「え?今日は雪、休みなんですか?」
「ああ、あの子のおばあちゃんから電話があって今日は学校お休みしますって連絡があったんだ」
翌日の火曜日。雪は学校を休んでいて、紗希は美星の話を聞いて驚いていた。
「ねえみーたん。なんでゆきのん休みなの?」
「もしかして病気?」
「おー、ゆき、びょうきなの?」
女バスメンバーは雪の事が心配なようだ。
だが愛莉一人は何か考え事をしている。
「いや、病気ではないらしいんだ。部屋にこもって泣いているみたいなんだけど………」
「え?」
「昨日何かあったのかしら」
「たしか昨日ってゆきのん、ナツヒと一緒に男バスに行ったんだよね?」
「うん、竹中君が先生に紹介しに行くって言ってたよ」
四人は教室を見渡し夏陽を探す。
すぐに男子五人の中に見つけた。
「おい、ナツヒ。昨日ゆきのんになにした」
「は、なんだよいきなり」
「ねえ竹中君、今日雪さんが休んでるの」
「しかも部屋で泣いてるらしいのよ、だから何かあったんじゃないの?」
「あー、それは………」
竹中は昨日の小笠原先生とのやり取りを話した。
「それでおまえ、飛び出したゆきのんほっておいてカマキリと部活の事話し合ってたのか」
「え、ああ。そうだけど」
「泣いてる女の子そっちのけで部活の話ってあんた………」
「竹中君、それはひどいよ」
「おー、たけなか、さいてー」
「ひっ」
ひなたの一言で竹中の顔色は一気に悪くなり、
「おい、タケ。お前何してんだよ! 」
「はやまるな、竹中! 」
「おい、美星。大変だ。タケが窓を開けて飛び降りそうだ! 」
「ちょっ、夏陽。やめなさい。いくらヒナに嫌われたからって」
教室の窓を開け、窓枠に足をかけ始めた。
「うるせー、もう俺の人生終わりなんだ。ここで潔く終わらせてくれ」
「ヒ、ヒナ?ナツヒはどどどど、どうすればいいとおもう?」
「おー、ゆきにあやまりにいけばいーとおもう」
「篁先生、雪の家を教えてくださいませんか。あと今日俺早退させてい頂きます」
「竹中君、すごく礼儀正しくなってる」
「にゃふふ。残念だが竹中、そいつは無理だ。あいつはちょっと家庭の事情があるからな。それに早退も無理」
「そ、そんな」
「今日はあたしが行ってくる。お前は明日にでも学校で謝れ」
「はい……」
竹中は意気消沈し下を向きながらとぼとぼと自分の席に戻った。
「っぐす、ひっく」
暗い洋室の中で雪は泣いていた。
薄ピンク色の絨毯が敷かれた部屋の隅、ベットと壁の隙間にすっぽりと収まっている。
コンコン
部屋をノックする音がした。
「雪、学校の先生が見えたわよ?」
「おーい、雪。邪魔するぞー」
バタンッ
勢いよく扉が開く。
「にゃふふ、よう雪。転校二日目で休むとはいい度胸だな」
「篁先生………」
「ざっとだが何があったか竹中に聞いた。カマ……、小笠原先生に何か言われたんだろ?」
「はい……。
前の学校もそうだったんです。男の子の中に入っていけない、女の子の中にも入っていけない。いつの間にか自分の場所がなくなって、塞ぎ込んでいたらいつのまにか………」
雪は座ったまま話を続ける。
美星はずっと立って聞いている。
教育者である以上、雪の次の言葉は聞くまでもなくわかっている。
「もうボク、一生こうなんでしょうか。せっかく夏陽君がバスケットボール部に誘ってくれたのに」
ぽふっ
雪の頭の上に美星の手が置かれた。
「雪、いいものを見せてやろう」
美星は雪にポケットから出した写真を見せた。
「女の子?だれですか?」
一人は髪が短く涙目の小学生くらいの女の子
「そいつはな?あたしの甥の昴だ」
「へー、甥っ子さん・・・・・・、あれ?」
「ああ、それは昴の女装姿だ」
「え?」
「で、これが現在の写真」
美星は雪にもう一枚の写真を見せた。
「カッコイイ人ですね」
「まあ、カッコイイかは別として普通の男だろ?」
「はい」
「心配することはないんだよ。成長は誰にでも個人差はあるし見た目だってそれぞれ違うのが当たり前だ。むしろお前はきれいな顔してるんだから気にするだけもったいないぞ?」
「篁先生……」
「元気出たんならあたしは帰るぞ?明日、待ってるからな」
「あ、、あの篁先生。この写真……」
「ん?ああ、忘れてた。持ってていいぞ?」
「へ?あ、はい」
「それとな雪」
「はい、なんでしょう?」
「お前、女バスに入らないか?」
「え?」
「いや、お前真帆たちと仲良いだろ?ならどうかなって思っただけだ」
「いえ、さすがに女子の部には………」
「あたしが許可すれば全然おっけーだろうし」
「いや、でも………」
「まあ少し考えといてくれ。今は少しでも強い奴の助っ人が必要かもしれないからな。それと、お婆さんにお礼言っといて?ケーキごちそう様。おいしかったって」
そう言って美星は雪の部屋から出ていく。
「女バス、かぁ………」
真帆ちゃんたちと一緒にできるならそれでもいいかも。
そう思いながら雪はベットの上でお気に入りの羊のぬいぐるみを抱きしめた。
次の日は学校に行ってきちんとお話ししないと心配されちゃうかもしれない。
そう考えて雪は早めに寝ようと決めた。