転生したら子供が出来た件   作:座右の銘

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リムルの子供!?

 

「ここはどこ? キミたちは……だれ?」

 

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 町の会議室に澄んだ声が響く。

 声の主は一人の魔人。

 部屋の中央、テーブルを片付けて出来上がった空間にぽつんと立ち、周囲の者を観察するように見回していた。

 怯えるでも、取り乱すでもなく、ただ不思議そうに。

 

 問いに答える者は居ない。

 その場にいる誰もが固唾を呑んでその魔人を見つめるだけだ。

 

 ベニマルを始めとした鬼人。

 リグルドを始めとしたホブゴブリンのまとめ役。

 警備隊からリグルとゴブタ。

 ハイオークのゲルドにドラゴニュートのガビル。

 ドワーフのカイジン。

 そしてスライムのリムル。

 誰一人言葉を返せない。

 

「ねぇ、何か知らないの? 俺は誰? どうしてここに居るの?」

 

 魔人は重ねて問う。

 その強大な妖気を一切隠すことなく、無邪気に周囲の魔物を威圧しながら。

 無意識なのだろう。表情からも立ち姿からも敵意は感じられない。

 

 やがて望む答えは得られないと悟った魔人は、体ごとある魔物に向き直る。

 そのまま素足でぺたぺたと歩いて目の前にやってくると、椅子の上に鎮座するその魔物を覗き込んだ。

 指でつんつんとつついて、一言。

 

「あれ? 寝てるのかな?」

 

 ほんの少し、落胆の色が浮かんだように見えた。

 折った体をすっくと伸ばし、腰に顎に手を当ててうーんと唸る。

 分かりやすく困っている。

 

「この人なら何か知ってると思ったのに……。ねぇ、俺のママ……いや、パパ?」

 

 小首をかしげながらそう呟く魔人は、魔素を失い崩れ落ちる一匹のスライム……リムルを真っ直ぐに見据えていたのだった。

 

 ☆

 

「リムル様、おはようございます!」

「いい天気ですね」

「リムル様ー!」

 

 清々しいジュラの森の朝。

 リムルは嬉々として声を掛けてくる住民たちに手を振って応える。

 着々と工事が進む町を散歩……ではなく視察をしているのだ。真面目な事である。

 次々と新しい建物が出来上がり、足を運ぶたびに町は姿を変える。その様子を眺めるのがリムルの最近の日課となっていた。

 

 オークロードを討伐し、森に平和が戻ってから数か月。ジュラの森大同盟が結成され、暴徒と化していたオークたちも各地に散り、その先々で労働力を提供している。

 ここはその大同盟の本拠地、盟主リムル=テンペストが治める魔物の町だ。

 

 ほんの数か月前、森を切り開くところから始まった町づくり。

 今では全ての魔物に住宅が行き届き、それなりに安定した暮らしを維持できている。

 

 とは言え新しい町であるため、やはり問題は山積みだ。

 『君臨すれども統治せず』を目標とするリムルであったが流石に任せきりという訳にもいかず、連日のように幹部を集めて会議を開いている。

 そして今日もまた、住みよい町を目指して知恵を絞るのだ。

 

(大賢者。今日の議題は何だっけ)

《解。本日の会議では、結婚制度と第一次都市計画完了の祝いについて話し合いが行われる予定です》

(ああそうか、いよいよ明日は祭りの本番なのか)

《個体名:リグルドが明日の祭りについて報告があると》

(そういやそんなこと言ってたっけ。何でも良いけど、中止だけは勘弁して欲しいもんだな)

 

 自分で聞いておきながら会議の議題には興味が無いリムル。

 明日のお祭りの事で頭がいっぱいなのだった。

 

 

 

 予定通り、会議は始まった。

 

「じゃあリグルド、頼む」

「は、では本日の議題ですが──」

 

 ………………

 …………

 ……

 

「──リムル様、何かお考えはあるでしょうか」

「え?」

 

 突然意見を求められ、固まるリムル。

 ぼけーっと配下を眺めていたので話など全く聞いていなかった。

 

(やべっ聞いてなかった! 大賢者、今何て?)

《解。個体名リグルドは、この町の結婚制度において一夫多妻を認めるかどうかを尋ねています》

(わかった!)

 

 そして何食わぬ顔で答える。

 全く面の皮の厚いスライムである。

 

「あー、リグルド君。一夫多妻はやめた方が良いと思うな」

「何故でしょう?」

「何故って、ベニマルとかソウエイとかモテるだろ? 一夫多妻を許したらこの町の女性が根こそぎ持っていかれるんじゃないか?」

 

 弱肉強食が魔物の基本理念だ。

 とすると、この町で最も強い男、つまりはベニマルやソウエイといった鬼人に人気が集中するに決まっている。

 ホブゴブリンやハイオークの中にも強力な個体は居るだろうが、鬼人と比べてしまっては勝てるはずもなく、女性は皆鬼人に娶られることになる。

 そう、リムルは考えたのだ。

 

「いやいや、あり得ませんて。そんなことしたら魔素がごっそり持ってかれて力を失うだけですよ」

 

 ベニマルは心底呆れたように答えた。

 

「魔素が持っていかれる? どういうことだ?」

「もしかしてリムル様、知らないんですか?」

「だから何をだ?」

「魔物の……生殖についてです」

 

 ベニマルは呆れた顔を引き締め背筋を伸ばすと、真面目な雰囲気で語り始めた。

 

 魔物にとっての魔素は、生物にとっての生命力のようなもの。

 それが子作りをすると、生まれてくる子供にごっそりと持っていかれる。

 親のさじ加減ではあるが、種だけ授ける場合でもいくらかの魔素を消費するし、本気で強力な子孫を残そうとすると魔素どころか寿命まで縮むことになる。

 

「──とまぁ、こんな感じですよ。スライムであるリムル様が知らないのも無理はないですがね」

「そうなのか。でも俺も名付けで魔素をよく消費してるけど、3日も寝てれば回復するぞ? そんな深刻に考えることないだろ?」

「リムル様……」

 

 会議室中から一斉にため息が漏れた。

 主のあまりの無知ぶりに、シュナが諭すように説明を始める。

 

「良いですかリムル様。魔物が子孫を残すとき、父親の魔素量の最大値が減るのです。そしてそれは回復しない場合もあるのですよ。名付けも同様に、弱体化したまま元に戻らないことがあります」

「おいおい!? ばんばん名前付けまくってるし、今更そんなことを言うなよ!?」

 

 リムルにとっては衝撃の事実だろう。

 名付けによる魔素の減少は寝てれば治ると思っていたら、二度と戻らない可能性もあるというのだから。

 今更慌てたって遅いのだが、これまでの名付けで魔素が回復してくれていたことには感謝しなければなるまい。

 

(よし、これからは慎重に行動しよう……!)

 

 決意を固めるリムルであった。

 フラグとか、振りとか言ってはいけない。

 本人は至って真面目なのだから。

 

「ところでリムル様は子供をお作りにならないのですか?」

 

 シオンが問う。

 

「いや、こんな怖い話された直後によくそんな事言えるね君」

「はい! このシオン、いつでも準備は出来てますからね!」

「俺はできてねーんだよ!」

「私とリムル様ならきっと大丈夫です! 私には分かります!」

 

 自分こそがリムル様の子供を産むといって憚らない。

 リムルは明確に拒否するのだが、シオンはやる気満々である。

 

「何言ってんだ。俺はスライムだぞ? 子供なんて作れるわけないだろ」

「いえ! リムル様なら可能です! ちょっとちぎって私の胎の中で育てれば良いのです!」

 

 本気の目だった。

 これにはリムルどころかその場にいる全員が呆れてしまう。

 

「なあシオン? 100歩譲ってちぎって増える可能性は否定しないよ? でもお前が産む必要は無いんじゃないか?」

「え?」

「え?」

 

 数瞬の無音。

 少し遅れてようやくシオンはリムルの意思を理解する。

 そしてがっくりと膝をつき、わんわんと泣き始めた。

 

「ひどいですリムル様! 私との結婚が受け入れられないというのですか!? はっ! まさか既にシュナ様と──」

「シオン? いい加減にしてください」

 

 シュナの制止の声は、表面上は涼しげだった。

 ひゅっ、と息をのんだシオンはすぐに泣き止み、スッと椅子に座りなおす。

 その向かいにはとっても綺麗なシュナの笑顔。

 有無を言わさぬ無言の圧力である。

 

「……ゴホン。とにかくだな、俺は今のところは子供を作る予定は無い。良いな?」

「はい……。しかしリムル様のお子様、ひと目見てみたいです……」

「いや、ひと目見るってそれもう子供出来ちゃってるから……いや待てよ?」

 

 何かを閃いたリムルはおもむろにテーブルを「捕食」して片付けた。

 会議室の中央に広い空間が生まれる。

 そして手を前にかざし、黒い霧を吐き出したかと思えば──

 

「これがリムル様のお子様なのですね!」

「まぁ、ただの分身体だけどな」

 

 リムルより少し小さい、月白色の髪の少女が会議の出席者に囲まれるように立っていた。

 

「そうだな……俺の子供と言っても全く同じ見た目じゃつまらないよな」

 

 そう呟くと、リムルは分身体を操作し始める。

 髪の色が赤、青、緑と変化していく。長さも自由自在らしく、目まぐるしく変わっていく。

 

「ちょっと垂れ目のほうが可愛いかな? いや、キリッと切れ長もカッコいいな」

 

 唐突に始まったキャラクターメイキングに幹部たちも興味津々だ。

 やがて幹部たちも意見を出し合い、会議そっちのけでリムルの子供の予想大会が始まった。

 

「リムル様、もう少しお目目をぱっちりと大きくした方が可愛いのではないでしょうか」

「子供は元気が一番ですぞ! 快活な印象を与えるように明るい髪色にしましょう」

「オイラとしてはもっと出るとこ出てた方が……冗談っす! すいませんっす!」

「ほっほっほ、剣を扱うのであればもう少し手足の長さがあると良いですぞ?」

「角は1本で……え? 鬼人じゃないから角は無い? でも私とリムル様の子供なら──」

 

 しだいにヒートアップし、幹部たちからは次々と注文が飛び出してくる。

 気づけばリムル以上に熱中していたのだった。

 

(そんなにー度に言われてもわかんねーよ! 大賢者、頼む!)

《了。分身体の操作を引き受けます》

 

 前世では何度かキャラメイクをやった事のあるリムルだが、まさか自分がゲーム機の立場になるとは思いもしなかっただろう。

 

 分身体を取り囲んでわいわいがやがやと盛り上がる事1時間。

 そこには幹部たちの欲望……もといアイデアが詰まったリムルの子供(仮)がいた。マネキンのように無表情でじっと佇んでいる。

 燃えるように鮮やかなオレンジ色の髪。リムルとは異なり、肩にかかるかどうかという長さだ。

 パッチリとした愛くるしい瞳は親譲り、いやシズ譲りか。

 全体的にリムルをベースにしつつほんのわずかに顔つき体つきが異なる感じだが、リムルの子供と言われればすぐに納得できる容姿に仕上がっていた。

 

 幹部一同はご満悦の様子。リムルも少し気恥ずしかったが、満更ではないのだった。

 

「じゃあコレしまうぞ? 会議はまだ終わってないからな。休憩もここまでだ。リグルド、明日の祭りについて何か話すことがあるんだろ?」

「ええ、そうでした」

 

 リグルドに指示を出し、会議の続きを進めるリムル。

 優秀な幹部たちはあれこれ言わずとも勝手に話をまとめてくれる。

 そうしてリムルはまたしても話を聞かずにぼーっとその様子を眺めるのだ。

 

 窓の外に目をやれば、『リムル様焼き』の屋台を引いて歩くホブゴブリンや『リムル様だんご』と書かれたのぼりを掲げるハイオークの姿が見える。

 明日の祭りに向けて準備をしているところだ。

 いよいよ本番。楽しみである。

 

 再び正面を見れば、魔改造を施した己の分身体。

 相変わらず無表情でじっと立っている。

 

(子供……か)

 

 それはリムルの子供の想像図。

 そこに魂は無いが、まだ見ぬ自身の子供との暮らしぶりをリムルに想像させるには十分だった。

 

 リムルは思う。

 

 もし俺に子供が出来たら、その子はこの町で生まれ育つことになるんだよな。

 連日のように開催されるお祭りで皆に可愛がられる姿が目に浮かぶ。

 明るく快活で……見ている皆を笑顔にするような子に育つんだろう。

 うん、きっとそうだ!

 

 そして何の気なしに、ぽつりとつぶやいた。

 

「こいつの名前は祭りが由来の言葉が良いのかもな。そのまんまマツリ=テンペストとかでもいいか……おぉ!?」

 

 直後、リムルは魔素がごっそりと奪われる感覚に襲われる。

 魔物の生態を知り、『今後は慎重に行動しよう』と決意を固めた矢先の出来事だった。

 





という事でリムル様がうっかり分身体に名前を付けて、子供が出来ちゃったという話です。
一発ネタですが一応続きも考えているのでぼちぼち書き進めて行きます。

シンシヤ? まおりゅう? 聞いたことないですね……

■マツリ=テンペスト
リムルの子供。
リムルの2pカラーのような見た目をしている。
髪はオレンジ色でやや短め。ボーイッシュな見た目をしている。
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