白兎とアリスちゃん   作:パッチワーカー

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 僕はハッピーエンドが好きですし、純愛が好きです。
 白兎君もそうです。


食堂にて、大天使降臨

 

 

 

 

 

 

 あの後、調理器具一式を揃え一度自分の部屋に下ろしてから職員室に向かった。

 そこでBクラスの担任に茶化されたり頭を撫でられそうになったりしながらも聞きたいことが聞けた。

 ──『答えられない』は答えてるよね。

 

 

 

 

 

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 昨日のことを思い出していると、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 ──このクラスの居心地が思ったよりも悪い···まぁ、大体アリスちゃん関係のせいなんだけど。

 だから、食堂に行きたい。···アリスちゃん抜きで。

 そんな甘い希望は通るのだろうか?

 

「白兎〜!学食食べに行かね?」「坂柳さ〜ん!お弁当って言ってたよね?どこかでいっしょにご飯食べない?」

 

 ナイスタイミング。橋本くん、知らない女の人。──僕の自由時間ができた。僕らを誘えるんだ、君らはほんとにすごいよ。

 

「うん、行こう──アリスちゃん、弁当これね。じゃあまた後でね」

 

「······ええ、また昼食後──橋本君、少し」

 

「ん、姫さん。なんだ?───あー分かった」

 

 アリスちゃんに引っ張られ、何か耳打ちされた橋本くん。

 ──監視係かなんかだろうね。

 

 コウモリみたいだと揶揄されていた橋本くんの力を見るとしよう。

 

 橋本くん、誘ってくれたことはほんとに嬉しい。

 だけど、君は僕がどんな外見をしているのか分かっていないのか?

 ──アリスちゃんといっしょにいることで感覚が麻痺ってしまっているのかもしれないが、僕は大分異質だ。

 

 ほんとに浮くことが分かっていない。

 

 そのツケを君と君に誘われた女性陣に払ってもらうからね。

 

「白兎君」

 

 アリスちゃんがいつもより少し真剣な眼差しでこっちを見てきた···なんだろ?

 

「···なにー?」

「少ししゃがんでください」

「?いいけど、なに────もぅ、僕は何度も言うけど君の子犬でも、兎でも、ペットでもないんだよ?」

 

 何されるんだろ?って思ったけど、

 ただ頭撫でられただけだった。

 

 ──頭を撫でられ始めたときは雑みが強く、あんまり気持ち良くなかったけど、

 ある日を境にアリスちゃんはうまくなった。

 

 普通に気持ちいい。──こういった面でも天才なのだろうか?と真剣に思ったほどだ。

 ペット扱いが嫌な僕でも、アリスちゃんに頭を撫でられるのは許してしまう···ほんとに心が弱い。

 

「ええ、分かってますよ──これはマーキングです」

「??マーキング?」

「貴方の主人は誰なのか、これで貴方は分かったでしょう?」

「やっぱ全然分かってないじゃん···じゃ、僕はもう行くよ──橋本くん、そこで笑ってないで早く行くよ」

 

 アリスちゃんのペットではないことをアピールしたのに相手にもされなかった。それに橋本くんたちはそれを見て笑ったり、生暖かい目で見てきた。

 

 ──居心地悪いなぁ。

 少し機嫌が悪くなって食堂へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

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 普段は賑やかなはずの食堂が今日はやけに静かだった。

 いつもグループになり話してるのに、みんな口を閉じ、逆にポカンと開け呆気に取られている。それは1年生に限らず上級生もそうだ。

 

 1人がその人に気づくと、また1人また1人と伝染していくように静かになった。

 全員が静かになるときには、視線は1つに固まっていた。

 

「橋本くん、君の番だよ?──早く頼みなよ」

 

「あ、ああ······くそっ、忘れてた···

 

「ちゃんと考えときなよ···色々と···」

 

 その人の隣にいるチャラそうな男はみんな眼中になかった。

 ただその人に全員が目を奪われた。

 

 身長は160くらいだろうか。髪は少し長めで男子にしては小さく、女子にしては高いそんな身長だった。

 

 注目すべきは、一目で分かるアルビノらしき特徴と本来虹彩すらも薄くなるはずなのに、目だけは赤くなっているところだろう。

 

 アルビノは皮膚、毛髪、眼の色(虹彩の色)が薄く、全身の皮膚が白色調、眼の虹彩の色は青から灰色調を呈する遺伝病だ。

 それなのに、彼?彼女?は真っ赤な瞳をして、目の前の人が頼むのを待っている。

 ただ待っている姿もどこか神秘的で、触れてはいけない美しい絵画のような雰囲気を醸し出している。

 

 ここは、本当に学校の食堂なのか?──ファンタジー漫画の中ではないのか、と誰もが錯覚してしまう見た目をしていた。

 

 それほど、その人が美しく可愛かった。人間よりも異種族だと言ってくれたほうが納得できるほどに。

 ──男であれば女性であることを願うほどに中性的だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ──学校の食堂をこんなに静かにできる才能ってすごいね···ほんとにいらないなぁ。

 

 橋本くんが誘ってくれたはいいものの、食堂に入る前から異物を見るような視線が多くあった。

 それが悪いとは思わない。実際前世の僕が今の僕を見たなら、そういう視線を向ける。いわば確定事項みたいなものとして受け止めるしかない。

 

 食堂に入ると初めは騒がしかったのに、徐々にこちらを向いてくる人が増え、

 今ではほんとに静かになってしまった。

 

 誘ってくれた橋本くんやいっしょに着いてきてくれた女性陣の方たちには申し訳ないけど、これが僕の、僕()の普通なんだ。慣れてくれ。

 

「橋本くん、君の番だよ?──早く頼みなよ」

 

「あ、ああ···くそっ、忘れてた···

 

「ちゃんと考えときなよ···色々と···」

 

 橋本くんも僕を誘うなら覚悟しないと。

 大小の差はあれ、こうなるのは分かりきってるでしょうに。

 

 ま、勉強代ってことで諦めてくれ。

 僕は無表情に見えて結構今は気分が良いんだ。

 アリスちゃんのいない昼飯というのは小学校低学年ぶりくらいな気がするほど、いっしょにいるからね。

 久しぶりの自由だ。

 

 ──さて、何食べよっかな···まぁ、この中ならこれ一択か。

 

「···白兎は何頼むん···だって、は??」

 

 僕の頼んだ定食を見て、橋本くんは「お前まじか」みたいな顔をしていた。そんなに変?

 

「ん?──何か変?」

 

 ただただこれが食べたかっただけなのに、変人みたいな扱いされるのはいただけないね。

 

「──お前、姫さんに金むしり取られたのか?」 

 

 なるほど、そういう思考に至るのか。

 あとでアリスちゃんに告げ口しておこ。──橋本くんが君のことをお金をむしり取る悪女だと思ってると。

 

「アリスちゃんに?──んーん、ただただこれが食べたいだけ、ま、早く行こうよ。後ろ詰まってるから」

 

 

 その後、山菜が山盛り入っている定食を見て目を輝かせる僕とそれを気味悪がる上級生や橋本くんたちの反応を見るのが楽しかった。

 

 

 

「白兎?お前兎だ、白兎(しろうさぎ)だと思ってたけど、本当に兎なのか?」

 

「あー、確かに兎みたく肉や魚よりも野菜が好きだね、

 その中でもにんじんが1番好きなんだよね」

 

「ほんとに兎みたいじゃない?──ねぇ兎月くん。私も頭撫でていーい?」

 

「嫌、ごめんね。アリスちゃん以外に撫でられるのは好きじゃないんだ」

 

「···そうなのね、私もごめんね。無理なお願いしちゃった。

 ──やっぱり坂柳さんだけなんだね──」

 

 そう僕たちが話してるときだった。大天使が舞い降りてきた。

 

「お食事中に失礼します!···君が噂の兎月白兎くん?」

 

 ピンク色の髪の毛、青い瞳、アイドルと言われても納得する可愛さ、僕と同じくらいか少し低いくらいの身長···誰だろ?

 

「はい、僕が兎月白兎ですけど、貴女は?」

 

 櫛田(悪魔)さんか一之瀬(天使)さんかどっちかなのかな?

 それとも、僕が知らない先輩?

 ──橘先輩もあり得そう。

 

「あ、ごめんなさいね!···私は1年Bクラスの一之瀬帆波!よろしくね!」

 

 なるほど、そっちか···僕がBクラスに入れていたらこの娘の庇護下になってたんだね。

 

 ──ありだったなぁ。

 

「一之瀬帆波さんね、よろしくお願いしますね。

 ──で、僕に何か用ですか?」

 

 裏のない聖人、善性の持ち主だとしても誰にでも話しかけるわけではない···ないよね?

 さすがに何か用があって話しかけてきたと思うんだけど、どうかな?

 

「用っていうか、ちょっと気になったことがあってね···」

 

「ん?なに?」

 

「えっとね、噂になってて気になったんだけど、

 その〜兎月くん?兎月ちゃん?どっちなのかなって!」

 

 ···橋本くん笑うな···くっ、やっぱり女の子っぽいか···髪型かな?ちょっと長めだからなのかなぁ……

 今の髪型やめて短髪にしようかな?

 

「······あーそういうことね、──一之瀬さんはどっちだと思う?」

 

 確かにアリスちゃんとの関わりがないと、僕がどっちなのか分かんないよね···男として遺憾だけど。

 

「にゃはは···声で分かるかなって思ったけど分かんないな──でも男の子かな?って思うよ!」

 

 ──よかった。これで女の子って言われたら、男の尊厳をズタボロにされていたと思う。

 

 感謝の印として握手してくんないかな?

 

「うん、そうだよ。これから3年間よろしくね」

 

 右手はテニスで結構荒れてるから左手を差し出した。

 ──ん?僕の手をマジマジと見て、なんか戸惑ってる?

 

「──兎月くん、手ちっさいしキレイだね!!···ほんとに男の子?」

 

「うん、それ以上、性別のこと言ったら怒るからね」

 

 さすがの僕もキレるよ?──でも、こんなに女の子っぽいなら彼女なんて出来ないよね···

 どうしよ?あとで橋本くんに聞こうっと。

 

 ────で、この子はいつ握手してくれるんだろうか?

 

「で、一之瀬さん?握手···してくれないの?」

 

「ッ!ご、ごめんね?ん、兎月くんこれからよろしくね!!」

 

「···そんなにぎゅってしないで···は、恥ずかしい」

 

 アリスちゃん以外に手をぎゅって握られるの初めてなんだ。普通に恥ずかしいよ。

 けど、恥ずかしいからって下向いちゃダメだよね。

 

 ──恥ずかしいけど、こう誰かに握られてるの悪くないね···

 

 そんなことを思いつつ、僕は恥ずかしがりながらも笑った。

 ──うまく笑えたかな?

 

 あ、一之瀬さん顔赤くなってる···?大丈夫かな···ってあー、頭撫でないでもらえるかな。

 そこはアリスちゃんだけなんだ。

 

 ──ん?姉?···いや、そんな人はいないけど···なんで?

 

 ──は?私がお姉ちゃんになってあげる?──お断りします···

 

 お花つけた緑髪の女の子に引っ張られて行っちゃった。

 ···あれ、白波さんかなぁ?

 

 ──ん?みんなどうしたの?橋本くんはスマホ取り出してなんか撮ってたし、女の子たちは顔赤くして固まって動かない??

 

 みんな変だね。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「うん、それ以上、性別のこと言ったら怒るからね」

 

 そう言って白兎は左手を差し出しながら、ムっと一之瀬ちゃんのことを見た。···睨んだに近いが、兎みたいな目で睨まれても全然怖くない。

 

 白兎にそう言われ、一之瀬ちゃんは謝罪した。

 ──この子本当にいい子だな···おっぱいデカいし。

 

「で、一之瀬さん?握手···してくれないの?」

 

 兎みたいな目で睨まれても怖くはないが、その目でそんなことを言われたら誰でも庇護欲が湧く。

 部外者で男の俺だってなんか変な気分になるくらいだ。

 ──目の前で言われてる一之瀬ちゃんは相当だろう。ほら見ろ、ちょっと頬赤くなってるじゃねぇか。

 

 ──マジだなこいつ、姫さんの言う通りだな。そう思い、俺はスマホを取り出して録画を始めた。

 

「ッ!ご、ごめんね?──ん、兎月くんこれからよろしくね!!」

「そんなにぎゅってしないで···は、恥ずかしい」

 

 白兎の方が座ってる分、白兎が上目遣いになってしまったのが決定的だったのか、一之瀬ちゃんは多分デレデレになっていた。口角上がりっぱなしだし、にやけてる。

 

「──女の子を引っ掛けてきたら教えてください」

 そう言われたときは、心配しすぎだなって思った。

 けど、こんな短時間で女の子を、しかもこんなに可愛い子を引っ掛けられるなんてすごすぎ···だ······ろ。

 

 ──────お前その照れたような、はにかむ笑顔辞めた方がいい。下手したら死人が出る。

 いつも姫さんといるとき以外表情が動かない分、インパクトデカすぎるぞ。

 

 ···あれ、無意識か?普通に許可取らず白兎の頭を撫でようと手伸ばs···やっぱ避けられるか。

 

 なんなんだろうな?こいつらの関係は?

 主従関係じゃないのか?──それとももっと別な、複雑な関係なのか?

 

 まぁ、いいか。俺には関係ない。──とりあえず姫さんに送っとこ。

 ···白兎、お前は一回絞られてこい。

 

 

 

 

 

 

 





「ッ!──やはり引っ掛けましたか···」

「ん?坂柳さんどうしたの?」

「いえ、なんでもありません」

(本格的に首輪でも付けましょうか?···それとも首にキスマークでもする方が効果的でしょうか?)
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