「聞け! 次の休みは一年生受け入れ前に日本へ修学旅行に行くじょ!」
「わー!」「わー!」「わー!」
「日本語と日本マナーが出来ない子はお留守番!」
「ええ!」「そんな!」「やるぞ!」
うんうん、皆、喜んでくれているな。
この世界の魔法文化は全く進んでいない、逆に言えば伸び代しかない。
5年で研究者クラスまで行くよう、サポートしたいと思う。
魔法使いはやはり知識層でなくてはね。
そこで横槍が入った。
転入のお願いである。この場合の転入とは、途中から横入りするということである。
「ええ……。カイルしゃま。断れないでちか?」
「あはは、出来れば受け入れて欲しいなって」
「テストするでしゅ! 勉強部屋を開放する代わり、出発の日までに日本語と日本マナーを学ばない子は一回退学で一年生からやりなおちでしゅ! 旅行という美味しいところばかり食べようたってそうは行かないでしゅよ! あと、魔力を持たないのは当然ダメでしゅ!」
「ということです」
なんか王国も帝国も周辺各国も慌ててエリートを突っ込んできた。
そんなに我が船に収容できないってーの。
この船千人が定員だよ?
その上、5年生で大学院制度もつけるんだよ?
どう頑張っても一学年は百人まで!
転入生は上から成績順に一年生が百人になった時点で受け入れ停止でーす。
ええ? 追加のテストが受かったものは2年生に編入させて欲しい?
しょうがないにゃあ。そこも定員は100人だからね!
悲喜交々のテストが終わり、生徒は200人になった。
さー! 成績の悪かった生徒を追い出して、転入生に船核を埋め込み、レッツ日本へ!
方舟を操作し、日本へ転移。
なんと! アニメ会社に入国管理官を呼んでくれる超VIP待遇である!
お金も日本政府が用意してくれて、生徒達にアニメキャラの財布付きでプレゼント。
ツアーコンダクター完備護衛付きで、生徒は事前に好きなコースを選択。
滞在期間は一週間。
素晴らしい待遇である。
観光を一週間するもよし、自分の進みたい分野を一週間体験させてもらうもよし。
帝国の留学生なんかは、体験入隊とかさせてもらう人も多いようだ。
事前に滞在費用として魔法の箒とか船核とか預けていたのだが、絶対予算オーバーだろう。だって200人プラス教師分だよ? 日本のおもてなしの心、しかと受け取った!
アニメコースは5人。
なお、殿下もこのコース。
帝国の兄上を讃えるアニメを作ってプレゼントするそうだ。いいね!
俺もアニメコースを見学しようかな。アニメ会社にはいつもお世話になっているから、生徒が困らせないように見ておかないとね。
「早速草案を作ってきたのだ。もちろん、日本語で書いてきた」
「拝見します」
可憐がそれを受け取って、打ち合わせへと移る。
幸い、他の生徒達も自分でアニメを描くなど言わず、見学だけで大満足だったようだ。
ただ、期間後、生徒は言った。
「せんせー。機材一式買って!」
「孫世代にまだその気だったらなー」
棒人間すら知らない状況から一代でアニメを描こうなど片腹痛い。孫世代で出来たら御の字でしょ……。
小説、漫画、パラパラ漫画、アニメ。ホップステップジャンプである。
なお、王国では小説もさほど流行っていない。活版印刷がまだないのだ。
あと、何もかも未発展なので、国としては娯楽方面より力を入れるべき箇所が山ほどある。イラストの練習をしている場合ではない。
孫子の代に期待しようね……。
生徒達が全員戻り、俺は、日本人達がニコニコ見送る中、生徒達に問いかける。
「どうだったかな? 日本観光は勉強になったかな?」
「「「「なりましたー!」」」」
「卒業後にどうかってスカウトされちゃいましたー!」
「社交辞令に決まってるだろ……。こんだけ発展してるんだぞ、いらんだろ俺ら」
「うむうむ。それは社交辞令ではないと思うから、安心していいよ。魔法はここでは未発展だからね。祖国を発展させるか、すでに発展した国に行くか、どっちも茨の道だけど、先生は頑張って自分の未来を掴み取って欲しい。それに今なら物珍しさもあって、本当に雇ってもらえると思うぞ。卒業後にな。その後見せ物以上の地位に出世出来るかは君たち次第だが」
死にたくないと泣きながらでも、自分の国の言葉すら書けない状態から地球屈指の難しさである日本語を一年でマスターしたこの子達はエリートなのである。その努力を続けられるなら、きっとやっていけるだろう。
「日本の惜しみない援助に感謝するぞ。毎年来るから、来年もよろしくお願いする」
「来年は是非、滞在期間を伸ばして諸外国もご案内させてください。盛大に歓迎いたします」
「おお、ありがたき申し出。持ち帰って検討させていただきます」
「こちら観光案内です」
どさどさっと日本語のパンフレットを渡される。
社交辞令じゃなさそう。
ツアーの日程案まで用意されてる……。
ふむふむ。えっ 各国の文化を学べるイベントを来年から開催してくれるのか。
しかもここから専用便でそれぞれのツアーに出発?
各国のいいとこどりの観光ツアーから就職を目標にしたがっつり体験ツアーまで……。ガチじゃん。ここまでしてくれるなら行かねばなるまい。
というかこのいいとこ取りの観光ツアー、俺が行きたい。
「ありがとうございます、是非とも参加させてください」
そうして、俺達はホクホク顔で帰った。
「来年の企画を今からもらったでち。来年どうしたいか、今から考えておくでち。当然ながら、退学したら日本旅行はなしでち」
「退学あるんですか!?」
「当たり前でちエリート校でち」
まあこれでやる気も出るだろう。
俺は教育計画書を配った。
一年生は日本語、二年生、三年生は魔法基礎。ここまでは土台も土台だ。
四年生は専門課程、五年生では論文を書いてもらう予定である。
そして、選ばれしものだけがその後も研究者として学校に滞在を許すのである。
「すまねぇ、カイル!! ソラくん!! 俺は日本に就職したいです……!!」
教師であり、カイル様の戦友のゴードンがずしゃっと頭を地につける。
「お、俺はお前らに恩を返すと誓った! けど、日本って国を知っちまった……! 俺は日本で暮らしてみたい……!」
「わ、私も……!」
「俺も!」
なんたる事だ。王国側の教師陣が根こそぎ引き抜かれそう。
とはいえ、実を言うと問題なかったりする。
言ってしまえば魔力過多で戦争に投げ出されてた者たちで、資質もバラバラ。
強いという共通点はあるが、教えることへの適性は別。
魔法文明はこれから伸ばそうね! というところだし、ぶっちゃけ基礎知識とかは帝国教師が教えている。
俺は、大事なことだから日本語で言うことにした。日本に就職希望なのに日本語ができないのは問題外だしね。
「んー。この学校事業はソラの名前で日本とやりとりしてるので、このルートで日本に行くなら、ソラの名前と信用を使うということ。ここまでわかるか?」
「お、おう」
「我がお願いしたお客様だからよくして貰えた。就職するなら話は違ってくる。これもわかるか? 勉強だって、日本語に常識に、学ぶことは多いぞ。一生勉強だ」
「お、おう」
「日本に溶け込めるように、最低でも一年の訓練を受けてから日本政府の指示のもと、日本の法律に従いつつ日本の監視下で生活できると誓うか? いくらカイル様の朋友とはいえ、我の名で日本に行って行方知れずになって日本で犯罪者とか言い出したら、我は責任持って汝らを処断せねばならん。これから日本で就職する生徒の未来の為にもな。それと、手数料として最低コイン1000枚は渡してもらう。例えば船核、例えば生活費、例えば日本語の教材、それに受け入れをしてくれる日本政府へのお礼。ゴードンにどれほどコストが掛ってるか予想はつこう?」
「じゃあ!」
「ソラはいいよ。カイル様は?」
「ゴードンが望む未来を得られるなら、これ以上の喜びはないよ。ただ、今は色々勉強できる環境だし、十分に学んでからでも遅くはないと思うけどね」
「か、カイル……! ありがてぇ……! ありがてぇ!」
ということで、王国側の教師はごっそり減った。
日本政府に相談したら食い気味に協力を申し出てくれた。
日本への移住希望者への数回に分けた講習から、教師の派遣の申し出まで。
いろんな国の人が日本語を学ぶことを鑑みて、なんと言語学の教授を派遣してくれるとのこと。これはありがたい。
教師が減ったことを聞きつけた各国貴族や王族も、補充する教師を派遣させると申し出てくれた。生徒として捻じ込めないなら教師枠を狙えばいいと気付いたらしい。
来年度は帝国の弟王子が入学してくるとのこと。
この学校にまず留学し、その後日本に留学したいらしい。
流石に教育レベル違いすぎて無理じゃない? と思ったが、言語学の教授が任せなさい! と言ってくれたので、任せようと思う。
試験では入学希望のエリートで溢れ、肝心の本来のターゲットである魔力過多症の子があぶれてしまったので、カイル様の戦友で貴族のレオンが分校を隣に設立した。
もちろん援助した。カイル様を悲しませてしまった……。
カイル様は弱いものに手を差し伸べないと噂が立ってしまい、申し訳ない限りである。カイル様の理念に反することをしてしまった。フォローしてくれたレオンには感謝しかない。
王国も学習したらしく、こちらの学校には王国もきちんと教師を出していた。
帝国も援助を申し出ていたが、丁重にお断りしたようである。
そうね、自国の教育機関に自国が関与してないって頭おかしいもんね。
わかってくれて何よりである。
本校に教師派遣? 日本語試験に受かってから言ってね。