Wizardry 薄汚い欲望に囚われし者たちの迷宮   作:無職のプーさん

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11 悪の冒険者たち

 

 首都のはずれにある小さなダンジョンは、冒険初心者向けと銘が打たれていた。

しかし実際のところ上層はともかく、下層に行くに従って現れるモンスターは凶悪となり、また初級の冒険者を狙う野盗たちも身を潜めているため、十分な用心が必要である。

どんなダンジョンであろうと、そこに潜む悪意と欲望は容赦なく訪れる者たちに牙を剥くため、一瞬の油断が命取りだ。己を戒めることのできぬ者から死んでいくとは、ある玄人冒険者の言である。

 

 

 

 長く続く螺旋階段を降り、ダンジョンの第一層に降り立ったガンズ。彼は静かに目を閉じると、古代の呪文を呟く。

「DU-MA-PIC(道筋を示せ)」

 

そのまましばらく目を閉じていたが、やがて瞼を上げたとき、その灰色の瞳は鋭い光を宿していた。「連中はこの先だ」

 

ガンズが手で示した方を一瞥し、アイアンハンドは「ふむ」と呟く。「数はどれぐらいだ?」

 

「おそらく六人」

 

「ほほう。ダンジョン探索の基本をわきまえておるな。腐っても冒険者というわけか」

 

「罠だと思うか?」

 

ガンズの問いに、アイアンハンドは俯きがちに苦笑した。「罠じゃないなら何だと言うんだ。間違いなくお主を誘っておるんだろうよ」

 

「そうだな。魔術師を相手にするなら私でもそうする」

 

ガンズは鉄の長杖を握りしめ、迷いなく進み始める。

 

「罠に飛び込む気か?」

 

「ああ」

 

アイアンハンドの問いに即答するガンズ。足を速める彼の肩に、エルフの老人は手を置いた。「まあ待て」

 

「何だ」

 

「気持ちは分かるが、焦りは禁物だ。敵の罠にわざわざ無策ではまってやることもあるまい」

 

「代案があるのか?」

 

「まあ、ないこともない」

 

アイアンハンドは懐に手を入れ、小さな瓶をいくつか取り出した。それらの封を外し、中に詰まった灰を石畳の上に撒き始める。

その口元は年寄りのエルフらしい、老獪な笑みに歪んでいた。「奴らの驚く顔を見てやろうじゃないか」

 

 

 

 

 淀んだ空気の中を漂う埃が、壁に吊された蝋燭の明かりに照らされる。

複雑に入り組んだダンジョン(地下迷宮)を行く者は、風の音や揺らぐ影にすら怯え、否が応でも神経を磨り減らすことになる。己を害する何者かが闇に潜んでいると悟っていれば、尚更のことだ。

 

一本道の回廊を進んでいたガンズは、不意に足を止めた。前方には開けた空間が広がっており、複数の石柱が等間隔に並び、天井を支えている。

 

「マジかよ。本当に来やがった」

 

その呟きと同時に、柱の影から数人の冒険者たちが現れた。いかにもガラの悪そうな戦士の男が三人、顔色の悪い魔術師の女が一人。

彼らの装備の状態はお世辞にも良いとは言えないが、自信に満ちた佇まいを見るに、それなりの場数は踏んでいるらしい。確認できる人数は四人。残りの二人の気配は掴めなかった。

 

ガンズは周囲を見渡したあと、眉をひそめて彼らを一瞥する。「お前たちだけか?」

 

「俺たちだけじゃ不満かよ」

 

戦士たちはニヤニヤと下卑た笑みを彼に向けた。

「あの哀れなポークルくんの宝石を取り返しに来たんだろ? 泣かせる話じゃねえか」

 

「俺たちが大事に預かってるぜ。返してやりたいところだけど、誰が持ってるか忘れちまったなあ。なあお前ら、誰だったっけ?」

 

「ああ、俺だ。俺が持ってるぜ」

 

言うが早いか、男の一人は自分の口に指を突っ込むと、吐き出す真似をし始める。「え、え、オエェ!」

 

「ギャハハハハッ!」

 

腹を抱えて笑う男たちを、ガンズはただ静かに見つめていた。少ししてから、呆れたように肩をすくめる。「下品な連中だ」

 

ガンズのこの言葉に、男たちは笑うのをピタリと止めた。そろって彼を睨みつけ、口々に叫ぶ。「お前にだけは言われたくねえよ!」

 

「知ってんだぞこっちは! お前男も女も見境なく裸にひん剥くらしいじゃねえか!」

 

「宿屋の若い娘も脱がそうとしたらしいな! この変態が!」

 

「心外だな」

 

気分を害したように顔をしかめるガンズ。「私は至高の芸術の探求者に過ぎない」

 

「「「要するに変態だろうが!!」」」

 

「変態ではない」

 

ガンズは手にした長杖を長く持ち、戦士たちの内の一人に向けた。杖の先端を向けられた男はビクッと震えつつも、不敵に笑ってみせる。「良いのか? 俺たちに魔法なんて撃ったら、ポークルくんの宝石が……」

 

「無用な心配だ」

 

ガンズはその端整な顔に、鋭い微笑を浮かべた。

「お前たちのような下っ端が、貴重な戦利品を預けてもらえるはずがない」

 

「あぁん!?」

 

「何だと!!」

 

冷笑混じりの言葉に、戦士たちは一斉に目を剥いた。その顔は見る見るうちにドス黒い赤に染まり、手にした武器はカタカタと音を鳴らす。

 

「待って! 挑発よ、乗らないで!」

 

静観を決め込んでいた魔術師の女が声を上げるが、彼らは聞く耳を持たなかった。

 

「殺すか、コイツ」

 

「ああ。あいつの出る幕はねえ。こんな変態エルフ、俺らでやっちまおう」

 

「死んだぞテメエ」

 

低い声で口々に呟き、武器を構える男たち。

 

「待てって言ってるでしょう!?」

 

魔術師はなおも止めようとするが、彼らの一人に突き飛ばされてしまった。

 

「すっこんでな、モヤシ女」

 

「……!」

 

女魔術師は険しい表情で男を睨んだが、それで彼らが止まるはずもない。戦士たちは三人がかりでガンズを取り囲み、徐々にその輪を狭めていく。

 

「シッ!」

 

短く息を吐き、バトルアックスを手にした男が前方に飛び出した。得物を高々と頭上に掲げ、一息にガンズへ肉薄する。銀の長髪が靡くその背中めがけ、躊躇いなく重厚な刃を振り下ろした。

 

鍛え抜かれた脚力による力強くも素早い速攻、おまけに死角からの不意打ちである。呪文が間に合うはずもなかった。躱すしかないが、下手に身をよじれば隙を晒すことになる。それをみすみす見逃すほど彼らの経験は浅くない。

 

先攻の一手としては申し分ない一撃であろう。彼に何ら落ち度はない。敢えて一つ上げるとするなら、この変態エルフの技量をいささか見くびっていたことか。

 

「!?」

 

戦士の男は目を瞠った。背に担ぐように斜めに掲げられた鉄の長杖が、バトルアックスを難なく受け流したのだ。重厚な刃は火花とともに鉄の上を滑り、獲物の骨肉を捉えることなく石畳を叩き割る。

ガンズはすかさず手首を返し、杖の柄で男の顎を強打した。

 

「……ッ」

 

脳が揺さぶられ、たたらを踏んだ男の眉間に、正確無比な突きが見舞われる。彼は悲鳴を上げる間もなく意識を手放し、地面に倒れ伏した。

 

「クソが!」

 

「やりやがったな!」

 

二人の戦士は悪態を吐くと、両脇から同時にガンズを襲う。その顔は怒りに歪んでいたが、無鉄砲な突進ではなかった。仲間の倒され方を見ていたためだろう。長杖による正確な打突を警戒し、バックラー(円形の小盾)で頭部と胴を守りつつ、体勢低く向かってくる。

 

声をかけ合うこともなく連携し、かつ敵に合わせた戦術を即興で組む柔軟な知性。冒険者というのは敵に回すとこうも厄介なものなのか。ガンズは内心で舌を巻いていた。

彼は鉄の長杖を頭上で回転させ、遠心力の勢いそのままに周囲を大きく薙ぎ払う。なまじ杖の動きを警戒していたため、怯んで足を止めてしまう男たち。

 

攻撃より防御を選んだ結果であったが、その選択は間違いだった。戦士が魔術師相手に怯むなど、本来あってはならぬのだ。何を犠牲にしようと距離を詰めねばならない。呪文を唱える隙を与えぬためである。

 

「MA-DAL-TI(冷気よ拡散せよ)」

 

紡がれた古代の真言とともに、長杖を床に突き立てるガンズ。その位置を起点として周囲に広がった冷気の波が、瞬く間に触れるもの全てを凍てつかせていく。

 

「うひゃ、冷てぇっ!?」

 

「野郎!」

 

膝から腰の辺りまで凍りつき、身動きが封じられてしまう戦士たち。彼らは口汚い罵りの言葉を吐くが、ガンズは眉一つ動かさずにそれらを聞き流す。悠々とした足取りで男たちの傍を通り過ぎ、魔術師の女へと歩み寄った。「残るはお前だけのようだが、どうする?」

 

「……」

 

魔術師は彼を睨みつけていたが、不意にその唇を笑みに歪める。「決めつけるのは早計だと思うわよ」

 

「何?」

 

目を細めるガンズの後ろで、素早く動く影があった。残像を残さんばかりの俊敏な動きで、青い髪のポークルが襲いかかる。

 

「ほう、速いな」

 

その剣筋を見切り、長杖で受け止めるガンズ。二本のナイフから繰り出される目にも止まらぬ連擊を、容易くいなしてみせる。「だが攻めが単調だ。私の知る友人なら、同じナイフ術でももっと意表を突くだろう」

 

「……ッ」

 

青い髪のポークルは怯えに目元を歪ませ、背後に飛び退った。次の瞬間、ガンズに短杖を向けた女魔術師が素早く呪文を構築する。「LA-HA-LI-TO(業火よ出でよ)!」

 

その杖先より生じた炎の渦が、瞬く間にガンズを呑み込んだ。瓦礫と粉塵を巻き上げる爆炎は石の壁をも熱で歪ませる。

 

彼女はニヤリと笑うが、すぐにその目を驚きに見開く。もうもうと湧き立つ黒煙が晴れると、そこには分厚い氷の壁が立ち塞がっていた。半透明な壁は亀裂や窪みこそあるものの、炎を通した形跡はない。

 

「チッ」

 

女魔術師は舌を打ち、続けて呪文を撃とうとする。しかし彼女の杖から再び炎が生じる前に、氷壁に突然亀裂が走り、ガラガラと崩れ落ちた。

 

「……ッ!」

 

彼女は息を呑み、押し寄せてくる氷塵を吸い込まぬように口元を腕で庇う。

しかし真っ白な塵に混じり、奇妙な水色の霧が流れてきたとき……すでに全ては遅かった。

 

「わっひゃああああっ?!!」

 

纏った黒いローブも赤い服も溶け去り、その不健康に痩せた裸体を晒す魔術師。

霧の向こうから歩いてきたガンズは彼女をじっと見つめたあと、呟くように言った。「存外悪くない。悪くないが、もう少し食事をちゃんと摂った方が良いな」

 

「こっのぉ……変態!!」

 

顔を真っ赤にし、彼に短杖を向けようとする魔術師。しかし彼女の杖は軽い材質の木製であったため、真っ先に酸の霧の餌食となっていた。

自身が丸腰であることに気づいた彼女は、大事なところを手で隠しつつ、震える唇をどうにか動かす。「こっ、降参……よ」

 

「ふむ、良いだろう」

 

腹の立つ上から目線でガンズが言った。しかし彼は不意に眉をひそめ、長杖を手元に引き寄せる。両手で掴んで頭上に掲げると、背後から迫る刃を辛うじて受け止めた。

 

「やるじゃねえか、モヤシ女。おかげで氷から脱出できた」

 

ロングソードでガンズと鍔迫り合う戦士の男が獰猛に笑う。「楽しんだか、変態エルフ? だがその代償は高くつくぜ」

 

「……」

 

膂力の差もあり、じりじりと壁際まで押し込まれていくガンズ。しかしどういうわけか、彼の表情に焦りはなかった。いつもと同じ涼しげな顔で、自身に迫る鋼の刀身を見つめている。

 

「何だぁそのツラは。もっと泣き喚いたりしてみろよ。お前のダチのポークルくんは良い悲鳴を聞かせてくれたぜ?」

 

歪んだ笑みを溢す戦士の男。ガンズは無言で彼を見返したあと、静かな声で訊ねた。

「そういうお前は、一体どんな悲鳴を聞かせてくれるんだ?」

 

「あぁん? 何言ってんだか分かんねえなあ!!」

 

男は全身の力を込め、いよいよガンズを押し切ろうとする。そのときだった。石床を走る亀裂の奥から、細長い腕が飛び出す。それは腐敗し黒ずんだ獣人(コボルド)の腕だった。

 

「なっ?!」

 

戦士の男は両の足を掴まれ、身動きを封じられてしまう。彼は剣を突き立てて拘束から逃れようとするが、次から次へと地中から這い出してくるアンデッドたちを見て、その顔を青くした。「ど、どうなってやがる!?」

 

生ける屍と化した獣人(アンデッドコボルド)たちは、まるでガンズを守るようにその周囲を固め始める。回廊の奥や柱の影からも無数の屍が現れ、ぞっとするような呻き声を響かせた。

 

「嫌! 放せ、放してっ!」

 

首のない腐りかけの獣人に羽交い締めにされ、悲鳴を上げる女魔術師。他の戦士の男たちもアンデッドたちに群がられ、あっという間に身体の自由を奪われていく。

 

「すまんな。少々遅れた」

 

柱の影からゆるりと現れるアイアンハンド。ガンズは漂う死臭に怯むことなく、エルフの老人に礼を言った。

「いや、助かった。見事なものだな」

 

「フフン、そうだろう。この数を一度に操るのは難しいんだ。もっと褒めてくれていいぞ?」

 

アイアンハンドは得意げに鼻を鳴らす。そして辺りを見回し、眉間に皺を寄せた。「敵はこれで全員か。六人いるとか言ってなかったか?」

 

「ポークルのシーフがまだ近くにいるはずだ」

 

「青い髪の奴か?」

 

「そうだ」

 

ガンズが答えると、アイアンハンドはつまらなそうに肩をすくめる。「そいつなら逃げたよ。凄まじい足の速さでな。鈍間なアンデッドどもでは捕まえられなかった」

 

「問題ない。こいつらは数合わせの下っ端だ。ボリスの宝石は持ってないだろう」

 

ガンズは特に表情を変えることなく言った。アイアンハンドは彼の横顔をじっと見つめ、その肩にポンと手を置く。「気持ちは分かるが、焦るなよ」

 

「焦っているように見えるか」

 

「フフン、年寄りの慧眼を見くびるでない」

 

エルフの老人はウインクすると、敵の冒険者たちに向き直る。アンデッドたちに捕らわれた彼らに近づいていき、その口元を鋭く歪めた。「人間の若造ばかりだな。なかなか活きが良さそうじゃないか」

 

「放しやがれ、クソジジイ!」

 

男たちの一人がわめくと、アイアンハンドの口角がさらに吊り上がる。「お前さんが一番乗りかな?」

 

「あぁん?!」

 

凄む男の前に立ち、アイアンハンドはおもむろに腕を伸ばした。機械の指が男の腕を掴むや否や、その内部で重々しい駆動音が響き、人間離れした凄まじい力を発揮する。

 

「ぎ、ギャアアアアァッ!!」

 

男の断末魔じみた悲鳴がダンジョンに木霊した。鋼鉄の義手はその屈強な肉を裂き、骨を棒きれのように軽々とへし折ったのだ。

関節を滅茶苦茶にするような乱暴な折り方だ。たとえ優秀な司祭の治療を受けても、元のように動かせるかは怪しいだろう。

痛みと恐怖にすすり泣く男に顔を近づけ、アイアンハンドは囁いた。

「怖れることはない。その身体は余すことなく使ってやろう。ちょうど戦士の死体が欲しかったんだ。お前さんのように若く、よく鍛えられ引き締まった……瑞々しい肉体の戦士がな」

 

「よせ、アイアンハンド」

 

ガンズは早足に歩み寄り、彼の肩を強く掴む。

「言ったはずだぞ。そいつらは数合わせだと。拷問など無意味だ」

 

「年寄りから趣味を奪うもんじゃない」

 

振り向きもせずに返された老人の言葉に、ガンズは冷たい灰色の目を細めた。「あんたの悪趣味に付き合う時間はない」

 

「ふう」

 

アイアンハンドは溜息を吐き、呆れた調子で肩をすくめる。「冗談だよ。ちょいと脅して、何か役に立つ話が聞ければと思っただけだ」

 

「どうだかな」

 

ガンズは老人から視線を逸らし、目を閉じた。この階層に降りてきたときと同じように、小さく真言を唱える。「DU-MA-PIC(道筋を示せ)」

 

ガンズは少しの間目を閉じていたが、今回はすぐに瞼を開けた。その目には疑問と、少しの焦りの色が見える。「呪文が不発だ」

 

「何だと?」

 

アイアンハンドは胡乱な目で彼を見返した。そして視線を自身の義手に移すと、指先に魔力を集中させて呟く。「LI-OMAS(火をつけよ)」

 

通常であれば煙管に着火するのに適した小火が現れるはずだが、鉄の指には何の変化もなかった。「……真言封じか」

 

「おそらくな」

 

「フン」

 

アイアンハンドは鼻を鳴らしたあと、敵の戦士が落としたロングソードを拾い上げる。「この者たちは囮だったか」

 

「そのようだ」

 

ガンズは長杖を手元に引き寄せ、敵の襲来に備えた。五感を研ぎ澄ませ、あらゆる兆候を見逃すまいと努める。

その甲斐あってか、ガンズの耳に微かな音が届いた。軽く頑丈な木の鞘から刀が抜かれる、軽快で研ぎ澄まされた音である。

 

「アイアンハンド!」

 

ガンズの叫びの意図を、老人は正確に汲み取った。後方に素早く向き直り、膝下に沿うようにロングソードを構える。ちょうどその位置に吸い込まれるように、虚空に銀の弧を描く白刃が奔った。

 

「ぐっ……!」

 

くぐもった呻き声を上げるアイアンハンド。防御には成功したが、その刀の速さと重さは想像を絶するものだった。

彼の身体は吹き飛んで壁に激突し、背中からズルズルと崩れ落ちる。

 

「アヤネ、やはり君だったか」

 

ガンズの声に、刀を携えた人影が振り返った。頭の後ろで縛った絹のような黒髪が、風を受けて軽やかに舞う。朱色の唇が笑みを象ると、白い歯が覗いた。「待っていたわよ、ガンズ」

 

「光栄だな」

 

ガンズは肩をすくめつつ、さりげなく周囲に視線を走らせる。エルフの老人が意識を失ったことで、主を失ったアンデッドの多くがただの死体か、形なき灰に戻ってしまっていた。

 

戦士の男たちが血走った目で各々の武器を手に取るが、アヤネが素早く手で制す。「私の獲物よ」

 

男たちは不服そうだったが、彼女の鋭い目を見てたじろぎ、何も言えなくなってしまう。

アヤネが魔術師の女に視線を送ると、彼女は不安そうにしつつも小さく頷いた。男たちを引き連れ、回廊の闇の奥へと消える。

 

「これで二人きりね」

 

囁くようにアヤネが言った。ガンズは鉄の長杖を短く持つと、油断なく身構える。

彼女の強さ、そしてその内に潜む暗い欲望は、その逞しくも美しい裸体を目にしたときから分かっていたことだった。「女性との逢瀬は久方ぶりだ。お手柔らかに頼む」

 

「フフッ」

 

アヤネは妖艶に微笑み、刀を握る指先をしなやかに躍らせる。蝋燭の揺らぎが作る闇と光の中で、彼女の琥珀色の瞳が怖ろしくも美しく輝いていた。「安心して。殿方を喜ばせるのは得意なの」

 

 

 

 




野郎に変態呼ばわりされても何も思いませんが、女性に「変態ッ!」て罵られるのって……この上ないご褒美ですよね。
学生の頃は女子にキモいって言われるの嫌でしたが、今はむしろメチャクチャ言われたい。
あーあ、いくらでも金積むから、誰か俺のこと変態っキモいって罵ってくれないかな~。
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