Infinite stratos / False prophecy   作:✕せんたくだま

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今手にあるものを前に翳した。暗闇が少しでも切り裂けるように。
今できることを1つ数えた。己が己でいるために。


30-4 Forward / Onward

 それは突然のことだった。

 体調の悪そうなショウと彼に肩を貸すセシリアを見送ってから僅かに数分。苛烈な試合が繰り広げられていたアリーナの景色が一瞬にして鈍色の隔壁に遮られて真っ暗になり、照明も薄暗いオレンジの非常灯に変わった。

 

 客席は即座に騒然となった。

 無理もない。直前まで過熱していた興奮がいきなり粉々にされて、閉じ込められた恐怖に塗り替えられてしまったのだ。

 箒のいた客席ブロックに生徒しかいなかったのも手伝った。本来なら教員がいたはずだが、試合中の1、2組の担任は管制室かピットにいる。そして肝心のクラス代表も試合中で、状況に対応できそうなセシリアとショウが不在の今、どよめく彼女らを統制できる人間はどこにもいない。

 

「……」

 

 制服の胸ポケットが小刻みに震えた。

 確かに、いま何かが起きている。姉が警告した1週間はまだ終わっていないのだ。

 つまり、逃げ隠れる必要があるということ。ここより安全だという、秘密の地下ブロックへ。

 

 スマホの画面を見れば、閉じ込められたこのブロックの端に地下へ通じる非常用の出口があるらしい。

 このことを知っているのは自分だけ。その鍵となるセキュリティパスを持っているのも自分だけ。つまり、何かあっても箒だけは助かる。

 いいのだろうか、そんなことをして。

 

 そんなときだった。

 前の列の席で不安そうにする本音(ホンネ)静寂(シズネ)の顔が視界に入った。2人ともパニックこそ起こしていないが、どうにも出来ずに動けない様子だ。

 

「し、しののん……どうしよう」

 

 平時なら一夏が「のほほんさん」と呼ぶくらいには朗らかな表情を浮かべる彼女だが、今はひどく(カゲ)っている。箒の視線に気付いたのか、彼女は振り向いた。

 

「織斑くんも先生もいないし、みんなは()()だし、どうにかしないとなんだけど……」

 

 本音に釣られて静寂も振り向いた。同じように俯いている。「しっかり者」とされる彼女には、このままではいけないという目的意識があるが、肝心の方法が思い付かないようだ。

 

(……そうか)

 

 2人の姿を見て、箒は遂に心を決めた。

 一人で逃げるなど、真っ平御免だ。そんなことをすれば、ただでさえ一夏に顔向けできない現状が、単なる生き恥と化すだろう。

 

 あるいは、代償行動かも知れない。

 己の力に振り回され、他人に2度も酷いことを働いてしまった。謝罪だって出来ちゃいない。このまま重いものを抱え続けるくらいなら、何らかの形で()()をして、少しでも楽になりたい。

 そんな、逃げの精神。

 

 だが、しかし。

 過日、鍛錬の時に父は言った。「力そのものに貴賤は無い」と。

 結局のところ、剣道だって殺人術。だが、それ自身が人を殺すことはない。飽くまでも振るう者次第でそれは形と在り方を如何様にも変える。

 怨めしい姉から渡されたこの情報は、紛れもなくだ。どんな不正で得たか想像も付かない代物だが、恐らくは誰かを助け得る力なのだ。

 

 地図をざっと見た限りでは、目的地の地下ブロックはそれなりに広かった。縮尺が正しければ、この場でどよめくクラスメイトたち程度なら余裕で収容できるはず。

 いま自分にできるのは、一夏に代わってクラスをまとめること。だが一人でそれが務まるとは思わない。

 

 箒は、本音と静寂の肩を抱き寄せて顔を近付ける。騒然とするこの場で会話をするには、これくらいでないといけなかった。

 

「今、この場で多少落ち着いているのは恐らく私たちしかいない」

 

「……うん」

 

「このままじゃパニックになるかも……」

 

「ああ。だから、一つ考えがある。2人に協力してほしい」

 

 決意漲る剣道少女は、束から与えられた地図と鍵の存在を2人に明かす。そして、これから自分が周囲を落ち着かせに掛かるから、それが崩れないように手伝って欲しいと頭を下げた。

 意味が分からないと言った様子の静寂に対して、本音は訝しげな表情をした。

 

「しののん。それ、どこで手に入れたの……?」

 

「……すまない。今は言えない。けれど、終わったら必ず」

 

「……そっか」

 

「でも、どうするの? ここから移動するにしたってみんなを落ち着かせる方法なんて……」

 

 それは、こうする──。

 喧騒の中、箒はすっくと立ち上がって、肺をたっぷりと膨らませる。豊満な胸の奥、大胸筋が力強く体積を増す。

 それから、大きく口を開けて。

 

「──全員聞けえッ!!」

 

 喚呼。

 剣道では、己を奮い立たせる意味で一本ごとに叫ぶ。全国大会を制するまで研鑽を積んだということは、それだけ日常的に叫ぶ練習もしていたということ。

 箒の肺活量と声量はそれだけ並外れていて、たったそれだけで場はしんと静まり返った。

 

「どうか聞いてほしい。今この場には織斑先生も、山田先生も、クラス代表の一夏もいない。外の状況だって分からない。そんな状況で閉じ込められて、不安になるのも無理はない。私だって不安だ。だが、パニックを起こしたって良いことは何も無い。だから落ち着いてくれ」

 

「私も……そう思う。今ここで慌てて騒いでも疲れるだけだよ」

 

 後ろから静寂が同調する。

 この場において重要なのは共感だ。いきなり正しさをぶつけたところで、正常な精神状態にない人間相手にそれは通じない。そういう意味で、しっかり者として周囲を観察していた静寂はそれを理解していた。

 箒を起点に静寂がそれを繋げる。感情は拡散していく。

 

 兎にも角にも大半のクラスメイトは落ち着きを取り戻した。それでも不安がる者の下に静寂を向かわせつつ、箒は本音と客席ブロックの端へ向かった。

 

「……ここなの?」

 

「そうらしいが……」

 

 一見すると何も無い、金属張りの床と壁。手探りでスマホを壁に(カザ)しながら動かしていくと、何かが反応したのかブルブルと振動して、硬い音を立てながら床の一部が持ち上がる。

 厚みは5cm程度。ダンパー付きの跳ね上げ式扉を持ち上げると、その下には急な階段があった。

 非常灯すら無い暗闇が続くばかりで、前は見通せなかった。だが確かに、道は存在したのだ。

 

 箒は静寂に手を振って合図する。道を確認して戻ってくるから、それまで待っていてくれと。

 非常灯のオレンジの薄明かりに照らされて、小さい頷きが返ってきた。

 

「本音、行くぞ」

 

 決して転ばないように、手を取って、反対の手でスマホのライトを掲げながら進んでいく。

 金属質の床にローファーのかつかつという足音が重なって木霊する。遅れて聞こえる反響音は気味が悪かった。

 道は何度か折れ曲がり、途中で分岐や階段が幾つもあった。道案内が無ければ簡単に迷って、誰にも知られずに野垂れ死にするかも知れない……そんな恐怖が湧いてくるような魔境。

 こんなものが学園の下に広がっているとは夢にも思わなかった。

 

「外、大丈夫かなぁ」

 

「……わからん。だが、ここまで分からないといっそ気にならないな」

 

 箒の服の裾を掴んでついて来る本音が不安そうに呟いた。

 今頃、外はどうなっているだろうか。一夏は大丈夫だろうか。アリーナの様子が気掛かりで、箒は後ろ髪を引かれる思いだった。戻ったところで、隔壁の向こうが見えるはずもないのだけど。

 箒も本音と同じく不安だったが、気にしても仕方ないので強がることにした。

 

「地図によるともうすぐらしいが……これか」

 

 道は人が3人並べるくらいの幅があって、目の前に現れた隔壁も同じような大きさだった。横の壁面には埋込み式の非接触リーダーと思われる機械が、ぼんやりと光る線で囲まれている。

 意を決してスマホを翳してみれば、隔壁はすんなり開いた。

 

「うわ、眩しっ」

 

 ガンガンガン、と配電設備のリレーが音を立てると、その空間が一気に照明で照らされる。

 広さはサッカーコートを一回り大きくしたくらい。リノリウムの床が広がる巨大な体育館のような内装だが、側面は金属張りで、幾つか扉が見えた。

 

「随分、広いな……」

 

「うん。でも、これならみんなを連れてこれるね」

 

 事前の見立て通り、クラスメイトたちを連れてきて尚余りあるその容積は、箒に次の行動を決めさせる。

 小走りで内部を確認した2人は、もと来た入口まで戻ってきて顔を突き合わせる。

 

「とりあえず客席まで戻って、そこから全員をここへ連れてきたら、私は隣のブロックに行こうと思う。最初に降りたときに他の場所にも繋がりそうな道が続いていたからな」

 

「だったらさ、私がみんなをここに連れてくるから、しののんは先に隣に行っちゃってよ。多分、そっちも混乱してるだろうし」

 

「いやでも、道案内はどうする? 私には()()があるが、それが無いと……」

 

「大丈夫、覚えたから」

 

 ……え?

 箒の目が見開かれた。ここまでの道は決して単純ではない。端末に表示された経路を辿ることを優先していた箒は全くそれを覚えていないし、仮に覚えろと言われても無理だと思った。

 それを本音はこの片道だけで覚えたというのだから信じられない。

 

「こーいうの、得意なんだよね。帰り道で1回確かめたらもう忘れないよ。あと、実は私って生徒会の書紀なんだよね。おりむーより偉いんだよ、えっへん!」

 

「そ、そうなのか……?」

 

「それに、隣のブロックの非常扉を開けるのにもしののんのスマホが要るでしょ? ここの避難所は一度開けちゃったし、鍵を持ってる人が動いた方が早いと思う。

 ──あと、4組のブロックには()()()()()がいるから」

 

「その、かんちゃんとやらが誰か分からんが……分かった、そうしよう」

 

 そうと決まればとばかりに、本音は箒の前を歩き始める。スマホのライトで照らす以外は何の情報もないはずなのに、その足はまるで迷う素振りが無かった。

 

 武器を与えられずとも、人は動く。

 ここだって戦場に違いないのだから。

 

 


 

 

 学園から東に3kmの上空で、楯無は呆然としていた。

 何なのだ、今のは。

 

 シアからの退避要請に従って上昇して、そこから戦場を俯瞰していたら、まるで世界が作り変えられてしまったかのような景色が見えた。

 

 学園の直上から東に向かって放たれた、極太の光芒。恐らくはシアが言っていたヘクトールによるものなのだろう。

 それはいとも容易く射線上にいた数千のサージを灼き去って、更にはその先にあった巨大な雨雲(スーパーセル)まで消し飛ばしてしまったのだ。

 奇妙だったのは、光芒はそこから先へ進むことなく停止して、射程を制限していた。あるいは、その停止した場所に狙うべきナニカがあったのか。

 

 楯無は、ヘクトールが最初に呼び出されたときのことを思い出す。その砲口は、ずっとあの雨雲の方を向いていた。なぜ最初から撃たなかったのかは想像も出来ない。だが、最初からこうするつもりだったのだ。それだけはハッキリと理解できてしまう。

 

 全長数十kmの雨雲を跡形もなく蒸発させる。そんな所業が成せる兵器など、この世には存在しない。水爆だって逆にキノコ雲が出来てしまうというのに、目の前には雲一つない青空だけが残された。

 そんなものが、誰にも知られることなく隠されていた。東京都に限らずどこの国の首都だって、あるいは小国なら丸ごと、抵抗を許さず丸ごと消し去ってしまえるような、暴力という言葉にすら収まらない威力が実在したのだ。

 

 仮面の乙女が語った重戦略級というのも頷ける。

 単一の戦闘を左右するのが戦術級、戦争そのものの趨勢を決めるのが戦略級なら、このヘクトールはそれを確かに上回る。

 楯無は知らない内に自分の背筋が震えているのに気付いて、それを抑え込んだ。

 

「チッ、性懲りも無く……!」

 

 楯無はガトリング砲内蔵の突撃槍(ランス)蒼流旋(そうりゅうせん)】を握って、迷いなくその引き金を引いた。

 

 まだ、いる。

 ヘクトールの輝きによって大半が消されたとはいえ、それでもサージの残数は2000余り。目の前の空はどこを向いたって敵の姿が見える。

 アレらを下さねば、平和は訪れない。

 

 ──ガららららら……っ!

 

 1機、2機、3機……楯無は敵を丁寧に撃墜していく。だが、効きが悪い。

 

(アクア・ナノマシンに頼りすぎたわね、レイディ……)

 

 原因はサージの表面を覆う、琥珀色の粒子で構成された被膜。

 基本的にアクア・ナノマシンによる水蒸気爆発を主要な火力とする霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)にとって、現状はその性能を大いに削られている。そもそもアクア・ナノマシンを周囲に高い濃度で散布する必要があるこのISだが、今の戦場は海上の大空。風が一陣吹けばナノマシンは散らされて効力を失う上に、そもそもシアの頭上数百mから別種のナノマシンが散布され、楯無側の制御が阻害されている始末。

 

 ナノマシンが無ければ並の機動力とそれ未満の装甲しかない貧弱なISと化す──それはショウが己の専用機をガルーダへと昇華させた一戦で露呈した、霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)の唯一にして最大の弱点。

 

 結果として今の楯無が使えるのは、戦闘開始前に「ささやかな祈り」と称してシアから別種のナノマシンを塗布して被膜を形成してもらった突撃槍(ランス)蒼流旋(そうりゅうせん)】と、蛇腹剣【ラスティ・ネイル】のみである。

 

 ランスでの刺突が有効であるというのは咄嗟に試す機会があったので理解できたものの、それ以外のISの部分で敵に触れたらアウトという交戦規定を考えると二度としたくない。蛇腹剣は刃が滑ってしまって余り有効でもなかった。

 だとすれば、残った唯一の飛び道具であるガトリング砲が火を吹くわけだが、サージの粒子膜はその威力を殺してしまう。着弾時に注目してみれば、弾丸が削り取られるように小さくなっていくのが見えた。特殊合金製の弾丸が、まるでお湯に放り込んだ氷みたいに、である。

 「触れてはいけない」というルールの意味を理解してしまった気がして、背筋が凍った。

 

 そもそもこのガトリングも近接武器に内蔵するというコンセプトのため、口径も一発当たりの運動エネルギーも決して多くはない。1機倒すのに必要な弾数が桁違いに多くなっていた。

 

「弾切れなんて起こそうものなら、いよいよ本当に居場所が無くなるわね……なんてね」

 

 冗談だが冗談じゃない。内心どころか顔まで笑っていられる余裕はなかった。

 

 丁度、そんなときだった。

 場所はIS学園から東に6km地点。楯無の向かう先の空間が波打っているのが見える。歪んだ虚空から、何やら鈍色の角張ったものが急速に突き出ていた。

 これには見覚えがある。シアがヘクトールを呼び出したときの──。

 

――ストロバルトっ!?

 

 全長は約30m。サージよりも大分大きいその外観は、上下逆さにした紫色のオウムガイみたいな形で、前方には鈍色の大型コンテナ、下部には脚のように斜め前に向けられた1対のスラスターがプラズマを吹き出している。そんな大型の機械。

 せいぜい人間サイズより一回り大きい程度のISから見れば、それは山のように大きく、サージと同様に表面に纏わりついた琥珀色の粒子膜は、より分厚く見えた。

 

 全体回線で束が叫ぶと同時、データリンクによる情報が警告となって楯無の視界に浮かび上がる。

 

 

――誰でもいい、ソイツを波動砲で消し飛ばしてッ! さもなきゃコンテナから汚染物質が撒き散らされる!!

 

「そんなこと言われたって……っ!」

 

 コンテナの中に汚染物質があるのなら、壊しても同じことではないのか。それとも波動砲とやらは違うのか──楯無の手に無い兵器の話をされたところで無いものは無い。

 

 なら、コンテナ以外を狙うか? いや、それで海に落ちたら海水が汚染される可能性がある。

 どうする、どうする……。空色の髪をした生徒会長は、無力だった。

 

「……」

 

「──楯無さん!

 

 ──バッ、バゴンッ!!

 

 緑白色の粒子が弾ける球形の爆発。重ねて2回。

 1発目でストロバルトのコンテナが抉り取られて消滅し、追撃で本体上部がぐしゃぐしゃにひしゃげた。

 だが、まだ生きている。下部のスラスターの火は弱まらず、それどころか表面に琥珀色の粒子を集中させている。攻撃の予兆だ。

 

「とっとと……落ちろぉッ!

 

 攻撃に転じたということは防御が薄くなったということ。装甲だか制御回路だか区別が付かないくらいボロボロになったストロバルトの損傷部ド真ん中に、楯無は蒼流旋を突き立てて、トリガー。

 

 ──ガららららら……っ!

 

 十二分なダメージを受けたストロバルトが中心から白色の光を漏らし始める。それは素早く離脱した楯無の背後で大爆発を起こして四散した。束は何も言わない。これで終わりらしい。

 

「……無事で良かったです」

 

 楯無が見上げると、そこには白とマゼンタのISが2機。白い方がこちらへ近付いてきて、不慣れな急制動に上半身をガクンと揺らしながらそのパイロットが顔を上げた。一夏だった。

 

「織斑くん……情けないところ見せちゃったわね」

 

「いやいや、こんなときですしお互い様ですよ。

 ──ショウのこと、ホントにありがとうございました。お陰でアイツ、あんな戦ってて……うおっ、すげえ」

 

「ああ、それは、まあ……」

 

 ケイロンを纏って普段よりもゴツくなった腕で一夏が東を指差すと、駆け回る赤い閃光が3つと、無数に撒き散らされる緑色の光輪が見えた。一瞬遅れて空が何箇所も爆発する。まさしく蹂躙だった。

 あれが、ショウの実力。アリーナという鳥籠は、彼にとって随分と狭かったらしい。

 

「……一夏ぁ、次行くよ。他にも()()って」

 

「マジか!? じゃあ楯無さん、俺はこれで」

 

 もう一人の声は、中国から来たとかいう転入生だったか。一夏はそれを聞くと慌てたように飛び去った。情報で見た白式よりも大分速い。

 後には楯無だけが残されて、まだサージたちは彼女の前の空を我が物顔で泳いでいる。

 

「……ホントに、情けないわね」

 

 蒼流旋を握る手が、小さく震えていた。

 

 


 

 

「……オイ、アレは一体、何をした?」

 

 ヘクトールの砲撃を前に呆然としていたのは千冬も同じだった。

 教師と生徒たちのそれまでの戦いを全否定しかねない極大の火力。アレさえあればすべて終わってしまうではないか。

 

『シアちゃんが言ってた通りだよ、空間焼灼。超絶な出力の波動砲を特定の座標に照射して、その向こうにある異層次元ごと周囲一帯を灼き固める……外科手術でも傷口をレーザーで焼いて閉じたりするでしょ? あんな感じだよ』

 

「なら、敵がまとめて消し飛んだのは副次的なものに過ぎない……と?」

 

『うん。今シアちゃんが効果測定してくれてるけど、まあ成功でいいんじゃないかな。歪んだ空間の綻びから染み出してくるヤツらも、この後詰めで出てこなくなるよ。まあ、空間の状態が固まるまでタイムラグがあるから、まだ油断はできないけど……とか言ったら出てきやがったよこの野郎』

 

 もはや憎しみを隠さない束が吐き捨てるように呟くと、千冬の目の前のレーダーにも敵のマークが増えだした。その出処はさっきまで雨雲があった場所と重なっている。

 千冬自身も疑問だった。何故あれだけの大群がいながら、今日この日まで誰もその存在に気付けなかったのか。襲撃を予知出来なかったのか。その答えは唯一つ。束がエクリプスたちを学園に差し向けたのと同様、バイドもまた空間を飛び越えてやって来たのだ。

 

「なあ束、お前、いつの間にあんな戦力をかき集めた? 突然現れたワープも、あのエクリプスも……どこにもそんな技術は無かったはずだ。全部、お前が作ったのか?」

 

『自分の目に見えるものだけで世界を定義しようとするもんじゃないよ、ちーちゃん──あ゛っ

 

「……ん? 何かあったか?」

 

『い、いやあ、あのね、これは私が原因だからあの子を怒らないであげてほしいんだけどね、なんていうか……』

 

「話が掴めんぞ、さっさと白状しろ。簡潔にだ」

 

『……実はさ、今日に先んじて、念の為ってことで箒ちゃんにそっちの地下シェルターブロックに入れるようにセキュリティキーと秘密のマップデータを渡してたんだけどさ』

 

「おいコラ」

 

『ひっ。ヤバくなったら1人で隠れててって話だったんだけど、どうもあの子、こっちがシェルター代わりに閉じ込めたの人員をその経路使って本物のシェルターに誘導してるみたいで……。

 外に出歩く人がいない分には良いんだけど、箒ちゃんにあげたの最上位のセキュリティキーだから、やろうと思えば地上まで脱出できちゃって閉じ込めた意味が無いっていうか危険っていうか……』

 

 束が気を利かせて──元はこの女のせいだというツッコミは疲れるのでしてやらない──千冬の前に学園内の封鎖状況を表すウィンドウを出現させる。彼女の言う通り、千冬と箒のいる第2アリーナの地下から隔壁のロックが外れて道が出来上がっていた。しかも開放されているシェルターは1つどころではない。隣の建物にも伸びつつある地下通路の経路状況からして、他からも避難誘導をするつもりか。

 監視カメラの映像こそ無いが、人の流れが何となく想像出来てしまう。

 

 アリーナやその他の建物に閉じ込められているよりは確かに地下の方が安全だろう。問題は、それは一般に存在を知られてはいけない本当に緊急時のための代物であるということ。使用目的には適っているが、外部の束が好き勝手した結果というのがマズい。

 それでも、箒の行動は人助けには違いない。手段はどうあれ褒めてやるべきだろうか。

 

「……今からでも館内に通信を繋げられないのか? アナウンスでもして安心させてやらなければならないんだが」

 

『ごめーん、一括で通信封鎖しちゃったから現場からどうにかしないとダメなんだよね。あのデカ乳女に主電源戻しに行かせたのもそれが理由だし』

 

「……真耶だ。そんな名前ではない」

 

『10秒で忘れそうな名字してたのは覚えてるよ。要するに忘れたんだけど』

 

 現在、真耶は学園の防衛設備を起動させるべく、ここ管制室の地下非常通路を通って学園の中枢を目指している。

 体調の悪そうな彼女にそれをさせることを千冬は良しとしなかったが、他ならぬ真耶の希望だった。指揮権を持つ千冬がこの場を離れることの方が、自分がどうにかなるよりも危険だと。

 

 そんな真耶のことなど知ったことではない──行動はともかく個人にはまるで興味がない──束に、千冬は今度こそ顔をしかめた。

 

「……良いだろう。箒の代わりに次会ったらお前をボコボコにした後で牢屋に放り込むということで許してやる。ハンバーグの空気抜きみたいにしてやるから覚悟しておけよ貴様」

 

え゛っ、それは勘弁──あ、シアちゃんの効果測定が終わったみたい。ヘクトール回収したら前線に出てもらおうね。さっさと終わらせるに限るよこんなクソみたいな戦い』

 

「おいコラ話を逸らすな」

 

 怒気を込める千冬と、全力で別の話題へ逃げようとする束。結局のところ会話に参加していたのは、直接戦線に加わっていないこの2人のはずで。

 

 ──ブツリ。

 

 そんなところに3人目が割り込んでくる。

 

『──それじゃダメだ、タバネ』

 

 


 

 

 ヘクトールの火力が空を灼き払っても、ショウのすることは何ら変わらなかった。

 他の生徒教員が前線を再展開するまで、迎撃をすり抜けたサージを弾速に優れるレールガンで狙撃し、他はリングレーザーで刻んでいく。頭蓋の裏にズキリと痛みが駆け抜ける度にレッド・ポッドを両肩で休ませつつ、適宜ポッド・シュートでバイドを叩き割っていく。

 最も機動力に優れるガルーダが果たすべき役目は遊撃手。ストロバルトのような大物は一夏たちケイロン装備のISに任せていた。

 

 そんな行動指針が変わったのは、戦況報告のために司令部に通信を繋いだときだった。

 

「それじゃダメだ、タバネ。ヘクトールは下げるべきじゃない」

 

『……2度目だよね、ガルーダの。司令部に従えって交戦規定(ルール)が理解できなかったのかなあ?』

 

 束はナルシストである。それも、実力が伴ってしまっているタイプの。

 そんな人間が、一般の素人に自分の考えたの作戦について口出しされる。それは正面切った侮辱として受け取られた。

 

『お前も戦闘単位(ユニット)の1つに過ぎないんだよ。黙って従ってれば勝たせてやるって言ってるんだから理解しろっての』

 

「アンタが言ったんだろ。ヘクトールは後詰めだって」

 

『だからそれはもう終わったじゃん。──ああ言い忘れてたっけ? もうすぐ敵は打ち止めだよ。

 言っとくけど、シアちゃんはその場にいる誰よりも火力がある。その殲滅能力はヘクトールの有無なんて関係ない。今の最善手はシアちゃんを前線に出してさっさとあのゴミ共を掃除し尽くすことなの』

 

「だから言ってんだ。後詰めは最後まで後詰めでなきゃ意味が無えんだよ……あの火力は絶対に()()。現時点でサージとかいうUFOモドキを倒すのに困ってる状況は無いし、これは防衛戦なんだろ? 攻めに転じて隙を晒す必要は無い。

 ここまで戦力をかき集めたんだ、確実に奴らを取り除きたいのは分かるよ。()()()()()()()()()()()()。だから、ここで赤子のアキレウスの足首を掴むべきじゃない」

 

 互いに苛立ちを滲ませる両者。特にショウの声には焦りの色が交じる。

 相手の脳にどんなロジックが走っているかなど気にしていない。自分の方が正しいという確信があるからこそ、それらは決して相容れようとしない。

 

 互いに退かず譲らず。横から聞いてる千冬も割り込めず、ただ時間だけが過ぎていく。

 しかし、二者が拮抗したときにどうするかの答えは単純だ。()()()()に聞けばいい。

 ショウは封鎖された開放回線(オープン・チャネル)とは異なる方式の通信を素早く切り替えた。

 

「……シアとかいったか、アンタはどう思う」

 

『聞かなくていいからね~シアちゃん。この愚鈍の思い付きに価値なんて無いんだから。

 ──おい、序盤の働きに免じて黙らせるだけにしてやるから、さっさと雑魚掃除に戻れよ』

 

 しかし、この戦場を支配しているのは束だ。ショウの通信が彼女の操作によって打ち切られ──それどころか通話機能が無効化されようとしていた、その時。

 

『──いいえ、束。ヘクトールが使えるのならそれに越したことは無いと思いますよ』

 

『はあっ? シアちゃんだってこんな戦いさっさと終わらせたいでしょ? ()()の問題だって……』

 

『ええ。飽くまでも一考の価値があるというだけのことです。だから──。

 ──ショウ、貴方に問います。現在このヘクトールは放熱中で使用できません。このままでは次に使えるのには半日程度掛かるでしょう。貴方はこの戦いがあと半日も続いて、その間これを使わずに済んで、そしてその後で都合良く出番が訪れる……そんなことがあり得ると思いますか?』

 

 天秤はショウの方に傾きつつあった。その上でシアの問いに対する答えはひどく冷え切った声に乗って成された。

 

「──質問で返す。そのヘクトールの冷却機構、水没しても問題ないか?」

 

『え? 通電しなければ破損はしませんが……海に沈めれば水蒸気爆発は免れませんよ。それでは何の解決にも──』

 

 ──なら解決だな。

 シアの言葉を遮りつつ、ぐるりと身を翻したショウは、学園近傍の空中でサージに囲まれていた()()()I()S()の周囲にリングレーザーの光輪をバラ撒きつつ、その腰を覆うクリノリンフレームを掴んで急旋回、学園へ加速する。一瞬遅れて、リングレーザーの動線上が何度も爆ぜた。

 

「──ちょ、何すんのよッ!?」

 

 被害者は、活躍できない恥辱に身を震わせていた生徒会長──楯無であった。

 

「……ガトリング、弾切れ間近なんだろ()()()()。でもってここは開けた上空、この前みたいにナノマシンで爆撃なんてやれねえのは分かってる。合理的に考えろ、火力が足りてねえよアンタ。

 ──だから、仕事を頼みたい」

 

「何だか知らないけど勝手に決めな──きゃあっ!」

 

 更に突然の急制動。

 肉体を置き去りにして全身の血液だけが前に行こうとするような気持ちの悪さが楯無の全身を駆け抜けたかと思えば──気付けば目の前には、ヘクトールに寄り添うシアがいた。

 初めと違うのは、ヘクトールの後部を構成する本体ユニットが花みたいに大きく展開して、空間を占有するようにして放熱フィンを展開していることだった。隙間からは身体に悪そうな色の陽炎が立ち昇っていて、温度センサからの数字は目を覆いたくなる結果だった。

 生身なら近くにいるだけで焼けてしまうかもしれない。

 

解決策(solution)だ。連れてきた」

 

 学園上空。仮面の乙女と、全身装甲の男と、剥き身の少女が向かい合った。楯無は一人だけ、ひどく不公平な気分──そもそも連れてこられた時点で滅茶苦茶だが──だった。

 

「話を、聞きましょうか」

 

「タテナシ、学園の散水設備から真水を引っ張り出してきて、ナノマシンの溶液でコイツを冷却してくれ。内部で還流させられるアンタのISなら冷却時間は大幅に短縮できる」

 

「なるほど。確かにそれは有効かもしれませんね。

 ──それで、連れてきて頂いた彼女は協力してくれるのですか?」

 

 ショウの意見を認めるシアの声はしかし、シビアで冷ややかだった。

 何せ、連れてこられた本人は堪ったものではない。

 

「い、嫌よ……私だってまだ戦え──」

 

「戦えないだろ。アンタの手札は概ね見てる。その霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)は閉所に特化した機体なはずだ、戦えてたなら何でさっき動けずに囲まれてた?」

 

「そして、散布中のナノマシンでそもそもの性能も低下を余儀なくされている……特化型のISというのはこういうとき不便ですね」

 

「それはアナタのせいでしょうっ!?」

 

 他人事みたいな仮面の乙女へと反射的に叫んで、しかし楯無は黙り込んだ。分かっているのだ、今のこの機体では活躍が見込めないということくらい。

 先日の試合のことがそのまま返ってきたみたいな感じだった。全部の手札を見せたわけではないにせよ、楯無はショウを全力で倒そうとして、当然ショウはそれを体験して覚えている。だから指摘できてしまう。

 そして、見せていない手札でどうにかできるほど現状は甘くない。

 

「──それで、どうされますか。生徒会長」

 

「……」

 

 穏やかな口調とは裏腹に、急かすように仮面の乙女は囁いた。ショウは何も言わず、東の空──バイドが我が物顔で飛び回る戦場を見据えている。この用事が終わればすぐにでも戻ろうとしているのは楯無にも分かった。

 今なんか見ちゃいない。ずっと先の戦いを考えているのだ。

 

 悔しい。そして何よりも、不甲斐ない。

 自分は護る側の人間なのに、後方でぬくぬく戦況を眺めていろなどと。けれど、それ以外に選択肢がないことくらい、最初から分かっていた。

 

「……沢村ショウ、アナタ、これが済んだらどうするの」

 

「アレを全て取り除く」

 

 ──がちんッ!

 

 楯無は、背を向けるガルーダの肩を掴んで振り向かせると、蒼流旋(そうりゅうせん)をその首に突き付けた。ガトリングの弾はまだ少し残っている。だが、相手は楯無の最大火力「ミストルテインの槍」を受けて無傷だった相手。この程度で脅しになるなど、どれだけ希望的観測をしても有り得ないと分かりきっている。

 加えて、ガルーダの性質は相変わらずだ。近くにいるだけで全身に灼けるような熱を感じる。

 それでも、楯無はこうしなければならないと思った。たとえ形だけでも、この男の真を問うには。

 

「──1つだけ答えて。アナタは、どうして戦うの? ついこの前まで堅気で平穏に生きていたはずの人間が、誰よりも危険な敵の前に飛び出して戦うのはどうして? 

 ……認めるわ。確かにアナタは強い。才能もあって、機体も最新鋭。だから何? 全能感でも湧いた? そんなものは一介のテストパイロットが命を賭ける理由にならない」

 

 ショウは、まるで動じる様子がない。それは自分が安全だと思っているからなのか、楯無の問いを真摯に聞いているだけなのか、群青色に輝くラウンドバイザーに覆われたその表情は誰にも分からない。

 

「私はね、学園最強の生徒会長なの。ここに生きる全ての人の生命を護る義務があるの。例え私の機体が今の戦いにどれだけ相性が悪くたって、私が退いて良い理由にはならないの。

 ──だから答えなさい。私を戦場から追い出して、何の役割もないアナタが戦う理由があるのなら」

 

 シアは事の推移を見守っているようだ。決して目を逸らさず、しかし何も口を挟むことはしなかった。

 

「……俺には、願いがある」

 

「それはどんなもの?」

 

「……消極的で、否定的で、後ろ向きで、恥ずべき形をしたものがある」

 

「具体的には」

 

 ──こくん。

 ガルーダの首が少し傾いて、楯無の方を向いた。半透明のバイザーの奥で、カメラデバイスの絞りが小さく拡縮した。対照的に、両肩のレッド・ポッドは微動だにせず、楯無はその顔から目を逸らせなかった。逸らす気なんてそもそも無かったのだけど。

 

 ……見られている。

 

 その時だけ、楯無はまるで世界が止まってしまったような気がした。

 そして、確信する。ショウという個人が、初めて自分のことを認識していると。無視することも、言葉遊びではぐらかすことも、今はしていないのだと。

 そして、そして、そして──。

 

 ショウは重々しく、抑揚のない声で、答えを呟いた。

 

目の前で、人間(ひと)が死ぬのを見たくない

 

「……っ!」

 

 全部、繋がった気がした。

 先日。ショウと共に行動した2日間の一連の行動が、この一言だけで説明出来てしまう。

 

 後に爆発する車から逃げるように立ち去ったのは?

 そのまま乗っていれば誰か死ぬかもしれなかったから。逃げればそれを見ずに済むから。

 崩れ行くトンネルの中で、半狂乱になりながらも逃げずに救助に当たったのは?

 逃げても人が死ぬから。立ち向かわなければ()()を見てしまうから。

 

 そして、今日。

 基本的に自分から他人に干渉しようとしないこの男が、自分を巻き込んでまで行動する理由。

 きっと、今日の戦いがこの男には一人ではどうにも出来ない危機に見えているのだ。学園最強を標榜する楯無を下し得る実力ですら足りぬとするほどの。

 

「俺、こんな年になるまで大人の責任だの役割だの、そういうの全然分かんねえまま生きてきたんだ。だから、何かしたい、とか、こうなって欲しい、とか、そういうものだって無い。

 けど、けどさ。やっと会えた人なんだ。死んでほしくねえんだよ、イチカに、チフユに……」

 

 楯無はショウのことが怖かった。次の瞬間何をするか予測の出来ない、自分よりも強い存在が身近で力を振るっている事実が。

 だから、祈るしかなかった。誰も何も、彼を刺激しないでくれと。決してその力が暴れることのないように。

 

 だが、やっと見えた。その行動指針を、この男は自分で言った。

 ──人間が死ぬのを見たくない。

 

 暗部の少女は、どこか自分と同じだと思った。確かにそれは消極的で、否定的で、後ろ向きだ。

 けれど、それは恥ずべきものなんかじゃない。それは自分が何よりも知っている。だって、自分がそうやって生きてきたから。

 だから、答えは決まった。

 

「……なんだ。優しいのね、貴方。

 とにかく分かったわ。その役目、引き受けましょう」

 

「……そうか」

 

 楯無は、突き付けたランスをゆっくりと離した。もう、こんなことをする必要はない。

 

「だから、沢村ショウ。アナタに預けます。どうかみんなを護って」

 

「俺こそ、預ける。ガルーダを呼び覚ましたアンタに」

 

 喋り終わる前にその姿は消えていて、見ればはるか遠方で無数の爆発が線状に連なっていく。

 本当に、強い。神鳥は飛んでこそなのだろう。

 ほんの少しの嫉妬を心の外に放り捨てつつ、楯無はシアの方へ向き直った。

 

「……さて、私もできることをしましょうかね。その開いた部分を冷やせば良いのかしら?」

 

「ええ、お願いします」

 

「分かった。その規模だと手持ちのウォーターサーバーじゃ足りないかな。ちょっと補充してくるから待ってて頂戴」

 

 2人目の男に続いて、彼女もその場を離れ、学園の方へと降下していった。

 その場には最初と同じように、ヘクトールとシアだけが残された。風が一陣吹き抜けて、しかし音は聞こえなかった。

 

『……良かったの? シアちゃん。奴らを前にして待ってるなんて』

 

「構いませんよ。最終的にあれらが根絶されるのなら。

 ……ほら、最近はメディアも何かと()()()()という言葉を使うでしょう? ヘクトールだって最大チャージでなければある程度汎用的に使えますし、私が動かずとも事態が収まるのならそれに越したこともありません。消耗を抑えて、先に残せるものがあるのなら、それこそ儲け物ですよ」

 

『先……()()かあ。備えて備えて今日まで進めてきたけど、シェルドレイクの仮説は根拠に据えるにはちょっと足りないよね』

 

「つまらないオカルトにも根拠を求めるのは科学者の(サガ)ですか。どうせ否定されるべきものです。全ては偽なのですから。

 ──ああ、束。エクリプスの制御をこちらにください。()になってしまいましたので」

 

『りょーかい』

 

 


 

 

 時に。

 この世に起こる諸々の事象というものには、大抵の場合前兆というものがある。

 何の原因もなしに結果が生ずることなんて無いというのは物理学における大前提の論理だし、そうでなくとも信仰の歴史がそれを示している。

 つまるところ、誰だって目の前の現象に理由を求めるのだ。

 

 にわか雨が降る前に冷たい風が吹くのは、雨雲から雨が落ちてくるのに先んじて下降気流が動くから。あるいは、天が悲しんでいるから。もしかしたら誰か雨乞いでもしたかもしれない。

 

 商店街の福引で3等が出たのは、それまでに引かれた当たりの種類と自分の撹拌の仕方が影響するから。あるいは、日頃の行いがちょっと足りなかったから。物欲センサーなんてものが実在するかもしれない。

 

 何となくシャッフルしたタロットの山から正位置の死神が引けてしまったのは、そもそもシャッフルなんてランダムでもなんでもない行為だから。あるいは、この先本当に良くないことが起きるからかもしれない。

 

 では、今日も世界が続いているのは?

 あるいは今日で終わるとしたら?

 

 どちらにせよ、答えが揺らぐ何かが迫っているのなら、既に前兆となる何かは起きているはずなのに。

 

 


 

 

2022/04/26 AM2:42

 

『G-01からG-12まで、全機ジェネレーターを点火』

 

(空調のファンの音と数人の話し声?)

 

『イグナイタへ信号送信──起動確認しました』

 

(内燃エンジンの駆動音が重なって響く)

 

『よし、では電子頭脳を起動してくれ』

 

『フォーミュラ・ブレイン、正常に起動。ローカルネットワークを構築中……分散型演算を確立』

 

(話し声が歓声に変わる。ノイズレベル上昇により詳細は解析不能)

 

『負荷も許容範囲内か。なら予定通りエキドナとの連携を──オイ待て』

 

『え? あれ……誰か操作指令でも出しました?』

 

『いいや誰も指示なんて出してないんだよ。今すぐ止めろッ、責任者は俺だ!』

 

『ダメです! 停止信号が無視され──オイオイなんで武装が起動してる……全員逃げてくれッ! 退避ぃっ!』

 

『チィっ、言われた通り作ってりゃ良かったんだ。上は一体何を考えてやが──』

 

(記録中止)

 

 


 

 

 戦況は変わらず学園側の有利だったが、少しずつ揺れ動いているような気がしてならない。

 

 第2アリーナの管制室で腕を組む千冬は、レーダーの反応で全体を見通しつつ各ユニットの戦闘状況を見比べた。

 

 束の言うところの空間焼灼。これによって確かに敵性バイドの増加量は減っている。打ち止めになるのも時間の問題だろう。

 だが、それと同時に気になるのは、敵の種類が少し増えていること。

 

 ケイロンとエクリプスが保有する波動砲でなければ安全な撃破が出来ないコンテナ型バイド「ストロバルト」。

 破壊したはずのサージとストロバルトの残骸が浮遊・収束して形を成し、自転しながら突撃してくるバイド「リボー」。

 

 リボーは簡単に撃破できるほどに耐久性が弱かったが、一度バイドを撃破した後に湧いて出てくるということもあって油断のできない相手だった。

 何より、戦闘中の教員のうち数人が「リボーの残骸の中にISのものが混じっている」と慄きながら報告してきたことが気になった。現在だれも被弾・撃墜はされていないのだから、それが混じることはないはずで……。

 

「おい束。あのリボーとかいうのは……いいや、そもそもバイドとは一体何なのだ。隠しているのは分かっているから答えてくれ。人の生命(いのち)が危険に晒されていることくらい分かっているだろう。今は1つでも多く情報が──」

 

『──言わないよ、今は。

 知ってたってどうにもならないし。例えば、雨に降られてずぶ濡れ真っしぐらのときに雨が降る原理なんて知って役に立つかな? そんなことより傘を差そうって話にならない?』

 

 まただ。束は千冬がバイドのことを話題に上げると決まって声が底冷えするように抑揚を無くす。余程アレが嫌いなのだということは誰にだって想像できて、その分彼女がバイドのことを知っていると考えるのは至極当然のことだった。

 

 千冬は、もう一度レーダーに目を向ける。大きさくらいでしか識別が出来ないが、相変わらず敵の大半はサージだった。

 最初期は目に見えただけで3000を超え、雲の中に隠れていたであろう後続を考えれば万は下らないその大群。ヘクトールによって大きく数を減らしたとは言え、今なお相手は多数だ。

 受ける攻撃を低減し、接触した物質を急速に摩耗させる被膜に、同種のエネルギー弾による攻撃。ケイロンの補助ありきでようやく有利を取れるその能力は決して侮れるものではない。

 

 そこから戦況は少しずつ変化している。千冬には、あのサージの大群ですら何かの前哨戦に過ぎないのではないかという恐れが背中を這い上がってくる感覚があった。

 

「そうは言っても……」

 

『自業自得とはいえ、我ながら信用無いなあ……』

 

 自嘲気味に束が呟いてから、それ以降2人は口を開かなかった。平行線になると分かって食い下がるほど互いに愚かではいられなくなっていたから。

 

 だから、それを破るのはやはり第三者で。

 

『せん、ぱい……』

 

「真耶か!? よくぞ無事に……」

 

『お、デカ乳女。あのザマでちゃんとたどり着けたんだ。意外とタフなんだね』

 

 スピーカーから聞こえてくる息も絶え絶えの声の主は、30分ほど前に管制室を経った真耶だった。

 通信の向こうでまるで他人事のようにあしらう束を睨みつつ、千冬は安否を尋ねる。

 

「体調は? 少しはマシになったのか?」

 

『いやあ……まあ、無理してますけど。みんな頑張ってますから、私も』

 

「なら電源の起動だけでいい! その場で大人しくしてろ、すぐに終わらせて応援を向かわせる……」

 

『……いいえ。せっかく先輩に最上位権限のキーを貰ったので、やりますよ』

 

 苦しげな真耶の声に、千冬は声を荒げてでも彼女を止めようとする。マイクの向こうがどんなになっているか、見えないだけに幾らでも悪い想像が働いてしまう。

 「教師だから」「責任だから」と身体を張ろうとする彼女を、その場で止めてやれなかった時点でそんなことに意味がないことは分かっている。

 だが、それでも、千冬は後輩を失いたくなかった。

 

 そんな2人の間に、鬱陶しげに束が割って入る。

 

『──あのさあ、お涙頂戴の三文芝居なら後にしてくれるかな』

 

『ええ……分かっていますよ篠ノ之博士。O()Z()の起動準備はできました』

 

 


 

 

 オレンジ色の非常灯に照らされた金属張りの廊下。片側に身体を擦り付けながら、少しずつ少しずつ、確実に進んでいく。

 

 気分は相変わらず最悪だった。

 一瞬気を抜いてしまうと、自分が教室に立って生徒に教えているような情景や何処かのアリーナで日本代表として戦っている情景に視野を乗っ取られそうになる。

 だけれど、それはあり得ないこと。あり得ないから否定できる。現実に目を向けられる。

 

 廊下の奥には扉があって、先輩から預かったキーなら開いてくれる。その奥にあるのは、円筒形の部屋と、その中心に据えられたIS用の架台。ここは、学園の中枢だ。

 壁面のコンソールにキーを翳して、何度か操作をすれば、1つ目の仕事は終わる。少しして非常灯の代わりにクラクラするようなエメラルドグリーンの室内灯が点灯し、学園の主電源ユニットが再起動したことを教えてくれた。

 

 そして、もう1つ。私にとっては、こっちの方が大事なこと。

 私の手元には、教員用のラファールの待機形態──小さいペンダント──がある。ケイロンとかいう支援装備の数が足りず余ってしまった機体だ。今からコレを使う。

 部屋の中央にある架台は、整備用のものなんかじゃない。OZと略される学園の防衛システムを起動し、繋がって制御するための、いうなれば()()

 他の資格保有者が前線に出ている今、使えるのは私だけだった。

 

「……」

 

 銀色の壁面に、私の顔が映った。ひどい顔。

 ずっと考えていた。ずっと自分が悪いと思っていた。

 沢村くんにあの女の影を勝手に見出して、因縁を付けて、思い返すだけでもひどいことを何度もしてしまった。

 その責任から逃れるつもりは毛頭ない。

 

 けれど。

 断言しよう。今の私はおかしい。

 私ならばしないことを、私ならば考えないことを、私がしようとしている。

 外からナニカが流れ込むような感じがして、それは今日になってより強まった。

 

「──あ゛ぁっ!!

 

 ゆっくり深呼吸をして、真正面から全力で壁に頭を打ち付ける。視界がぐわんぐわんと揺れて、額から生暖かいものが流れ出た。気付けには十分だろう。

 

 こんなの自分じゃない。そう確信できた時点で、無意味に自罰的になる必要なんてないのだ。

 するべきなのは、自分のしてしまったことに責任を取ること。それ以外まで抱えて、受け入れて、苦しんだって他の害にしかならないんだから。

 

「君のところではないけど、沢村くん。今、行きます……」

 

 沢村くんには、このまま真っ当に謝れずに終わるかもしれない。だから、せめて教師としての責任だけでも果たす。

 年齢が外れていようが、所属が何処であろうが、彼は私の生徒なのだ。いいや、彼だけじゃない。織斑くんも、セシリアさんも……彼らが最前線で戦って、教師の私が何もしないなど、あり得ない。

 

 今、私にできること。危機に対して、生徒よりも前に立つこと。

 

「力を貸して、ラファール……!」

 

 量子化の輝きを纏いながら、私は玉座へ足を踏み入れる。

 

 


 

 

 ──ドンっ、ドドォっ。

 

 銃声と爆発音が連なる学園から東に6キロの空では、ダリルとフォルテのコンビがサージの迎撃を続けている。

 第3世代の専用機とはいえ、ケイロンの補助もなく強力なレーザー兵装があるわけでもない両者。だが、二人一緒ならまるで問題にならない。

 

「フォルテ、次の得物はアイツな~!」

 

「──了解っス!」

 

 ダリルは60m先を飛ぶサージの1体を指差して合図すると、構えたアサルトライフル【RED BULLET(レッドバレット)】の引き金を引いた。

 物体を即座に摩耗させる粒子膜を持つバイドに対して、ただの実弾が有効でないのは周知の事実だ。しかし、ダリルの乗機「ヘル・ハウンドver2.5」は違う。

 

 たった1発。

 サージの装甲に触れたその弾丸は、それを中心として炎を拡散させる。それはまるで閃光弾のように激しい光と熱を放ち、粒子膜に穴を開けながら装甲を灼き溶かしていく。

 なんてことはない単なる鉛玉を恐るべき熱量兵器に変えてしまう。それはヘル・ハウンドに搭載された第3世代のIS技術があればこそなせる業だった。

 

「やれ、フォルテ!」

 

「行くっスよ……!」

 

 そして、ダリルの弾丸に1テンポ遅れる形で槍を構えたフォルテが飛び込んだ。

 槍の材質は氷。ついさっき虚空から生み出された生後3分も経っていない代物。

 

「そお──れっ!」

 

 フォルテは灼け溶けた装甲の脆弱な部分目掛けそれを突き刺して、素早く離脱。

 ──直後、ドッ、とサージの内部から棘状の結晶が無数に突き出して、直後にそれは爆発した。

 

 フォルテの乗機「コールド・ブラッド」の能力。それは腰から生えたフレームに連なる冷却ユニットにより物体を任意の速度で冷却するもの。単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)へと昇華されたそれは冷却どころか粒子の運動を停止させる埒外の物理へ手を掛けてしまう。

 要するに、大気中の水分で自前の冷却液を圧縮・内包した槍を打ち込んで、砕けた内部から冷却液を一気に開放・冷凍することで即座に敵を破壊する。それは冷血(Cold Blood)の名に相応しい死の槍であった。

 

 1発で効果を発揮するダリルの火炎と、最小の消耗で敵を攻撃できるフォルテの氷結。この2つが組み合わされば、厄介な性質を持つバイドでさえこのコンビの前には流れ作業だった。

 相手は無数。効率良く戦えねば継戦能力を削られて押し負けるのは祖国の軍事教練で散々習ったこと。

 

 調()()()()が限られるストロバルトは他の戦力に任せればいい。そういう意味で、代表候補たる2人は自分の役割を理解して行動している。

 

 しかし、それはそれとして。

 

 ──ギィィィン……ッ!

 

 ダリルの真上をガルーダが駆け抜けて、緑色の光で出来た円環をバラ撒きながら片っ端からサージを撃墜していく。攻撃は全て見切ったように回避され、その初動すら潰すように叩いていくのは、もはや職人業の域と言ってもいい。

 たかがテストパイロット。されどテストパイロット。

 実働時間こそ少なくとも、イメージ・ファイトで積んだ莫大な経験がそれを実現する。

 

「……2人で頑張ってる所にアレ見せられると、流石に自信無くすなあ」

 

「仕方ないっスよ、アレで1度は会長を完封してた実力者なんスから……結局負けたんスけど」

 

「ありゃ相性が悪いから仕方ねえよ。今日だって、会長は後ろに下がって、あのサワムラってやつはあんな活躍してる。会長に勝った後だって信じちゃいなかったが、イギリス女を下した実力はマジらしいな」

 

 自信があろうと無かろうと、敵は気にせずやって来る。人生は強制スクロールだった。

 

「よし、雑談はこの辺で。フォルテ、槍の準備は?」

 

「問題無いっス。ストック作る暇もあるくらいっスよ」

 

「ソイツは重畳。そしたら次は──あ」

 

 ピピピ……小さい通知音と共に、ヘル・ハウンドのシステムが()()の接近を告げた。

 ハイパーセンサーの望遠を掛けて倍率は最大。距離100kmのところに複数の機影が見えた。

 

「……どうかしたっスか? 呑気に突っ立ってると攻撃されるっスよ?」

 

 虚空から生み出された氷塊を打ち出して周囲のサージを牽制するフォルテは、恋人の様子の変化に目聡く気付いた。

 

「いや、待て。アレって……」

 

 数は20と少し。ソニックブームを撒き散らして飛ぶその速度は当たり前のように超音速。100kmなんて目と鼻の先みたいな距離だ。

 ()()()()()。背面に大型のスラスターを2つ並べたその全高はISの倍はあるであろう6mオーバー。ミリタリーカラーの装甲に包まれた人型の右肩には大型の大砲が担がれていて、その顔面に据えられたモノアイには琥珀色の光が妖しく灯っていた。

 

「──()()()()!? ここに来れるはずのねえヤツがなんでいやがる……っ!」

 

 

 戦況は、また動く。

 

 


 

 

こんかいのまとめ

 

・箒

 

 一夏に顔向けできなくなる前に、決意を胸に、いま私にできることを。

 姉は嫌いだが、一人情けなく逃げるのはもっとイヤ。

 ちょっとその声騒音計で測っていい?

 のほほんさんを連れ立って、行こう行こう地の底へ。

 

 

・本音

 

 箒の持っている鍵の出所を気にするのは生徒会所属だから。

 箒の大声に実はびくびく震えていた小動物マインド。

 道を覚えるのは得意なんだよね、かんちゃんのRPGに付き合ってたらできるようになっちゃった。

 

 

・静寂

 

 久し振りにスポットライトの当たったしっかり者さん。

 箒と本音を見送りつつ、これから安全な場所に移動するとみんなに周知するのは彼女の役目。

 裏のクラス代表(シャドウ・キャビネット)とは彼女のこと。

 

 

・楯無

 

 やーい情けないやつ~! 後輩に助けられて真面目に不甲斐ない思いをしている。

 アリーナのトップがどうして……。相性悪いから仕方無い。切り替えてこ。

 ショウという個人への理解が進んでいる気がする。ホントかなあ?

 今は私にできることを。だから、貴方に預けます。

 

 

・一夏&鈴音

 

 臨時で結成された衝撃波動砲コンビ。

 ヘクトールの大火力に慄くが、撃ち漏らしは沢山いるので仕事は尽きない。

 先輩へのショウの件のお礼、こんなのでいいのかな……とか思ってたら鈴音に睨まれた。

 誰よ、あの女。

 

 

・束

 

 もうバイドしか見てない。

 勝手に動きまくるショウにブチギレ中だが、シアに言われると強く出れない。

 10秒で忘れそうな名前のやつが体調不良? 知らないよ勝手に倒れてろよ。

 エクリプスの遠隔制御をシアに預けたことで少し暇になった。戦力の穴埋めをしようね。

 

 

・千冬

 

 後輩は無理をして、戦況はなんか嫌な予感がする。

 そんな多方面から掛かるストレスに喉が渇くが、管制室のコーヒーはデカフェじゃない今日このごろ。戦争にトイレ休憩なんてねえよ。

 新武装を与えられた一夏がそれなりに活躍しているのはいいが、素直に喜べない複雑。

 

 

・ショウ

 

 戦えないんだろ? 働けよ、やくめでしょ。

 ヘクトールの火力は必ず使う。雑魚を一人で引き受けてでもその準備はさせる。

 取り除け。1つ残らず。それが俺のすべきこと。

 そのためなら恥でも何でも晒してやる。

 

 

・真耶

 

 ごめんなさいを言うために。たとえ言えなくとも。

 私が私でいられる内に、私は私の責任を果たす。それがたった1つのできること。

 一線を越えて、玉座へ踏み入る覚悟はできた。

 




 実は存在しない予定だった今回。
 前回と次回から溢れてしまった間の話を書いていたら余裕で2万字越えてしまった不手際でございます。

 場面転換が多すぎて混乱しそうな構造をしていますが、今回のメインは箒と楯無でした。

 箒に関しては鈴音との一件から束への告白と、色々と準備を進めてきたつもりです。
 今の自分は恥ずかしいし、一夏に顔向けできないけど、さらなる恥の上塗りは御免だ……という感じ。原作でも襲撃中に動き回っていたので、それをベースにクラスメイトとの繋がりと彼女の根幹である父の教えを描いてみた次第。
 クラス代表の一夏の幼馴染なんだから、今は自分がその代わりに……なんてこともあるのかも。

 楯無については半分なしくずし的な展開になりました。学園上空に配置された紫と琥珀色の球体からのナノマシン散布で戦えなくなった……とはしていますが、そもそも彼女の専用機は閉所特化です。今回のような一対多の迎撃戦ではほとんど活躍が見込めないでしょう。そういう意味で、学園の盾たる彼女が他の人間に戦線を預ける理由を作る形にしました。
 楯無戦までに彼女の出番を多くしたのは、ここで活躍させるのが難しいと考えたためだったり……。

 箒と楯無に共通するのは、「戦わなくても出来ることがある」というもの。銃後の守りとでも言いましょうか。

 山田先生もそろそろ活躍させます。第2章は彼女から始まりましたからね。

既存キャラの強化パターンを見て……

  • もっとやって!何なら別機体渡しちゃえ!
  • 強化装備ポン付け位がいいかな……
  • 機体はそのまま新武器使わせる程度が好み
  • この水は飲めそうだ
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