転生したら子供が出来た件   作:座右の銘

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お野菜なのにうまーなのだ!

 応接室のソファで、ミリムは取り調べを受けていた。

 右手にマツリ、左手にリムル。

 大好きな友達二人に挟まれてウキウキの筈だが、今に限っては居心地が悪そうである。

 

 張り付けたような笑顔でリムルが言う。

 

「なあミリム、俺達って友達だよな?」

「うむ。友達……というか、親友(マブダチ)なのだ」

 

 いつの間にか友達から親友(マブダチ)に格上げされているが、細かいことは気にしない。

 

「そうそう。俺たちは親友(マブダチ)だから、お互いに助け合うじゃん? だったら、俺もミリム以外の魔王の事を知っておいた方が良いと思うんだよね。それにほら、ミリムがどんな約束をしたか知っておかないと、俺が知らずに邪魔しちゃうかも知れないしさ!」

「確かに、でも……親友(マブダチ)──」

 

 リムルがわざとらしく親友(マブダチ)というワードを強調して話すと、ミリムはもう陥落寸前というところまで押されてしまうのだった。

 やはり見た目通りの子供である。

 

 リムルはミリムを挟んで反対側に座るマツリを見る。

 視線を合わせ軽く頷いて見せると、マツリも真似してこくりと首を振った。

 ミリムを落とせという意図は……伝わっていないようだ。

 

 しかしマツリは、この場における最善の一手を繰り出す。

 

「ねえミリム。俺もミリムのお友達の事知りたいな。どんな人たちなの?」

「マツリも知りたいのか?」

「うん。だって魔王なんでしょ? 何か凄そう」

 

 純粋な興味で聞くマツリであった。

 魔国の危機など関係なくただ知りたいだけなのだ。

 

 リムルと違って純粋な眼差しを向けるマツリにミリムもたじたじである。

 こう見えて意外と空気を読む性格らしい。

 あと少しで魔王の情報を引き出せそうだ。

 

「そうだ、今度俺が武器を作ってやるよ。やっぱ親友(マブダチ)としては、ミリムが心配だしさ」

「そうなのか!? やっぱり親友(マブダチ)が一番大事なのだ!」

 

 最後の一押しは現金なやり方であった。

 単純ながら、効果的なのである。

 

 陥落したミリムは上機嫌に質問に答えていく。

 そうしてミリムやフォビオがこの町にやって来た理由である『計画』とやらが判明したのだ。

 

 それは、傀儡の魔王を誕生させる計画だった。

 オークロードを魔王に進化させ、自分の意見に追従する魔王を得るのだ。

 関わっているのはミリム、カリオン、クレイマン、フレイの4名。

 全員が魔王である。

 

 その後オークロードは敗れ計画は頓挫したかと思われた。

 しかし戦いの様子を監視する彼等は知ってしまった。

 オークロードを上回る力を持ち、数多の強力な魔人を従える謎のスライムの存在を。

 

 計画は修正の上、魔王達の企みは続いているのだという。

 こうしてリムルはオークロード以上に面白そうな魔人として魔王達に目を付けられることとなる。

 

「これで全部話したのだ。早く武器を寄越すのだ♪」

「ああ今度な」

「ねえミリム、遊びに行こ!」

「行くのだ! リムル、約束なのだぞ!」

「分かってるって」

 

 話し終えたミリムはマツリを連れて遊びに行った。

 そして問題の件だが。

 

「……これって俺達が魔王の計画を邪魔したって事だよな」

「ええ、他の魔王も絡んでくるでしょうね」

「流石はリムル様、人気者ですね」

 

 ミリムとマツリを見送った後、リムルとベニマルが重々しく呟いた。

 リグルドは黙考。

 シオンはまあ……いつも通りである。

 

 魔王を一人増やすとはただ事ではない。

 かなり本格的な計画だったのではないかと思われた。

 

 それを邪魔した以上、リムル達が狙われるのも当然だろう。

 

 戦って敗北し、軍門に下るくらいならまだ良い。

 下手をすれば粛清の可能性だって考えられる。

 やっと魔王ミリムを手懐けたというのに、他の魔王の相手もしなければならないのだろうか。

 ミリムのように扱いやすいという保証も無いのに。

 

「そういえばマツリのことはバレて……るよな。恐らく今も間者が俺達を調べてるだろうし」

「そうですね。まあ隠すことでもありませんし、斥候程度ならマツリ様をどうこうすることは出来ないでしょう。現にフォビオはマツリ様に傷ひとつ与えられなかった訳ですし」

 

 フォビオは魔王カリオンの幹部である。

 そのフォビオの渾身の一撃がマツリには通用しなかったのだ。

 物理と炎の攻撃では相性が悪い事を差し引いても、マツリの実力は魔王カリオンの幹部を明らかに上回っていた。

 

「様子見しかないか。仮にマツリを上回る実力者が現れたとして、護衛できる奴なんてウチは居ないしな。というかそんなやつが居たら俺だって恐らく勝てないわけで……」

「そうなればこちらとしてはお手上げです。ミリム様のように懐柔……ではなく、上手く敵対を回避して交渉に持ち込めることを期待するしかないでしょう」

「だな。こちらから何かしようにもその魔王とやらがどこにいるのかも良く知らないし、何かしてきたらその時考えよう」

 

 結局、様子見するしかないというのが今のところの結論である。

 

「大丈夫です。リムル様ならば、他の魔王など畏れるに足りません!」

 

 一人を除いて、頭を抱える大問題だった。

 

 ☆

 

「ミリム! こっちこっち!」

「わはは、待つのだー!」

 

 応接室を飛び出したマツリは、ミリムに町の外を案内をすることにした。

 町の外れまで仲良く追いかけっこし、町の外周部を周るように走る。

 お目当ては、巡回警備中のゴブリンライダーだ。

 

 しかし中々ゴブリンライダーが見つからない。

 仕方がないのでマツリはいつもの場所に向かう事に。

 そこには予想通りゴブタが仕事をサボって昼寝をしていた。

 

「ゴブタ、嵐牙狼(テンペストウルフ)を貸して」

「良いっすよマツリ様。好きな奴を連れて行って下さいっす」

「ほう、オオカミに乗るのか!」

 

 貸す方も借りる方も慣れた様子。

 いつもの事なのだ。

 

 マツリは町の外を探検する時は嵐牙狼に乗って移動することが多い。

 密林だろうが岩山だろうがお構いなしで時速100キロを超える速度で走る嵐牙狼は移動に便利……なのだが、理由はそれだけではない。

 何しろマツリ自身が嵐牙狼に擬態することで同じかそれ以上の速度を出せるのだから。

 

 本当の理由は嵐牙狼達が可愛いからであった。

 一人で森の中を疾走するのも楽しいのだが、嵐牙狼が一緒だともっと楽しいのだ。

 

 という訳で今日も嵐牙狼と一緒である。

 

 いつもより大きめの3メートルほどまで大きくなってもらい、ミリムとマツリの二人が乗る。

 驚くほど揺れは少なく、高級な絨毯のようにふかふかの背中。

 そこらの馬車よりよほど快適だ。

 

「可愛いでしょ。いつも俺を乗せてくれるんだ」

「柔らかいのだ! 暖かいのだ!」

「じゃあ、出発進行!」

「なのだ!」

 

 巨大な狼の上に、巫女服を着たマツリとダークスーツを着たミリムがちょこんと座る。

 いざ、町の外へ出発である。

 

 一歩町の外へ出れば、そこは木が鬱蒼と生い茂る原生林。

 その中に吸い込まれるように一本の道が伸びていた。

 目的地はその先だ。

 

 木でできた天然のトンネルの中を嵐牙狼がゆったりと歩く。

 右も左も草木ばかりで、少しうねりながら遠くまで伸びていく道だけが見える。

 町の喧騒は木々に遮られて聞こえなくなっていき、森らしい静寂が辺りを包み込んでいた。

 ジュラの森本来の姿である。

 

 少し歩くと、突然視界が開けた。

 目的地に到着したようだ。

 

「やあリリナ、作物の様子はどう?」

「あら、マツリ様! ミリム様まで! こんな畑にまでお越しいただいて嬉しいです」

 

 そこには一面に畑が広がっていた。

 森を切り開いて作られた農場である。

 

 マツリが話しかけたのは魔国の管理部門を仕切るゴブリンロード、リリナ。

 食糧の生産と管理は彼女の指揮下で行われている。

 魔国に4名存在するゴブリンロードの一人であり、紅一点。

 唯一の女性だ。

 

「今日はトウモロコシが食べごろですよ。茹でてきましょうか?」

「うん、食べる!」

「ここでもうまーなものが食えるのか!?」

「ええ、甘くてとっても美味しいですよ。少々お待ちください」

 

 リリナはマツリが農場を訪れるたびに何か美味しい野菜を用意してくれる。

 これは好意によるものなのだが、可愛いマツリを農場に呼び寄せるための作戦でもあった。

 結果としてマツリは良く農場を訪れるので、リリナの思惑通りとなっている。

 出来る女である。

 

 ミリムとマツリは作業小屋の休憩室に案内された。

 早く食べたいねー、食べたいのだー、と待つこと数分。

 調理場からリリナがやって来た。

 

「どうぞ、茹でたトウモロコシです。それからトマトにきゅうりにオクラ、あとは……」

「いっぱいだね。他の皆も食べるの?」

「いえ、お二人の分です」

 

 マツリの訪問が嬉しくてあれもこれもと詰め込んだ結果、大皿にどっさりと野菜が盛られていた。

 張り切り過ぎである。

 

「多いのではないか?」

「良いよ気にしない。いっぱい食べれて俺は嬉しいよ!」

 

 しかしマツリは気にしない。

 食おうと思えばいくらでも食えるから、という訳ではない。

 歓迎してくれる気持ちが嬉しいのだ。

 野菜も勿論美味しいが、それ以上にリリナの喜ぶ顔が見たいのである。

 

 野菜につられて農場を訪れていると思っているリリナだが、そこは誤算なのだった。

 マツリは嬉しそうに野菜をくれるリリナ自身がお目当てなのだ。

 

「生の野菜ばかりではないか。ワタシは生の野菜はキライなのだ」

 

 ミリムが野菜を見て言う。

 トウモロコシと他にもいくつかの野菜は茹でてあるが、他は調理されているようには見えない。

 一口サイズに切ってあるだけだ。

 

「まあミリム、食べて見なよ。美味しいよ?」

「む……マツリが言うなら食べるのだ」

「はい、あーん」

 

 マツリが一切れのトマトをフォークに刺し、ミリムの口へ。

 

 ひょいぱく。

 もぐもぐ。

 ミリムの目が輝いた。

 

「美味いのだ! 何なのだこの味は……塩を振っているのか?」

「ミリム様正解です。ほんの少しお塩で味付けしているのですよ」

「言ったでしょミリム。美味しいって」

「(もぐもぐ)上手いのだ(ごっくん)こっちのきゅうりとやらも(ぽりぽり)イケるのだ……」

 

 一心不乱である。

 ミリムの言う生の野菜とは、調理どころか味付けすらしない、本当に収穫したそのままの姿なのである。

 塩を一振りするだけで美味しく野菜が食べれるなど知りもしなかったのだ。

 

 その後ミリムは今収穫できる全種類の野菜を制覇。

 違う野菜が採れたらまた来るのだ! とご機嫌にリリナと約束したのだった。

 

「秋ごろにいらっしゃれば沢山の種類をご用意できますね」

「うむ! 楽しみなのだ!」

「パパも収穫祭をやるって言ってた。その時は野菜パーティーだね!」

「ではリリナとやら、また来るのだ!」

「じゃあね」

 

 リリナに見送られ、ミリムとマツリは農場を去っていった。 

 その背中を眺めるリリナが呟く。

 

「そういえばミリム様っていつまでこの町に住むおつもりなのでしょう?」

 

 多分、飽きるまでである。

 

 ☆

 

 夕方、マツリが遊びから帰ってくるとリムルはいつもの会議室に皆を集めた。

 

「さて、昨日今日と色々あったが、問題は一通り片付いたな。このところ忙しかったがようやく本命の仕事に打ち込めるってわけだ」

 

 リムルが話し始める。

 

 昨日はミリムが町に住みついて、今日はフォビオの襲撃。

 全く忙しい毎日だ。

 町の建設以来初めてとなる越冬に向けた食料の備蓄も急務である。

 

 さらには国家としての地盤固め。

 リムルを狙う魔王への対応。

 魔国は今、大事な時期なのだ。

 

 しかしリムルの言うように、本命の仕事に比べればこれらは些末な事であった。

 リムル達には何としてもやらなければならない事がある。

 

 リムルはゴホンと咳ばらいをして、本題に入る。

 

「議題は、次のお祭りについてだ」

 

 待ってましたと言わんばかりに幹部達の顔が明るくなる。

 

 魔国において娯楽は何よりも重要なのだ。

 カリオンからの刺客などに構っている暇はない。

 早くどんちゃん騒ぎがしたいのである。

 

「まずはお祭りのお題目を考えませんと」

 

 リグルドが仕切り、話し合いが始まる。

 

 普通お祭りとは、何らかの目的をもって開催されるものである。

 何かのお祝い、季節の節目、心の整理などなど。

 こういった理由があって初めて催し物を考える。

 

 しかしこの町では事情が違う。

 

 お祭りの開催は決定事項だ。

 お題目など後から考えれば良い。

 だって、食べて飲んで騒ぎたいんだもの。

 

 これぞ魔物の町、首都リムルである。

 

「はいはーい! 俺から提案があります!」

 

 勢いよくマツリが手を上げた。

 相変わらずお祭りの事となると絶好調である。

 そしてそれに呼応するように会議室の雰囲気が明るくなり、エネルギーが満ち溢れる。

 

 準備が一番楽しいとまで言われるくらいなのだから、会議が盛り上がるのも当然だ。

 お祭りは既に始まっているといっても過言ではないのだ。

 

【挿絵表示】

 

「次のお祭りは、ミリム歓迎祭が良いと思います!」

「ほほう、良いですな!」

「採用! それで行こう!」

 

 リグルドが賛成し、リムルの一言で採択された。

 

 まあ、ミリムが移住してきたのだから祝わない選択肢はないだろう。

 彼女を差し置いて別の理由でお祭りをすれば何を言われるか……

 いや、無邪気にはしゃぐだけかもしれないけども。

 

 とにかく、これは当然の帰結なのだ。

 

「という訳でミリム様、何かやりたいことなどありますかな?」

「皆で戦うというのは──」

「あ、物騒なのは無しで!」

 

 リムルが咄嗟に止める。

 ミリムを暴れさせることだけは絶対にNGだ。

 

「じゃあ分からないのだ」

「パパちょっといい?」

 

 またしてもマツリである。

 

「なんだ良い案が浮かんだか?」

「うん、俺はコスプレ大会が良いと思う」

 

 これもまた当然の帰結であった。

 

 現在進行形でシュナのコスプレをしているマツリと、これまた現在進行形でシオンのコスプレをしているミリムがここに居るのだ。

 幹部たちもさもありなんという顔で頷いている。

 

 そしてやはりというか何というか、女性陣が目ざとく反応した。

 

「素晴らしい提案です! 私も全力でお手伝いさせていただきますね!」

「このシオン、いつでも準備は出来ております!」

「可愛い服も格好いい服も全部着るのだ! 早くやりたいのだ!」

「皆その意気だよ! お祭り大臣の俺に任せといて!」

 

 シュナ、シオン、ミリムが大興奮である。

 凄まじい熱量だ。

 

 こうなるとシュナもシオンも止まらないのは皆が知るところだ。

 ミリムは最初から誰にも止められない。

 発案者はお祭りを仕切るマツリ。

 つまり、これはもう決定事項であった。

 

 お祭りのメインイベントはコスプレ大会。

 魔物の町の美人が集まり、様々な衣装を着てステージに立つことになる。

 

 主役はミリム。

 隣にはマツリ。

 シュナ、シオンも欠かせない。

 ゴブリナからも何名か参加者を募ることなるだろう。

 

 そして忘れてはいけない人、いやスライムが一人。

 

 シュナが興奮冷めやらぬままリムルに熱い視線を向けた。

 こうなった彼女は止まらないというのは先に述べた通り。

 幹部が見つめる中、シュナがリムルへと声を掛ける。

 

「勿論リムル様もご参加になりますよね?」

 

 シュナらしい、優しい口調であった。

 

「いや俺はーー」

「楽しみですね」

 

 一部の隙も無い、綺麗な笑顔がリムルに向けられる。

 

「ちょっと恥ずかしいかなーって……」

「リムル様?」

「……やります」

 

 目を逸らし、敬語で返事をするリムルであった。

 




更新頻度が上がらない……
本当はもっとモリモリ書きたいんですが、仕事が忙しく。
5月中に(どういう形であれ)決着が着くのでそこからはもっと時間を取れると思います。

ちなみにマツリくんの衣装はバニーガールの予定(コメントありがとうございます)
他はどうしようか。
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