転生したら子供が出来た件   作:座右の銘

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ファッションショー

「おはようパパ。今日は寝れた?」

「ダメだった」

 

 起きる時間だ。

 一睡もしていないのだが、外が明るくなったのでぽよぽよと布団から這い出す。

 眠る練習は難航しているようである。

 

「さて、ミリムを起こしに行くか」

「俺もいく」

 

 この町には昨日からミリムが住んでいる。

 リムルとマツリはミリム様係としてミリムの面倒を見なければいけないのだ。

 という訳で人型になったリムルはスライム姿のマツリを抱き上げ、まずミリムの部屋へと向かう。

 

 コンコン

 

 ミリムの部屋をノックするが、反応は無い。

 

「寝てるね」

「ああ、寝てるな」

「ミリムは寝るのも上手なんだね」

「種族的な問題だと思うけどな。竜魔人(ドラゴノイド)は人間に似た生き物なんだろ。……さて、行くか」

 

 リムルはバタンと強めにドアを開け、部屋に入った。

 そしてちょっと大き目な声でミリムを起こしにかかる。

 

「ミリム、朝だぞ。起きろー」

「おきろー」

「眠いのだ……まだ寝るのだ……」

 

 魔王ミリムは朝に弱いらしい。

 リムル達に気づいたが、すぐに二度寝を始めてしまった。

 

 スライム親子が布団の傍からミリムの寝顔をのぞき込む。

 

「ったく、呑気に寝やがって。気楽なもんだな」

「おーいミリムー。朝ごはんだよー」

「マツリか……マツリも一緒に寝るのだ……」

「うわっ!?」

 

 しまった近づきすぎた、と気づいたときにはもう遅かった。

 ミリムがマツリをむんずと掴み、リムルから奪い取る。

 寝ぼけていながらとんでもない力だ。

 

「ひんやりして気持ちいいのだー」

「ミリムはあったかいんだね」

 

 スライムであるマツリは水枕のようにやわらかく冷たいのである。

 季節は夏。

 早朝で少し涼しいとはいえ、寝苦しいことに変わりはない。

 人間の子供ほどのサイズがある頑丈なスライムは極上の抱き枕なのだ。

 

 スライムがジュラの森で夏の風物詩とされているのは、単に食料として有名だからではない。

 過酷な夏の暑さを凌ぐための天然の水枕としての用途もあるのだ。

 

 ぷるぷると柔らかく、水分を多く含むためひんやり冷たい。

 ぬるくなっても日陰に数十分も放っておけばすぐに冷える。

 そして食うに困ったら食料に。

 

 リムルの手前あまりぞんざいな扱いは出来ないものの、やはりスライムはジュラの森の魔物、特にゴブリンのような弱小種族には欠かせない存在なのだった。

 

「マツリも抵抗しろよ……起こしに来たんだろ?」

「そうだった。ミリム起きて、一緒に朝ごはん食べようよ」

「朝ごはん……でも眠いのだ……」

 

 ミリムがスライム形態のマツリをぎゅうぎゅうと抱きしめる。

 脱出しようとするマツリだが、ミリムの腕力には抗えなかった。

 むにむにと可愛らしく揺れ動くだけである。

 

 一向に起きようとしないミリム。

 ついにリムルも我慢の限界だ。

 

「そうか眠いか……。じゃあもったいないけどミリムの朝ごはんはゴブタ辺りにでも食わせるか。せっかく美味しい朝食を用意したんだが、ミリムが起きないんじゃ仕方が無いよな」

「……起きるのだ」

 

 ようやくお目覚めである。

 

 待ちに待った朝食。

 ミリムの寝室からすぐ近くの和室へと向かう。

 

 縁側を少し歩いて目的の部屋の障子を開けると、既にシュナが朝食の用意を済ませていた。

 座卓の上には牛鹿(うじか)の乳にパンもどき、そして熱々の野菜のスープが湯気を立てている。

 

「朝ごはんなのだ!」

 

 ついさっきまで眠い眠いとぐずっていたミリムだが、用意された朝食を目にした途端眠気は吹き飛んだようである。

 そんなミリムを見てマツリは、「改めておはよう、ミリム」と微笑んだのだった。

 

 朝食をとりながらリムルは考える。

 

 今日の予定は確か、ベスターの研究所に顔を出すんだったか。

 あそこには貴重な実験道具なんかも置いてあるわけで……

 ミリムを連れて行くのは絶対にアウトだな。

 

 ここでリムルの天才的な頭脳が妙案を思いつく。

 

「マツリ、今日はミリムと遊んで来いよ。シュナの工房で洋服とか見たら良いんじゃないか? 普段着とか色々用意してもらうと良い」

「それ良いね! ねぇミリム、今日は俺が町を案内するよ」

「分かったのだ!」

「パパも一緒に──」

「ああ俺はちょっと用事があるからまた今度な」

 

 要するにお得意の丸投げであった。

 マツリ、そしてシュナに全てを任せるのだ。

 

 ☆

 

「という訳で今日はミリムの洋服を選ぼう!」

「選ぶのだ!」

「いらっしゃいお二人とも。どれでもお好きな服を着てくださいね」

 

 朝食をとって英気を養ったマツリとミリムが意気揚々と制作工房にやって来た。

 リムルから事情を聞いていたシュナが出迎える。

 

 制作工房には子供服が大量ストックされている。

 元はリムルの、そして今はそれに加えてマツリの為に制作された物だ。

 ちょうどミリムは背格好が似ている為、少々の手直しでこれらの服を着れそうであった。

 

 シュナ監修の下、ファッションショーが幕を開ける。

 

 まずはメイド服。

 

【挿絵表示】

 

「いぇい! 可愛いのだ! ……ところでメイドって何なのだ?」

「仕事として炊事や掃除などの家事をする女性の事ですね」

「じゃあシュナはメイドなのか?」

「リムル様とマツリ様のお世話をしている時は、メイドと言えるかもしれませんね」

 

 次はセーラー服。

 

「マツリも着るのだ」

「え、今日はミリムの──」

「素晴らしい提案ですミリム様! さあさあマツリ様、こちらのお召し物をどうぞ!」

「もう、しょうがないなー」

「しょうがないとは言うが、嬉しそうではないか!」

「えへへ、分かる?」

 

【挿絵表示】

 

 というわけで、急遽マツリも参加である。*1

 これにて着せ替え人形は2人となる。

 シュナを初め、工房で働くゴブリナ達も興奮を抑えきれない様子。

 

「盛り上がってきましたよー!」

「一番楽しそうなのはシュナなのだ」

「そうだね」

 

 シュナはノリノリで工房の奥へと向かっていった。

 そして取り出してきたのはなんとウェディングドレス。

 どう考えても普段着ではないのだが、そんなことはどうでも良くなっていた。

 

「さあミリム様! どうぞ」

「うむ!」

 

【挿絵表示】

 

「どうだマツリ、ワタシと結婚したくなったか?」

「結婚って何?」

「知らないのだ。でも結婚するのだ!」

「ではマツリ様は新郎衣装ですね」

 

 ウェディングドレスと来れば、タキシードである。

 

「そう、背筋を伸ばして、手はポケットの中です。もっと凛々しい表情で! ……良いですよ!」

「こう? うーん難しいな」

「ボタンは閉めないのか?」

「ちょっと着崩した感じが良いのです! ほら、カッコいいでしょう!?」

 

【挿絵表示】

 

「ミリム様、マツリ様、ご結婚おめでとうございます」

「良く分かんないけど、ありがとうシュナ!」

「末永く幸せにするのだ!」

「ふふっ、それは新婦が言うセリフではありませんよ」

「私もカッコいい服も着たいのだ!」

「ではこちらを」

 

 シュナが持ってきたのは、シオンが着ているのとよく似たダークスーツだ。

 

【挿絵表示】

 

「シオンとお揃いだ!」

「あの一本角か!」

「ほら髪もポニーテールにしなきゃ」

「おお! これで完全に一本角なのだ!」

「うん、そっくりだよミリム! ねえシュナ、俺はシュナになりたい!」

「はい! すぐにお持ちしますね!」

 

 マツリはシュナと同じく巫女服である。

 

【挿絵表示】

 

「お揃いだね!」

「うふふ、そうですね」

 

 シュナ、あまりにも役得であった。

 熱狂的なファッションショーはまだまだ続く。

 

 ……と思われたがそうはいかないようである。

 

「む? 何だあやつは。嫌な予感がするのだ」

 

 ミリムが何かに気付いたように壁を見つめる。

 いや、正確にはその壁の向こう、町の中央のあたりを見ているらしい。

 何かがあったようだ。 

 

「マツリ! 一緒に来るのだ!」

「へ?」

 

 シュナが振り返った瞬間にはミリムとマツリの姿は無かった。

 そこにあるのは壊れた扉。

 そして、どこ行くのおぉぉ……と遠ざかっていくマツリの声のみである。

 

「大変!」

 

 シュナは慌てて後を追いかけるのだった。

 

 ☆

 

 シュナがミリムとマツリを着せ替え人形にして楽しんでいる頃、町には招かれざる客が訪れていた。

 

 一人の魔人と数人の部下。

 リーダーと思しき精悍な顔つきの男は、かなり強い力を持っている。

 全身を包み込む黒い鎧は、戦闘への備えだろうか。

 

 力の無い魔物は怯え、遠ざかる。

 戦闘員でさえ迂闊に声を掛けられないほどのプレッシャーだ。

 住民たちは輪を作るようにその魔人から距離をとって囲んでいる。

 

 その魔人──フォビオはざっと周囲を見渡す。

 視界に入るのは怯えた目、不安な表情。

 恐れられている。

 

 それを確認して満足気に笑い、獲物を見定め始めた。

 

 はっ、雑魚ばかりだな。

 目すら合わせようとしねえとは、腑抜けたやつらよ。

 さっさとひと暴れして実力差を分からせてやるとするか。

 

 そんな中、群衆の中から筋骨隆々なホブゴブリン、リグルドが歩み出た。

 多少は力があるのか、怯えた様子も見せずに堂々としている。

 

 ──こいつで良いか。

 

 フォビオの最初の標的が決まる。

 

 周囲を見渡し、十分にギャラリーが揃った事を確認する。

 さあ、蹂躙(パーティー)の始まりだ。

 

「俺は魔王カリオン様の三獣士、黒豹牙フォビオだ。獣王戦士団の中でも最強の戦士よ。ここは良い町だなぁ、獣王様が支配するにふさわしい。そうは思わんか?」

「御冗談を──!?」

 

 リグルドが対応しようとした瞬間、フォビオは突如拳を振った。

 魔力の込められた重い一撃。

 その拳はリグルドの顔面を完全に捉えている。

 

 しかし気分よく拳を繰り出すも、期待した感触は得られない。

 ……何者かに受け止められている。

 

 そこには少年が立っていた。

 異国の礼服を思わせる紅白の衣服を纏い、燃えるように輝くオレンジの髪を靡かせて。

 危機を察知したミリムと共に現場に引きず……駆けつけていたのだ。

 

「ねえフォビオ、なんでリグルドを殴ったの?」

 

 フォビオの拳はマツリに捉えられている。

 手首から先をスライム化させて絡みつき、フォビオの動きを封じているのだ。

 

「はっ! テメーなんざに応える義理は無いな」

「ねえ教えてよ。知りたいんだ」

「いい加減にしやがれ! テメーも殴られたいか!」

「俺は別にいいけど」 

「じゃあ遠慮はいらねぇなぁ!」

 

 再び拳を振りぬこうとするフォビオ。

 今度は本当に容赦のない全力の一撃である。

 しかしまたしてもマツリの体にめり込み、そのまま捉えられてしまう。

 

「もう、話を聞いてよ」

「!?」

 

 フォビオの背筋を冷たいものが撫でる。

 

 俺は全力で殴ったはずだ! 

 なんで無傷なんだよ……! 

 

 さらに悪いことに、その少年のさらに背後から爆発的な妖気が放たれた。

 

「私の親友(マブダチ)に何するのだー!」

「なっ!? 魔王ミリム!?」

 

 拳を構え、凄まじい速度で迫るダークスーツの少女。

 慌てて迎撃しようとするも両手は目の前の少年に捉えられており…………

 

 フォビオの記憶はここで途切れている。

 

 ☆

 

 ベスターの研究所を訪れていたリムルだったが、その帰り道、町の中に大きな妖気の存在を感じ取った。

 急いで戻ると町の中央で黒い甲冑に身を包んだ謎の魔人が倒れている。

 その傍には巫女服姿のマツリと、ダークスーツ姿のミリムが立っている。

 

 何やらトラブルが起きたのは間違いなさそうだが、意味不明な状況である。

 コスプレ大会でもやっているのだろうか?

 

 まずはマツリから状況の説明を聞くことに。

 

「パパ、この人がリグルドを殴ろうとしたんだ。だから止めた」

「そうかそうか! 偉いぞぉ! 良くやったな!」

「で、ミリムが殴って倒れちゃった」

「おいミリム、お前は昼飯抜きな」

「酷いのだー!」

 

 この扱いの差である。

 マツリは可愛から仕方がないのだ。

 

 ソウエイが言うにはこの男は魔王カリオンの配下らしく、雑な扱いをすればカリオンの心証が悪くなる恐れがあった。

 という訳で応接室に案内して話を聞くことに。

 

 リムル、ベニマル、シオン、リグルドが机を挟んでフォビオと対峙する。

 マツリは部屋の隅でお昼ご飯だ。

 

 そしてミリムだが……

 

「ワタシもお昼ご飯食べたいのだー!」

 

 全力で駄々をこねていた。

 こんな奴に負けたのかとフォビオも困惑を隠せない。

 

「もう、しょうがないな。ほいサンドイッチ。仲良く食べろよ」

「やったのだ♪」

 

 結局ミリムも可愛いので、なんだかんだリムルも甘いのである。

 ミリムはマツリの隣に腰を下ろし、お昼ご飯を食べるのだった。

 

 リムルは改めてフォビオと対峙し、話し合いが始まる。

 

「……で君たちは何をしに来たんだ?」

「スライム風情に答える義理はないね」

 

 フォビオはあくまで不遜な態度を崩さない。

 リムルをバカにされ、ベニマル、シオン、リグルドが怒気を滲ませる。

 が、反応したのはマツリだった。

 

「スライム風情って、俺より弱かったじゃん」

「ガキが調子に乗りやがって……!」

 

 フォビオも自分より明らかに強い魔物に言われては強く出れず、悪態をつくのが精いっぱいだ。

 たとえそれが幼い子供であっても。

 

 ちなみにマツリに煽っている自覚は無い。

 強い弱いに興味がなく、弱いと指摘されることがフォビオにとって屈辱であることも分からないのだ。

 フォビオが弱かったから弱いと言っただけのことである。

 

 そのことがフォビオのプライドをより一層傷つける。

 

「あー、すまん。マツリはちょっとそういう所疎いんだ。まあそれはそれとして、俺もマツリもお前よりは強い。それを踏まえてキッチリ今回の件を説明してもらおうか」

「ちっ! スライム風情が調子に乗りやがって。……ここへはカリオン様の命令で来た」

 

 フォビオの話によると、リムル達を配下へスカウトしろとの命令を受けていたらしい。

 正確にはリムル達とオークロードの生き残った方を、ということだ。

 つまりあのオーク軍との戦いを見ていた魔王がミリムの他にもいたという事になる。

 

 フォビオは終始怒りを隠そうともせず無礼な態度だった。

 マツリとミリムにやられたのが相当に悔しいらしい。

 これではまともな話し合いにもなるはずもなく、早々にお帰り願うことに。

 

 フォビオは去り際、仲良くサンドイッチを頬張るマツリとミリムを睨みつけた。

 

「……きっと後悔させてやる」

 

 そしてこんなことを言い残し、ドスドスと足音を立てて去って行く。

 これではカリオンへの伝言も無理だろうなと思うリムルだった。

 

 さて、魔王カリオンがリムル達に目を付けていると分かった。

 これは何かしらの対策を練る必要があるだろう。

 さしあたり、同じ魔王のミリムに話を聞くのが良さそうである。

 

「よしミリム、魔王カリオンについて話が聞きたい」

「それはリムルにも教えられないぞ。お互い邪魔をしないという約束なのだ」

 

(はい、秘密があると自白を頂きました)

 

 これは貴重な情報である。

 どうやらミリムは今回の件でカリオンと何らかの協定を結んでいるらしい。

 他には何か聞けないだろうか?

 

 そこへマツリが畳みかける。

 

「俺にも教えてくれないの?」

「うむ、マツリもダメだ。これは我ら4人の魔王の秘密の企みなのだからな」

 

(ふむふむ、4人の魔王が関わっていると。ミリムにカリオン、そして後二人ということか)

 

 ミリムは隠しているつもりだが、秘密は少しずつ漏れていくのだった。

 

 魔王4名がリムル達を狙っていると分かった以上、放置はできない。

 リムルは他の魔王について探るべくミリムへの事情聴取を決行することに。

 

「さてミリム、ちょーっとお話があるんだけどね?」

「な……なんなのだ?」

 

 リムルがとっても悪い笑顔でミリムににじり寄る。

 

*1
ミリム様グッジョブ! byシュナ




テコ入れ回?

沢山お着換えするなら挿絵も必要ですよねってことで頑張って生成しました。
画像生成は数打ちゃ当たる戦法なので、お蔵入りになったボツ画像が6000枚弱あります。本当はもっとファッションショーをやりたかったのですがここで力尽きました……。

マツリに着て欲しい服があれば是非コメントで教えてください。
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