白兎とアリスちゃん   作:パッチワーカー

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 こういうのが書きたくて、この作品始めました。


有栖とアリス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、思っていた以上に早かったですね··· 白兎君、お帰りなさい」

 

「···打ち上げじゃなかったの?」

 

 葛城くんとの話し合いというか、アドバイスというか。そういうものをしてすぐに帰ってきた。

 

 なのになんで、この子はいるんだろう?

 

「顔だけ出してきましたよ?後のことは真澄さんと、橋本くんにお任せしてきました」

 

 この子が僕以外の人のことを頼るなんて、少し前までは考えられなかったなぁ···

 

「そ···いったん中入って。スペア渡しといた方がいいかなぁ」

「···!それはいただきたいです···お邪魔しますね」

「んー、スペアキー作っておくよ」

 

 

 アリスちゃんが僕の部屋に来て、僕のベットの上に腰掛ける姿を見て懐かしさを覚えた。

 ···アリスちゃんが僕の部屋に来るのは結構久しぶりだ。今まで忙しかったし仕方ないか、と考えてるときだった。

 

 

「ベットの中央に座ってください」

「···うん」

 

 

 有無を言わさないような鋭い眼光でそう言われたら、従うしかない。

 ──テスト期間ずっと機嫌悪そうだったけど、葛城くんに圧勝したことによって解消された。って思ってけど解消しきってないのかな?

 

 にしても、なんで隣じゃなくて中央?

 

 そう疑問に思いつつ、ベットの中央に胡座をかいて座った。

 

 ···ほんとにこうして2人で座ってるのも久し···ぶ···り──────は?

 

「あ、アリスt「何も言わないでください」」

 

 両肩を押され、抵抗できずに上から覆い被されるように、いっしょに倒れこむ形になってしまった。

 

「···アリs「何も、言わないでください。発言の許可は出していません」····」

 

 

 ──お疲れ様、アリスちゃん。

 

 

 僕の首元にアリスちゃんの顔があり、息遣いすらはっきりと聞こえる位置にある。

 両肩は弱い力で抑えられていて、振り払おうとすれば簡単に振り払えそうだった。

 

 

 ──けど僕はそんなことはしたくない。

 

 

 今までクラスの内紛で神室さんや橋本くんたちと行動してたからクラスの中でもそんなに話すことはなかったし、放課後も僕が図書室に逃げてたから会うことはなかった。

 

 その反動が来たと思った。

 主従関係が嫌だった僕でさえ寂しかったのに、今までペットのような扱いをしてた僕が関わらなくなったら寂しいよね。

 

 ───そう思ったけど、それだけじゃなかったらしい。

 

 

 

「···あっ!···うぅぅ···アリスちゃん強いよ···」

 

 前、首を吸われたときよりも強く、

 なんならちょっと噛まれた···歯形残ってそう···

 

「···ごめんなさい、でも白兎君が悪いんですよ?」

 

 ···目がこんなに濁ってるアリスちゃんは初めてだった。

 

「···僕が?」

 

 僕?···なんかしたかな···?

 

「ええ、私がいないことをいいことに、一之瀬さんと大分親密になられたようで」

「いやほんとに全然そんなことないよ」

 

 えっ、そっち??

 ···寂しかったよりも嫉妬···なのかな?

 ──だとしたら一之瀬さん、貴女を恨みます。

 

「彼女に『弟くん』と呼ばれているのにですか?」

「うん。僕らは姉弟の関係じゃないし、ただの他人だよ。だけど、一之瀬さんがyッ···アリスちゃん?!」

 

 

 僕の「一之瀬さん」という言葉を忌避するように、首を噛んだ。

 ···絶対跡残ったよね···

 

「──今白兎君の口から女性の名前が出ることが嫌です···今は私を、見てください···」

「···うん···長い間待たせてごめんね」

 

 そう言い、ぎゅっと抱きしめた。

 

 

 僕らは多分どこかがおかしい。

 僕らの関係は未だ定まっていないのに、お互いがお互いに少なからず依存してる。

 

 僕もアリスちゃんも本来は1人でやっていける人間だった。

 それなのに、今はこうなってしまった。

 

 

 アリスちゃんは如実にそれが現れてるし、僕もアリスちゃんの嫉妬を見て安らいでしまっている。

 

 

 ···この関係はダメだろう?前のときにもそう思ったはずだ。

 

 

 だけど、壊れそうなアリスちゃんを見て、この関係を辞めることへの気持ちが揺らぐ。

 結局僕は彼女を拒絶することができず、彼女を抱きしめ、頭を撫でている。

 

 だから僕たちの関係はずっとこのままなんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これほど私が弱くなってしまったのはいつからでしょう?

 

 彼を自分の陣営に強引に引き込まなかったとき?

 彼を一緒の学校に連れてきたとき?

 中学3年間で彼と争い続けたとき?

 小学校6年間彼と一緒に過ごしていたとき?

 

 ──いつにしても、彼が、白兎君が原因であることは明白ですね。

 

 

 

 

 かつての私には目的があった。

 それは、ひどく歪んでいた。

 けれども私の願いだった。

 

 ···絶対に、叶えてみせると誓ったはずだ。

 

 幼き日の屈辱を、

 あの日の敗北を。

 

『あのときは代わりに僕をボコボコにしたよね···結構根に持ってるよ』

 

 あの男に返す。

 受けた屈辱以上に惨めで、

 圧倒的な敗北をもってして。

 

『あのときボコされた僕の気持ちはどうしてくれる?』

 

 あの日、壊された私自身を取り戻す。

 そして、私は絶対的な勝利を手にする。

 

 それまでは止まることなんて許されない。私には止まる選択肢なんて存在していない。

 

『何そんなに焦ってるの?···可愛い顔が台無しだよ?』

 

 邪魔するものは全て叩き潰し、手駒を揃える。

 そして圧倒的な頂点に立ち、あの男を見下してみせると。

 

『人を見下してるアリスちゃんより、ちゃんと嬉しそうに笑ってるアリスちゃんが僕は好きだよ?』

 

 

 ···それが、私自身に誓った想いのはずだ。

 

 

 たとえこの身体が不自由だったとしても、私はあの男に勝たなければならない。

 

 無駄な感情は必要ない。

 友人なんて私にはいらない。

 この願いを果たせるのならば、隣に誰もいらない。

 

『友達は必要だよ?···何事も1人でやろうとしたらしんどいし、効率悪くなるしね···あと隣にいてくれる人がいないと頼れないよ?もしも転んだり倒れたりしたらどうするの?』

 

 

 それに、私を救ってくれる英雄や助けてくれる王子など現れない。

 

 

『ま、確かに英雄や王子様なんていないけど、アリスちゃんを導く白兎(しろうさぎ)はいるんじゃない?』

 

 ···だから、私は孤独でいい。

 私を理解してくれる人などいるはずがない。

 

『小学1年生からの付き合いだし、

 アリスちゃんのしたいこととか大体分かるけどね』

 

 幼い頃に読んだおとぎ話は、所詮はおとぎ話。

 私の隣に立つ人なんて現れない。

 

『それは君が隣を見てないだけだよ?······少なくとも僕は、君の隣を歩いてるさ』

 

 だから、そんな人はいらない。

 私はただ恐れられる人でいい。

 

『そんな人生楽しい?』

 

 私は残虐で、冷酷で、攻撃的だと、

 全員騙して演じればいい。

 

『君のそれは生来のものじゃないの?』

 

 あの男に勝利することだけが私の願いなのだから。

 

『それは寂しくない?』

 

 私は坂柳有栖。

 

『アリスちゃん』

 

 ···冷徹で残酷な恐ろしい少女。

 

『人をペット扱いしてくるけど、優しくて可愛い女の子』

 

 ···そんな私に、天から蜘蛛の糸が垂れてくるような救いは来ないだろう。

 

『「不思議の国のアリス」でアリスが白兎に導かれたように、アリスちゃんを導く白兎はいるよ』

 

 ──私は坂柳有栖、

「アリスちゃん」なんてものではない。

 

『頑固だね──ならこうしようよ。「坂柳有栖」としてはそれでいいと思う。

 けど「アリスちゃん」としての君はどうなの?』

 

 何か軋む音がする。

 何かが飛び出してきそうな感覚がする。

 それを私が待ち望んでる気がする。

 

 けれど、それを「有栖」としての私が、

アリス」としての私を止める。

 

『僕はどっちの「ありす」も好きだけど、

 やっぱり「アリスちゃん」の方が好きだよ』

 

 

 バタンッと扉を開ける音がした。

 その言葉で「アリス」という1人の少女が飛び出てしまった。

 

 

 乙女心というのを捨て去った少女の「有栖」ではなく、

 白兎のせいで出来てしまった「アリス」という愛を知っている少女。

 

 その二面性はどこか、心地よかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭を誰かに優しく撫でられている感覚がして、目が覚めた。

 

 どうやらあの後眠っていたらしい。

 

 薄く目を開けると、椅子に座っている白兎君が優しい顔をして撫でていた。

 

 

 ────本当にこの人は────

 

 

 彼はこういう人だ。

 だからこそ私「アリス」が出てきてしまったんだろう。

 

 ···この責任は彼にしっかり取ってもらいましょう。

 

 

 

 目を瞑りながら寝言のように、けれども聞き取れる声で。

 

「···白兎君、()()取ってくださいね」

 

 とそう言った。

 

 ふふっ♪顔が真っ赤になってる白兎君が想像できますね。

 

 

 頭を撫でる手が止まり、恥ずかしがっているような悶絶する声を聞いて、

 私はもう一度眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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