似非神父が行く   作:芋洋館

3 / 5
原作キャラって難しいですね


神父は戦慄する

思った通り普通じゃなかった。

何がって?

教会だよ。

聖堂の奥に扉があったから進んでみたが、なんと宿泊施設の様相を呈していた。

しかもとんでもなく広く、娯楽設備まであるときた。

色々あるし、意外と神は人の世に詳しいのか?

ともかく、居住空間が確保出来たというのは嬉しいことだ。

ただね、どれだけ大きい教会なんだと思ってちょっと外に出てみて確認してみたら、見たところ聖堂分の大きさしかないんだよね。

あの扉は四次元扉か何かなのか?

思わず涙を流したね。

神の奇跡はこうも容易く行使されるのかと。

火照った体を冷ますためにセーラと共に暗い夜の道を歩くことにした。

道が分からないし、帰れなくなる可能性があるから外に出るだけで良かったんだが、セーラが出歩くことを推奨したからそうすることにした。

黒金が市内全域の地図を記録しているから問題はないらしい。

流石神謹製、隙がない。

今度オススメの場所教えてもらおう。

 

「やめなさい!」

 

む?

公園からか。

 

「揉め事のようです」

「そのようだな」

[声質から子供のものと思われます]

 

子供だと?

時間は分からんが、子供が出歩くには少し遅い時間だな。

仕方ない。

 

「なんの騒ぎだ」

「何だお前? モブは引っ込んでろ!」

 

何か理解出来ないこと言われた。

モブ?

というかなんだこの銀髪のガキは。

よく見なくても分かる原色の赤と青のオッドアイに、人間離れした整いすぎている顔のせいで人の皮を被った妖怪にしか見えない。

人の顔の絵を見ているみたいだ。

 

「こんな時間に騒ぐものではない。それに、子供の出歩く時間でもないぞ」

「うるせえんだよ! モブキャラの癖に俺に指図するんじゃねえ!」

 

ああ、モブってモブキャラのことか。

モブだけで言われると通じないな。

しかしこいつは話にならないな、他にはっと。

妙に震えてる栗色の髪の少女と、そんな少女の前に立っている青い髪の少女か。

これならどういう状況か分かるな。

つまり銀髪、てめーが原因か。

 

「死ねオラアアアアーーーッブ!」

 

振り向いたら銀髪がいきなり殴りかかってきた、そう思った次の瞬間には銀髪が地面に顔を突っ込んで気絶していた。

どうやらセーラがやったようだ。

俺には殴る瞬間が見えていたが、少女たちは何が起こったか理解してないようだ。

口を開けて呆けていた青い少女は、しばらく放心していたが気を取り戻すと歯を見せて威嚇してきた。

お前は犬か。

というか何もする気はないんだけど?

 

「早く帰りなさい」

「え?」

「早く家に帰りなさい、と言ったんだ」

 

少女A、いやブルーだからBか?

まあいい、何言ってるだこいつみたいな顔をするな。

家に帰れと言ってるんだ。

 

「帰りたく、ないの……」

「何?」

 

おい、少女Bの後ろにいる栗色の少女がとんでもない台詞を言ったぞ。

家出少女か? 面倒なのと遭遇してしまった!

いやいやまてまて、俺は新米だが神父、聖職者だ。

迷える子羊を導くのは神父役目のはずだ。

多分。

仕方がないから話を聞こう。

 

「ふむ。話せば楽になることもある。理由を聞かせてくれないか?」

「あ、あんた!」

「……わかったの」

「なのは!?」

 

少女Bが一人で騒いでいるが、お前には聞いていない。

というか栗色の、なのは? の知り合いならこんなとこにいないで家に帰るように勧めてくれたらいいのに。

まあ、言っても仕方ないか。

 

「おとうさんが大ケガして、みんないそがしくて、さびしいけど、なのは、いい子に、ならっ、ならないと……おとうさん、けが……なおらなくて…………それで、それで……」

 

……お、思ったより重い話だった。

もうなのはって子、泣きじゃくって言葉になってないよ。

え、ええと、つまりどういうことだ?

 

(志登様)

 

うおっ!?

な、なんだ、急にセーラの声が頭の中に?

 

(これは念話です。あとで使い方を説明します)

 

念話、念話か。

そんなものも使えるのかこの世界。

 

(それよりも今のお話ですが、どうやら父親が大怪我をして、家族の方はなのはという少女に構って上げられない状況にあるのでしょう。おそらく母親でしょうが、いい子にしててねと、それに近いことを言ったはずです。この少女はいい子になるため、迷惑をかけないように一人こうしているのでしょう。もしくは、家に居づらいか、どちらかのはずです)

 

お、おおおう。

そ、そうか。

察しが良すぎるな。

 

(因みに、私なら大怪我を負ったという父親を治せます。元々、治すといったことを目的として私は生まれたのです。後から話を聴けば、志登様は必要ないような気もしましたが、念のためだそうです)

 

ほほう。

治せるのか。

然り気無く俺について何か言っていたが、そういえば特別な力とかあったんだった。

 

(なので、ここは適度に慰めてから家に帰すことをオススメします)

 

了解。

とはいえ、どうしたものか。

うーむ……あ、ちょうどいいな。

 

「黒金、刀の状態だけになれるか?」

『可能です』

「では、こちらに合わせて変わってくれ」

『了解』

「セーラ、頼りにしてる」

(何かするつもりですね。分かりました)

 

黒金、お前も念話出来たのか。

小声で話す俺が馬鹿みたいじゃないか。

くっ、絶対あとで教えてもらうからな!

まずは泣きじゃくっているなのはだ。

 

「何をする気!?」

「少女よ、これから起こる奇跡から目を離すな」

「……きせき?」

 

なのはの気を惹くために近寄れば、少女Bが癇癪を起こす。

非常に鬱陶しいが、頑張って無視する。

首から掛けていた十字架状態の黒金を外し、一本の木に近寄る。

黒金を片手に持ち、十字架の下の部分を引っ張るように手を動かせば徐々に刀の形となっていく。

ナイス演出。

完全に刀の形となった黒金で居合いの構えを取る。

奇跡と言ったが、俺がやるのは斬ることだけだ。

深く息を吸ってから長く吐き出し、落ち着いたところで一息に黒金を振る。

思った以上に体が軽く、振るわれる黒金も尋常ではない速さで動く。

目的を達成した俺は、少女たちに理解させるために少し浮いた状態で黒金を鞘に入れる。

少し時間をおき十分だと判断した俺は、高く小気味良い音を鳴らし黒金を完全に鞘へ納めた。

その音を合図に根本を残しバラバラとなる一本の木…………と、後ろに続く木々。

……や、やべええええええええええ!

ナンダヨコレ!

すげえ! どころかやべえ! って程なんですけど!?

人のすげえって規模超えてるよじい様!

 

(お見事です。私のやることは理解しました。お任せください)

 

お、おう。

落ち着いてるなセーラ。

ついバラバラにしちゃったけど、やっぱり治せるのね。

バラバラになった木々から光の粒が立ち上り、バラバラになった木々は元の形へと組み立てられていく。

治療っていうより再生だな。

俺も落ち着かなくてはならない。

あーあー……、うん、オーケー、普通だ。

何たって神に与えられた力だしな、うん。

続きだ。

幻想的な光景に背を向け、なのはに向き直れば唖然とする少女たちが。

当然だろうな。

俺も唖然とした。

さて、ここだ。

 

「少女よ、心強くあれ」

 

出来るだけ尊大に、自信に満ちた顔で言う。

 

「苦難を越えた先に救いがある」

 

そして、にやりと笑いかける。

 

「存外、神は近くで見てくれているかも知れないぞ」

 

最後だ。

これを言わなくては終われない。

強烈な印象を与えたあとの言葉は何より忘れ難い。

一種の催眠術だ。

 

「君はまず、思いを打ち明け甘えると良い。難しいと思うが、必要な一歩だ。君の勇気に、奇跡は応えてくれる」

 

言った!

よし、行くぞ恥ずかしい!

 

『マスター。そのまま右の方へ思いっきり跳んでください』

 

黒金の念話に身を翻し、セーラに目を向ける。

セーラが頷いたのを確認して、言われた通りの方向へ思いっきり跳ぶ。

うお、たけええええええ。

 

 

 

 

 

 

 

なのはside

 

「奇跡は応えてくれる」

 

そう言ってきえた男の人。

いろんなことがあって頭がおいつかなかった。

でも一つだけ、分かったことがあるの。

 

「神様……」

 

何もなかったみたいに立っている木のまわりには、まだ少しだけ光の玉がういてるの。

きえていく光の玉を見ていたら最後の光の玉がなくなった。

それを見たわたしはおうちに帰るため立ち上がる。

 

「なのは!?」

 

どうしてかわたしの名前を知っている女の子をおいてはしりだす。

正直男の子も、あの女の子もこわくてしかたなかったの。

いきなりあらわれて名前を知っていたり、頭をなでようとしたり、 大声を出したり、全部全部こわくてしかたなかったの。

長く感じた帰り道に、おうちが見えてきて涙が出てくる。

おうちにとびこみ、息をきらしながら帰ってきたわたしにお母さんが驚いてるの。

かまわずお母さんに抱きつく。

 

「なのは、何処に行ってたの? ……なのは?」

「……」

 

言わなきゃ。

こわくて体がふるえるけど、もしかしたらおこられるかも知れないけど、言わなくちゃいけないの。

 

「さびし、かったの……」

「……!」

 

お母さんの体が固くなるのが分かったの。

思わずお母さんに抱きついたうでに力が入っちゃったの。

やっぱりおこられるのかな……。

ううん。

心を強く、なの。

 

「さびしかったけど、みんないそがしいから、一人で、いい子にならなくちゃって」

「なのは……」

「公園で、めいわくをかけないようにって、一人でいたの。でも、やっぱり…………さびしいよ」

「なのは……! ごめんなさい、ごめんなさいなのは。私、士郎さんが怪我をしてどうしたらいいか分からなくて……。なのはに辛い思いをさせちゃったのね」

「お母さん……うぅ」

 

お母さんが優しく抱きしめてくれたの。

あったかくて、うれしくて、泣いちゃったの。

 

「なのは……」

「お兄ちゃん。お姉ちゃん」

「すまない、なのは。俺は周りが見えていなかったようだ。家族を守ると誓いながら、なのはを自ら傷つけていたなんて……!」

「ごめんねなのは。こんな事に気が付かないなんて、私、これじゃあお姉ちゃん失格だよ」

「みんな……うう、うわああああん」

「なのはっ!」

 

わたしは一歩をふみ出せたの。

大声で泣きながら抱き合って泣いていたわたしたちに、奇跡を知らせる電話がかかってきたのは、それからしばらくたってからだったの。

神様の言う通り、奇跡はこたえてくれたの。

 

なのはside end

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。