仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ツルギ×ムラサメ 怨讐魔剣事変   作:大ちゃんネオ

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魔剣-第十頁 紫電と刃龍、また逢う日まで

 魔縁を討ち、ナグルファルからヘルを連れ出した後。

 ミラーワールドを脱出した燐と紫乃は、街を守っていたロゼと美玲、そしてアリスと晴明と合流していた。

 ヘルが捕まった事でゾンビの生成と攻撃が終わったため、混乱していた街も今は静かになっている。

 

「燐……平気?」

「はい、紫乃くんが助けてくれたので」

『まぁこのアリスちゃんが手助けしたのも大きいですけどね! 褒めてくれて良いんですよ燐くん!』

「はいはい」

「ハイハイ」

 

 ウィンクしながら自慢気に笑みを見せるアリスだったが、美玲と燐に軽くあしらわれてしまい、鏡面の中で抗議の声を上げた。

 

『ちょっと!? 二人とも、なんか今回は私への扱いがぞんざいじゃありませんかね!!』

「……()()()?」

「割といつも通りですよね?」

『ねぇ!? おかしくないですか!? 終いには泣きますよ!?』

 

 鏡からクレームを吐き出し続けるアリスを受け流しつつ、燐と美玲は楽しそうに会話を交わし合う。

 一方、紫乃とロゼは互いの無事を確認し安堵していた。

 

「怪我はしていないようだな、ロゼ」

「美玲さんのお陰で。そっちも、無事にヘルを捕らえる事ができたのね……良かった」

「お前の方も、街に被害が拡がらないよう守ってくれたな。流石だぞ」

「え……えへへへへ……」

 

 褒められた事でロゼは自分で押さえ切れない程に口角を釣り上げ、紫乃はその様子を見てフッと微笑む。

 そして、燐と話していた美玲の視線は、紫乃たちの足元にいる白い小狐に向けられた。

 

「ところで……あの狐は何?」

「晴明さんです」

「セイメイ……?」

 

 聞いた事のある名前だった様子の美玲だが、いまいちイメージが結びつかなかったようで、しきりに首を傾げている。

 そうして話し続けていた頃、一行の前に一人の少年が姿を現した。

 

「あっ、みんな!」

 

 喫茶Hamelnで暮らす小学生、藤堂 章太郎である。

 彼の姿を見ると、燐とロゼはすぐに声をかけに駆け寄って行く。

 

「章太郎くん!」

「店の方は大丈夫だった?」

 

 章太郎はコクコクと頷き、屈託のない笑顔で答える。

 

「戸締まりして隠れてたから大丈夫! みんなのお陰でゾンビもいなくなったみたいだし!」

 

 では権兵衛の方も無事だろうと結論を出し、一行は安堵した。

 もう憂いはない。紫乃は晴明へ、自分の世界に帰還するための入口を作るように呼びかける。

 別れ際、ロゼが美玲と握手を交わすのを横目に見ながら、紫乃は燐と見つめ合う。

 

「そろそろ時間だ」

「これでお別れなんだね」

「……ああ」

「あ、もしかして今『寂しくなるな』って思った?」

「そんなワケ……」

 

 徐々に声が小さくなっていき、口ごもってしまう紫乃。

 気付けば燐だけでなく、ロゼも美玲もアリスも晴明もヘルも、章太郎すらも次の言葉にじっと注目していた。

 やがて紫乃は、恥ずかしそうに視線を逸らしつつも、微笑む燐に問いかけ右手を差し出す。

 

「また……会えるか?」

 

 その一言を、燐は笑顔で頷き彼の手を握る。

 

「もちろん、また会おうよ。友達だもんね」

「おれもおれも! いつでも店で待ってるからさ!」

 

 章太郎も二人の脇で両腕をぶんぶんと振って存在を主張し、紫乃は微笑みながら頷いた。

 そしてふと思い出したようにポケットから二本のリキッドを取り出し、公衆電話の鏡面にいるアリスへ話しかける。

 

「アリス、お前にこれを預けておく」

 

 そう言ってミラーワールドの中へ送ったのは、ツルギとドラグスラッシャーのモンストリキッドだ。

 

『あら、せっかく手に入れたのに良いんです? 持っておけば役に立つかも知れないのに』

「これで良い。近い内にLOTの査察が来るからな。これは本来オレたちの世界には存在しないものだ、見つかって変につつかれても困る」

『……えっ、それって普通に証拠隠滅じゃありません?』

「見つからなければ最初から存在しないのと同じだ。オレは何も悪い事をしていない」

『えぇ……?』

 

 しれっと冷静な顔で言い放つ紫乃に目を丸くしながらも、アリスはその要求を受け入れてリキッドを保管した。

 これでもうやり残した事はない。紫乃たちは再び、共に戦った仲間たちを振り返る。

 

「章太郎、燐。またオレの力が必要になったら言ってくれ」

「うん。紫乃くんも、いつか僕の世界においでよ」

「美玲さん、次はダブルデートとかしてみませんか!」

「……考えておくわ」

 

 燐たちもまた、手を振る章太郎に見送られながら自分たちの世界へと戻っていく。

 

「またね、兄ちゃんと姉ちゃんたち!」

 

 こうして、ヘルによってこの世界に持ち込まれた異変は、収束の道を辿ったのであった。

 

※ ※ ※ ※ ※

 

「……で、二人で無事に戻って来れたワケか」

 

 ――数日後、磐戸市の図書館地下にあるLOTの支部長執務室にて。

 紫乃とロゼは、事件の処理と概ねの報告を終えて、織愛と灰矢からお叱りを受けていた。

 

「まったく、二人とも無茶するんだから」

「事件が無事に終わったから良かったけどよ、下手すりゃ帰れなくなってるところだぜ」

「そうよ。日本支部長がいなかったらどうなってた事か」

 

 織愛は憤慨しながら、灰矢は半ば呆れたように、それぞれ紫乃たちへ苦言を呈する。

 当の二人は、反論はせずに聞き入れていた。

 

「それに関しては悪かったと思っている」

「ごめんなさい……」

 

 紫乃の隣でシュンと眉を下げるロゼ。

 それを見かねてか、小狐の姿ではなく本来のスーツを着た男の姿でソファに腰掛ける晴明がその場を諫める。

 

「まぁまぁ、さっき灰矢くんが言ったようにちゃんと帰って来たんだから良いじゃないですか。それに、異界の存在とそれに関する情報を持ち帰れたのも大きい。今後は一応自由に行き来もできますからね」

「……確かに、結果的にダインスレイヴを回収して元凶を拘束できたのはお手柄ですけど」

 

 織愛はやや不服そうにしながらも腕を組んで口を閉ざす。

 続いて紫乃が、顔を上げ「そういえば」と切り出した。

 

「ヘルはどうしたんだ?」

「アイスランド支部に引き渡して、司法神テュールを始めとする神々の裁判にかける準備が進んでる。死罪とまでは行かないと思うけど、重い罰が下るのは確実だろうね」

「それも大事だが……取り調べはできそうなのか? 今回の一件の黒幕について聞き込みする必要があるだろう」

「今すぐというのは難しい、けどその辺りの事は向こうの最高神のオーディンと話せたから大丈夫だよ」

 

 だが、裁判となればそれなりに時間はかかるだろう。

 とりあえず今は査察に備え、取り調べの連絡が来るまで待つしかないと、紫乃たちは判断した。

 

「それにしても、ヴァンダル・リーグか……今回の一件で私たちももう目をつけられたでしょうし、聞く限りだと野放しにできない存在ね」

「他にも魔人教団だとか、また別の世界から来ている怪人組織があるらしい。気を付けなければならないな」

 

 ロゼと紫乃がそのように話していると、そこに関心を持った様子の灰矢も加わる。

 

「次は俺も連れて行ってくれよ。お前の知り合った燐ってヤツにも、会ってみたいしな」

「都合良く来てくれていれば良いがな」

 

 フッと笑い、紫乃は自分の右手を小さく握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 魔縁との戦いから数日。

 自分達の世界に帰還した燐と美玲はいつもと変わらぬ日常に戻っていた。

 放課後の図書室に集まる四人組。

 燐、美玲、射澄、美也。

 集まってはいても、全員てんでばらばら。

 射澄は読書に没頭し、美玲はスマホでSNSを眺め、美也は魔縁との戦いで負傷した右腕の包帯をいじり、燐は窓辺に立ち青空を見上げていた。

 

「……うん、よし」

 

 図書室だから、というわけでもなく。特に話すことはないので誰も口を開かなかったが、美也は右腕に巻かれた包帯を外して右手を握ったり開いたりを繰り返し、右手の調子が戻ったことを確かめると自然と嬉しげな声が漏れていた。

 

「……もう外していいのかい?」

 

 本から視線を外し、射澄が美也に問い掛けた。

 

「はい。魔縁が倒されたからか、治りが早くて」

「それはよかった。……それにしても魔剣ダインスレイヴと冥界の女神ヘル。神話の存在と対決することになるとは、世界は広いねぇ」

「広いというより、多いと言った方が適切かもしれないわね」

 

 スマホをスリープさせ、美玲が答えた。

 テーブルの上にスマホを置くと、美玲は座りながら振り向いて窓際の燐の方を向く。

 快晴、暖かい空気が穏やかな風に運ばれていく。

 仄かに風に揺れる髪。ずっと空を見上げる燐。

 このまま、あの青空に溶けてしまうのではないかと、美玲は不安そうに燐を見つめていた。

 

「……燐」

  

 いよいよ、辛抱出来ず美玲が燐を呼んだ。

 燐は振り返ると美玲に向かって微笑み、美玲達が陣取る席まで行くと美玲の隣の席に腰を下ろした。

 

「何を見てたの?」

「見てたというより、考え事ですね」

「何を考えていたんだい?」

「あっちの世界……。ヴァンダル・リーグのこととかなんですけど……」 

 

 燐はそこで口をつぐむ。

 それを、美玲達は許さなかった。

 

「燐、話して。私達仲間でしょう」

「そうだよ! 遠慮しないで!」

「情報を共有してもらえないと、私達も困るからねぇ。それとも、私達は信用出来ないかい?」

「あ、いや、そういうわけじゃ……」

 

 三人の話せ話せというオーラに燐は根負けした。

 なんでも一人で背負いがちな燐ではあるが、その事を美玲達も分かっている。

 だから、燐一人に背負わせない。

 それが美玲達の想いであった。

 

「……ヘルは、僕のことを対策していました。元々の相性みたいなのもあるかもですけど、サバイブも使えなくて……」

「そして、そもそもヘルはロゼと行雲の世界の存在。それが燐の、ツルギの情報を得ていたとなると……」

「ヴァンダル・リーグが今回の事件の裏にいると思います」

 

 ヴァンダル・リーグ。

 あの世界に存在する謎の組織。

 怪人デリーターを擁し、かつては仮面ライダーシェリフの世界からガイアメモリを持ち込み、今回はヘルとダインスレイヴを利用し、ツルギの世界で死霊を集めていた可能性が高い。

 ツルギの世界を利用することで、ツルギを誘い込んだのかもしれない。

 狡猾に、なによりまだその組織の輪郭も朧気。

 得体の知れない恐ろしさを燐達は感じていた。

 

「ヘルはそのムラサメというライダーの世界に連れ戻されて処罰されるのだろう? その時に少しでもヴァンダル・リーグのことを吐いてくれると言いんだが……」

「あ、そしたら話を聞きにそっちの世界に行かなきゃだよね! ……みんなで!」

「他の世界に行きたいだけでしょう」

 

 美玲のツッコミに美也は照れ笑いを浮かべ、頭を掻いた。

 

「だって、時代はほとんどこっちと変わらないのに科学力とかは向こうが進んでるとか気になりません? 車とか空飛んでたり宇宙に気軽に行けたりするのかな~」

「そこまで進んでるかは分からないけど……。でも、そうだね。ヘルのことも気になるし、それに……」

「それに?」

 

 美玲が聞き返す。

 すると、燐は笑顔でこう言った。

 

「友達のところに遊びに行くのは、普通のことじゃないですか」

 

 燐は再び、青空へと目を向ける。

 ヘル、ダインスレイヴ、ヴァンダル・リーグ。考える事は多いが、敵のことだけを考えていたわけでもない。

 仮面ライダーデュオル、仮面ライダーシェリフ、仮面ライダーマイヤ、仮面ライダーリンガ。そして、仮面ライダームラサメと仮面ライダーブリューナク。

 他の世界で出会った仮面ライダー。仲間、友のこと。

 頼りになる彼等のことを思わずにはいられない。

 世界は違っても、彼等もまたこの青空の下にいる。

 いつかの再会への期待に、燐の胸は高鳴っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どことも知れない、暗い闇の中。

 ヴァンダル・リーグの幹部の一人、カンナは、椅子に腰掛けて頬杖をついていた。

 しかしその表情は物憂げでありながらも、微かな喜色が見られる。

 

「少々、予定とは異なる結末に終わったけれど……ツルギとムラサメの事以外は、想定以上の結果が得られた……」

 

 そう言って、彼女は机の上に置いた『布に包まれた物体』に手を伸ばす。

 布を開いたそこにあったのは、半分に折れた魔剣の片割れ。砕けた刀身の部分だ。

 カンナがピッと指を虚空に動かすと、途端にその剣からドス黒い瘴気のようなものが溢れ出し、呪言と共に人間の上半身のようなものが形成される。

 魔縁だ。死した少女の残留思念が、そこに宿っていた。

 

『ウウ……アアアッ……ニクイ……ウラム……コロス、ゼンブケシテヤル……血ヲ……モット赤イ血ヲォォォ……』

 

 ダインスレイヴの呪いと仮面ライダー魔縁の怨念。これらは魔剣が折られた際に消失したのではなく、二つの邪悪な力が残ったもう半分の方に凝縮されて融合したのだ。

 通常ならば触れれば魅入られてしまうこの呪いに関しても、カンナの停止の力ならば呪いの効力を止めた上で回収できるようになる。

 

「この魔剣の破片という極上の素材があれば、また新たな怪人を生み出す事もできる……」

 

 次はどのような手で仮面ライダーたちを追い詰めようか。

 ヴァンダル・リーグたちの悪意は、その魔の手は、まだ鎮まる事はない。

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