「はい、紗希ちゃん。タオル」
「え?あ、ありがとう……」
「真帆ちゃんもタオルどうぞ」
「サンキュー、ゆきのん」
男女対抗戦が終わり次の日。
女バスは体育館で普通に練習していた。
「雪、いつの間にか馴染んでるわね………」
「うん、そうだね。前の学校でもマネージャーしてたのかな?」
「はい、ひなちゃん。お水」
「おー。ゆき、ありがとう」
「いやー、ゆきのんがマネージャーしてくれると準備とかしなくていいから楽チンだよなー」
「でも後片付けはみんなでやるんだからね、いくらなんでも雪の負担が大きいわ」
「ううん。大丈夫だよ、紗希ちゃん」
「そうだよ?用具出して飲み物とタオル用意してくれてるだけで十分だよ」
「そうね、小学生の部活にマネージャーってだけで十分贅沢よ」
「でもゆき、なんでマネージャーさん?」
ひなたの質問で雪は少し暗い表情になる。
「みんなと一緒にいたいから……」
「え?」
「みんなと一緒にバスケをやって楽しかったから、でも女バスでプレーはできない。そしたら昴さんがマネージャーならできるだろって……」
「なるほどね、でも今長谷川さんのことは言っちゃだめよ?トモが泣いちゃうから」
「泣きません! 」
「そうだぞ、もっかんは今毎日すばるんちに言ってるからさびしいはずがない! 」
「おー、ともか、ずるーい。ひなもおにいちゃんちに遊びに行きたーい」
智花の真っ赤な顔が収まると休憩の終わりを雪が宣言した。
「でも助かったわ雪、長谷川さんに練習メニュー聞いておいてくれて」
「うん、わたしたちだけじゃあ練習にならなかったし」
「え?ボクは聞いてないよ?」
「え?」
「は?」
「ボクがマネージャーやるって言ったら昴さん、この紙を渡してくれたんだよ?」
「ははーん、すばるん。なんだかんだ言ってもあたしたちのこと気にかけてくれてるんだねー」
「でね?このメニュー、二週間分渡されたんだけど」
そういって雪は六枚のメモを見せる。
「これってつまり……」
「もっかんがそれまでに50本ゴール決められるって信じてるよね?」
「もうトモのことなんでも知ってるって感じね?長谷川さん」
四人は智花のほうを見る。
「な、何?」
「「「「なんでもないわ?」ないよ?」」」
「じゃあみんな、先に着替えてきて?ボクはボール、片付けるから」
「ゆきのん、おっさきー」
「ごめんね?雪」
女子五人は更衣室のほうに向かい、雪は倉庫にボールを運んで行く。
「ところで愛莉、今日ずっと雪の事見てたけど………。どうしたの?」
「えっ、そ、そんなことないよ」
「どちらかって言うと見つめてた、かしら?」
「アイリーン、ゆきのんの事好きになっちゃった?」
「~~~~~~~~! 」
「あいり、お顔まっかっか」
「みんな、更衣室に行かないで何してるの?」
「ゆ、ゆきくん! 」
「あれ?雪、もう片付け終わったの?」
「うん、後はこれを洗うだけ」
そういって雪は両手で持っていた籠をみんなに見せる。
中にはプラスチックボトルが六つ入っていた。
「じゃあみんな、後でね?」
「うん、バス停で待ってるね?」
雪は水道のほうに向かう。
「あら~、愛莉。顔まだ真っ赤よ~」
「あ、えと」
「やっぱり愛莉、雪の事……」
「ち、ちがうよ。わたしと雪くんは――――」
「そういえばいつの間にか『雪くん』って呼んでるよね?」
「アイリーン、昨日まで『雪ちゃん』だったよね?」
「雪の事、男の子として意識してる証拠ね」
「~~~~~」
「あいり、トマトみたい」
「ま、私にはわかんないけどね?、雪ってどうしても女の子にしか感じないし」
「ってゆーか、ゆきのんは女の子だろ」
「うん、私も雪は女の子だと思う……」
「おー?ゆきはゆきだよ?」
「へくちゅっ」
水道でボトルを洗う雪のくしゃみはとてもかわいらしい音だった。