無人島だからいちゃつけないなぁ···と思ってましたが、結構いちゃついてます。
さすが坂柳さんです。
洗濯物をどうするのか、枕はどっちが使うのか、朝起きたらどうするのか、朝ごはんを作るのはどちらなのか···
と様々な問題が出てきたは出てきたが、その度にアリスちゃんが一刀両断していった。
「洗濯物は僕がやるよ」
「お願いしますね。しっかり私の下着も仕舞ってくれますよね?」
「それだけはお願いします···」
「どうしましょうか···ふふっ」
「ほんとにお願いします」
「ほんとにいっしょに寝るの?」
「ええ、どちら側がいいですか?」
「そんなのはないけど···枕もう一個買わない?」
「嫌です。もしかして、白兎君緊張されてますか?いえ、ドキドキしてるんですか?」
「···そんな耳元で囁かないで?···当たり前でしょ?普通にドキドキしてるって···」
「ふふっ···やっぱり可愛いですね」
「···アリスちゃんは全然ドキドキしてないよね···」
「あら、私もしていますよ···確かめてみますか?」
「僕の負けですごめんなさい」
「はい♪」
「何時くらいにいつも起きてるの?」
「6時半くらいですね。白兎君は?」
「僕もそのくらいかな」
「なら、アラームはそのくらいにかけて、朝先に起きた方が起こしましょうか」
「うん」
「朝は無防備ですから、いたずらしてもいいですよ?」
「なっ···もう揶揄わないで···」(普通にちょっと想像しちゃったじゃん···)
「ふふふ···顔真っ赤ですね」
「朝ごはんはどうするー?」
「そうですね、前日に何か買っておきましょうか」
「そうだね、でもまあ卵くらいは焼こうかな」
「私の体への気遣い、ありがとうございますね」
「ちょっとは体重増やしてもらいたいからね」
こういう同棲してる恋人のような会話をしながら、特別試験の日を迎えた。
「うおおおおぉぉぉ!!!最高だあぁぁぁああッ!!!」
常夏の海に一面に広がる青空。そして澄み切った空気。真夏の猛暑を吹き飛ばすほどの解放感。
これぞバカンスと言わんばかりの環境に、池の声が響き渡った。
「凄い眺め!マジめっちゃ感動なんだけど!」
「ねー!」
船内から姿を見せた軽井沢たち女子グループが、浮かれているように大声を出して、大海を指さしていた。
そんな軽井沢たちの声が気にならないほど、特等席とも言えるデッキのベストポジションからの眺めは特別なものだった。
だが、特別な眺めを見ていても、気になる声はあった。
「···さすがに日傘さしても長袖、長ズボンはこの時期キツイね···通気性はいいんだけど、さすがに暑いー、けど、こういう景色を見るのは悪くないね!アリスちゃんも隣にいてくれてるし···!」
「ふふっ♪今日はずいぶんと素直ですね···この解放感にあてられているのでしょうか」
「そうかもね、この体質だからこういう海に来ることなんてなかったからさ!こういう一面の海はいいよね!見てるだけで楽しいっ!アリスちゃんも楽しんでる?」
「ええ、私も楽しんでますよ」
「あれ、アリスちゃんも海好きだっけ?」
「いえ海ではなく、白兎君を見ることが好きです♪テンション上がっている姿なんて久しぶりに見ましたので」
「そっちね···確かにあんまり上がらないけど、こういうバカンス気分を味わいたいってずっと思ってたからさ、テンション上がるよね!」
「そのテンション上がってる姿は貴重ですね···白兎君、海ではなく、こちらを向いてください」
「ん?···もう、僕だけ撮っても意味ないでしょ?···いっしょにさ、撮ろ?──日傘邪魔だなぁ──誰か···あ、おーいっ!清隆くんー!!」
視界の端では、友達の兎月白兎と坂柳有栖が恋人のようなやり取りをしていた。···この場に堀北がいなくて良かった。あんな恋人みたいなやり取りを見せつけられたら、あいつの機嫌が損なわれる。
それにしても──あいつらは本当に恋人ではないのか?
そんなことを思っていたら、白兎が俺はオレを呼んだ。···あー、日傘をさしながら自撮りするのは難しいか。
──あの2人の仲に入るのは気が進まないな。坂柳に殺されてしまいそうだ。
「こんにちは、人生初めての旅行ですのに、そんな暗い顔してて良いんですか?」
「余計なお世話だ。それに何故オレが初めての旅行だと知っている?まあいいか────で、白兎。お前らの写真を撮ればいいのか?」
意外にも坂柳は歓迎してくれた。2人だけの時間を奪うと怒りそうだと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
「うん!お願いしてもいいかな?──あと、それ撮ったらさ、3人でも撮ろっ!清隆くんもいい?」
「ああいいぞ」
なんだこの生物は?···いつも真顔がデフォルトの白兎が、頬を少し赤く染め、元気よくはしゃいでいる···
──なんだこの「守ってあげたい」という気持ちは?
飼っている小動物への気持ちみたいなのが湧き上がる。──白兎の頼みならなんでもやってあげたくなるような、そんな風に思ってしまう。
···こんな白兎は珍しい。あの坂柳がニコニコしながら白兎を見ているし、それほど貴重なんだろうな。
「ありがとっ!──じゃあアリスちゃん撮ろ?」
「しっかりと収めてくださいね?」
「はいはい」
この2人は恋人ではないが、1つの日傘をシェアして、腕を組んでいるほど仲が良い。
本当に恋人ではないのか、と疑ってしまうほどには。
「アリスちゃんいつもありがとね」
「···私の方こそ、いつも隣にいてくれてありがとうございます」
いや、こいつらは恋人だろ。
そんな風に思いながら写真を何枚か撮った。
その中には、坂柳の意地悪で白兎の頬にキスをした写真もある。
──オレが撮ってること忘れてないよな?まあ、白兎の照れている姿を収められたのは良かったが···
その後に3人でも撮り嬉しかったが、どこか疎外感を感じた。
···何というか、2人の仲が良すぎてそういうのを感じるだろうな──あの2人は小学生からの付き合いだからというのもあるだろうから仕方ない。
早い段階であの2人と同じ学校にいたかったと思わずにはいられなかった。
そう少し、いやかなり思ってしまった。
写真撮影が終わり、2人と景色を楽しんでいると、アナウンスが流れた。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まり下さい。
間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に
「
「ああ。間違いなく何かしらの意図があるだろうな」
他の生徒達は気にしている様子もなく、ただただ島がどんなものかが気になっている様だった。
続々と生徒達が集まり出すと、数分後にその島は姿を現した。
「すげえ!俺たち今からあれに行くんだよな!?」
「結構デカいな!」
まだ全貌は見えてはいないが、かなり大きな島だということは分かる。
大勢の生徒たちがそれに気づき、一斉にデッキへと集まり始めた。それまでベストポジションを取っていたオレ達を押しのける横暴な男子生徒たちが現れた。
「おいそこ邪魔だ、どけよ不良品どもッ!」
「きゃっ···白兎君ありがとうございます」
「大丈夫?怪我ない?」
「大丈夫です」
男子の1人が見せしめのように、威圧しながらオレの肩を突き飛ばした。
何とか柵を掴んで転倒を免れたが、隣で立っていた坂柳も巻き込まれる形となってしまっ···たが、白兎の体に抱きつくことで難を逃れたらしい。
···これも計算通りなら怖いな。あと白兎、オレの心配はないのか?
「ならよかった。清隆くんも怪我ないでしょ?」
「オレも大丈夫だ。坂柳、巻き込んでしまってすまないな」
「いいえ、大丈夫ですよ。白兎君がいてくれましたから」
「白兎···?──ってなんでお前らがDクラスの奴らなんかと!?」
オレの様子を見て男子生徒達が蔑むように笑っていたが、オレの後ろにいた2人を見て表情を変えた。
──こいつら恐れられてるな。
「テメェ何しやがる!」
近くにいた須藤が即座に威圧し返し、櫛田も心配している様子でオレたちの傍に寄ってきた。
「お前らもこの学校の仕組みは理解してるだろ。Dクラスに人権なんてものはない。不良品は不良品なんだよ、大人しくしてな。俺らはAクラス様なんだよ」
お前らのいう通り、Dクラスは確かに不良品だ。が、Aクラス様はAクラス様でも立場が違うやつらがいるんじゃないか?
「この場にいるのは、Dクラスの生徒だけではないのですよ?戸塚君」
「──普通にアリスちゃんに怪我を負わせたら、僕キレるからね」
そんなAクラス様の言葉に言い返したのは、先ほど巻き込まれた2人。
感情を顔にも声にも出すことはなく淡々と告げる坂柳と、先ほどまでの興奮とは真逆の怒りの表情を見せる白兎と両極端な対応だった。
「ぐっ···お前ら2人はこいつの背中で見えなかったんだよ···!」
見苦しい言い訳をする男子生徒たちだが、戸塚と呼ばれた生徒以外は何故か顔を青ざめている。
──そこまでこの2人、いや坂柳は怖がられているのだろうか。
「なんでお前らはそんなにビビってんだ?·こいつは今回参加できないし、葛城さんには勝てないだろうが」
「バ、バカやめろって!···悪いな2人とも。俺ら行くところがあるんだった。おい!行くぞ」
他の生徒達に引っ張られていく戸塚。どうやらオレ達の居場所は守られたらしい。
「はぁ···あの方々と同じクラスだというのはかなり恥ずかしいですね、Dクラスの方々、不快な思いをさせてしまい本当に申し訳ございません」
「僕からもごめんなさい···」
「いやお前らが謝る必要はないだろ」
「うん、坂柳さんや兎月くんが謝る必要はないよ?」
同じAクラスとは思えないほどの真摯な対応をされて、須藤は困惑してたし、櫛田も少し戸惑いながらもそう言っていた。
「そう言ってくれてありがと···まあでも、戸塚くんたちの主語が『Aクラス』だったし、謝らないと」
「そうですね、同じ括りにされたくはないのですが···そうされてしまっては責任は私たちにもあります」
「気にするな。──白兎、海見に行こうか」
「そうだね、アリスちゃんも行こ?多分いっしょに入れるのあとちょっとだし」
「ええ──綾小路君、そんな顔しなくても大丈夫ですよ···『2人の時間を邪魔しないでください』なんて思ってませんので」
「本当に思ってないよな?」
「さあどうでしょうか?」
「──白兎すまない···須藤、櫛田、島を見に行こう」
「いいのか?」
「あはは···さすがにあの2人の中に入るのはちょっと···ね···」
そんな会話をしてるときだった。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒たちは30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物を確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は────』
「お別れですね。頑張ってください。
···綾小路君、白兎君に何かあったら容赦しませんからね?」
オレが怖いと思うほどの視線はやめてくれ。須藤も櫛田も怖がってるだろ。
「ああ、オレの手の届くときは絶対守るから安心しろ」
「もう、僕はそんなに弱くないよ?──その気持ちはありがたいけど」
違うクラスではあるが、これほど人を守りたいと思うのは初めてだ。
オレも少しずつ人に近づいているのか?
「ではまた」「清隆くんたち、また後で!」
「ああ、またな」
「ではこれより────本年度最初の特別試験を行いたいと思う」
「──日傘さしてるのに、隣にアリスちゃんがいないの新鮮だ···寂しいなぁ···」
「いや早いって」
誤字報告など待ってます。
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