仮面ライダーハーメルンジェネレーションズ ツルギ×ムラサメ 怨讐魔剣事変   作:大ちゃんネオ

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魔剣ー第九頁 双龍舞う青空

「こんなバカな、八対二だったんだぞ!? それがなぜ……バケモノどもめ!!」

 

 死霊船ナグルファルの甲板で、トリックベントによって生み出した全ての分身を斬り倒されてしまい、仮面ライダー魔縁は狼狽する。

 ムラサメとツルギ、二人のライダーは揃って彼女に刀の切っ先を突きつけ、前に出ていく。

 

「動く屍の貴様に言われたくはない」

「決着をつけよう」

 

 そのような言葉が投げかけられると、魔縁はギッと彼らを睨めつけて、一枚のカードを取り出した。

 無数の色彩で彩られた蛇が描かれたカードだ。

 

「良い気になるなよ!」

【ADVENT】

「食い尽くせ、ジャノブロケードォッ!!」

 

 彼女の前に現れたのは、無数の色彩を体表に持つ巨大な蛇。

 それが大口を開け、ヘルが掻き集めた怨霊の集合体を丸ごと飲み込んでいく。

 二人とも何か妙な予感がして、ツルギはAウェポンをGモードに変え射撃し、ムラサメはドラグダガーを蹴って飛ばす。

 すると、魔縁とジャノブロケードの周囲を何体もの霊体が漂い始め、彼らの攻撃から身を守った。

 

「銃弾も刃も通らない……!」

「チッ、やはり本体は分身とは比べ物にならないな」

 

 魔縁はジャノブロケードの頭の上に乗り、そこから怨霊を纏わせたダインスレイヴを振って、霊体と共に斬撃を飛ばして来る。

 彼女と大蛇の動きの両方に目を配っていたため、ツルギもムラサメもこれはバックステップで回避した。

 続いて飛び出してきたのは、ジャノブロケードの口腔から放たれる怨念の塊。呪いそのものを凝縮して球体として放つこの攻撃も、ツルギとムラサメは各々の武器で叩き斬る。

 そして左右に分かれて行動し、大蛇の方を撹乱する策に打って出た。

 しかし、そこで予想外の事態が起きる。

 

「ちょこまかとぉ!」

「妾に任せよ」

 

 ヘルが甲板に氷の柱を生み出し、仮面ライダーたちの動きを妨害し始めたのだ。

 まるで檻を作ろうとしているかのように張り巡らされていき、ツルギもムラサメも退路を誘導され、一点に固まってしまう。

 その瞬間を狙いすまし、ジャノブロケードは尻尾を振り上げた。

 

「これがお前たちの最期だ! ツルギ! ムラサメェ!」

 

 大蛇が鞭のようにして尾を叩きつける。

 二人は自らの両腕を使い、咄嗟に防御を試みた。

 

「くっ!」

「ぐ……!」

 

 しかしそれは失敗し、吹き飛ばされて空中へと放り出されてしまう。

 その瞬間、魔縁は自身の勝利を確信した。ツルギもムラサメも所詮はただの人間、地面に落下すれば死は免れない。

 だが、そこで二人が次に取った行動が、その勝利の実感を打ち消す事になる。

 

【ADVENT】

「行くよ!」

《ドラグスラッシャー! アドベント! Calling(コーリング)!》

「急々如律令!」

 

 主を救うため、空を翔け現れる二頭の刃龍。

 二人はそれぞれ龍の背に乗り、大蛇の頭上を取った。

 

「往生際の悪いヤツらめ!」

「大人しく妾のものになるのじゃ!」

 

 甲板から氷の柱が伸び、空のツルギたちを討つために、ジャノブロケードはそれに巻き付くようにして登っていく。

 ムラサメとツルギはその様子を眺めつつ、少し声を潜めて作戦会議を始めた。

 

「燐、あの氷は簡単には砕けない」

「だよね。逃げる時に試したけど斬れそうもないや、半端な攻撃は通らないと思う」

「ああ。だから……()()()()()()()()()で砕く」

 

 その言葉を聞いて、ツルギはその意図を察した様子で頷き、二人は再び散開する。

 そしてムラサメは大きく息を吸い込んだかと思うと、ジャノブロケードの頭上に接近して魔縁へ罵声を浴びせかけた。

 

「おいどうした木偶の坊、攻め手が止まってるぞ!! 臆病風に吹かれたか!! それとも、ゾンビのくせに高所恐怖症か!!」

「何ィ!?」

「攻撃は自分のモンスターに頼り、守りもヘルに任せきり!! 手に持っている魔剣は飾りか!? だったら捨ててしまえ、どうせ大した腕でもないだろうが!!」

「なんだと……!!」

「剣の腕だけではなく耳も悪いのか!! 頭も同じくらいか、そろそろ脳も腐っている頃合いだろうからな!!」

 

 俯く魔縁は握ったダインスレイヴをわなわなと震わせ、怒りのまま反対側の拳を強く握り込む。

 次の瞬間、顔を上げて絹を引き裂くような何とも言えない怒声を上げたかと思うと、ムラサメを睨みつけて剣を振り被った。

 

「言わせておけば……ナメるなァ!! このッ、貧弱な優男がァ!!」

 

 再び飛ぶ斬撃による攻撃が始まり、それに加えてジャノブロケードの怨念のブレスがムラサメを襲う。

 ムラサメは上空を飛んで逃げ、流れ弾を受けないようツルギ側も氷の柱の後ろに隠れて回避。

 少しずつ高度を落としていきながら、再び大声で挑発した。

 

「どうした、一度くらい当ててみたらどうだ!! それとも指が腐ってまともに剣を振れないのか!!」

「黙れ、黙れ!!」

「貴様程度の太刀筋なら飛び回る必要もなさそうだな、ほら()()()()()()()から()()()()()()狙ってみろ!!」

「黙れ黙れ黙れェェェェェーッ!!」

 

 完全に冷静さを失った魔縁は、要望通りとばかりに大きくダインスレイヴを振り上げ、そして渾身の力を込めて横一文字に薙ぎ払った。

 周りを良く見ず、標的であるムラサメの後ろに何があるのか、考えもせずに。

 

「ハッ!? ま、待て魔縁そこは────」

「もう遅い」

 

 仮面の中で、ムラサメがニヤリと唇を釣り上げ、ドラグスラッシャーを真上に飛翔させる。

 そして怨念の刃が向かうその先にあるのは、魔縁自身が乗っているジャノブロケードの巻き付いている氷柱だ。

 

「あ」

 

 瞬間、血の気の引いたような声を魔縁が発する。

 ムラサメは繰り返し彼女を煽って平静を失わせる事で、周囲が見えなくなる程に自分へ標的を絞り込ませていたのだ。

 その目論見は見事に成功し、今『極限まで力を高められたダインスレイヴの』『ゾンビと化し腕力に制限がなくなった魔縁による』『怨念の込められた全力の一撃』が振り抜かれた。

 必殺技すら防ぎ切るヘルの氷柱は、しかし魔剣の一撃を防ぐ事ができず、一瞬で砕けて根本から圧し折れてしまう。

 

「くう、うおおおお!? ジャノブロケードォォォ!!」

 

 呼びかけに応え、毒々しい色の大蛇は氷柱が落ちる前に素早く船上へ戻っていく。

 ――その終点で待ち構えているのは、白い翼龍に乗る仮面ライダーツルギだ。

 GモードのAウェポンへと、手に持ったファイア・フェニックス・キマイラのリキッドを全てリードして銃口を向けている。

 どうやら先程の作戦会議の時、密かに受け取っていたようだ。

 

「なっ!?」

「喰らえ……!」

Charging Color(チャージング・カラー)! Last Calling(ラスト・コーリング)! トライカラー・クロマティックラッシュバレット!!》

 

 炎の嵐がAウェポンから吹き荒れ、真っ直ぐに魔縁とジャノブロケードに向かう。

 すると即座に怨霊の障壁が張り巡らされ、必殺の一撃を防いだ。

 だが挑発に乗って怨念を込めた強大な攻撃を打ったため、せっかく吸収していた怨霊の力が半分以上削ぎ落とされてしまっていた。

 よって、障壁にはぽっかりと大きな穴が空き、その瞬間を見越して二頭の白龍と二人の仮面ライダーが動く。

 

【FINAL VENT】

「これが……」

Reloading Color(リローディング・カラー)! Last Calling(ラスト・コーリング)!》

「最後の景色だ」

 

 ツルギ・七星はカードをバイザーに読み込ませ、ムラサメの方はグリップを引き込んで必殺技を発動し、装甲を展開させた。

 しかし魔縁の判断も素早く、すぐにカードを抜いてバイザーに差し込む。

 

「させるかァッ!!」

【FINAL VENT】

「喰らえェェェッ!!」

 

 何度もダインスレイヴを振ってジャノブロケードと共に剣閃と刃状のエネルギー波を飛ばし、二人を撃ち落とさんとする。

 対する二人の白いライダーは刃の龍の背中から跳躍し、足を突き出す。

 そして飛龍たちの発する刃の波動を足に宿し、稲光と共に己自身を刃として解き放った。

 

「はぁぁぁ……ぜあぁぁぁ!!」

《ツルギドラグスラッシャー・クロマティックストライク!》

「セアアアアァァァァーッ!!」

 

 二人の白き仮面ライダーの放つ、スラッシュライダーダブルキック。

 その鋭い蹴りは怨念の込められた魔縁の一閃と激突し、轟音と共に周囲へエネルギーを散らし、甲板を破壊していく。

 ライダー三人の渾身の必殺技に耐え切れず、次第に船の高度も落ち始めていた。

 

「あぁっ!? わ、妾のナグルファルが、あああ!?」

 

 船内に潜むヘルもパニックになって、どうすることもできずに慌てる声が響く。

 

「ぐおおおっ、こ……こんなァ……!?」

 

 やがて怨念の力が尽きて彼らを妨げるものがなくなり、魔縁の持つダインスレイヴに亀裂が走る。

 迫る必殺の一撃。それを防ぐ手立てはなく、ついに魔縁の胴に二人のキックが炸裂した。

 

「ガッ!?」

 

 二つの刀傷が身体に刻み込まれて爆発四散し、ダインスレイヴの刀身が半ばで砕けて手から落ちて、ナグルファルの甲板に突き刺さった。

 さらに魔縁自身も、船の上にドサリと落下して這いつくばった。

 

「お、おの……れェ……! 認めんぞ……ツルギ、ムラサメ! 私の怨みはまだ……必ず蘇って、この手で次こそ、お前たち仮面ライダーをォォォ……ッ!!」

 

 役目を終えて段々と肉体が崩れていくのも構わず、死が訪れるその瞬間が来るまで、仮面ライダーたちを睨み魔縁は怨嗟を吐き続ける。

 ツルギは目を逸らさずにその行く末を見届け、ムラサメも最後まで油断せず構えていた。

 その直後、魔縁は完全に物言わぬ屍となり、ミラーワールドの中で散り散りとなって失せていく。

 

「……さようなら、魔縁」

 

 消滅した屍の少女に言葉を遺し、ツルギは深い息をついた。

 

 

 

 

 

 少し時を遡り、現実世界。  

 溢れ出るゾンビの大群を相手にブリューナクとアイズが奮戦していた。

 

「やぁっ! ……ッ!? 美玲さん、上!」

「チッ……」

 

 どこかのビルの上からだろうか、アイズ目掛けて降下するゾンビをブリューナクがいち早く気付いてアイズに伝えた。

 即座に矢を上空へ向けるアイズであったが、ゾンビもなかなかの策士。太陽光を用い、アイズの視界を白く染め上げて矢を射るのを遅らせた。

 

『……!』

 

「くっ!」

 

 振り下ろされる剣を弓で受け止めるアイズだが衝撃までは殺せず、地面に押し倒されてしまう。

 ゾンビがボロボロの歯を剥き、アイズの仮面に迫った。

 

「美玲さん!」

「きっ………もいッ!!!!」

 

 これが好機とゾンビはアイズに群がっていく。

 仲間にしようとでも考えているのだろうか。ゾンビの考えなど分からないが、とにかくアイズは窮地であった。

 ブリューナクは助けに行きたいが、ゾンビの群れが壁となって阻む。

 だが、ブリューナクには関係ない。

 仲間を助けるために、押し通る。

 

《ケンタウレス!》

「神器解放!」

《Calling!》

 

 ブリューナクが変化する。

 ケンタウレスの力を解放し、その身に宿す。

 下半身がケンタウレスのものとなると前足を大きく振り上げ、地面を蹴りつけ蹄の音を打ち響かせた。

 四本の足は力強く大地を踏みしめ、構えるランスの穂先は敵を向く。あとは、突撃あるのみ────!

 

「はぁぁぁぁ!!!!!」

 

 立ち塞ぐゾンビを薙ぎ倒し、乙女は進む。

 誰も彼女を止めることは出来ない。乙女の爆発力を舐めてはいけない。

 

「美玲さん!」

「ッ……ロゼ……!」

 

 アイズに群がるゾンビを蹴散らし、ブリューナクは倒れているアイズに向かって手を伸ばす。

 アイズもまた、手を伸ばす。

 掴んだその手は離さない。ブリューナクはアイズを持ち上げ、その背に乗せる。

 アイズは内心、ケンタウレスのようになったブリューナクに驚き、こういうことも出来るのかと関心していた。

 そのためか、ついその背を撫でてしまった。

 

「ひゃうっ!? み、美玲さん変なところ触らないで!」

「……ごめんなさい」

 

 まさか変なところだったとはということに気を取られ、気の抜けた謝罪をするアイズ。だが、すぐに仮面の下の表情は引き締まる。と、同時に挑発するような笑みを口元に浮かばせた。

 

「ねぇロゼ。日本文化には詳しいほう?」

「え? ……まあ、父が日本人だから色々聞かされたりしましたけど……」

「そう。じゃあ……流鏑馬って、知ってる?」

 

 ブリューナクの仮面の下、ロゼもまた不敵に笑った。

 

「じゃあこのまま行きましょう!」

「ええ」

「美玲さんのこと信頼して全力で走るので振り落とされないでくださいね!」

「……出来れば、安全運転で」

「こんな場所に安全なんて言葉ないです……よッ!」

 

 駆け出すブリューナクの震動はアイズの想像以上であった。だとしても、信頼していると言われた手前恥ずかしい真似は出来ない。

 

「……ッ!」

 

 一射目。無数のゾンビの頭を撥ね飛ばし、続けて二射目の弓を番える。

 ブリューナクもケンタウレスの膂力を活かした突進と槍でゾンビを粉砕していき、二人の勢いはゾンビ程度には止められるものでは無くなった。

 紅と青の嵐が戦場を彩っていく。

 

【STRIKE VENT】

 

「ロゼ!」

「ええ!」

 

 仔細を伝えずとも、二人の意思は通いあっていた。

 アイズの両足に装備された鉤爪。ブリューナクはAウェポンL/Rを左手に持ち替えて、右手でアイズの手を握った。

 そして、突進からの急制動。

 ゾンビ達の目前で止まり、その勢いを利用してブリューナクはアイズを振るった。

 扇を描くように、アイズの鋭い鉤爪がゾンビを切り裂いていく。

 勢いそのままに左側からアイズは再びブリューナクの背に戻る。

 すると、ここでゾンビ達に変化が起きた。

 あれだけ死者とは思えぬほど活発に動き回っていたというのに、急にその動きが一斉に止まったのだ。

 

「これって、紫乃くん達が!」

「ええ、やってくれたようね」

「それじゃああとは!」

「ゾンビの後始末、ね」

 

 アイズはブリューナクの背から降りると、鷹の紋章が描かれたカードを弩型の召喚機へ。

 ブリューナクはケンタウレスの姿を解除してレリックドライバーを操作し、それぞれの必殺技を放つ準備を整えた。

 

【FINAL VENT】

 

《Reloading Color!》

《Last Calling!》

 

 アイズの背に契約モンスターである青い鷹型モンスター『ガナーウイング』が合体し鳥人のような姿となると天高く飛び上がっていき、上空からゾンビの群れを睨み付けた。

 

 ブリューナクは全身の装甲が展開し、右足から純白の輝きを放つと、天へと向けて右足を振り上げた。

 

《フラッシュケンタウレス・クロマティックストライク!》

 

「ハアァァァーッ!!!」

「ふっ……やぁぁぁ!!!」

 

 ドライバーがゾンビに終わりを告げる。

 輝きと共に振り下ろされる踵落とし。

 それと同時に、地上の獲物を仕留める鷹のように急降下するアイズの鉤爪を纏う回し蹴りが炸裂。

 二人の仮面ライダーのキックが交差し、十字を描く。

 乙女の勝利を祝福する花火の代わりに、爆炎が二人を飾り付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナグルファル船上。

 ムラサメは半分に折れているダインスレイヴを観察した後、柄を拾い上げていた。

 

「手に持って大丈夫? 呪いの剣なんでしょ?」

「砕いた影響で呪いの力も怨念も失われたようだ。もうこの魔剣が人を襲う事はない……が、念のためLOTで管理する」

 

 船の落下が緩やかになり始め、鈍い音を立てて着陸。

 どうやら中の女神は船の制御で力を使い果たしたらしく、周囲の氷柱も全て消滅していった。

 それを確認すると、周囲に視線を巡らせたムラサメは先程の戦闘で甲板に空いた大きな穴を見つけて、ツルギに声をかける。

 

「さて、行くぞ燐。まだ大事な仕事が残っているからな」

 

 穴から船内に侵入し、しばらく奥へ進んでいくと、二人は怯えた様子で蹲るヘルを発見した。

 

「く……ツルギに、ムラサメ……」

 

 名を呼ばれたムラサメは、怯える彼女の目前にリュウノタチの切っ先を突きつけ、見下ろしながら口を開く。

 

「女神ヘル。オレの世界だけでなく異界の住民までも巻き込んだこれまでの貴様の行い……封魔司書として、LOTとして絶対に容認できるものではない」

 

 地を這うようにして後ろに下がるヘルだが、すぐ後ろには壁がある。

 やがて壁際まで追い詰められると、その首筋に白刃がヒタリと押し付けられた。

 

「今この場で首を斬って、魂を神界へ直行させてやる。どの道神は死ぬ事はないからな。記憶が失われて復活するだけだ……目覚めた頃には牢獄だろうが」

 

 ムラサメが太刀を振り被り、死を覚悟したヘルは目を閉ざす。

 瞬間、ツルギがそっとその腕を制した。

 

「燐?」

「もう戦う意志はないみたいだし、ここまでにしようよ」

「いや、そういうワケには……」

「牢屋があるって事は、多分そういう判決を出す場所もあるんでしょ? だったらそういうのはそっちに任せた方が良いと思う」

 

 彼の言葉を聞いて沈黙するムラサメ。

 そしてしばしの間を置いて、短く息をついた後に刃を収めた。

 

「分かった、抵抗する気がないなら大人しく同行して貰うぞ。向こうで話すべき事を話して、神々から然るべき裁きを受けろ」

 

 ツルギはほっと胸を撫で下ろし、ヘルも目を閉ざして立ち上がると、一度頭を下げる。

 

「……温情に感謝する、ツルギ」

「いえ。でも、もうこんな事しないで下さいね」

「そなたは……優しい子だな」

 

 頬を紅潮させてうっとりとした様子で、ヘルはツルギの顔を見つめて指を伸ばす。

 が、そこでムラサメが彼女の尻を軽く蹴り上げた。

 

「ぎゃん!!」

「良いからキリキリ歩け」

 

 ムラサメはそう言ってさらに後ろ手にしたヘルの腕を掴み、外へ出るため引っ張っていく。

 それに置いていかれないように、慌ててツルギも追いかける。

 そしてふと思い出した様子で「あっ」と声を上げ、ムラサメの隣に立ってAウェポンを渡した。

 

「はい、君の刀」

 

 ムラサメは黙って頷き、それを受け取る。

 

「大事にされてるね」

「自分の得物くらいはな」

「あぁいや、そうじゃなくて……その刀から、なんとなく伝わって来たっていうか。紫乃くんがこれを作った人に大切にされてるんだって」

 

 仮面の奥で、紫乃は虚を突かれたように目を見張り、数刻の後に再び言葉を発した。

 

「……あいつは父親だからな、一応」

 

 直後、ツルギがじいっとその顔を覗き込む。

 仮面で隠れているのでどのような表情になっているのか分からないはずだが、ムラサメの顔を見ながら微笑んでいた。

 

「この話は良いだろう、帰ろう。ロゼたちが待っている」

「ひょっとして照れてる?」

「照れてない」

「ほんとかなぁ」

「……照れてない」

 

 顔を逸らし、早足で歩き出すムラサメと、それを慌てて追うツルギ。

 しばらくそんな会話を交わしながら、彼らはヘルを連れてミラーワールドを脱するのであった。

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