期待外れだよ。
いや、勝手に期待してただけなんだけどね。
特に何事も無く赤髪の少年と青髪の少女と知り合い、解散したあとにストーキング、もとい尾行の結果から青井呉葉に如月栄治、どちらの両親とも魔導師ではないと判明した。
魔導師って遺伝とかじゃないのか?
リンカーコアとかいう謎の器官を持っている人間が魔導師となるということらしいけど、そもそも何を以って魔導師と判断しているのかよく分からん。
黒金とセーラがNOと言ったから間違いなくあの子供たちの両親は普通の人間だ。
俺からするとあの子供たちも普通の人間にしか見えない。
少々、いやかなり奇行が目立つけど、見た目から魔導師かどうかの判断は不可能だ。
デバイスを持っていれば目印になると黒金が言うけど、形は千差万別。
俺には何がデバイスなのかさっぱりだよ。
黒金センサーに任せるしかない。
何年も経ってようやく二人だし、そう簡単に見つかるものではないのかね。
「こちらをどうぞ」
「ありがとう」
うーん。
翠屋の自家焙煎珈琲もいいけど、セーラの淹れるお茶もいいねー。
何のお茶だか分からんけど。
多分緑茶だろ、緑だし。
「こちらは緑茶ですが、煎茶というものなんです。種類が多いみたいですね」
あ、そうなの。
心を読んだかのような絶妙なタイミングで説明が入ったけど、まさか本当に読めてるわけではないよね?
神の眷属といっていいセーラだから、ありえなくもない。
「そういえば、高町さんの家のなのはさんが、フェレットを拾ったようです」
「フェレット?」
どっかのペットショップか、飼われていた家から脱走したフェレットっぽいな。
というか、何故知っている。
ご老人ネットワークか?
あれは中々侮れないものがある。
「何でも、綺麗な赤色の宝石を首に掛けていたようですね」
「そうか」
つまりどっかの家から脱走したフェレットだな。
宝石を首輪につけるとは、さては金持ちのとこのペットとみえる。
逃げ出すなんて、随分もったいないことをするな。
「ところで志登さん、今夜は月が綺麗だそうです。私を連れて外へ出てみませんか?」
「……そうだな。たまには二人で歩くのもいいだろう」
俺とセーラは最初のころこそ二人で歩き回っていたが、最近は二人で歩くことなんて無かったな。
こうやってセーラが誘ってくれたんだ、断るわけにはいかない。
思えば、何処か固かったセーラも、ここ数年で柔らかい態度で接してくれるようになった。
いい傾向だよ。
「鍵を取ってくる」
「既にここに」
おおう、準備万端ってわけですね。
じゃあ行きますか。
良い月だな、とか思ってたらなんだよ。
[マスター。敵性体です]
「ああ。セーラ」
「はい」
黒金の声を聞く少し前から妙な音が聞こえてたけどさ。
流石にこれは想像してなかった。
「GUUUOOO……」
セーラと適当にぶらついていたら、黒い物体が落ちてきた。
目と口はあるが手足がなく、触覚だか触手だか分からないものがうねうねしている。
完全に化け物です。
なあに、これぇ?
ってうお。
「黒金」
[この程度、何の問題もありません]
うねうねしてたのは触手だったみたいだな。
黒金が出したゲームで見るマジックシールドっぽい何かに当たって弾かれてるし、威力はそこまでではないのか。
気持ち悪いし、斬るか。
流石にこれはペットじゃないよね?
「志登さん!」
おや。
この声、なのはか?
「なの、は……?」
声がした方を向けば、コスプレしたなのはがいた。
つい訝しげな声を出してしまったのは仕方ないことだと思うんだ。
「なのは!」
「一人だと危ないぞ!」
「てめえ! いい加減これを解きやがれ!」
ついでに赤青銀のコスプレ仲間が現れた。
まさかとは思うが、これは……。
(黒金)
『全員魔導師です』
ああ、やっぱりそうなのね。
赤青はともかく、なのはと銀髪も杖みたいなもの持ってるし、そうじゃないかなーとは思ったよ。
気になるのは銀髪が赤色に発光しているリングに拘束されていることだが、多分赤髪の少年がやったんだろう。
睨まれてるし。
「これは……」
「ああ、少し待っていてくれ」
話をしようにも、さっきから触手を振り回している黒いのが鬱陶しい。
「Gu……GYAAAAAAAAAAAA」
うわぁ、こいつ体中から触手出せるのね。
よし、ここは格好良く決めよう。
「無駄だ」
数年間修行したおかげで、上手い具合に力加減は出来るようになった。
例えばこう、迫る触手に黒金を一振り。
すると、触手斬り飛ばされるでしょ?
そして黒金を納める、と。
で、台詞。
「お前はもう、死んでいる」
「GA……?」
はい完了。
台詞が終わるとともに化け物はずるりと半身を落とすわけです。
これだよ、俺がやりたかったのはこういうのだよ!
実はこれ、なのはが声を掛けた時には既に本体を斬ってたというね。
思ったよりも長い時間動いていた化け物をみるに、もう少し改良したほうがいいな。
せめて動きが鈍くなるくらいにはなってほしいかな。
「さて」
「なのは! 今のうちにさっき言った通りに!」
「うん!」
ん?
「リリカルマジカル」
「封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード!」
「ジュエルシード、封印!」
おおう、何かよく分からないけど魔法少女っぽい。
「リリカルマジカル。ジュエルシードシリアル21、封印」
あの青い石はジュエルシードとかいうのか。
それにしても封印ねえ。
化け物がいたとこに落ちてたし、あれが原因なのか?
流石魔法世界、意味が分からないな!
「あ、あれ? 終わった、の?」
「うん。ありがとう……」
終わったのか。
それはいいんだけどさ、非常に気になるんだけど、いいかな?
「なのは」
「あ、志登さん! 私魔法使いになったの!」
「そうか」
ああうん、それはいいんだけど。
よくないか?
まあ、それじゃないんだ。
「そのフェレット、今喋ったような気がしたのだが」
「あ、初めまして。ユーノと申します」
「……志登だ」
喋ったよ。
聞き間違いじゃなかった。
何だこれ、魔法生物みたいな感じか?
「シトさんは、この地の魔導師の方ですか?」
「いいや、神父だ」
「え?」
「それよりも聞きたいことがある」
「あ……な、なんでしょう」
「おいてめぇ!」
……銀髪ぅ。
お前ってやつは数年前と何ら変わらんな。
「何だ?」
「俺がなのはを助けるはずだったんだ! よくも邪魔しやがったな!」
「意味の分からないことを言う。私は私に襲い掛かってきた化け物を討ち果たしたにすぎない」
「だから邪魔をしたって言って―――ブッ!」
まったく、鬱陶しい銀髪だ。
喚く銀髪を張り倒した赤髪君も俺に何か言いたそうだな。
「前も聞きたかったことなんですが、あなたも転生者ですよね?」
「何?」
あなたも、だと?
まさかこの赤髪君も転生者なのか。
喋るフェレットに聞きたいことがあるが、あとでもいいか。
「ユーノと言ったな」
「は、はい!」
「君は何処へ行けば会うことが出来る?」
「え、えーと」
「志登さん、ユーノ君はうちで飼うの!」
「そ、そうらしいです」
「そうか」
飼うとか言われているけどそれでいいのかユーノ。
人の言語を喋れる程の知恵があるんだから、飼うって言葉に反応すると思ったけど、しなかったな。
まあいい。
「なのは、また今度話をしよう。今日はもう遅いから、帰るといい」
「はい!」
いい返事だ。
んじゃまあ、赤髪君。
「場所を移して話を聞こうか」
サイレンの音も聞こえてきたしね。
いきなりアクセス増えてびびる芋。