白兎とアリスちゃん   作:パッチワーカー

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 ほんとに無人島の展開が思いつかなったため大幅カットです。
 坂柳有栖さんがいないと、やる気が起こらないのもあります。


うまくはいかない謀略

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「···煽りすぎじゃない?堀北さん怒って帰っちゃったよ?清隆くんも着いて行ったし···」

 

 龍園くんと堀北さんが言い合いというか、煽り合い?をした結果堀北さんがキレて帰ってしまった。

 それに追従する形で清隆くんも帰った。

 

「ハッ、あの程度でキレるなんざお子様だっただけだろ。もっと良い女になってから出直してこい···で、兎。お前は何の用だ?」

 

 バカにしたような笑いから、人を見定めるような鋭い目に変わった。

 

「何の用?僕は君に呼ばれただけでしょ?用なんてないよ」

 

 よく人のことが分かるね。ちょっと気になることがあるんだ。

 

「じゃあなんでまだここにいるんだ?···お前がここにいるってことは何かあるはずだ」

「君と親交を深めたいって言ったら?」

 

 ちょっとだけその目的もあるんだよね。君のこともキャラとして結構好きだったからさ。

 

「誰が信じんだそんなもん」

 

「まあその目的もちょっとあるけど、本題は違うね···聞きたいことがあるんだ──なんで君はあのまま引き下がったの?」

 

 君だったら第二第三の契約があると思ったけど、やけに早く撤収したから驚いたよ。

 

「ハッ、あの状況であの契約通せるほど楽観的じゃねえからな」

 

 まあ葛城くんは契約する気なかったしね。

 

「いや、君なら妥協案というか断られたとき用の代案がありそうだなって思ってさ、あったでしょ?」

 

「どうだかな」

 

「楽観的じゃない龍園くんならありそうだけど?」

 

「···それを聞いてどうするんだ?」

「どうもしないよ、ただ純粋に興味があるんだ」

 

 君はあのバカみたいな契約で終わるような人じゃないでしょ?それで終わるんなら結構期待外れだよ。

 

「···あったが、あの腰抜けはどんな契約もしないと悟ったからな」

「確かにね」

 

 なんだ、やっぱり君はちゃんと見れてるんだ。よかったよかった。

 

「···その満足そうな顔気に食わねえな。俺を品定めしてたのか?」

「うん、君がアリスちゃんの敵になってくれるのかどうかのね」

 

 君がなってくれなかったら、あの子は本当に退屈になると思う。

 帆波さんが外道な手を使う未来は見えないし、清隆くんがクラス間闘争で本気を出す未来も見えない。

 

 ···南雲生徒副会長とかは人として嫌いだから、あんまり関わりたくないし、堀北学生徒会長は勝負してくれる気がしない。

 

 だから、Cクラスの君に頼るしかないんだ。

 

「···チッ、本気で気に食わねえな、テメェのその女第一の考え···」

 

 鋭く怖い顔から嫌いなものを見るような苦い表情になった。意外と表情豊かなんだね。

 

「そっか、確かに僕と君との考え方は真反対だもんね···僕は君が羨ましいよ」

「あ?何言ってんだ?」

 

 どれだけ強い相手だろうと、どんな手を使っても勝とうとする君が僕にとっては羨ましいよ。

 もう僕はアリスちゃんに勝とうとはしてるけど、全力で勝ちに行こうなんて気にはなれない。

 

 僕はどこか諦めに近いんだと思う、努力はするけど結果にはこだわらないというか意識しないというか···

 

「···テメェが何を言ってんのかは分からねえが、女の下につくような人生楽しいのか?犬みたいな扱いされてんだろ?」

 

 煽れるなら誰でもいいらしい。普通にちょっとムカつ···くか?

 

「下につく人生は楽しくないんじゃないかな?」

「ハッ、少なくともテメェが言えるセリフじゃねえぞ、誰がどう見てもテメェは姫気取りの下だ。人として扱われてるのかすら怪しいな」

 

 結構刺さる煽りはやめてくれない?普通の高校生ならキレてるよ?

 

「···まあ確かに、そうなんだけどさ」

「チッ、やっぱ煽りがいもクソもねえな。自分が下につくことを受け入れてんのかよ」

 

 多分負け癖がついてるんだと思う。

 自分が下でもしょうがないって。

 

「あー、多分そう。よく僕らの、というか僕のこと見てくれてるんだね。ありがと」

「感謝するな気持ち悪い」

 

 ほんとに気分悪そうな顔するね。結構君は無表情というか、煽るときしか顔変わらなそうって思ってたけど、そうでもないんだ。

 

「···どうすればいいと思う?アリスちゃんに勝つには」

 

 1回聞きたかったんだ。

 君は答えてくれないか詐欺をしてくるかの2択だと思うけど。

 

「知るかよ、テメェの人生くらいテメェで考えろ」

 

 なるほど前者なんだ。それにしても「人生」か。面白い捉え方するんだね。

 

「ふふっ···人生ってほどのことじゃ···いや、人生くらい重要なことだね···僕は君と同じようにアリスちゃんに勝たないといけないんだ」

「ハッ、勝ったらなんかあんのか?人に戻れんのか?」

「恋人になるんじゃないかな」

「これで詐欺だったらおもろいな」

「君が詐欺って言うの面白いね」

「運動とかなら勝てんだろ」

「···こんな格好してる人によく言えるね。僕運動苦手だし···それに、そんなので勝っても嬉しくないよ」

「わがままだな···話が終わったんなら帰れ。伝言忘れんなよ」

「うん」

 

『お前らは最後に潰す。精々他のクラスのやつらに潰されるなよ』

 本当に思ってそうだけど、多分宣戦布告というよりかは僕らを、いや僕を油断させるためなんじゃないかなって思う。

『最後』ということは今じゃないから大丈夫と油断させるための罠。

 

 僕が知ってる龍園くんはそれくらい狡猾だ。

 ···まあ僕には最終兵器がいるんだ。返り討ちにさせてもらうよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「···なんで夜遅くに1人で海を見てるんだ?」

 

 一仕事終えてきた清隆くんが大雨のなか傘もささずに、僕がいつもいる砂浜まで来た。

 

「あ、清隆くんおひさ」

 

 堀北さんをリタイアさせるために運んでたとき尾けてたから、正確にはさっきぶりだけどね。

 

「僕夏の海が好きなんだけど、服装的に夜しか来れないんだ。この先僕がこういう夏の海に来ることなさそうだから、毎夜来てるんだよね」

 

「長袖長ズボンはこの時期しんどいよな」

 

 うん、過剰とまでに映るこの服装や日傘も今日で終わりだ。

 

「うん···明日でもう無人島終わりだけど、何か収穫はあった?」

 

「ああ、まあまあだな」

 

 堀北さんとの距離縮められたのかな?···変に他の女の人の好感度上げてないといいなぁ。

 

「そっか、僕もまあまあだね···やっぱり夜しかまともに動けないのは退屈だったよ」

 

「···今日はずっと雨が降ってたが、外には出てなかったのか?」

 

「うん、最近体調優れなくて夕方までずっと寝てたよ。夜になってからは動き出したけど」

 

「そうか···クラスメイトからは何か言われなかったのか?」

 

「んー、みんななんか気を遣ってくれてたから大丈夫だったよー。洞窟の中でも寝ちゃってもみんな起こさないようにしてくれたしね」

 

「テントのなかじゃなくてか?」

 

「うん。洞窟の中で橋本くんや葛城くんと話してたらいつのまにか寝ちゃってた」

 

「···そうか、お前はあまり人前で寝るな···坂柳に怒られるぞ」

 

「そうかな?」

 

「ああ、主にオレが怒られるからやめてくれ」

 

「なら気をつけるよ」

 

「···何も聞かないのか?」

 

「うん、言ったでしょ。そういうのには興味ないんだよね」

 

 そう僕が言うと、清隆くんが一息ついてこう言った。

 

「···堀北を連れて行ったときに跡を尾けていたのにか?」

 

 言ってる内容は物騒なのに、いつもの雰囲気のまま言えるんだ。やっぱり君はすごい。

 僕なら警戒心とか疑惑とか持ってしまう。

 

「うん、君に尾行なんて通じるわけないの分かってるからいっしょに行ってもよかったんだけど、一応ね。

 尾行したら君は用事が終わった後、僕の跡をつけてくると思ってたからそうなってよかったよ」

 

 僕の稚拙な尾行なんて君にはバレバレになるし、君は用事が終わったら、尾行し返すだろうなって思ったよ。

 うまくいってよかった。

 

「そうか···それにしても尾行うまいな、堀北が元気だったとしても気づかないくらい完成度高かったぞ」

 

「そう?ありがと、兎としての野生の生き方が染み付いてるのかもね」

 

 たまに思うんだよね。結構兎の遺伝子引き継いでるなって。

 

「···オレが捕食者みたいな認識じゃないか?」

 

「ふふ···さあどうだろうね?」

 

「で、お前は言わなくていいのか?」

 

「うん、報告する必要性はないね···そもそもAクラスは他クラスのリーダーを当てる気はないし」

 

「そうか、なら気づいていたのはお前だけか」

 

「あー多分そう。堀北さんが体調悪いの隠してたのがヒントだったね。あの子ならリーダーじゃなくても隠すと思うけど、あそこまでしっかり隠してたら分かりやすいよ」

 

「···オレとお前以外に体調崩してるのが分かったのはいなかったがな」

 

「みんな鈍感だね···ん?何その顔?」

 

「いや、なんでもない。で、どうするんだ?」

 

「どうとは?」

 

「···気づいてるだろ?」

 

「まあね···あれは大丈夫だよ、堀北さんのは見れてないから。僕の跡つけてきてたから途中で撒いたよ···けど、僕が毎夜ここに来てることバレてるから今はいるけどね」

 

「──分かってた上でだよな」

 

「うん、そのために君を尾行したんだよ?···じゃあ後は任せるよ。君が負けるなんてことはないからね」

 

「ああ、任せろ···と言いたいが、オレは逃げるぞ?」

 

「え?···あ、そっか」

 

 この作戦、「清隆くんにボコしてもらおう」は清隆くんが全力を出すことが必須だから無理じゃん···

 あー、どうしよ?

 

 

「──こんな雨の中、出歩くなんてバカなんじゃないか?」

 

 そんなことを思ってたら、ぞろぞろとCクラスと思われる軍団が木の影から現れた。その中の男の子がバカにするような感じで言ってきた。

 

「···どちらさま?龍園くんいないの?」

 

 現れた人たちのなかに龍園くんはいないから、ちょっと疑問に思った。

 

「ハッ、龍園さんがテメェらのために来るわけねえだろ!」

 

 言い方龍園くんリスペクトすぎない?まあさすがに来ないか。

 

「そうなんだね···うーん、清隆くんどうするの?」

 

 このままでは、武闘派のCクラスにボコされて終わる。頼れるのは清隆くんだけだけど···

 

「どうもしない。オレはただただ逃げるぞ」

「あ、それいいねっ···じゃ、龍園くんによろしく!」

 

「は?──ちょっ!いってっ!!?」

 

 清隆くんが返事をした瞬間足に力を入れるのを感じたため僕も咄嗟に足に力を込め、日傘を1番近くの男子生徒にぶつけ声高らかに宣言しながら走った。

 僕らが逃げるなんて思っておらず、彼らがあたふたしてるなか、その間を抜け、森に向かって走り出した。

 

 どうやら僕らが早く走れるなんて思ってなかったらしく、簡単に突破できた。

 毎夜砂浜の場に足を慣らしてたからね、こんな感じで脱兎のごとく逃げ出すことはできるよ。

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 雨が降る夜の森の中って意外と走りやすいなあ···

 でも、そろそろ僕の体力は限界だ。

 

 僕がこんなにも必死に何かから逃げるなんて久しぶりだし、こんな走ったことすら中3の夏大会ぶりだ。

 なのにこんな悪天候のなか、ぬかるんだ森の中を走れてるのは兎としての野生の才能があったのかもなあ···

 

「白兎、大丈夫か?」

 

 そんなバカなことを考えていて走っていると、清隆くんが話しかけてきた。

 ──ほんとに君はすごいね。他人を気にかける余裕は僕にはない。

 

「···そんな質問に、答えてるっ···余裕もない···よ···!」

「すまない、お前の体力を見誤っていたみたいだ」

「···責任持って僕のこと抱えてよ」

「···まあ仕方ないな。···背負うぞ」

「うん」

坂柳すまない

 

 僕の少し前を走ってた清隆くんがしゃがんだ。

 じゃあお願いしますと思いながら、背中に乗った。

 その際清隆くんが何かぼそっと言ってたように思ったが、雨の音でかき消されて聞こえなかった。

 

「よし、しっかり首に手を回しておけよ」

「うん、頼むよ」

 

 足音は結構遠くから聞こえてくるから、清隆くんの全力を出したとしてもバレない。

 こうなったときの清隆くんは最強だ。···ほら、こんなにも速い。人が走るときの音じゃないもん。

 

「さっきまで、僕に合わせてめっちゃ手加減してくれてたんだね」

「ああ、お前が運動していたことは堀北との会話で知ってるからな。──雨の日の日傘はフェイクか?」

「うん、これ持ってると病弱だと思われるでしょ?それに運動できること、Cクラスにはバレてないしね」

「···オレも直接的には聞かされてなかったけどな」

「君は大体足音で分かるでしょ?」

「お前はオレをなんだと思ってるんだ?」

「友達だよ?でも分かるでしょ?」

「···まあ分かるが」

「分かってた上での行動だよね?」

「···やっぱりお前もチェスとかできると思うが」

「できないよ···というかこんなに話しながら走っても大丈夫なの?」

「オレにはこんなもの苦でもなんでもない」

「さすが···で、これどこに向かってるの?」

「洞窟だな」

「そうなんだ···清隆くんもいっしょに寝る?」

「···いいのか?」

「今日くらいは清隆くんに隣にいて欲しいの」

「···お前そういうことは女子に言うなよ」

「清隆くんくらいしか言わないよ···だって清隆くんといっしょに寝るなんて、こういう機会じゃないとできないしね」

「まあ確かにな」

「でしょ?···修学旅行らしく恋バナでもしようよ」

「修学旅行ではないが、まあ似たようなものか」

「うん、まあ着いてからここから先は話そ。全力で走ってね」

「ああ···舌噛むなよ」

「口閉じてるね」

 

 清隆くんの安心感のある背中に身を任せ、人が走るときに起こる風とは思えないほど強い風を感じているなか、

 

 清隆くんが雨が降る夜の森を駆ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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