仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ツルギ×ムラサメ 怨讐魔剣事変   作:大ちゃんネオ

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魔剣ー第四頁 白の剣士、紅と蒼の乙女

 鏡の中から現れたそれは、自身の似姿であるとムラサメは感じた。真白の鉄騎に跨がる、太陽の光を浴びて輝く純白の剣士。

 そう、剣士だ。

 腰に差している細身の剣を見たからそう思ったのか。いや、違う。纏っている雰囲気が、剣のそれだと。

 

「仮面ライダー、なのか……?」

 

 バイクから降りた剣士の腰にはベルトが巻かれている。だが、ムラサメ達が用いるレリックドライバーとは違う。

 三本角の竜の頭部を象った紋章が描かれた、シンプルなデザイン。他に何かの機能を搭載しているようには見えない。

 

『■■■■■ッ!!!』

 

 突如現れた存在に戦いていたゾンビ兵達が正気を取り戻したかのように一斉に剣士へと襲いかかる。

 それにも関わらず、剣士はゾンビ兵達にどうぞ襲ってくださいと言っているように棒立ちのまま。黙ってゾンビ兵達を見つめていた。

 

「なにをして……!」

 

 助けに入ろうとしたムラサメであったが次の瞬間、目に入ったのはゾンビ兵達が斬り捨てられたという事実であった。

 あまりにも速い斬撃。剣士は腰に差していた剣を手にしていたが、抜いた瞬間すらムラサメは見ていない。

 

「……ッ!」

 

 そこから始まる戦いは、ムラサメが初めて目にするタイプの剣であった。

 動きは必要最小限。いや、敵を動かしているのだ。間違いなく彼の剣士はこの戦場を支配している。鋭利に研ぎ澄まされた剣気を放つ剣士への恐怖心に支配されたゾンビ兵達が、自ら斬られに行っているようだった。自分自身もゾンビ兵と戦いながらも、そのピリピリとした気配を身体が感じている。目がどうしてもあの剣士を向いてしまう。

 あの剣は、美しい。

 一体どれほどの修練の果てに、その境地へと至ったのか。その仮面が隠す剣士はどのような人なのか。気になって仕方がない。

 

『■■■!?』

 

 剣士の背後から襲いかかったゾンビ兵の腹部に、剣が突き刺さる。剣士はゾンビ兵の方を見ることもなく、剣を咄嗟に逆手に持ち変えて対処しただけだった。

 そして、その剣をゾンビ兵に突き刺したまま剣士は飛竜が象られた籠柄の下部にあるグリップを引くと、閉じていた翼が広げられたかのように展開。空いた左手でベルトへ手を伸ばすと、バックルからカードが引き抜かれた。

 シンプルで何の機能も持たないように見えたバックルは、カードデッキであった。

 

【SWORD VENT】

 

 カードを展開した籠柄の中へ装填した剣士は、グリップを押し込み籠柄を閉じる。電子音声がカードの名前を告げると、ムラサメの頭上に影が走る。

 咄嗟に空を見上げた彼の目に入ったのは白い飛竜であった。全身が白刃といったような、触れるもの全てを切り裂いてしまいそうな存在感。

 剣士の近くまで飛来した飛竜から何かが放たれると、剣士はそれを手にする。

 剣士が手にするものなど決まっている。

 剣だ。

 今度は西洋剣ではなく、太刀。

 鍔はなく、一見拵えすらもないように見えてしまうほどの簡素なもの。しかし、その白刃は雪のように美しく、陽光を反射させていた。

 

「ぜあッ!」

 

 振り向き様に、細剣を突き刺していたゾンビ兵を斬り捨てる。細剣は収納すると、次は太刀での剣舞が始まる。

 振るわれる度に、白い光を放つ刃。

 時折、その光でゾンビ兵の目を潰し隙が出来たところを切り裂いているのが分かる。また、剣だけでなく体術も織り込んでいる。足払いで転倒させたゾンビ兵にその刃を突き立てる。

 圧倒的強さを見せつける剣士に、勇猛に槍で襲いかかるゾンビ兵がいた。繰り出された鋭い刺突だったが、太刀が振り下ろされ、穂先はアスファルトを突き刺した。そして、剣士は槍を踏みつけてゾンビ兵の動きを封じた上で袈裟に切り裂く。

 舞い散るインク達の中心で、穢れを知らぬ白き剣が数多の敵を斬り伏せる。

 

「……強い」

 

 白い剣士の戦いを見て、ムラサメは思わずそう呟いた。

 まるで迷いや焦り、躊躇がない。だがそれはこのゾンビ兵達の仕組みを、白い剣士が理解していなかったからである。

 ゾンビ兵達の発生源である巣を破壊しない限り、ゾンビ兵は発生し続けるのだ。いくら白い剣士が強いとはいえ、永遠に戦い続けられるわけではないだろう。

 

「……よし」

 

 ムラサメは、ゾンビ兵達を斬り捨てる白い剣士を見つめ決断した。

 ゾンビ兵達は、彼に任せようと。

 自分はゾンビ兵達の巣を叩くのだと。

 ブリューナクとは二手に分かれてしまい、巣を破壊する余裕はなかったが、今なら可能だ。

 ゾンビ兵が発生しているのは、綺麗という言葉とは対極の色をしたインクの溜まり場。あれを破壊すれば、この事態は収まる。

 そうと決まれば行動は早い。ムラサメはレリックドライバーにアイスブルーとマリンブルーのモンストリキッドを装填する。

 

《アイス!》

 

《セイレーン!》

 

Loading Color(ローディング・カラー)! GRADATION!(グラデーション)

 

「カラーシフト」

 

BRUSH-UP!(ブラッシュ・アップ)

 

《冴え渡る青氷の歌声! アイスセイレーン!》

 

 ムラサメの姿が白き霊犬から青き人魚の力を得た姿へと変化する。

 サンダーハウンドより軽装で忍者にも似たこの姿はスピードに特化していた。

 

《アイス!》

 

「急々如律令」

 

Calling!(コーリング)

 

 ムラサメは太刀を逆手に構え、腰を低く落として構えを取ると、冷気を放ちゾンビの発生源のインクを凍結させた。

 

『■■■■……』

 

 産まれ落ちようとしていたゾンビ達もまた氷漬けとなり、身動きが取れなくなる。

 タンと地面を蹴る音がしたと思えば、ムラサメがスケートリンクを滑るかのように動き出し、どんどんと加速していく。

 そして、次にムラサメの姿を目撃した瞬間、凍結されたインクやゾンビ兵達が一斉に砕け散る。

 

「まずひとつ!」

 

 巣のひとつを破壊したムラサメの目に白い剣士が映った。

 巣を破壊したことで周囲からゾンビ兵が減少した隙をついて、白い剣士は太刀の切先を地面に向け、自身の左手の中で太刀を素早く回し、柄を右手で叩いて刃についたインクを払った。

 慣れた手つきだ。

 そして、またカードが切られる。

 

【SWORD VENT】

 

 白い剣士の次なる剣は二振りのダガー。

 前の二本と比べると間合が急激に短くなるそれを逆手に構え、剣士は戦場を駆ける。

 

「まだ剣を持っているのか……」

 

 疾走する剣士は通りすがりに無数の白い斬を残し────。

 一斉に、ゾンビ兵達からインクが吹き出て屍へと還る。

 姿は変わってはいないが、得物を変えることで自分の戦闘スタイルを変えているようだとムラサメは分析していた。

 ……自分もまた白い剣士から分析されているとは知らずに。

 

《ファイア!》

 

《フェニックス!》

 

「カラーシフト」

 

Loading Color(ローディング・カラー)! GRADATION!(グラデーション)

 

BRUSH-UP!(ブラッシュ・アップ)

 

《壮烈なる赤炎の天昇! ファイアフェニックス!》

 

 不死鳥の声と共に姿が変わる。モンストリキッドはファイアレッドとソレイユオレンジの二色。

 堅牢な赤と橙色の装甲。腕に翼、足先には蹴爪が備わった。

 

《フェニックス!》

 

「急々如律令」

 

Calling!(コーリング)

 

 ムラサメは、炎を纏い羽撃く。

 自由自在に空を駆けると共に、その身に宿した炎でゾンビ兵とインクを焼き払っていく。

 

「次!」

 

《ウィンド!》

 

《キマイラ!》

 

Loading Color(ローディング・カラー)! GRADATION!(グラデーション)

 

「カラーシフト!」

 

BRUSH-UP!(ブラッシュ・アップ)

 

《吹き荒ぶ緑風の神通! ウィンドキマイラ!》

 

 レリックドライバーにはエバーグリーンとアンティークイエローのモンストリキッドが装填されていた。

 ムラサメのパワー特化形態、ウィンドキマイラである。

 

《ウィンド!》

 

「急々如律令」

 

Calling!(コーリング)

 

 ドライバーを操作する手は流れるよう。

 翠の風が巻き起こり、ゾンビ兵の発生源たるインクを払っていく。

 

「これで巣は破壊した! 残りは……」

 

【SWORD VENT】

 

 四本目の剣は、剣士の身の丈ほどある大剣。

 白い飛竜の翼に似たそれを豪快に振り回し、まとめてゾンビ兵達を薙ぎ払っていく。

 またも新たな剣の登場に、最早ムラサメは驚くことはなかった。

 先程までとは打って変わって、自身の身体全体を使って力強く大剣を振るう。

 あらかた敵を粉砕すると大剣を地面へと突き刺し、バックルの紋章と同じものが描かれたカードを細剣へと読み込ませた。

 

【FINAL VENT】

 

 それは、最後の剣。敵に終わりを与える剣。 

 

「はぁぁぁ……ぜあぁぁぁ!!!」

 

 白い飛竜と共に空へと舞い上がった剣士は、飛竜の放った黄金の斬撃波を右足に纏い、己を剣としてゾンビ兵の軍団を切り裂き、貫く。

 それが、剣士のライダーキック。

 スラッシュライダーキック。

 

「……お前も、仮面ライダーなのか」

 

 爆炎を背にした剣士のもとへムラサメが歩み寄り、問い掛ける。

 何も語らぬ剣士はバックルに手を近付ける。ムラサメはまたカードを使うつもりかと警戒するが、その手はカードではなくバックルを、正確にはバックルに填められていたカードデッキを抜き取った。

 剣士の像が鏡が割れるようにして消えると、現れたのはまだ紫乃と同年代の、幼さを残した中性的な顔立ちの少年。人懐っこい笑顔をムラサメへと向けると少年は慣れたように挨拶をした。

 

「はじめまして。僕は御剣燐、仮面ライダーツルギです。貴方もこの世界に呼ばれてきたんですよね」

 

 予想よりも剣士の正体が若かったことに面食らっていたムラサメであったが、貴方も、という言葉が引っ掛かった。この世界に呼ばれてきたという言葉からも察するに、どうやらこの少年は自分達よりも訳知りらしいと、敵対の意思も見受けられない少年……御剣燐にならってムラサメもまた変身を解いた。

 

「オレは行雲紫乃。仮面ライダームラサメだ」

 

 名乗ってから、次の言葉が浮かばず少し間が生まれると燐が紫乃のもとへ歩み寄り右手を差し出してきた。

 握手を、求めているのか?

 そう判断に悩む紫乃を見かねて、燐は無理矢理紫乃の右手を取った。

 

「よろしくね、紫乃くん」

 

 また笑顔を浮かべる燐に紫乃の警戒心は鳴りを潜めた。

 自分の世界にいる友人に似た雰囲気を持っていたからだろうか。あるいは、信じるに足る何かを感じたのか。

 とにかく、紫乃はその手に力を籠めて燐の手を握り返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見たこともないマシンのフードが上がり、搭乗者の存在が露となる。

 青い鳥。ロゼの第一印象はそれであった。

 とはいえ、青い鳥と聞いて世間の人々が想像するような可愛らしいものではないとも感じていた。

 鳥は鳥でも、鷹のような猛禽類を連想とさせる力強い印象を受ける。

 だが、マシンから降りたその人物は自分よりも小柄で、青いスーツに包まれたその肢体は細くしなやかで、女性らしいものであった。

 

「仮面ライダー、なのかしら……」

 

 ふと漏れた疑問を、青い戦士は耳にしていた。

 

「仮面ライダーアイズよ。貴女もそうなんでしょう」

「は、はい!」

「……ひとまず、話は後ね。槍を使うのなら前に出て、援護するわ」

 

 アイズはバックルから青い弓矢が描かれたカードを引き抜くと、左腕の弩に似た手甲のトリガーを引き装填口を引き出す。カードを装填し、矢を放つようにトリガーを引き放つと電子音声が鳴り響く。

 

【SHOOT VENT】

 

『キュオォォォン!!!』

 

 咆哮と共に飛来した青い巨鳥。背には二門の砲を携え、アイズの頭上を通過すると同時に青い翼を思わせる弓と矢筒をアイズに装備させていった。

 背中のハードポイントに装着された矢筒から矢を取り出し、番える。

 矢を引き絞ると青い炎が灯り、放たれた矢は一体のゾンビ兵に突き刺さると瞬時にその炎はゾンビ兵の全身に回る。悶え苦しむゾンビ兵が暴れまわり、炎は他のゾンビ兵達に延焼していき軍団はパニックに陥っていく。

 

「撃ち漏らしたやつをお願い」

「わ、分かりました! はあッ!」

 

 AウェポンL/R、銀色の長槍を振るいブリューナクは蒼炎揺らめく戦場を駆け抜ける。

 ひとつ、ふたつと屠ったゾンビ兵のカウントを重ね、最後のゾンビ兵を貫いた時にはほぼ全てのゾンビ兵が焼き払われていた。

 

「終わった、の……?」

「ええ、終わりよ」

 

 アイズはバックルからデッキを取り外し、その正体を露にした。

 白いセーラー服に紺色のスカートという、ありふれた学生らしい姿。

 涼しげな目とすらっとした面立ちが合わさって、大人びた美人と評するに相応しい少女。

 風に靡く黒髪の毛先が少女の首筋を撫でるので、少女は右手で揺れる髪を耳にかけるようにしていた。

 

「……咲洲美玲」

「えっ……」

「名前よ。貴女は?」

「あっ! ロゼ・デュラックです!」

 

 ブリューナクからロゼへと姿を戻し、自分も名乗るロゼ。思わず敬語になったのは、美玲の大人びた雰囲気を感じたせいだろう。

 

「……一応聞くけど、他のライダーは敵とかそういう感じ?」

「え? 仮面ライダーは基本的に私の仲間です!」

「そう。じゃあ、こちらも敵対するつもりはないわ」

「は、はあ……?」

 

 敵対するつもりはない。そう言われたが、今の質問で仮面ライダーは敵と答えていたら敵対するつもりだったのかと、内心ロゼは美玲に不信感を抱いた。

 

「貴女一人だけ?」

「いえ、紫乃くん……。仲間が一人来ています」

「そう、こっちも同じよ。ひとまず合流しましょう。……異世界人同士ね」

「異世界人、同士……。なんで私が別の世界から来たって……」

「この世界、仮面ライダーがいないらしいわ。仮面ライダーは、他の世界から来るって聞いた」

 

 仮面ライダーは他の世界から来る。

 その言葉が、妙にロゼの耳に残った。

 

「ロゼ!」

「あ、紫乃くん! ……と、あれは」

 

 遠くから駆け寄る紫乃と並んで走るもう一人の見知らぬ少年。

 それが美玲の仲間だと、ロゼはすぐに理解した。

 紫乃と燐が合流し四人集まると、まず紫乃が冷静に状況報告を行った。

 

「奴等の発生源は全て破壊した。これで大丈夫だろう、が……」

「また何時何処で出るかもしれない……」

 

 紫乃とロゼの間に重い空気が流れる。そこへ、燐が微笑を浮かべて二人に声をかけた。

 

「とりあえず、ここじゃなんだし落ち着ける所で話しませんか?」

「落ち着ける所?」

「うん。こっちの世界来たら、僕がお世話になるところがあるんだ。泊めてもくれるし……お手伝いはしなきゃだけど」

「そうか……。こちらのことはお前が詳しい。従おう」

 

 紫乃がそう決めると遠くからサイレンの音が響いた。徐々に大きくなるその音はこちらに向かってきている。この場に居残り続けて、警察なり消防なりと関わってはタイムロスだと四人はこの場を後にした。

 

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