仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ツルギ×ムラサメ 怨讐魔剣事変 作:大ちゃんネオ
街を埋め尽くすと言っても過言にはならないほどのゾンビの大群。
もしも、これがパニック映画の所謂ゾンビであればどれほど良かっただろうか。
かつては北欧の勇士であっただろう者達の成れの果て。
身に纏う鎧、武具。
腐っても、彼等は戦士なのであった。
「きゃぁぁぁぁ!!!!!!」
ビルの壁際に追い詰められたOLの悲鳴。
逃げ遅れたのだろうか、彼女を襲うゾンビがその手に持つ剣を振り上げていた。
このまま、彼女は切り裂かれてしまうのだろうか。
否。
【SHOOT VENT】
機械的な音声の後に響く、風を切る音。
次の瞬間、剣を握るゾンビの右腕が射抜かれて、ビルに得物を握ったままの右手が磔にされる。
風を切ったもの、それは矢。
ゾンビがこの矢を放ったのが誰かを探る。振り返れば、簡単に見つけることが出来た。
青い翼のような弓を構える騎士がいる。
翼を模した鉄仮面の奥に潜む、淡く輝く鷹の目の如き鋭い黄金色の瞳が敵を貫いていた。
彼女はミラーワールドの青き弓兵、仮面ライダーアイズ。
「……絵面最悪」
自身が放った矢により、ゾンビの動きを止めて女性を救出する手筈だったがゾンビは想像以上に脆く、スプラッタ映画に出てくるような腕の磔が完成してしまった。
仮面ライダーアイズこと咲洲美玲。
クールビューティーの名を欲しいがままにしているが、ホラーとスプラッタは大の苦手である。
「美玲さん! そんなこと言ってる場合ですか!」
ゾンビを蹴散らし、戦場を駆け抜ける紅の乙女、仮面ライダーブリューナク。
アイズのどこか集中力に欠ける戦いぶりに注意を促すが、アイズはそれどころではない様子。
「だって……気持ち悪いんだもの。ゾンビきらい」
「子供みたいなことを……!」
ゾンビに襲われていた女性を立ち上がらせ、避難させるブリューナクはアイズのそんな言動に怒りというよりも呆れていた。
「ゾンビぐらいでへこたれないでください!」
「……あなたは元気ね」
AウェポンL/Rのランスモードを振るい、果敢に戦うブリューナクにアイズはそんな感想を溢す。
溢しながら、確実にゾンビの頭部を射抜いていく。
ダウナーに、乗り気でないと嘯きながらも。
「……ロゼ」
「なんですか!」
ゾンビを張り倒すブリューナクにアイズが声をかけた。
「ゾンビ、私に近付けないで」
「……了解したわ!」
ロゼは美玲のことをひとつ理解した。
この人は言葉が足りなさ過ぎる、と。
《フラッシュ!》
「神器解放!」
《Calling!》
ベルトのリキッドを操作すると右手が光を放つ。
五指から放たれる光弾がゾンビに着弾し火花が上がると、その火花を切り裂いて矢が飛ぶ。
後方のゾンビ達を貫通して、まとめて何体も射殺していく。
「ここからは一歩も下がらないわ! あなた達も通れると思わないことね!」
「……そういうの、ガラじゃないんだけど……。ま、やってやるわ。ヒーローってやつ」
ゾンビに向かい高らかに声を上げるブリューナクと、静かにだが確かに闘志を燃やすアイズの二人にゾンビ達はたじろいだ。
それを隙とブリューナクのランスが、アイズの矢がゾンビを屠り、穿つ。
だが、ゾンビは無限を思わせるほどに現れる。
それでも二人の乙女は弱音など決して吐かない。
「燐達が絶対に本丸を叩く。だから、それまで絶対に持ち堪えるわよ」
「ええ! こんなところでやられてたら紫乃くんに見せる顔がないですから!」
仮面の下で二人は微笑んでいた。
互いに信じる、愛する人がいる。そんな共通点が、今はとても頼もしい。
乙女達は勇ましくも可憐に、戦場の華であった。
「私を相手に手も足も出なかった分際で……ほざくなァ!!」
【TRICK VENT】
怒りを指先に込めて素早くカードを取り出した魔縁は、バイザーにそれをセットして起動。
すると彼女の左右に、新たに八人の魔縁が出現した。実体を伴う分身だ。
さらに最初の内こそムラサメの登場に驚いていたヘルであったが、その数的優位に再び余裕を取り戻す。考えようによっては、ムラサメを呼ぶ手間が省けたのだから。
「フフ……魔縁、二人揃っているのなら話は早い。全力でやってしまって良いぞ」
「言われずとも!!」
魔縁がそれぞれ四人ずつ、ムラサメとツルギに向かっていく。
さらに船内で観測しているヘルは、本体の魔縁を補助すべく周囲の怨霊を掻き集めている。彼女のミラーモンスターにこれを食わせ、より強大な力を与えるつもりなのだろう。
戦いが長引けば手のつけられない存在になる。そうなる前に倒すべきと判断し、二人の仮面ライダーは駆け出した。
「行くぞ」
「うん!」
短く言葉を交わし合う彼らの前に立ち塞がる、魔縁の分身たち。
「フン、武器のないお前に何ができる!?」
そう言って、四体の魔縁たちはムラサメに襲いかかる。
《ツルギ!》
「急々如律令!」
《
瞬間、素早くフィジカルカラー側のリキッドが入力された。
するとムラサメの視界に、次の敵の攻撃の軌道が
生き残りを賭けた戦いに身を投じる仮面ライダーたちの、脅威から身を守るため生き延びようとする直感めいた力。見切りの眼。即ち『生存本能の活性化』である。
これにより、ムラサメは四人の魔縁が放つダインスレイヴ全ての斬閃を、まさしく間隙を縫うように避け、攻撃直後の隙を見極めた。
「な、に……!?」
「まだだ」
《ドラグスラッシャー! ソードベント!》
「急々如律令!」
《
続いてトリガーを引くと、今度はムラサメの左側に鏡が出現して白いインクが飛び出したかと思うと、鏡が割れてインクと一体化。
それが固まって鍔のない真っ白な刀、リュウノタチとなり、彼の手に握られる。
「ツルギの刀だと!?」
「シィッ!!」
一閃。
間合いに入った瞬間に放った斬撃は、魔縁の分身一体の胴を捉える。
分身の耐久性は低く、その一撃で容易く消滅した。
「良い太刀だ」
そう感想を述べながら、ムラサメは迫り来る魔縁の猛攻を回避しつつ、白き刀で反撃を浴びせる。
だが流石に魔縁も警戒しており、中々有効打とはならない。浅い傷を負わせるだけだ。
ただし、だからと言って魔縁側の攻撃もクリーンヒットしているワケではなく、彼女が明らかに焦れているのが見て取れる。
「な……ら、ば!」
【COPY VENT】
魔縁が新たにカードを使うと、その手にムラサメが持つのと同じ刀が握られた。これで、ダインスレイヴと合わせて二刀流だ。
「む」
「ッハハ、やはり通じたな! この手は予想外だろう!」
するとムラサメは甲板に刀を突き刺した後、再びリキッドとドライバーを操作する。
《ドラグスラッシャー! ソードベント!
「急々如律令!」
次に彼の手元に現れたのは、龍の鱗のような二本の短剣。これもまたツルギと同じ、ドラグダガーである。
驚く間にムラサメは一気に前へ踏み込み、息もつかせぬ速度で、舞うように分身一体を斬り刻んで消滅せしめた。
「なっ!?」
「どうした? 予想外でもないだろう、このくらいの手は」
「……黙れ!!」
【CONFINE VENT】
魔縁が別のカードを発動すると、ドラグダガーが消えてしまう。
しかしそれでも構わず、ムラサメはもう一度リキッドを押し込む。
《ドラグスラッシャー! ソードベント!
「急々如律令!」
地面に突き刺さる、身の丈を超えるほどの大剣。
白き飛龍の翼、ドラグバスターソードである。
「しまっ……くう!?」
吹き荒れる嵐のような一薙ぎは、防御のためにリュウノタチとダインスレイヴを構えた魔縁を、その守りなど全く無意味にする程の破壊力で消滅させた。
これで残る魔縁の分身は一体。完全に圧されてしまっており、どうにか隙を作るべく魔縁は再びカードに手を伸ばそうとする。
その時、ムラサメが動いた。大剣を彼女に投擲して動きを阻害させつつ、またドラグスラッシャーリキッドを押し込んだ。
《ドラグスラッシャー! ソードベント!
「急々如律令!」
再び両手に現れる
カードを使う隙を一切与えないスピーディな斬撃を繰り出し、ダガーを投擲して魔縁が怯んだところで彼女の足元にあるドラグバスターソードの柄に手をかける。
「シィィィッ!!」
「甘い!」
だがその大振りな一撃は読まれており、ダインスレイヴで大剣を打ち払うようにして威力を殺し、魔縁は後ろにたたらを踏みながらも攻撃を受け流した。その一撃で、ムラサメの方はドラグバスターソードを取り落としてしまう。
これで彼に武器はなくなり、魔縁はほくそ笑んで反撃に打って出ようと前に踏み出す。
しかし、その認識は誤りだった。ムラサメの手元には、地面に突き刺していたリュウノタチがあった。
「はっ!?」
「甘い」
まるで居合斬りのように放たれたその刃の閃きは、不用意に間合いに入った魔縁の喉を抉って斬り落とす。
これにてムラサメに向かって来た全ての分身は消滅。
ツルギはどうなったのか、彼は改めて友の方の戦況に目を向けた。
四人の魔縁に囲まれるツルギ・七星。
攻撃の回避に徹するばかりに見えるが、魔縁には焦りが生じていた。
何故当たらない。
何故動ける。
何故そうも余裕を見せる。
「……ッ! 死に体がぁ!!!!」
魔縁の一人が叫び、攻撃の苛烈さを増す。
輪の中から抜けたツルギ・七星と魔縁は船上を駆けながら斬り結ぶ。
幾度かの剣戟の末、ツルギ・七星のAウェポンT/G-SSSが競り負け、甲板の上で舞い踊るかのように体勢が崩れていく。
それを好機と魔縁はその背にダインスレイヴを振り下ろす。
「ふっ……」
「なっ!?」
魔縁にとっての好機はツルギ・七星により作られたものであった。
振り向くツルギ・七星の手に握られるAウェポンT/G-SSSは銃形態へと変形させられており、魔縁の腹部に銃口が当てられ────連射。
次々と魔縁から上がる火花。
分身体である魔縁は消滅するとツルギ・七星はその手に握る銃を見下ろした。
「……いいね」
初めて扱った銃器にそんな感想を述べ、残る三体の魔縁に向け発砲し疾走する。
命中はしなかったが散り散りとなった魔縁達。
その隙にツルギ・七星は甲板に落ちた一枚のカードを拾いあげ、腰に差しているスラッシュバイザーにカードを装填しリュウノタチを召喚する。
右手に太刀を、左手に銃を持ち、発砲しながら迫る魔縁へとツルギ・七星。
まず一体、銃弾を回避させる。
そう、させるのだ。
回避した先に、白刃が迸るとも知らずに。
「ガッ!?」
魔縁の胸部から血飛沫の如く火花が上がる。
二体目、斬り捨て。
残る二体の魔縁の方へ、ツルギ・七星がゆらりと視線を向ける。
その様に、恐怖を覚えた。
「馬鹿な……。あれほど死に近かったはずなのに!?」
「さっきの電撃がいい感じに効いたのかな。それは置いといて……ほら、おいでよ」
ツルギ・七星はリュウノタチを握りながら、右手の人差し指と中指で魔縁を挑発。
それに激昂した魔縁が二体揃って襲い掛かるも、ツルギ・七星は冷静にAウェポンT/G-SSSを太刀形態へと戻し二刀で迎え撃つ。
その剣劇は舞踊のよう。
どれだけ激しく攻めたてられようと、ツルギ・七星の剣舞に狂いはなく、ダインスレイヴの斬撃を容易く捌いていく。
「チッ! ならばこちらも!」
【COPY VENT】
二体の魔縁はリュウノタチをコピーし、ツルギ・七星と同じく二刀で攻める。
四つの刃がツルギ・七星をつけ狙い、追い詰めていく。
凶刃を二刀で受け止めたツルギ・七星は押し込まれてしまう。
このまま押し切れると確信した魔縁だが、それは早計。
ツルギ・七星から迸る紫電が魔縁を弾き飛ばした。
転げる魔縁を見つめながら、ツルギ・七星はリュウノタチを甲板に突き立てるとAウェポンT/G-SSSを右手に持ち替え、刀身に描かれた北斗七星の星を叩き、トリガーを弾く。
《貪狼ノ型!》
刀身の紋様が赤く発光するのに合わせ、ツルギ・七星の七星紋も赤に染まる。
左足を下げ、腰を深く落としたツルギ・七星が甲板を蹴ると赤い残光が尾を引いて、それが魔縁の流した血のようでもあった。
何をされたかも分からぬ魔縁は受けた攻撃による痛みに戸惑っていた。
「なんだこの速さは!?」
「……めっちゃ便利、これ」
ツルギ・七星は再び七星紋の一つをタッチ。
AウェポンT/G-SSSの切先を魔縁に向けて突撃するも、魔縁がダインスレイヴで防御し、その刃は届かない。
それは分かっていたこと。
だからこそ、トリガーを弾く。
《武曲ノ型!》
ツルギ・七星とAウェポンT/G-SSSの七星紋が黄色に輝き、光の刃が勢いよく伸びて魔縁に届かせる。
武曲ノ型の効果、太刀に光の刃を纏わせる効果を奇襲攻撃に使用した。
光の刃に突き飛ばされた魔縁は船上に倒れ伏したが、もう一体の魔縁が背後から迫っていた。
ツルギ・七星は、その背を見せたまま。
「もらったぁ!!!」
《破軍ノ型!》
続いて星は黒く輝く。
ツルギ・七星を切り裂く斬撃は威力を失くす。いや、ツルギ・七星へと吸収されていく。
「なっ……!?」
「ぜぁっ!!!」
戸惑い固まる魔縁の方へと振り向き、ツルギ・七星の黒いオーラを纏った拳が魔縁を殴り飛ばす。
相手の攻撃の威力を吸収し、カウンターで返す破軍ノ型の力である。
二体の魔縁が倒れた隙に、ツルギ・七星はAウェポンT/G-SSSを真っ直ぐと立て七星紋をなぞるようにタッチしていく。
赤、青、白、緑、紫、黄、黒。
刀身とツルギ・七星に宿る七つの星は七つの色に染まり、トリガーが弾かれる。
《Sparkling Color! Last Calling!》
《セブンスターズ・クロマティックメテオイリュージョン!》
七色の輝きを放つツルギ・七星。輝きが増すと、七色七人。光のツルギ・七星が二体の魔縁の前に立ちはだかった。
「なんだ、それは……!」
「七人のツルギだと!?」
戦く魔縁に向かい、赤、青、緑のツルギ・七星が斬りかかる。
無謀にも剣を振るう魔縁へと紫、黄、黒のツルギ・七星が立ち向かう。
三色の斬撃がそれぞれ叩き込まれ、トドメの一撃。
白のツルギが薙ぎ一閃で魔縁二体を切り裂いた。
「ぐあああっ!?」
「こんな……!」
七つの剣閃は重なり虹となる。
全ての分身体を切り裂き、ツルギ・七星の分身体は一つに戻る。
こうして残るは、本体の魔縁のみ!