Infinite stratos / False prophecy 作:✕せんたくだま
地獄とモノクロ、油水の理。
どうか貴方の色が翼を染めますように。
無限に続く純白の真砂。空を埋め尽くす暗黒と、白い正六角形の網目模様。
少なくとも初めて見る景色じゃない。
いつからだろうか、そんな場所に俺はいた。
「……また、この服か」
無駄に柄の細かいデザインのネクタイに、紺色のブレザーとズボン。校章か何かが描かれているはずの、左胸に付いたピンバッジは表面が削られたようにのっぺりしている。
見た目からして、ちょっとイイ感じの私立中学か高校か……のっぺらぼうの学校なんて俺は知らないけど。
冬服で動きづらいはずなのに、まるで夏の上下半袖で過ごしているくらいには身体が動く。服を着ているというよりは、そういうテクスチャを貼り付けただけのような薄っぺらさ。そも、布の類を身に纏っているような感覚がない。
――
突然、鈴の音が鳴いた。
初めて聞いたはずではないけれど、初めて聞いたような新鮮さ。
「お前か」
もしかしたら他の方向だったかも知れないけど、少なくとも今は前。大股で10歩くらいのところに、鞠を持った白い人影がいた。
鞠の模様は相変わらずの、赤い麻の葉模様。大きさは人の頭より一回り小さいくらいで、両手で持てる程度。
人影の方は、以前何処かで見たときよりもハッキリしている。相変わらず真っ白で奥行きに欠けた外見だが、腰まで伸ばしたくしゃくしゃの癖っ毛と、布一枚の形を整えて作ったようなヒラヒラの紬*1を纏っているところは変わらないように見える。見る角度によっては和服ですらないかもしれない。
「聞いても答えちゃくれないんだろうけどさ、お前、何?」
シャンっ、と音を立てながら鞠が蹴られて飛んでくる。例によって白い人影の脚はロボットみたいにピンと伸ばされているが、鞠の軌道はなんだか柔らかい印象を受ける。
「これでも調べたんだぞ、蹴鞠っていうらしいなコレっ!」
ポン、と鞠を土踏まずで掬って蹴り返す。
前と違って見逃すようなことは無かったが、しかし球技はド素人。力を入れ過ぎたのか、思いの外鞠が軽かったのか、人型の後ろの遠方に鞠は飛んでいく。
「引きこもりが急に粋がれる程簡単じゃな――ぁだッ!?」
一瞬にして空中から鞠が消えて、直後に下顎を打ち据えられる衝撃。バランスを崩して尻餅をつくと、痛みの代わりにシャンシャンと目の前で鞠が跳ねた。
「あのなぁ、気に入らないことがあるとすぐに暴力に走るのは良くないと思うぞ……。大体、俺がコレを蹴鞠って察せられなかったらどうするつもりだったんだよ。懇切丁寧に説明してくれたのか?」
――シャンっという甲高い鈴の音とともに、人型の足が振り上げられた。
俺は反射的に両腕を顔面の前に構えたが、右側頭部に衝撃。遅れてシャンと鞠が鳴った。
まっすぐ蹴ったらまっすぐ飛んでくる訳ではないらしい。一体どういう軌道してんだよ、わけわかんねえよ。
全く痛くないけど、痛くはないけどさあ!
「……はぁ。そもそも、俺の言葉って通じてんの?」
人型はまた鞠を蹴ったが、今度は山なりにゆっくりと飛んできた。コレなら蹴り返せそうだ。さっきは強すぎたので弱めに蹴り返すと、鞠は不思議なことに、微動だにしない人型の手にすっぽり収まった。
……あれ?
「さっきからさ、俺が何か質問する度に蹴ってきてるけど……今さっきのって『YES』とか『はい』のつもりだったりするか?」
また鞠が飛んでくる。山なりの優しい軌道。上手く行った直前と同じように蹴り返すと、やはり鞠は吸い込まれるように白い人型の手に乗った。
全く同じ挙動。ここからは論理ゲームの亜種だ。
「言葉が通じているか」という質問の答えがNOの場合、そもそも話にならないので後の挙動自体が意味を成さない。意思疎通のできない相手である可能性は一旦後回しにしたいので、したがって言葉が通じているとすると、「鞠を優しく蹴る」はYESに相当する動作であると分かる。
あれ、でもそうなるとNOに相当するのは……なんだか嫌な予感がする。
「……ええと、今俺が喋ってるみたいに口頭言語で話せたりする?」
顔面に両腕を巻きつけるようにクロスさせてから質問してみると――後頭部に衝撃。鈴の音もセットだ。俺がガードしていない場所を正確に狙ってきやがる。
――ああ! マジかよ!
コイツは言語で喋るつもりがなくて、NOで返すときは頭にデッドボールしてくる、とんでもない奴である可能性が大いに高まった。
その後、何度も顔面に鞠をぶつけられながらインタビューを続けた結果分かったのは大まかに5つ。痛くないけど頭皮が削られた気がする。
一つ、「質問に関わらず俺の蹴り方が下手だと顔面シュート」。
二つ、「YESとNOの二値で返せない質問はYESの動作で返す」。
三つ、「この白い人型は自分で表現出来る範囲の方法でしか会話しない」。
四つ、「YESとNOに該当する動作を他のものに変えるつもりはない」。
五つ、「少なくとも俺が言い当てるまでコイツの正体は不明であり、とりあえず
なんというか、1ビットだけでTCPプロトコルをやっているような……いや、もっと酷いな。
「んな頭狙われたら、もう俺ハゲちゃうよ……いやだよこの年で髪無くなんの……。まあ一度全部剃ったことあるんだけど。
――それで、なんで俺らはこんなことしてるんだ? 『何となく話したかっただけ』とかだと困るんだけど……」
山なりの優しい軌道で鞠が飛んできた。ウンザリしながら蹴り返しておく。
――YESですってよ、奥さん。
「ホントに、あの、何なのコレ……」
誰か答えてくれよ。言葉で。
『――は? え、いや……どうしろと? 全部……』
2時間ほど掛けてサイバーコネクタの調整も終わった頃。
ついに新型機OF-3は本格起動の時を迎えた。
info: Initiate neurotransmission function optimization process...
Testing alternative visual processing
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
██████████████████
PIONEER_MODEL
『ありえないありえないありえないありえない……』
「――おいショウ、大丈夫か!? バイタルが暴れているぞ!」
横からモニタリングしていたコウスケは、ショウの異常に素早く気付いた。脳血流の急激な増加、体温の上昇、直前まで毎分60回程度だった心拍数は150回ほどにまで跳ね上がり、呼吸はどんどん速く粗くなっていく。
これが続けば命に関わることなど、素人でも分かる。コウスケは手に持ったタブレット端末を操作して、機体の強制停止とパイロットの排出を試みるが――。
「
OF-3のコアがそれを拒絶した。パイロットの保護が最優先のはずのシステムが、それと矛盾した振る舞いをする。コウスケ自身、OFというISではないパワードスーツを専門にしているためにISコアについて本職よりは詳しくないが、それでもおかしい。
何よりも、ショウが危ない。
『いいや、止めなくて、いい……』
2人を除けば誰もいない格納庫に、ショウの苦しげな声が響いた。
「そうは言っても異常だろうが! 意識のある内に出て検査を受けろっ!」
『良いんだ。ちょっと、色々流し込まれた、だけだから……。
初めてレイヤー3使ったときも、こうだった、だろ……』
息も絶え絶えの、途切れ途切れの言葉。誰が聞いても健康な人間のそれには思えないが、しかし、コウスケのタブレットに映るバイタル情報は、急速に正常域へ戻りつつあった。
ふーっ、ふーっ、という肩で強引に肺と横隔膜を押さえつけるような呼吸をしながら、架台の拘束を外して一歩前に出た。急に動き出したOF-3に驚いて、コウスケは後退りして道を空ける。
『試験コース、行こうぜ。今は何より、コイツを動かせるようにならねえと……』
「なら約束してくれ。次に異常があったら即中止だ。お前にこれ以上何かあったら……」
『へへへ……親不孝はしねえよ』
だって、息子ってそういうもんなんだろう……。
地面から50cmほど浮き上がったショウは、そのままふよふよと慣性制御だけで徐行して、格納庫の外――北陸支部の敷地最奥にある試験場を目指す。コウスケもその後を追った。
ショウの呼吸は、まだ粗く……。
◆
りぃぃん、という音を響かせながら、OF-3のスラスターが青白いプラズマの尾を引いた。
牧場の柵のような低い壁と、それを上から閉ざす半球状の分厚いバリア。その内周の淵を何度も飛び回りながら、ショウは新たな専用機の慣熟に務める。
バリアの向こうの空はほとんど暗闇で、試験場内の明かりもあって何も見えない。山中にある北陸支部の綺麗な夜空を見慣れていたショウだったが、今はそんなものを眺める余裕など無い。
「……2速」
背面のスラスターと周囲の装甲がスライドし、尾を引くプラズマが爆ぜた。スラスターが変わったというのにこの仕様はそのままで、だからこそショウは懐かしさを覚えた。
「うぉあッ!?」
がくんっ、と鋭い衝撃がショウの全身を突き抜けた。マニュアル車でクラッチの繋げ方を失敗したような、ガタガタとぎこちない挙動。一瞬遅れての急加速。
ワルキュリアではあり得なかった事態に、操縦がぐらりと狂って――目の前にはバリアが。2秒以内に衝突必至。
「3速3速3速――っ!」
背面でプラズマを爆発させながら再びの変速操作。同じく突き抜ける衝撃を無視しつつ、XICSの慣性制御と加速力で運動方向を捻じ曲げて試験場中央へと飛び退く。
あとは減速して止まるだけ……。PICとXICSを組み合わせながら慣性を殺す――。
「滑るッ?!」
止まらない。
ブレーキゴムの擦り切れた自転車の如く、与えたはずの制動力に反してOF-3は空中を
管制室からその様子を見ていたコウスケから通信が入るが、その心配そうな声は起動直後のときよりは深刻さが薄く、まるで想定の範囲内であるかのようだ。
『……怪我はしていないな?』
「一応な、ちょっとびっくりしたけど」
『そうか。やはりPICとXICSの同時使用は不安定だな』
「同感。どうにも、互いが互いを邪魔してるみたいで制動がうまく行かないし、こりゃ3速以上は暫く封印すべきじゃないかな。軌道修正の余裕がある空とか宇宙ならまだしも、閉所じゃ事故って死ぬだけだ」
『今はそれでいい。ゆくゆく重要になるのは2つのシステムの調和……それがOF-3の真の完成になる。
――スマン、少し外すぞ』
「OK、色々試してみる」
ブツリと切れた通信を横目に、ショウはOF-3のスラスターを1速に変形させる。背後でプラズマを迸らせながら、その機体がふわりと浮き上がった。
同時がダメなら交互ならどうだろう……。ショウが次に試すのは2つの慣性制御システムを個別に切り替えて使う方法。少しずつ速度を上げながら、昨夜自分でやったような
「効率が悪い……!」
ショウは苛立ちを隠さない。
動作そのものは上手く行った。先程と違って変速時のショックは低減できたし、操縦がブレることも制動で滑ることもない。
だが遅い。2速に変えて速度を更に乗せると、その非効率さが顔を出した。結局のところ、一方を操作してからもう一方を操作するのを一々しているために、高速度域では操作入力が機体の運動に追いつかなくなる。
「
自分に言い聞かせるように呟きながら、ショウは力任せに
やはり2種の慣性制御システムを同時に扱えなければ話にならない。PICからXICSへ、XICSからPICへ……機体にかかる慣性の部分部分を相互に分配し、交換し、切り替えながらの機動。そうでないとワルキュリアのようには飛べない。さもなければ何もかも……。
このOF-3を本格的に起動してからずっと、ショウは背中を針の筵で突かれているような焦燥に追われていた。
ちらりと浮かび上がったシステムメッセージには、OF-3本体もまた両システムの同調に必要なパラメータの探索を行っていることが記されていたが、そんなものは気休めにもならない。
欲しい答えは「見つけました」であって「探しています」ではないからだ。
焦りのままにショウは飛ぶ。サンデーストライクでの実働経験を元にスラスターと慣性制御に多種多様なパターンで負荷を掛け、ワルキュリアのように天を舞うための動かし方を探り続けた。
スラスターから尾を引く噴射炎が消える間もなく次の尾が描かれ、試験場の中には青白い光の線で構成された立体的な幾何学図形が形成されていた。
「ああ、チクショウ…………んぁ?」
突然の入電。外部からの通信要求がUIの通知ウィンドウに飛び上がった。
先程離席した親父が戻ってきたのだろうか……。ショウは反射的に制動を掛けて――しかしそれでも10mほど滑りながら――停止すると、通信に応じた。
「状況は相変わらずだぞ親――」
『――はじめまして、沢村ショウさん。新型機の慣熟飛行は順調でしょうか?』
「……どなた?」
父親と期待して、しかしスピーカーの向こうから聞こえてきたのは、それとは似ても似つかない声。ボイスチェンジャー越しの、甲高いケロケロとした音の羅列には一切の特徴が削り取られている。男か女か、年代や出身の類がまるで読み取れない、流暢な日本語。
『ご挨拶がまだでしたね。私のことは……ふむ。ジェイドとでもお呼びください。まあ、いわゆる偽名ですが、私の名前が何であろうと貴方に影響することはないでしょうからね。
お父上から既にお聞きかと思いますが、財団の連絡役をしております』
――財団。
ショウはグランゼーラにいる間、この言葉を定期的に聞いていた。ここグランゼーラ・インダストリーの上位団体とも、技術協力をしてくれる研究組織とも、あるいは単なる資金提供者としてその名が会話に出てきた。
2年前の衛星軌道上での事件では、強襲してきた謎の飛行物体の残骸の回収を命じてきたこともあり、ショウたちグランゼーラに指示を飛ばせる権力があるらしいことは確かだ。
「こっちは本名割れてて、そちらは偽名とはなんだかアンバランスだな。『いずれ接触があるだろう』とは言われていたが……何故今になって?」
聞くたびにその正体が変わる、良く分からない団体。しかし、唯一つハッキリしていたのは、ワルキュリアを初めOFの開発計画にこの財団が関わっているということ。ショウ自身の根幹となっているワルキュリアの存在に必要不可欠だったとすれば、恩恵を受けているのは事実なのだろうが、正体が分からないのでは気味が悪い。
『こちらにも準備の時間が必要でしたが……その後で貴方との通信を行うにあたって、機密性を担保できる通信デバイスに貴方が接触する必要がありました。OFX-2では規格の問題で不適切ですし、携帯電話回線など以ての外です。その点、OF-3はまさに理想的だったと言えるでしょう』
「なるほど、
『そう受け取っていただいて差し支えありません。今後も通信の際はこの機体で』
「……俺がISを起動したとき、親父に俺の所属がそちらの財団に移ると言われた。だがそれ以降俺は何の接触も干渉も受けていない。アンタらは一体何なんだ? 俺はお飾りで置かれてるだけなのか?」
「……なんだこれ、9割方は滅茶苦茶な内容じゃねえか」
ショウがISを動かして少し経った2月末。荒らしと特定を趣味とするインターネットの民衆たちによりかき集められた自身の個人情報を、ショウは嫌そうに眺めて、それ以来エゴサーチをしないように心掛けてきた。
しかし、今改めて見ると、その情報はチグハグで滅茶苦茶だ。正しいのは誕生日と名前と自分のSNSアカウントくらいで、それ以外は別人のそれである。ネット掲示板を流し読みしても全く同じことが書かれ、話題にされ、見るもおぞましき混沌の海に浮かんでいた。
ショウはブラウザを放り捨てるように閉じた。
『仰るとおりです。日本政府の情報統制の不完全さ故に、貴方が”2人目”だと判明してからすぐに一般市民による特定行為が行われました。我々はそこへ干渉し、OSINTやSIGINTを試みる各種国家機関などの組織や各種メディアに対する隠蔽工作を実施したのです。
既に特定された情報と、追加で幾つかの個人情報をベースに、管理されたデマゴーグを作り出し……その結果の一つがご覧頂いたページの内容です』
「……はぁ」
『心中お察しするところではありますが、これで彼ら民衆は満足し、本当の貴方には見向きもしない。貴方の弱みを探し、脅そうとするような試みは全て排除されます』
「俺がISを動かしたから? 適性が高いから?
何故そこまで大掛かりなことをするのか、急に言われたって分からないんだが……」
『ISの適性云々は飽くまでも想定外に生まれた付加価値に過ぎません。現時点で貴方以上にOFを扱える人間はおらず、同時に貴方は数少ないレイヤー3の被検者です。我々の目標のために、その才能と実力は保護されなければならないと判断されました。全ては、貴方という個人のスペックを保つためのもの』
まるで機械のような抑揚の薄い声で、ジェイドは淡々とショウの価値を告げる。自分がまるで物のように扱われているのに、不思議とショウは不快感を覚えなかった。
「――それで、要件を聞きたい。こっちは時間がないんだ、急いでコイツを飛ばせるようにならないといけないから……」
ジェイドは皮肉も悪意も感じさせない慇懃さで「お待ちしておりました」と告げると、OF-3の視界に幾つかのウィンドウが立ち上がる。その中の1つを拡大しながら、ショウは呟いた。
「これは地図……いや、飛行経路か?」
『はい。貴方には今からそのOF-3で、この経路図の通りに公海上を飛行していただきたいのです』
「はぁっ!? い、今から?」
『ええ。航路上の監視及び障害については全て解決済みです。その機体のステルス能力でしたら、ISコアの反応を覆い隠すことも問題無いでしょう。
単純に指定の高度で指定のルートを辿っていただくだけ……OF-3を無制限の空で飛行させる経験を積む良い機会です、そちらにとっても悪い話ではないと思いますが?』
いや、しかし……。ショウは口籠る。
公海上に出るということは、日本の領空の境界を出入りするということ。領空侵犯した某国の航空機に自衛隊機がスクランブルしたニュースは数え切れない。
ましてや運用に国家機関の承認を要するISでそれをやれば、どこまで大きな問題になるかは計り知れない。そこまで含めて「解決済み」と言ってのけるジェイドを、果たして信用して良いものか。何より親父が何と言うか……。
『お父上のことでしたら先んじて通達済みです。彼もまた財団の優秀な人材ですから』
「心を読んだみたいに……まあ良いや、それならば引き受ける。狭い試験場じゃ飛んでも飛びきれないし、財団の恩恵にタダ乗りはさせないってことなんだろう?」
『お話が早くて助かります。詳細についてはお父上にお聞きください』
「……了解」
では改めまして……。会話の終わり際、ジェイドは次のようなことを言い残して通信を切った。
『我々――
ショウは少しの間黙り込んだ。考えを反芻して、咀嚼して……しかし考えれば考えるほど分からない。結局のところ正体の判然としない相手に指示を出されただけである。
静寂の中、また入電。今度は管制室からだった。
『……ショウ』
「親父……」
『その様子だと、聞いたらしいな』
「ああ聞いたよ、これから海の上を飛んでこいって……。
一体何なんだ? 財団ってのは。結局ワケわかんねえし」
『詳しいことは後だ。今から飛べるか』
「行けるが……やっぱり3速以上は封印だな。止まれる自信がない」
『それで構わない』
ショウが上を見上げると、試験場の天面を覆うエネルギーバリアが端から消えていく。照明が消えて、自動で明度の調整が行われると、綺羅びやかな星空が姿を表した。
「ポッドもブレードも――武器の類は何も持ってないが、コレで良いんだよな?」
『ああ、いざという時に丸腰の方が良い。何よりソイツの推力で振り切れない相手もいないだろう』
「あいよ」
コウスケの指示のもと、ショウは加速しながら上昇を開始した。眼下に広がる暗黒の山裾や麓の街明かりが視界に映ったかと思えば、次第にそれらは小さく、点のようになっていく。
今、高度は地上80km。地平線が丸く歪んで、地球が球であることを力強く主張している。
コンパスで方位を確認したショウは、背後でプラズマを爆ぜさせながら一気に駆け出した。
こんかいのまとめ
・ショウ
あれっ、蹴鞠ってジャパニーズ・トラディショナル・スポーツだよね。こんな顔面シュートしまくるやつだっけ?
OF-3の完全起動時によくないものに触れてしまった模様。早く翔ばなきゃ足から腐れるぞ。
自分の適性含め色々知らされなかったのは財団の仕業だったらしいよ、今度は急に仕事振られてかわいそう。
・コウスケ
無理をしがちなショウが心配でならないが、その無理に頼っていることも否定できない罪悪感。
息子として愛す方法を掴みかねて、テストパイロットという扱いに甘んじている。
親子揃って急に仕事を振られることに。家族団欒ってことで良いんじゃないの。
・ジェイド
グランゼーラの上位団体、
今後もショウの機体を介して連絡を取り合うことに。
・白い人型
少なくとも人間ではない。
正しい意味でコミュ障。話したくって堪らないけど方法は勉強中。
有識者に判断を仰ぎましょう。
10話以来の謎空間シーンでしたが、今後も時々挟まる予定です。
本当は蹴鞠ってちゃんと掛け声や蹴り方のルールまで定められてるんですけどね。そのルールを知っている存在がその場にいないので雰囲気で真似しているだけになります。
実のところ乗り換えシーンはまだ暫く続きます。次回で試験飛行イベントを消化しつつ、その後で学園に戻って……というところまでがセットの予定。それまではお膳立ても同然なので、結果としてこの2章が大分間延びしてしまっていますが、どうかお付き合いいただければと思います。
ジェイドという偽名の元ネタはR-TYPE TACTICSⅡで”過去作データを引き継がなかった場合”の主人公のデフォルトネーム「ジェイド・ロス」。その場で適当に考えた名前というニュアンスで使っています。なので今後もジェイドと名乗るキャラがちょくちょく出てきますが、基本的には偽名になる予定。
起動シーンの特殊タグは翼をイメージしたんですが、ちゃんと表現出来ているかは心配なところ……。
戦闘シーンは……
-
なんぼあっても困りませんからね
-
戦ってねえで話進めんしゃい
-
そんなことよりおなかがすいたよ