文化祭前日、新菜とスマホでビデオ通話しています。
『すいません姫野さん。こんなお時間に通話お願いしてしまって』
「大丈夫だよ新菜君。まだ九時じゃん。いよいよ明日から文化祭だね」
『はい、おかげさまでここまで来れました。本当にありがとうございました』
「いえいえ、どういたしまして。そういえば健星君の衣装も完成したって、一昨日かな、連絡来たよ」
『はい。思ったよりぎりぎりになってしまって、俺も焦りました……』
「でもさ。成蘭ちゃんと健星君が写真送ってくれたんだけど、初めてとは思えないくらい良い感じじゃない?」
『はい! すごく高い完成度です! 俺はまだ実物を見てないんですけど、写真と動画だけでも本当にみんな頑張って仕上げたのが判りました!』
「まりんちゃんの衣装も、着てもらったんだよね?」
『――はい。すごく喜んでくれました』
「まりんちゃん、泣いちゃったんじゃない?」
『よくわかりますね……大泣きしちゃって、衣装が涙で濡れないようにするのが大変でした……』
「はははっ、想像できるなー」
『……はい。それでも……』
「ん? 何かあったの?」
『……いえ。海夢さんの泣きながら喜ぶ顔を見てたら、なんか後ろめたい気がしてしまって』
「それはどうして?」
『何も知らない海夢さんが少し可哀想で。自分だけ知らされてないことに気づいたら、どんな気持ちになるんだろうって』
「……うん。そう感じるのは、新菜君がまりんちゃんをいつも真正面から見てきたからだよ」
『……でも実は俺、初めて衣装を頼まれた頃なんですけど……一回だけ海夢さんを避けたことがあったんです。……あの時のような罪悪感を、今は少し感じてしまうんです』
「そっか……でもここまで頑張って来たじゃん。上手に歩くのだって、めちゃくちゃ練習したんでしょ?」
『はい。何度か転びました。練習用の靴も壊してしまって……アドバイスいただいて本当に良かったです。ありがとうございました』
「ううん、新菜君は本当にすごいよ……そうだ。元生徒会長との相談も、上手くいったんだって?」
『はい。全力でサポートするっておっしゃってくださいました』
「それはよかった! ……じゃあなおさら、自信持ってやらなきゃね?」
『……はい! 俺が言い出したことです。ちゃんと、やります』
「うん。それじゃあ、見せてよ」
『――それでは、カメラをオンにしますね』
「うん、こっちも準備オーケーだよ」
『……どうですか』
「……うわ――良いよ、すごく、良い――」
.................
同時にもう一話、掲載しています。