設定・背景設定
・怪物
貴方の幼馴染。陰キャ。ぼっち故に貴方に依存。貴方を監禁した。握力30kg。
貴方が好きで、大事で、だから殺しました。ずっと一緒にいたいから。
大切なものを壊すのはとても楽しくて悲しくて、苦しくて。
泣きたくなる程に、興奮しました。
貴方の血の味はとても美味しくて、その時だけはとても幸せになりました。
でも、殺して残った貴方の肉袋より、貴方の反応や言葉がずっと欲しかった。
貴方の心が本当は欲しかったの。
・貴方
無力な被害者。陽キャ。監禁されている。握力15kg。
怪物ちゃんとは幼馴染。
怪物ちゃんが人に虐められてるのを見て、放っとけなかった。
怪物ちゃんの最初で最後の友人。距離感を見誤って依存される。
怪物ちゃんの依存が重すぎて、ちょっと抑えてほしいと思っている。
実は怪物ちゃんとの同棲は満更でもなかった。
仲が良くなるに連れて相手の扱いがぞんざいになるタイプ。
怪物ちゃんのこちらの言い分を聞かず、自分勝手で強引な所が大嫌い。
流石に殺されるのはいやだよ。怪物ちゃん。
私からその言葉も、命も全部奪わないでよ。
次は何を書こうか。