結局寄り道をしながら町に着いたのは日暮れ間近だった。
「町はこっちだったのか。わざわざ案内までしてもらって済まなかったな」
―いいえ、困ってる人がいれば助けるのは当然ですから!ところで夜はどうするんですか?
どこか泊まるところはあるんですか?良かったらぼくのパン工場に来ませんか?
ふむ、元々は周囲の偵察で折を見て戻るつもりではあったし、ジェイアークに一度戻るのも手か。何だかんだで通信を全て無視してしまったな。
「有難い申し出だがこの図体ではな。それに仲間もいるのだ。迎えに来てもらうさ」
―そうなんだ!じゃぁ明日パン工場で作ったパンを食べて貰えませんか?明日はこの町の子供たち
にパンを届ける日でもあるんです。
「いいのか?それはありがたい話だな。仲間も喜ぶだろう。」
―ハイ!それではまた明日のお昼に来ますね!それじゃぁ、気をつけて帰って下さいね。
「あぁ、そうだ一ついいだろうか。聞きたい事がある。ここでは何だ、向こうでいいか?」
―いいですよ!何がききたいんですか?
町外れの一番背の高い木の枝に二人で腰掛ける。夕日が地平線に消え星が輝き始める夜空に変わりつつある。私は気になっていた事を聞いてみた。
「今日見ただけでもお前は他人の世話をして、助けてばかりだった。お前にとってそれは自分を蔑ろにしてまで行う価値のある事なのか?」
―それはもちろん、それが好きな事だからです。
「好きな事、か(トモロ、今からする会話をアルマと共有しろ)」
(J、定時通信ガ 無カッタゾ。アルマ モ落チ着キ ヲ欠イテ イル。共有?・・・完了)
(どうしたんですかJ。外に出られるk「聞け」えっ?)
「成程。だが続ける事で辛くなったりはしないのか?己に縛られてはいないか?」
―同じような事を前にきかれたことがありました。その子はこう言ってました。
“自分が好きな事をして楽しく生きる”
“自分が楽しむために生まれて自分だけの為に生きる、その何がいけないの?”
“他人のために生きるなんてつまんない!”
―ボクはこう答えたんです。
“ボクは人を救った、助けた時に心が暖かくなった。その時にボクは気づいたんだ。みんなを守
るため、助けるために生まれたんだ”って。
―その時にとっても大きくて怖いロボットが出てきました。ボクの友達たちもみんな姿を変えられ
てしまって戦えなくなっちゃって。その子もロボットに狙われたからボクは壁になりました。
泣いてるその子に大丈夫だよって笑おうとしたんだけど
―やられちゃったんです、ボク。でもその子が自分の命の力をボクにくれて元気になれた。
また立ち上がる事が出来てロボットをやっつける事が出来たんです。自分勝手に生きるって
言ってた子がボクに勇気をくれたんです。自分のためじゃなく他人のために!
―幸いその子は助かって今も元気で毎日笑って暮らしてます。そんなみんなの笑顔を見るたびに
思いだすんです。ボクはみんなを守る事が好きだ!大好きなんだって!
―だから苦しい事なんてありません。ぜんぜんへっちゃらです。ボクは胸を張って言えます。
これがボクの一番やりたくて大切な事なんだって!
月明かりに照らされた彼は誇らしげに微笑み浮かべている。そうか。これが彼の芯であり生きるという事は人々を救う事なのだと。ソルダート戦士が戦うために生まれたように、彼は救うために生まれたのだと。その在り様は
「・・・なるほどな。お前は正に
―えへへ。なんだかくすぐったくなっちゃうな。
「いや、いい話を聞けた。悪かったな、呼び止めてしまって。明日を楽しみにしている」
―うん、たのしみにしててね。ばいばーい!
こちらに手を振り夜空に消えていくアンパンマン。知らずの内に浮かんでいた笑みを引き締めると共有モードで聞いていた2人に繋ぐ。
(さて、お前達どう思った)
(ドウモ何モ 奴ノ生キ方 ノ話ダロウ。趣味ト実益 ガ噛ミ合ッタ、トイウ 話デハ 無イノカ?)
(私は・・・ごめんなさい、何と表現すればいいのか分かりません。この感情は何でしょうか)
私の座標を送りジェイアークを町外れの草原に着陸させる。艦橋に戻った私を待っていたのは何やら考え込むアルマと変わらぬトモロの声であった。
『戻ッタカJ。定時通信ヲ 欠カスナド、慎ムベキ 行為デアル』
「J・・・何度思考を重ねても答えが分かりません。教えて下さい、どう答えれば正解なのです?」
「さて、な。その答えは簡単に出せる物では無いし、急いで出す必要も無かろう。だが答えは一つのみではない、人がいればその数だけ答えがある物だろう。今は存分に悩め、必ずお前の糧となるだろう」
極論を言ってしまえば“やりたい事を、やりたいから、やっている”に尽きる。方向の善し悪しや一過性なのか生涯を通して貫き通せるのかの違いはあるが。ふむ? 善でも悪でも最後まで貫き通した信念に偽りなどは何ひとつない。はて、何の言葉だったか・・・いずれにせよこの子の成長に役立てて欲しいものだ。悪い方向へ向かうのは勘弁願いたいものだがな。
「アルマ、今日は休め。明日は現地民がパンを振舞ってくれるそうだ。遅れないようにな」
翌日アルマを連れて町に向かう。スペルヴィアの中以外を歩くのが初めてのアルマは地面の柔らかさに恐る恐る足を踏み出している。それを見て笑ってしまったのは許して欲しい。別に急いで向かう必要があるでも無し、時間も余裕がある事だしゆっくり歩いてみるのもいいだろう。
しかしパンか。この体になってから人の手で作られたものを食うのは初めてだな。光子エネルギー変換翼で艦内生成されたカロリーバーばかりだったので正直楽しみである。何せアンパンマンの千切った顔を食べた子供たちは総じて「美味しい!」と好評だった。あの子供たちは千切った部分が目の辺りでも気にせず食べるんだろうか?もし動いてたりしたら・・・
「・・イ、J!聞いていますか!何て怖い事を考えるのです!何ですか動く目を食べるって!」
「あー・・・例の彼だがな、個性的な見た目をしているが気にしなくて良いぞ」
「余計に怖いです!」
じゃれ合いながら町に着くと丁度アンパンマン号でパンを配っている一行を発見した。町の人々?も集まっており、かなりの賑わいとなっている。こちらを見つけたアンパンマンが手を振り声を掛けて来てくれた。
―Jさん、こんにちは!来てくれたんですね。この子は?
「あぁ、御相伴に預からせて貰う。こっちはアルマ、この子にもいいだろうか?」
―もちろんです!たくさんあるから食べていってね!
ミミ先生~と学校の先生を呼びに行くアンパンマン、そちらの方向にアルマの背中を押す。え?え?と戸惑いながら子供たちにあっと言う間に囲まれて行く。子供たちならばリミピッドチャンネルを通して拾う心も負担にならないだろう、と頂いたパンの甘みと食感を楽しみつつアルマの様子を見てみれば、すっかり打ち解けて一緒になってパンを食べている。裏表のない心だけに順応も早かったのかもしれない。
こちらもジャムおじさんの勧めに従い様々なパンを味わっていると歌声が聞こえて来た。先生の弾くオルガンに合わせ伸び伸びと歌う子供達。
―やっぱり子供は元気が一番だねぇJ君
「あぁ、いいものだな」
和やかな時間はあっという間に過ぎ、お開きの時間となる。元々調査のつもりで降り立った星だがリラックスした時間を過ごし気分も一新。アルマも子供たちに貰った花の冠でご満悦である。だがここに私たちの様な異物は長居すべきでは無いし、何があっても
「随分世話になってしまったな。土産まで貰ってしまって。私達はそろそろ出発しようと思う」
―いえいえ、そんな事ないですよ。またいつでも来てくださいね!
手を振り見送ってくれる人々を眼下に収めながらスぺルヴィアを発進させる。アルマも子供たちに貰った花の冠を飾っているようだが、時間がたったらプリザーブドフラワーの作り方でも教えてやるか。
―行ってしまったねぇ、アンパンマン。変わった人達だったけど悪い人では無かったねぇ。
―ボクもそう思います、ジャムおじさん。
―あ、アンパンマーン!やっほー!
―こんにちは、ドーリィちゃん
※没案
―アンパンマンから話は聞いたよ。私はジャムおじさんと呼んでくれ。
―しかしそうか・・・君はソルダート戦士なんだねぇ
貴様、何故それを!?
―かの星を出て幾星霜、再びこの鎧を纏う事になるとは・・・
まさか、お前は、いや貴方は!
―ジャムおじさんは仮の名よ。真の姿は、ワシこそは!ソルダート<J>AM!
なおこのルートだとばいきんまんは菌!バイキンロボ仕様になり難易度が跳ね上がります。
使用楽曲 003-2549-0 アンパンマンのマーチ
これでいいのかしら?
という訳で「それいけ!アンパンマン いのちの星のドーリィ」を見て感動したので書きました。本当に子供向けなんですか、テーマ重すぎやしませんか?
よくネタにされる「アンパンマンの友達は愛と勇気だけ」ですが作者やなせたかし先生の戦時中の体験からだそうで。死地に赴くのに大切な友人は連れていけない、だから愛と勇気だけを胸に行くんだ、と言う様な事を聞きましたが真偽の程は分かりません。
当初はばいきんまんのUFOから出てるアームを切り落としてアンパンマンとのダブルパンチを決める、な展開を考えていたんですが殴られる為だけに出さなくても良くない?と引っ込めました。
あのデカいトンカチをお土産に持って帰り、トンカチを振り回すJの雄姿も拝めたかもしれません。Jジュエルのパワーでシルバリオンハンマー(偽)とか。
お目汚し失礼しました。