「え?ダンクシュート以外じゃあ点が入らない?」
「はい、ボク、コントロールが悪いんです。だからあパスもまともに飛びません」
男バス最後のタイムアウト中、雪の言葉を聞いてまた悩みを深める。
「どれくらい酷いんだ?そのノーコン」
雪が質問に答える前にミホ姉が口を挟んできた。
「雪は病気で視力が弱くて距離感がつかめないらしいな」
こればれたら大変だぞ?
「雪、とりあえず君はパスができないことをばれないように、ボールを持ったらすぐにシュート。それとできるだけみんなを休めたい。できるだけ動いてくれ、君が一番動けるだろうから」
「はい」
「みんな、返事はいいから聞いてくれ」
他の女バスメンバーは全員今朝買ってきた酸素スプレーを使用中。できるだけ休ませたいので返事は首だけでいいのだろう。
「ボールを奪ったら直接雪に渡さないでくれ、まだみんなが攻められると警戒させられるから」
「は、はい………」
「真帆、紗希。君たちはいつもの位置でフリーになったら迷わずシュートしていいから。それ以外は雪にパス。わかった?」
二人ともつかれた顔でゆっくりと頷いた。
「ひなたちゃん、もうすぐ前に言っていた指示を出すから頑張ってね?」
「おー………、だいじょーぶ……」
「み、みんな。頑張って」
愛莉はみんなを励ましている。
辛いだろうな、みんなが戦っているのに自分だけベンチで応援なんて。
「雪ちゃん、ごめんね?わたしのせいで……」
「ボクが勝手に飛び出してきただけだよ。愛莉ちゃんのせいじゃない」
「でも………」
ピーーー
タイムアウト終了のようだ。みんな酸素缶をベンチにおいていく。
みんながコートに戻る中、雪は途中で立ち止まった。
「大丈夫……。でね?愛莉ちゃん、今君がするべきことは謝ることじゃなくって………」
雪はまた歩き出した。
「――――応援。だよっ」
まったく、なんて熱いセリフを言うんだこの小学生、最高だぜ。
雪の言う通り、ここは守らなければならない。
それが智花への……。いや、女バスのみんなへの恩返しなんだ。
愛莉もなにか思ったのかつぶやいていた。
「――――うん、頑張って! 雪くん……」
タイムアウトが終わった後、男バスがまたゴールを決める。
女子21-24男子
そしてその後の男バスの作戦は……。
「おい、男バスのやつら。まさか……」
「ったく、確かにこれが正解だよ。畜生め」
男バスの誰もが雪にマークを付けていない。
いや見てすらいない。
智花に二人、真帆紗希ひなたちゃんにそれぞれ一人がマンツーマンでついている。
そう。雪にパスを渡さない作戦だ。
「どのみち雪にボールが渡れば止められない。だったらボールを渡さなければいいよな?」
智花についている竹中が雪と智花を睨む。
「湊、負けないからな」
男バスの動きは変わらない。
なのに女バスのメンバーは雪以外疲弊していてどんどん鈍くなる。
「やっぱり、体力の差が出ちゃうんだな……」
「それだけじゃない」
「どういうことだ?」
「愛莉が怪我したとき、みんな心配で息なんてつけなかった。でもあっちは竹中と五番の子以外は普通に休んでた。監督の指示で」
「それであいつあんなに挑発してやがったのか」
そこまでして勝ちたいかよ、この試合。
相手選手の怪我まで利用しやがって。
もうここまで来たらやるしかない。そう思った昴はコートを見た。
ちょうど竹中がその五番からのパスを受けた。
「………竹中、悪いな。よし! ひなたちゃん! 竹中にマッチアップだ! 」
「おー」
「んなっ」
竹中は一瞬止まるも監督の激でひなたを抜き去る。
しかしそこでひなたはぶつかっていないのにこけた。
ピーッ
「チャージング! 」
「おい、たけっ。何してんだよ」
「いや、俺は何も………」
ボール権が女バスに移るとすぐさま雪にパス。
すぐに雪はにダンクを決める。
女子23-24男子
第四クォーターは完全にシーソーゲームとなっていた。
竹中が得点すれば智花が点を決める。
雪が決めれば相手のフォワードが決める。
得点は29-30
残り時間十秒で智花はボールを持ったままトリプルチームで囲まれていた。
「俺たちの勝ちだ、湊」
竹中が息を切らせながらも笑う。
「私が……、負けるなんて………。――――些細なことっ! だって今はみんなと一緒だもん」
智花は息を整え飛ぶ。
そこからジャンプシュートが放たれ。
しかしそのシュートはゴールに届くもっと手前で右に反れて落ちてしまう。
昴も美星も駄目だったか、と目を瞑る。
男バスの選手は笑みがこぼれ、小笠原はフッと笑った。
……が、
「任せて! もっかん! 」
ゴール右側三メートル地点真帆がボールを取りシュートする。
「行きなさい、真帆」
「真帆ちゃんいけー! 」
放たれたボールはブザーと同時にボードに当たり、――――リングに吸い込まれた。