「―――なんだよ、あんなの。勝てる訳……ねぇ………」
放課後、夏陽くんに連れられて職員室に来ていた。
今日は男子バスケ部の練習がないから顧問の先生は職員室にいるらしく、入部届を出しに行くことになった。
昼休みのテストは男子バスケ部のメンバーとの一対一だった。
結果は昨日と同じようにゴールにボールを叩きつけてボクの勝利で終わった。
だが制服で勝負してしまったので制服のシャツが汗でびしょびしょになってしまった。
なので今のボクの格好は体操服姿だ。
「ところで雪、お前なんで下スパッツなんだ?」
「え?体操服買いに行ったらこれ渡されたんだけど、違うの?」
「まあ、あってるちゃあってるんだけどさ」
確か慧心の体操服の下は自由だったはず。
「でも上は普通青のはず………」
体操服の上は赤いラインの入った普通の運動着。
店員さんに渡されたものだから大丈夫なはずだけど。
「竹中。どうした?」
「失礼します、小笠原先生。あの、入部希望者を連れてきました」
「そうか、でその子は誰だ?」
「えっと、今日転校してきた石狩雪です。よろしくお願いします」
「ああよろしく、ところで竹中。入部希望者はどこにいる」
そういって小笠原先生は周りを見回す。
「あの、小笠原先生。入部希望者はこの雪なんですけど………」
「は?」
あれ、先生がなんか呆れてる。
「はー、あのなー竹中。いくら不真面目だって女バスは女バス。別れている限り女子は男バスには入れないんだ。女バスがなくなってもうちは女子は入れたれない。その子がいくらやる気でもな」
「ひくっ」
小笠原先生が睨んできた。
「ち、違うんです。ボクは男なんです。だから」
「そんな言い訳が通るわけがないだろう?いいか、ただでさえ私は今女バスとの問題で手いっぱいなんだ。来週から週に六日も練習になるからその練習メニューも計算しなければならん。忙しいからお前らもう帰れ」
「………失礼しますっ」
「あっ、おい、雪っ」
「そうだ竹中、明日の練習なんだが………」
ボクは職員室を飛び出した。
「もうバスケなんか知らないっ。――――追ってきてくれない夏陽君も知らないっ。」
職員室から飛び出したボクは何処かわからない草むらにいた。
校内なのはわかるけどここが学校のどこかが分からない。
「どうしよう、ここどこぉ?」
すでに周りは暗くなっている。
もう六時くらいかな?
「あ、ゆきちゃん。どうしたの?」
振り向くとそこには愛莉ちゃんがいた
「……あいりちゃん」
「ゆきちゃん、泣いてるの?」
「あいりちゃんも、どうしたの?」
「練習、上手くいかなかったの。でも大丈夫」
「あいりちゃん……」
「ゆきちゃんはどうしたの?」
女の子みたいだから男バスには入れないから帰れって
ううん、そんなこと言ってもしょうがないよね。
「ボクは………、ううん、ボクも大丈夫。ありがとう、あいりちゃん」
そういってボクは笑顔を作る。
「アイリーン、おいてっちゃうぞー」
「愛莉ー。早くー」
「おー。あいりー、はやくー」
「愛莉、みんな待ってるわよ?」
真帆ちゃんたちの声が聞こえてきた。
「うん、ごめんね。今いくよ?ごめんねゆきちゃん。また明日」
「うん、じゃあね」
あいりちゃんはうなずいた後にみんなのところに走っていった。
あ、道を聞くべきだったのに………。
淡い色をした壁紙に囲まれた部屋。きちんと整頓された机や蓋がついている変なベッドにはぬいぐるみが置いてあるのを見る限り、この部屋の持ち主は女の子だろう。
電気をつけずにベットの上で丸くなるちょっと大きい女の子、香椎愛莉はブルブル震える携帯電話を見つめながら暗い表情でつぶやいていた。
「ごめんね」
画面には大切な友達の着信が表示されていたが出ることができなかった。
みんなががんばっているのに。
もう何もできない自分が嫌なのに。
がんばりたいのにがんばれない。そんな罪悪感から誰とも話ができる状態ではなかった。
寝間着姿で暗い部屋でベットの上で丸くなっていたらまず眠くなる。
愛莉は寝ぬけ眼をこすりながらある少年のことを思い浮かべていた。
体育館裏の誰も来ない木の陰で、こっそり泣いていた女の子みたいな転校生。
自分とどこか同じ雰囲気があるその子に愛莉は親近感を覚えていた。
明日あったらお話ししよう。もしかしたら何かできるかもしれない。
そう決意し、愛莉はベットの蓋を閉じる。
誰かのために頑張れる人は、頑張ることに対して理由はいらないのだ。
男の娘物ってどれだけ主人公を可愛くするかが課題であってストーリー展開とか基本二の次だと思っている。(言い訳)