ウマ娘×俺ガイル   作:Signature

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2023-12-07pixivにて投稿したもの。


件の母

 

ほろほろと、零れ落ちる涙。

一度流れ始めると、もう止まることはない。

 

 

「お、おいクリーク!?」

「タマちゃん……」

 

縋るようにタマモクロスへと視線を向けるスーパークリークは、涙を隠すように顔を覆う。俺は何もできずに、その場に佇んでいる。

 

「わたし……こんなにも無力だったなんて……」

「クリーク。アンタはちょっと疲れとるだけや。今すぐに休んで……」

「いやです!」

 

クリークは首を振る。駄々っ子のように首を振る。

 

「わたし、ママなのに! ママでなきゃ、いけないのに……!」

 

悲愴感溢れる声は、思わず俺の心をも動かしそうになった。これほどの嗚咽を聞いて、じっとしているだけなんてできっこない。そう、何か行動を起こさなければ。

 

「決めたんです! この世界では、はちちゃんのママになろうって……!」

 

決意が引っ込んだ。

 

「あんなぁ、クリーク?さすがのウチも、それはどうかと思うで?」

「どうして、タマちゃん……どうして……?」

「わからんのかいっ!ウチはともかく、相手は同い年くらいの異性やぞっ!んなもんただのプレイやないかいっ!」

「そうなの、はちちゃん?」

「いや、そんなに驚かなくても」

 

そこは常識の範囲内で理解していただきたかった。

 

スーパークリークという少女は、お姉さんをすっ飛ばしている。ママである。

あのマルゼンスキーですら激マブのおねーさんを自称しているというのに、こちらと言えば、ママである。暫く元の世界に帰れそうもない俺を不憫に思ったスーパークリークが言い出したのが、件のママ発言である。

 

くだんの母。

……色々と危ないので自重しておく。

 

「その、気持ちはありがたいんだが……タマモ先輩の言う通りだ」

「せやろ?……ってか何が先輩や! さっきまでんな呼び方せーへんかったやろ!」

「いや、気持ち的な」

「だったら私がママになっても」

「いやそれとこれとは違います」

「はちちゃん……」

 

クリークが手を頬に当てて曰く。

 

「反抗期なの?」

「何をどう捉えたらそうなるんや!」

 

すごい、タマモクロス。

何がすごいって俺のお株を全部まるっと持っていっちゃう。

俺要る?俺ガイらない。

 

「……ま、まぁクリークはぶっ飛びすぎやけど。実際のところハチ、アンタはどうなんや? やっぱりその……寂しくはないんか?」

 

片方の脚をもう片方の脚に擦りつけつつ、視線を逸らしていたタマモクロスが、意を決したように尋ねてくる。

 

「そりゃまぁ……寂しくないというとウソになるけど」

 

だからと言って同い年の少女にママとか言えるか。

いやそもそも。それとこれとは話が違う。

 

「なんというかクリークは、世話を焼きたいんだな」

「別に悪意はないんやけどなぁ……」

 

そう言うタマモクロスはどこか遠い目をしている。在りし日を思い出すかのような視線。

「一体何が……」

「でちゅね遊び」

「悪かった。もう聞かせないでくれると助かる」

 

ぽん、とクリークが手を打った。

 

「はちちゃん。いい考えがあります!」

「その発言フラグなんだよなぁ……」

「さあ」

 

腕一杯広げて、こちらを待つクリーク。

 

「……ナニコレ?」

「ハグですよ、はちちゃん!」

「却下で」

「はちちゃん!?」

「やっぱりおかしいわ。うん、ウチは間違っとらんかった。同じ生徒とかトレーナーを赤ちゃんにしようとするのは間違いやと、あの頃のウチは正しかったんや……」

「今のウチさんはどうなんですかね、タマモクロスさん?」

「気づいた時には、もう……」

「あー、なんか悪い」

 

何が恐ろしいって、これが行われているのは学園の一角で、かなり人目に付く場所だってことだ。

 

なのに、通り過ぎていく生徒たちはああまたか、みたいな表情で一向に立ち止まりもしない。それどころか、何処からか現れた銀髪のウマ娘が、

 

「ハチよぉ……これが、トレセン学園なんだぜ」

 

としみじみ語ってるような有様だった。

 

「学園側に通報すべきじゃねーの? ママを名乗る不審者がいるって」

「あのなぁ、クリークは別におかしくないで?ちょっと人を甘やかそうと頑張ってるだけや」

「時と場合によってはそれが犯罪になりうるんだが?」

「大丈夫やろ、その辺はクリークだってわかっとるはずや」

 

耳をピコピコさせて、こちらのささやきを聞き逃さないタマモクロス。ぐっと拳を握りしめたクリークは言う。

 

「私は諦めませんよ、はちちゃん!」

「悪いことは言わないから諦めてくれ……」

「あ、トレーナーさん」

「おどれがすべての元凶かぁぁぁ!」

 

タマモクロスがものすごい勢いでスーツ姿のトレーナーに突っ込んでいく。脇腹に頭突きを喰らったトレーナーが体をくの字に折り、そのままクリークに抱き着く。

 

「大丈夫ですよ~トレーナーさん。今日もいいこいいこしましょうね~」

「うぅ……俺を慰めてくれるのはクリークしかいないんだぁ……」

 

ハハ、なんだこのカオス。

やはり、異世界転移は間違っている。早急に帰らないと、こっちがおかしくなる。

 

帰ろう。俺のいるべき場所へ。

 

「あー!ひっきーだー!」

「なん、だと……?」

 

ウララちゃんは天使。

 

「ちょお待てや! まともなのはウチだけかい!」

 

ボートを用意しろ。二人乗りで良い。俺はハルウララと一緒に元の世界に帰るんだ……。

 

 

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