ウマ娘×俺ガイル 作:Signature
購買に並んでいるのは、幸いにも見慣れた代物である。パッケージのデザインこそ多少の違いはあれど、食べ慣れた味があるのはありがたい。購入して、部屋続きの食堂へと移動する。
電子ポットでお湯を注いで、あとは待つだけ。
そのタイミングを見計らったかのように、登場する影がある。
「あら?今日はどんなお味を堪能するつもりなのかしら?」
「ジャンクフードなんですが」
アイルランド王族が一人、ファインモーション殿下である。
いくらラーメンが好きな俺でも、人様が食べている姿で満足することはない。だが、このウマ娘なる殿下の場合は違うらしい。
目をキラキラとさせて、三分でできる魔法のラーメンに釘付けだ。
「そんなに見つめられると食べにくいのですが……」
「私が見つめているのはラーメンだから!」
なに、パッケージにマンガでも描いてあるの?
「やっぱり違う世界だと、その世界でしか食べられないラーメンがあるのかな?」
ニコニコ笑顔で話題を振ってくる殿下に、俺は、まああるんじゃないですかね、と自分でも適当だと思う返事をする。
だって怖いし。返事しなかったらなんか妙な視線を感じて……多分、ボデーガードとかそういう類いの人だ。
ボデーを透明にするんだよ!とか冗談言うだけで銃突きつけられそう。
「私は留学してからラーメンの美味しさを知ったんだけれど、キミにはそういったカルチャーショックに覚えがある?」
「ウマ娘でしょ」
なんだよウマ娘って。
馬に娘がついただけの擬人化と思ったら人間の姿かたちをしている別の種族と考えた方が良さそうだし。
「そう言えば、キミの世界にはいないんだったね、ウマ娘」
「いませんでしたよ、耳と尻尾がある美人」
言ったあと、何かこう、取り繕わないといけないと思って、ノータイムで付け加える。
「みんな自分の家の屋根裏に肖像画でも隠してるんじゃないのかってくらいに」
「ワイルドだね!」
オスカーの方ね。多分芸人は関係ない。
「……思ったんですが、殿下が自分に話しかけてくるのは、俺が噂になっているとかですか?」
「うーん、確かに噂にはなっているけど……」
首をかしげると、連動して尻尾がふわふわと持ち上がる。ハテナマークでも作るんだろうか。
「私はラーメンと、キミ自身に興味があるかな!」
「なんでドヤ顔?」
しかも、結局噂にはなっているらしい。
「目立つのは嫌なんですけどね、ただでさえ、女子校で肩身の狭い想いをしてるってのに……」
「『噂になるより悪いことがある。それは、噂の種にすらならないことだ』」
「ワイルドですね」
「でしょ!?」
え、その反応。ここにもそう言う芸人さんいるの?
話が途切れたところで、頃合いを見て蓋を剥がす。もうもうと湯気の立つラーメンを箸で摘まんで、息を吹き掛ける。
なぜかシャッターの音がした。
「ふふっ」
下手人は殿下である。スマホの自撮りを使いこなして、勝手にツーショットを撮っちゃう殿下。
絶対プライバシーの感覚が庶民と違う。
「あとで写真を送っておくね!」
「結構です」
「きさまー、私との思い出が受けとれぬと申すかー?」
なにこの幼馴染み系殿下。
勘違いしそうになるので、勘弁してほしい。