葛城くん派閥とアリスちゃん派閥が、一枚岩とは言えないけど纏まった。
なんか僕の発言力が上がったらしく、結構意見が通ったのが大きかった。
話し合いの末、今回は葛城くんが引き続き指揮を取ることになって、アリスちゃん派閥もそれに全面的に協力する運びになった。
まあ、丸く収まったかな?
そんなことを考えながら、僕は夜の砂浜を日傘をさしながら歩いていた。
(ようやく外に出れた···僕がこれから1人で夏の砂浜を歩くことなんてないだろうなぁ···思う存分この景色を目に焼き付けよう)
前世では海が好きでよく釣りをしていたのに、今世では体質の関係で海に来ることはまずなかった。
アリスちゃんも暑い時期の海は好きじゃないし、多分これからも来ることはないと思う。
だからこそ、静かなこの夜の海を眺めていたかった。
「え、──あっ!!白兎くん!!お久しぶりっ!!···ここで何してるの??」
──そんな僕の願いを嘲笑うかのように、元気の塊が来てしまった···
僕が言うのもなんだけど、なんで君みたいなリーダー格の人が1人でいるんだ?警戒心とかそういうのはないの??
「···アルビノだからさ、昼間は外出てないんだ。夜の間もこうやって日傘さして歩いてるんだ···一之瀬さんはなんで?」
「そうだったんだね!···Aクラスの人たちに聞いたらね『夜にしか行動しない』って言ってたし、有栖ちゃんも『海が好きですよ』って言ってたからかな···散歩がてら来てみたの!!」
「···あー、多分探索とか物資集めてくれる人たちだね。余計なことを···──それにしても元気だね、もうこんな遅くなのに···っていうか他の人は?」
「にゃはは···白兎くんと全然会えてなかったから、テンション上がっちゃってるのかも?今は私1人だよ〜?」
そういう言葉は僕じゃない男子に言ってあげてね、多分彼ら大喜びするから。
「···これからは絶対、男の子もいれて3人以上で行動した方がいいと思うよ?君は絶対狙われるから」
「狙われる??」
──この子全然分かってなくない?···そもそもこの時間帯に女の子1人は怖いよ?
「うん、もしCクラスの人たちが来たら太刀打ちできるの?」
「暴行とかは禁止だよね?···大丈夫じゃないかな?」
「···ま、確かにそうだね···でも団体行動はなるべくした方がいいとだけ頭に入れといて」
これ以上何か言っても時間の無駄だと思い、忠告に留めといたけど···なんでこんなに嬉しそうなんだろ?
「うんっ!!──これからはそうするね!···弟くんがお姉ちゃんの心配してくれるなんて···こんな日があっていいの?!」
──うん、この子はやっぱり1人でも大丈夫そうだ。余計な心配でしかない。
というか、「兎月」から「白兎」なったと思ったら、「弟」になってるし···
別に下の名前で呼ばれる分にはいいけど、弟はさすがにやめてほしい。他の人の目とかうざいし···
「初手の『白兎くん』について聞こうと思ってたのに、結局その呼び方に戻ったんだね···」
「えへへ···結構考えたんだけど、やっぱり私のなかで白兎くんは弟くんなんだ。有栖ちゃんには負けるけど、私も弟くんのこと甘やかすからね!!」
「甘やかしてほしいだなんて、頼んでない···それにアリスちゃんにも甘やかされては──ない」
「その間が物語ってるよ?」
「────で、一之瀬さんはなんでここにいるの?」
「···お姉ちゃんって言ってくれたら答えるよ?──あっ、それか帆波お姉ちゃんとかでもいいよ?」
「一之瀬さんh「帆波お姉ちゃん」──帆波さんは何しにここへ?」
アリスちゃんや清隆くんほどではなかったけど、一之瀬さんからだとは思えないほどの圧を感じた。
やっぱり女の子って怖いね。
僕が名前で呼んだら、いつもより嬉しそうな雰囲気に戻ったし···
「えへへ···弟くんに名前で呼んでもらえるのほんとに嬉しいっ!」
「ならよかったよ、僕も帆波さんからは名前で呼ばれると嬉しいよ」
「えっ···?──名前の方が嬉しいの?」
そんな驚いた顔をしないで?···そんな意外でしたって顔されても···どう考えても名前の方が良いに決まってるでしょ。
「うん、帆波さんになら名前で呼んでほしいよ」
君相手に「弟くん」と呼ばれるより、「白兎くん」って呼ばれた方が良いに決まってる。僕らは友だちなんだよ?
「そっか···なら、白兎くんって呼ぶね···」
これまで見たことがないほど暗いような、葛藤しているような顔をして、そう言った。
──まるで僕が悪いことをしてるみたいに思ってしまうからやめて?
「────2人きりとか、アリスちゃんといるときとかは弟でいいよ···」
女の子にそんな顔をされて折れない男の子はいないよ···強すぎる···あれで折れないのは龍園くんくらいだと思う。
「ほんと??!!」
そんなに目を輝かせないで?この子はどれだけ「姉」に執着してるんだろ?
「ほんとだよ···帆波さんはなんで僕のこと弟って呼びたいの?」
「なんでって言われると難しいけど、食堂で見せてくれたような照れた笑みがね、刺さっちゃったの···この子は私が守らなくちゃいけない!って」
あれか···橋本くんもアリスちゃんも「やめて」って言ってたけど、こういう人を生み出すんならやめたほうが賢明だね。
──そんなに酷い顔してるのかな?
「···そっか、でも僕はそんなに弱くないから心配しないでね」
「にゃはは···確かにね。でも心配させてくれると嬉しいな」
「ふふっ···帆波さんって面白いね···他人なんだけどね、僕ら」
「他人は他人だけど、友だちでしょ?」
「そうだね、友だちだね。これからもアリスちゃんと僕の友だちとして仲良くしてね」
「うん!!言われなくてもだよ!!最近は有栖ちゃんとチャットで結構お話ししてるんだ〜」
「アリスちゃんと?···そっか、ありがと」
あの子にもちゃんと友だちができたんだと、親のような気持ちになっていたら、帆波さんが笑ってた。
──帆波さんの後ろ、木の影に誰かいる···?あーでも女の子っぽいな···
「なんで弟くんが感謝するの?」
「今はそうじゃなくて名前で呼んでね···で、どちらさん?」
「え?」
僕が指を指しながらそう言うと、帆波さんが指に釣られるように振り返った。
「そこの木の影、誰かいるよね?」
「誰かいるのー?」
「──私ですから、安心してください」
僕の指摘よりも、帆波さんの声に反応して出てきたみたいだった。
「えっ?!ち、千尋ちゃん?こんな夜遅くに女の子1人は危ないよ??」
「そっくりそのまま帆波さんに返すけど、確かに白波さんも警戒心ないね」
「私もそのまま帆波ちゃんや兎月くんに返したいです──」
「なんで僕も??」
「「自分の容姿を考えて」ください!」
──そんな当たり前みたいに言わないで??
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