「此処は?」
いつの間にか立っている。
穴が現れたと思ったら、急に吸い込まれたとこまで覚えている。
ってそうだよ、ここどこだよ。
「なん、だと……」
辺りを見渡せば並び立つ支柱が目に入り、横長の椅子がいくつも綺麗に並んでいる。
色彩鮮やかなステンドグラスはこれでもかと主張してくる。
ついでに自分の真後ろには祭壇があり、もう間違いない。
教会だこれ。
ならば言うことは一つ。
「神は実在していたのか!」
やべえ、超失礼な態度とってたわ。
俺が神だったら土下座させてるね。
いやまてまて、こう言うときのための教会だよ。
落ち着くんだ俺。
とりあえず手組んで祈っとこう。
「神よ、我が信仰を受け入れたまえ」
こんな感じか?
適当な感じだが信仰してるのは間違いない。
何せ俺は神をこの目で見たのだ。
空想ではなく、歴とした神と相対していたのだ。
テンションが上がらないわけない!
なんか特別な力とかもらったし、これもう神の使徒といっても過言じゃないよね?
「ふふふ」
顔がにやけてしまうが、落ち着くんだ俺。
調子にのって神に見放されたりしたら特別な力とやらも失ってしまうかも知れない。
そうなったら首吊るかも。
ならばやることは一つ。
折角神からもらった新しい人生だ。
好きに生きながらも、祈りは朝晩欠かさずに行っていこう。
よし決めた。
「マスター」
「?」
野生のシスターが現れた。
笑顔で近寄ってきた赤い目が特徴的な金髪ロング貧乳シスターだ。
え、何?
一瞬調子に乗った俺を始末するために送られてきた神の尖兵かなにか?
すいません反省してるんで勘弁してもらえませんかね。
「そう険しい顔をされなくても、私は怪しい者ではございません。神よりあなたを支えるために送られてきた者です。まずはこれを」
あ、そうなの?
へえ、流石は神だ。
俺のような者に対してここまでしてくれるとは、信仰が駄々漏れになりそうだ。
それで、何気なく受け取ったけどこの十字架は何だ?
鎖が付いてるけど、アクセサリーかな?
神父の道もまずは形からということか。
「そちらは神謹製のアームドデバイスにございます。セットアップと口にしてみてください」
「分かった。セットアップ……おぉ?」
言われるままにセットアップといったら十字架が鞘付きの刀になった。
全体的に黒く、抜いてみると刀身も真っ黒で、金色の十字の鍔が非常に目立つ。
服装も黒の外套に金の刺繍が所々入った大変格好いい仕様になっている。
こういうの好きだよ。
いつの間にか着けていた指貫手袋の甲に十字架が入っているのもいい、素晴らしい。
[よろしくお願いしますね、マスター]
「刀が喋った?」
[人格がありますので]
「そうか」
ビックリだ。
神謹製のデバイスとかいうのは人格があるのか。
あれ、そういえば大事なことがあるな。
「君たちは名前を何て言う?」
「私は生まれたばかりなので名前がありません」
[私もありません]
「奇遇だな、俺も……いや、私も名前がない」
うむ、しゃべり方は大事は大事だからな。
新しい人生は口に出すときはそれっぽくしよう。
いやそれよりも名前だ。
記憶とともに名前も消えてしまったようだ。
となればやることは一つだ。
「名前をつけようじゃないか」
「名前ですか」
[マスター、お願いします]
「ふむ。ならば、全員の名前を私がつけようではないか。いいかな?」
「是非」
自分で言っといてなんだが、いいのか。
実を言うとセンスに自信がないんだよね。
うーむ……よし。
「君はセーラだ」
「畏まりました」
「そして黒金」
[いい名前です]
「最後に私、志登。姓は神野としよう」
完璧だ。
これで名実ともに神の使徒と言えるだろう。
「私も神野でしょうか?」
「当然だ。同じ神のもとに生まれたのだからな。家族と同義だ」
「では、何故私だけ和名ではないのでしょうか」
「見た目が日本人に見えないからだ。そこで見た目の判断からセーラとした」
「成る程、理解致しました」
「それとさっきから思っていたが、どうにも固いな。もっと普通に接してくれて構わない。マスター呼びも必要ない」
「……分かりました」
記憶はないが、知識として日本人だと分かっているからな。
和名にしたい気分なんだ。
ああそうだ。
「黒金」
[なんでしょう]
「私の格好は何なんだ?」
[魔導師が戦闘時に着用するバリアジャケットというものです]
「志登様は着なくても問題ないと思いますが、形だけでもとのことで採用されたようです」
ん?
あれ、今何かおかしかった気がする。
様呼びもそうだけど、そこじゃない。
「……魔導師が?」
[はい]
「ということは、私も魔導師なのか?」
「体を治す際に魔導師仕様に作り替えたらしいです」
「そうか」
……やっぱりじい様邪神の類なんじゃないだろうか。
いや、この世界に適応出来る体にしてくれたのだと考えるんだ。
そう考えると途端に素晴らしいと思えてくるから不思議だ。
うむ、何も問題はない。
ちょっと普通の人間やめただけだしな。
「しかし、流石に刀の状態では持ち歩けないな」
[問題ありません]
「……おぉ」
[普段はこの状態なので、常時持ち運び可能です]
刀状態の黒金が一瞬光ったと思ったら金色の十字架に戻った。
ついでに俺も元の服に戻った。
便利だな。
「ふむ。現状確認は大体終わったか? あとは教会の確認と力の確認だな」
「そうですね」
[そうしましょう]
「では行こうか」
この教会、どうせ普通じゃないんだろうな。
俺の勘がそう言ってる。
だって神が用意したんだよ?
確実に普通である訳がない。
だが、それがいい。
さてさて、どんなもんかね。