五条悟に姉がいたら   作:ケンタ〜

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キノコ呪霊VS姉

 ギャーッ ミャーッ ワーッ ハーッ ターッ

 

 ワラワラゾロゾロ、テチテチパチパチ

 

 三日月型の口を大きく釣り上げ、楽しそうに走る、巨大キノコの軍団。

 

 ドドドドドドドドド――――――

 

 道いっぱいに広がった、三十を超えるキノコ軍団の行進によって地面が揺れる。

 

 その向かう先、伏黒恵と五条夏は硬直していた。

 

 経験豊富な雪が、先に意識を取り戻す。

 

「恵! 恵何とかして!!」

 

 演じていた夏のキャラを忘れ、雪は玉犬の口にぶら下がりながら言った。

 

「――『大蛇(オロチ)』!」

 

 恵が片手を蛇の形に結び、影に呪力が注がれる。

 

 影が広がり、そこから胴体の太さだけでも一メートル以上ある、巨大な蛇が飛び出し姿を現した。

 

 それが飛び出した勢いのまま、向かい来るキノコの軍団に突っ込む。

 

 体を曲げ、回避したキノコの軍団にまたつっこみ、大きく体をうねらせぶっ飛ばし、上へ一旦顔を上げたかと思うと、また地面のキノコへと突っ込んでいき、次々に吹き飛ばしていく。

 

「うわすっご……いつの間にこんなの調伏して……」

「行くぞ!」

 

 雪が感嘆に言葉を漏らしていると、恵と夏をくわえた玉犬は急に走り出した。そして大きく跳び、未だうねっている大蛇(オロチ)の体に飛び移る。

 

「行け!」

 

 大蛇(オロチ)が攻撃をやめ、山道に沿って突き進んでいく。

 

 かなりの速度だ。

 体を大きくうねらせ、車ぐらいのスピードで登山道を突っ切っていく。夏の速度計には『時速四十キロ』と出ていた。

 

「ひゅーーーーーっ! きんもちいいーーーーっ!」

 

 風が顔に当たり、髪がばらばらとふかれていく。

 

「ねえ! あてはあるの!?」

 

 風のために大きい声で雪は聞いた。

 

「何が!?」

 

 伏黒が首だけで後ろを向いて聞き返す。

 

「出口のあて!!」

「ない!」

「でしょうね!!」

 

 大蛇は地形をものともせず、いい感じに障害物は避けて森の中を突っ切っていく。道は凸凹も多いはずだが、大蛇の太い体のおかげで揺れは最低限でほとんどない。

 

「現行で最もいい方法はあの呪霊祓うことだけどーーーー!! どうなのーーーー!?」

「知るか!!」

「随分口悪くなったねめぐみーーーー!! とりあえずまっすぐずっと進んでみればーーーー!?」

 

 そうすれば、いつかはこの謎領域のなかから抜け出せるかもしれない。と思って雪は言った。

 

 しかし生得領域の中は今でも目まぐるしく構造が変わっている。正解のルートを通らない限りこの無限の迷路は終わらないだろう。

 

「めぐみ!」

「なんだ!?」

「後ろ!!」

 

 夏の電波レーダーに後ろから迫ってくるものが捉えられた。

 恵みが後ろ向きそれを確認する。

 

 キノコ軍団だった。きのこがその寸胴短足からは想像できないほどの速度でウサイ◯ボルトも真っ青の速度で迫り来ていた。手足を振る速さで残像ができている。

 

「速っ!!」

 

 夏の速度計はそのキノコが時速五十キロ付近で走ってきていることを示していた。

 ドドドドドーーーっと地面が揺れる。

 

「めぐみもっと速くできない!?」

「これ以上は無理だ!!」

 

 キノコは着々と追いついてきていた。気のせいかどんどんと加速していっている気がする。

 三日月型の笑っている口が『俺速いだろ!』みたいな感じで自慢しているように見えた。

 

「ああもうせめて下半身があれば……!」

 

 夏は唸った。

 

「あるぞ!」

「えっ!?」

 

 すると恵が掌印を結び、大蛇に降ろされた影から、腰の高さくらいのカエルがあらわれる。

 

蝦蟇(がま)

「ああ、ガマちゃん。相変わらずかわいい」

 

 その蝦蟇が口をひらく。すると口の中から、デロリ、と夏の下半身が足からでてきた。蝦蟇はすぐに消えた。

 確か、恵の出せる式神の数は同時に二種類までだった筈だ。一瞬でも三体同時に出せるようになるとは、成長したな。と雪は思った。

 

「うわあなんかヤダ」

「贅沢言うな!」

「めぐみ口悪くない……? それにしても、どうやったのこれ?」

「さっき走ってる時にあの特級呪霊がその場から離れたから、蝦蟇に鵺を合体させて不知井底(せいていしらず)を飛ばして回収させた。修理できるって…………昔言ってただろ」

 

 恵が夏のほうを向き、そう言った。

 なんだかはぐらかすような態度だった。

 

「めぐみ〜〜〜」

「……雪……姉さん……だよな」

「んもう、覚えてくれてたの嬉しい〜〜〜〜〜」

 

 つまりさっきまでの態度は雪だと確信を持てず、適当な態度を取っていたのだと、雪は心のなかで納得した。そしてニヤニヤした。

 

「姉さん会いたかったんだよ? でもめぐみが反抗期みたいにってうおっ!」

 

 突然ぐらりと大蛇が揺れる。

 

「なんだ!?」

 

 伏黒恵が後ろへ目をやる。

 既にキノコ軍団の(さきがけ)が、大蛇の尻尾に追いついてた。そして、その尾の先を掴んでいたのだ。

 その後ろに続くキノコたちが前のキノコを掴み、さらに掴み、次々と連結し、踏ん張って大蛇の動きを止めていく。

 

「ギャーッ ミャーッ ワーッ ターッ」

 

 不快なトーンで愉快そうに、後列のキノコたちが、前の尾を掴むキノコたちをあしげにして、大蛇の体によじ登り、体の上を駆けてくる。

 

「振り落とせ!」

 

 恵が玉犬と後退しながら命令を出す。

 

 大蛇が体をうねらせる。

 いくらかのキノコは振り下ろされたが、踏ん張るキノコもいるし、それに後から次々とよじ登ってくる。

 

「きりがない!」

 

 雪が声を上げる。

 

「雪姉ちゃん……姉さん下半身どうなんだ!?」

「今一瞬姉ちゃんってよんだよn

「そんな場合か!!」

「分かったよ直すから! 十秒稼げる!?」

「分からん!」

「玉犬はもう解いてもいいよ!」

「分かった!」

 

 夏の着物のえりを咥えていた玉犬が口を離し、ずるりと影に溶けるように消えていった。

 夏は両手でテケテケ状態で自分の下半身に近づいていった。

 

 時間を稼ぐため、恵は夏の前に出、掌印を結んだ。

 

(ぬえ)

 

 影から顔を石の面で覆ったような怪鳥が顔を出し、迫りくるキノコ軍団にツッコんでいく。

 放電する音とともに、鵺は前の数体のキノコに突っ込みほかを巻き込みながら吹き飛ばした。

 

「成長してるね〜〜〜〜〜」

 

 雪はそれを見ながら、手を動かしていた。

 

 いや、実際にては動かしていない。

 切り分けられた下半身の付け根。強い力で貫かれ、ぐちゃぐちゃになった下半身の断面が、ひとりでに動いて傷口を修復するように再生していた。

 

「まだか!?」

「まだ五秒! 集中させて!!」

 

 実際には、それは手を動かすよりも難しい。

 頭の中で、もとあるはずだった正しい形を思い描き、傷口と照らし合わせる。

 

 その正しい形になるように、傀儡操術を利用して、傷口を部品単位で操るのだ。

 

 そもそもまず正しい構造を部品の一つ一つに至るまで記憶していなければならず、その上で複数箇所、否、断面のすべてを同時に操り、動かさねばならない。

 

 ドンッ、と音がして、雪の意識がそちらに向けられる。

 

「めぐみ!!」

 

 恵が大蛇の下に落とされていた。迫りくるキノコによって落とされたか。

 そして、下にいたキノコが恵の方へ向かう。

 

「雪姉ちゃん!!」

 

 ちゃん付けで読んでくれることを喜ぶ暇もなく、雪の意識は恵が指差す方向に向いていた。

 

 大蛇の上のキノコが、まだ作業中の夏の方へ襲い来ていた。

 

「まだ七秒…………!」

 

 ためだ、間に合わない。断面の修復工事を終える前に、向こうは雪に襲いかかれる。

 

 それどころかあと一秒どころか、もうあと数歩のところだった。

 

「クソッ――――かん

「行け!!」

 

 夏が言うよりも先、恵が叫んでいた。

 鵺が上空から急降下し、夏に襲いかかろうとしていた先頭のキノコを吹き飛ばす。

 そしてまた急旋回し、残りのものをついばみ、落としていく。

 

「サンキュー恵!」

 

 あと二秒。

 

 一秒。

 

 ゼロ――――修復完了!

 

「ぐっ――――」

 

 大蛇の下で、追いついたキノコが恵に攻撃をはじめていた。

 

 強烈な膂力だった。

 腹に一撃を貰った伏黒は血と胃の内容物を吐き、数メートル吹き飛ばされた。

 

 その伏黒にさらにキノコたちが襲いかかる。

 

「クソッ――――」

 

 掌印を結ぶ。しかし既に意識は朦朧とし、痛みで術式の行使が困難になっていた。

 

「ミギャーーーーッ!!」

 

 拳を振り上げるキノコたち。

 

 伏黒は立ち上り、とっさに防御の姿勢で身を呪力でかためた。

 

 大蛇を動かそうとするが、乗っている夏がどうなっているかわからない。それに命令を出そうにも、出したとしても間に合わない。

 

 ドンッ、と強烈な痛みが腕に来る。ミシミシと骨がきしむ音がする。内臓に浮遊感を感じる。

 なんつーキノコだ、と恵は思った。そして来たるべき地面との再会に備えた。

 

 ドンッ、と体に衝撃が走る。

 

 しかしそれに痛みは伴わなかった。

 何かにぶつかった。

 

 しかし体は落ちない。受け止められている。

 

 そしてその受け止めたものから、膨大な呪力が立ち上っていることを感じた。

 

「ごめんね」

 

 優しい声だった。

 顔を上げると、夏の、慈しむような顔がそこにはあった。

 伏黒恵は抱きかかえられていた。

 

「姉ちゃん……姉さん」

「もう、そのままでいいのに」

 

 伏黒恵は抱きかかえられている。その目線はしっかりと高い。

 つまり、夏は地面に立っていた。両の脚で。

 

「ごめんね。テンパって接合作業ミスって時間かかっちゃった」

「いや…………別に…………」

 

 恵は呆けたようにそう言った。

 

 キノコたちは、ぴたりと、一人も足を動かさなかった。

 特級呪霊と会合して動けなくなった伏黒のように、その意識は五条夏に向けられていた。

 

 夏が前を向き、その慈しむような表情から、すべてが抜け落ちる。

 

「さあ……全員覚悟しろよ」

 

 かわりに、その表情を代弁するように、体中から怒りの呪い(呪力)が立ち上っていた。

 

「全員玉犬のキノコ鍋にしてやる」

 

 五条雪は、本気を出した。

 火山のように吹き出る呪力が、その場においてすべてを支配していた。

 

 

 

 




今回もor今回最後まで読んでくれてありがとうございます!

十種影法術って一度に出せるの二体ぐらいまででしたっけ……?
誰か詳細教えてください。

五条姉やこの話に何を求めますか? 参考までに

  • 姉っぽい感じ
  • 戦闘
  • エッ
  • 日常のほんわか
  • 人心無?(シリアス的な)
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