やっぱり坂柳さんがいれば書きやすいですし、やる気が起きます。
えっ、日間ランキング20位??ありがとうございます!!
試験最終日。
時刻はもう正午を回り、1週間前に試験の説明が行われた地点へと全クラスの生徒が戻ってきていた。
『ただいま試験結果の集計をしております。暫くお待ちください。すでに試験は終了しているため、各自飲み物やお手洗を希望する場合は休憩所をご利用ください』
アナウンスに従い、多くの人間が休憩所へと移動を開始する。
その流れに抗うように、Cクラスのある1人の生徒が取り巻き置いて僕に近づいてきた。その表情は過去一渋い顔をしていた。
「よう、兎野郎──テメェ、よくも擬態してやがったな」
「擬態?···君が勝手に勘違いしただけでしょ?それに僕は騙されかけたから騙しただけだよ?」
「チッ、女王気取りのペットだと思い込んでた俺がバカだっただけか」
「そうなるね、まあでもおめでと。君は多分BとDへの攻撃はできたんでしょ?」
「ハッ、俺らはただただバカンスを楽しんでただけだぜ?何の根拠があるんだ?」
「僕のところにしか興味なさそうだったから。A以外は成功したんだろうなぁって思ったよ」
「テメェがそう思いたいんならそう思っとけ。どうせすぐ分かる」
「うん、待ってるね」
まあ、Dクラスへの攻撃も失敗してるんだけどね。
龍園くんの心境がどうなるのか考えていると、
中央に置かれた台の周りに先生が集まり始めた。
「ではこれより、特別試験の順位を発表する」
拡声器から真嶋先生の声が聞こえてきた。
その場にいればいいようで、各自自由に過ごしながらも耳を傾けている。
「最下位はCクラスの0ポイント」
多分Cクラス以外の人からすると妥当な結果だろう。
「0だと?」
龍園くんたちからすると、状況が飲み込めてないんじゃないかな?
「第3位はBクラスの140ポイント」
本当に可哀想だ。
取り仕切ってたであろう帆波さんが呆然としている。
まあ彼女にも、少し前の葛城くんにも言えることだけど、人っていうのはみんな善人じゃないからね。
龍園くんみたいに敵を倒すためになんだってする人もいるし、
アリスちゃんみたいに味方すらも目的のためなら妨害する人もいる。
そして僕みたいに起こる未来が分かっていながらも手を差し伸べない人もいる。
どれもこれもみな等しく悪だ。それを知らないとこれから苦しみ続けるから、がんばって気づいてね。葛城くんは気づいてそうだけど。
Bクラスの困惑を無視しながら、真嶋先生は続けて発表を行う。
その顔にも困惑の色があった。
「第2位は···Aクラスの206ポイント」
真嶋先生は一瞬顔を顰めさせ、そう発表した。
その瞬間、Dクラスの勝ちが確定した
思ったよりAクラスの困惑がなかったが、それでも少し動揺しているようだった。
「第1位はDクラスの255ポイント」
この結果はDクラスの生徒も予想していなかったようで、大きなどよめきが辺りに広まる。
「うおおぉぉお!ざまぁみろ!!俺らの勝ちだ!!!」
赤髪の子、須藤くんが喜びの声を上げると、状況が飲み込めていなかったDクラスの人たちも一斉に声をあげ喜んだ。
「は、え、どういうことなんだよ!!コレ!?お、俺ら勝ったのか!?」
須藤くんの叫び声と共に、Dクラスの生徒たちは一斉に集まりだした。嬉しそうでなりよりだけど、その輪のなかに堀北さんがいないのは少し残念だ。
もっと残念なのは、龍園くんにこれから絡まれ続けるであろう僕の将来だね。
「兎野郎···!」
「あー、それは僕じゃないから、ポイント的に僕らじゃないでしょ?多分Dクラスの人なんじゃないかな?」
「チッ」
まあ君には強く賢しくなってもらわないと困るからがんばって。擬態してる清隆くんを炙り出すくらいはできるようになってね。
あと、あだ名呼んで舌打ちだけして帰らないでね。失礼すぎるよ?
「白兎」
「何?」
「すまない」
龍園くんの次は葛城くんが申し訳なさそうな顔で謝ってきた。どうしたんだろ?
「···どういう謝り?」
「おそらくだが、俺も一之瀬のようになっていただろ?」
「うん」
「その未来が回避できたんだ、お前には感謝しかない」
結構視野広くなったのかな?良い傾向だね。
「よく自分もああなってたって分かるね···」
「Dクラスが他クラスのことを貶めようとしていたことはなかった。ならば、Bクラスを貶めたのはCクラスだろう?」
あーそういう話はボロが出そうだから、アリスちゃんたちとして欲しい。
「多分ね──けど、こういう話はアリスちゃんとしてね。僕は管轄外なんだ」
「そうなのか?」
「うん···先にアリスちゃんのところ行ってきて。僕はちょっと話したい人がいるんだ」
「坂柳のもとへ行きたいが、まずはAクラスの混乱を解くのが先だ。俺はそれが終わってから行く」
「あー確かに、結構戸惑ってる人多いね···じゃあがんばって」
「ああ」
葛城がAクラスの困惑を解きに行った後、葛城くんが離れるのを待ち侘びていたくらい早くに目的の人が来た。
「···本当に龍園を指名しなかったんだな」
「うん、だから言ったでしょ?興味ないって···それよりさ、今日の朝いつのまに帰ったの?」
「見つかると厄介だからな、人が起きる前に帰った」
「そ」
Dクラスが初めて勝ったというのに、いつもと変わらない仏頂面をしている、昨日僕の知らぬ間に帰った清隆くんだ。
…いつもと変わらないと思ったけど、ちょっと不思議そうな顔してるのかな?なんで?
「オレと話すよりも、先に行かなくてはならない場所があるだろ」
「まあね···けど久しぶりにアリスちゃんに会うの、ちょっと恥ずかしいんだよね」
「は?」
「だってさ今までずっといっしょにいたのに、久しぶりの再会とか──って、え?き、清隆くん?」
いきなりしゃがんだかと思えば、一瞬の間に僕は清隆くんに抱えられていた。いつもアリスちゃんにやっていることをやられている。
これ普通に恥ずかしいんだけど···
「舌噛むなよ」
「──はーい···」
抗議しようと思った矢先、喋るなと言われた。
さすがでしかないけど、早く行ってね。みんな自クラスの状況整理に必死だから、見てない人がいない今のうちに急いでね。
────────
寂しいなんて思うようになった私は、
人間として成長しているのでしょうか?
それとも退化しているのでしょうか?
──目指していた支配者としては退化でしょうね。
教室で夏休みに行われる特別試験の簡易的な説明を聞いただけで体が震えるなんて、昔の私が見たら嘲笑うでしょう。
それほどまでに私のなかで「白兎君」という存在が大きくなっていたことが嫌でも実感できました。
「白兎君···」
彼と過ごしてきた時間が走馬灯のように駆け巡ってきます。
その中でもやはり寝食もともにし、おはようからおやすみまでいっしょだった最近のことを考えてしまいます。
共にいれない分、いっしょにいたことが今になって毒のように私を侵食する。
寝るとしても隣にぬくもりもくれる人がいない。
朝起きるとしても隣におはようを言ってくれる人がいない。
朝食を食べるとしても隣で共に料理をしてくれる人がいない。
何をするにしても、私の隣には誰もいない。
そんな孤独に慣れていたはずだ。少し前の自分なら耐えられていた。そう自信を持って言える。
だが、今の自分はどうなのか。
寝ても覚めても本を読んでもご飯を食べても、
考えるのはただ1人のことだけ。
考えないようにしても、絶対考えてしまう。
『兎1匹だけだったら、寂しさで死んでしまう』
そんなデマが私にはデマだと思えませんし、笑えません。
だって今の私は死んでいるのと同義なのですから。
何もやる気が起きない、習慣となっていることは惰性でできるがその他のことは何もできない、したくない。
「はくとくん···」
ですが、そんな生活も今日、あと少しで終わりです。
コンコン、と弱くも聞き慣れたノックの音が聞こえました。
──ようやく孤独から解放される。
杖をつき私の出せる最高速度駆け寄ります。
この1週間なかった笑みが浮かんでくるのも感じながら、扉を開けました。
「アリスちゃん!」「···久しぶりだな坂柳」
「白兎君···!」
本当にお久しぶりです···と、そんな会話をする前に抱きついてしまいました。彼の体、匂いを感じると気が楽になり思考がクリアになりました。クリアになったからって数分程度で解放する訳ではありませんが。
抱きついてから思考が鮮明になると、彼が半袖半ズボンという白兎君にしては珍しい格好してることに気がつきました。
「白兎君?···なぜこのような格好を?」
「あー、昨日夜ちょっと全力で走ってたからさ、着替えたのってアリスちゃん??首元の匂い嗅がないで??」
「···すいません、でも体が勝手に···」
久しぶりに嗅ぐ彼の匂いは、私には麻薬にも勝るであろう甘美的な魅力がありました。より一層離したくなくなりました。
「···まあいいや、アリスちゃんお久しぶり···髪ボサボサだね」
「白兎君がいないのが悪いです」
「ふふっ···確かに···これからはずっと
「はい♪」
おそらくそういった意味で言ってたのではないでしょうが、
それでも私の心は踊りました。幸せでした。
それからの私も白兎君とお話しして満たされていました。
白兎君が私のスマホが鳴っていることに気づいて、
「一回見たら?」と言い、私がそれを見るまでは本当に幸せでした。
──こんな写真が来るまでは。
──────
やっぱりこいつらは恋人なんじゃないだろうか。
この2人の関係を知っていてもなお、そう真剣に思うほど仲が良く、互いが互いに依存している。
坂柳は誰が見ても白兎に依存しているし、一見依存していない白兎も昨日の夜の会話でどれだけ坂柳が好きなのかを再確認した。
これだけ他人のことを思えるのはオレには無い機能だ。
それが少し、いやかなり羨ましい。
そう白兎と坂柳の幸福そうな顔を見て思う。
···オレにもあんな相手がいればなんて思ってしまう。
お互いがお互いのことを考え行動できるような相手が、心から信頼し愛せるような人が。
···そんな人ができたら、オレは人間になれるのだろうか···
そんなことばかり考えていたが、2人の時間を邪魔したら坂柳にキレられると気づき、帰ろうとした。
──白兎が坂柳のスマホの通知を気にかけなかったら帰れた。
「···アリスちゃん、さっきから鳴ってるから出たら?ぎゅーしてても見れるでしょ?」
「···今は白兎君以外考えたくないですが、そうですね」
「うん」
「···え?は?···」
「ん?どうしたのって、これさっきのだね。ここまで清隆くんに連れてきてもらったんだ〜!それ以外にもね、昨日の夜は清隆くんと走ったり、おんぶしてもらったり、寝たりしたよー!」
「···なるほど、楽しそうでなによりです」
「うん!楽しかったよー!」
今思えばこの時点ですぐさま帰ればよかった。
「──綾小路君、いいところにいらっしゃいますね。そこに座ってください」
「は?···あー、じゃあ失礼しま、って正座か?」
「当たり前のことを聞かないでください」
さっきまでの幸福そうな顔はどこかに消え、オレに警告してきたときよりも怖い顔をしていた。
お前その顔白兎にも見せられるのか?抱き合ってるから見えないだろうが。
「白兎···」
白兎頼む。お前しかオレを助けられる存在はいないんだ。
しかし、オレの願いは届くはずがなかった。
「アリスちゃんまた痩せた?」
「おそらく、あまり食べてませんので」
「もうっ!また僕のご飯で健康的になってもらうからね!」
「まかせますね──早く正座してください、綾小路くん」
白兎は坂柳との会話とハグに夢中らしい。オレの声なんて1ミリも届いていない。
そして、坂柳。お前の白兎への表情とオレへの表情が違いすぎて怖いぞ?
はあ──なんでこんなにも憂鬱なんだろうか···
···まあ、この2人が幸せそうな顔が見れてよかった。
そう思えた自分自身に驚いた。
無人島試験、Aクラスが他クラスの指名せずに堅実に過ごしていれば、どの程度のポイントになったんでしょうか?
そのあたりは本当ににわかなので、教えていただけると嬉しいです。