好きな死際シチュ   作:紅茶と珈琲

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現代的死ネタ。


死ネタ7(親友への約束)

 死した者の魂は一体どこへ行くのだろう。

花壇の花に水を遣りながら、ふと考える。

 

 死後の世界なんてものがあるのなら。

多分、誰も死に怯える事は無く。

身体という枷から解き放たれていて自由なんだろうけれど。

 

 死後の世界なんていう、実際に死んでみないと在るかも分からないものを、

心の寄る辺として頼りにするのは、私には到底出来ない。

 

 だから、生きる事を諦めないんだ。

 

 いつか死ぬのは仕方ない、なんて到底言いたくないけど。

育てた花も枯れ果てる。生物の終点はどう足掻いても死しかない。

 

 出来ることなら、一生死なずに生きていたい。

 

 どれだけ苦痛に塗れても、死の恐怖から逃げられるのであれば、それがいい。

 

 老いて朽ち、枯れ果て、嗄れて。動く事もままならない。

そうして、最後には死ぬ。そんな終わりを私は認めたくない。

 

 でもね。確かに、死の恐怖を一生抱えながら生きるのは辛いよね。

 

 だから、貴方は生きる事を諦めたの?

 

 

 「今日の水遣り、おーわり」

 

 いつもなら、もっと早く終わってる筈なのに。

今日はゆっくりし過ぎたのかも。

 

 「早く教室に戻らないと」

 

 そう口にして、形容し難い喪失感を誤魔化した。

急いで倉庫に道具を片付けて、校舎に戻る。

 

 紫色の花は風に吹かれて、静かに揺れていた。

 

◆◆

 

 なんだか、馬鹿らしいよね。

死んだ人の机に花を供えるなんて。

 

 死んじゃった事故現場とか、お墓ならまだしも、机の上だなんて。

 

 掃除する時に机から落とさないように気を付けたり、

花瓶の水を入れ替えたりしないといけないしで、

するだけ無駄の自己満足。

 

 まぁ、そんなこと言ったら、事故現場でもお墓でも、

死者を悼んでお供えするのは生者の無駄な自己満足なんだけど。

 

 そんなことは当然わかっているんだ。

ただ単に、私がまだ割り切れていないだけだって事くらい。

 

 どうして? ばかりが溢れていく。

その疑問を殺すように、私は花を供えるのだ。

 

 「なんで、何も言ってくれなかったの? 」

 

◆◆◆

 

 学校帰り。何となく、いつもと違う道を一人。

 

 「こんなとこに神社なんてあったんだ」

 

 誰も居ないけど、掃除や管理はされていそうな小さな神社。

ふと思いついて、階段を登り、鳥居をくぐる。

 

 正しいお参りの作法とか知らないから、お祈りだけして帰ろう。

 

 別に、神様の存在を信じているわけでもないし、

こんなのただの自己満足でしかないとわかってるけれど。

 

 どうか神様。

 

 「私の友達があの世でも、大切な人達と共に幸せでありますように」

 

 私は貴方の生きる理由には成れなかったけれど。

どうか貴方の幸せを願う事くらいは許して欲しい。

 

 死後の世界で安らかに、家族と一緒に過ごしていると。

そう思っていなければ、浮かばれない。

 

◆◆◆◆

 

 私の大切な親友へ。

この声が聞こえますか?

 

 もし聞こえているのなら、一生の約束を聞いてくれる?

 

 私が死ぬまで待っていてください。

 

 いつか必ず、私もそっちに行くからさ。

よぼよぼのお年寄りになってからかもしれないけど、絶対会えるから。

 

 貴方のこと、絶対に忘れないから。

 

 だから貴方も私のことを忘れないで、待っていて欲しい。

行くまでに、いろんな土産話を用意しておくからさ。

待たせた分、いっぱいお話するから。

 

 土産話をたくさん話した後には。

どうか教えて欲しい。

 

 貴方が何も言わずに死んだ理由を。

 

◆◆◆◆◆

 

 「また、おばぁちゃんがあの小さい神社に行ってる! 」

 

 早く連れ戻さないと……。

本当、眼を離した隙にどこかへ行くんだから。

 

 最近は痴呆も入ってきて、どこそこへ行ったとか、あれこれをしにいったとか、

昔の事ばかりずっと話してるし。

 

 無駄に足腰は健康だから、いろんなところへ一人で行けちゃうのが特に怖いわ。

なぜか神社に居ることが多いけど、昔は巫女でもやってたのかしら。

 

 位置情報から、おばぁちゃんがまだ神社から動いて居ないことを確認し、迎えに行く。

車で10分くらいで、ちょっと遠いのが嫌だ。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 神社に着いて、おばぁちゃんを探す。

小さな神社だから、すぐに見つかった。

 

 「おばぁちゃん、もう帰るよ」

 

 「………… 」

 

 座ったまま、返事は無い。

 

 風に吹かれて、黄色の花が揺れる。

 

 「おばぁちゃん! 聞こえてる? 」

 

 その身体に触れると、もう身体は冷え切っていて。

おばぁちゃんはもう、この世には居なかった。

 

 

 

◆キャラ設定・背景設定

  ・女の子 → おばぁちゃん

   死後の世界も神様も信じない中学生の女の子。

   お花の世話が好き。死ぬのが嫌。

   自殺した親友が何も言わずに死んだ事を引きずっている。

   親友の家族も自殺していた事を親友が死んでから知った。

   後に波乱万丈な経験をする。土産話を作るために。

 

   最期まで死への恐怖に抗い続けて、寿命によって死亡。

   

   はてさて、約束は果たされたのだろうか。

   それは死者である当人にしか分からない。

 

 

  ・親友の子

   何も言わずに自殺した子。

   最近、父と母が心中しており、親戚の家で暮らしていた。

   お花の世話が好き。希死念慮。

   親友である女の子に心配を掛けまいと気丈に振る舞っていた。

   弱みを見せない強い子。

 

   どうして私も連れて行ってくれなかったの?

   

 

  ・孫

   20代。3兄妹の末っ子。おばぁちゃんっ子。

   おばぁちゃんの死に立ち会った。

   死んでいるとは思えない程に、安らかな死に顔であった。

 

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