担当ウマ娘になったトレーナーのお話 作:Cutterruin
「ウインディちゃんは、フクザツなのだ」
神妙な顔で、シンコウウインディはポツポツと語る。
「最初は、ウインディちゃんのイタズラの幅が広がると思ってたのだ。でも、段々とウインディちゃんじゃなくて、子分の方に注目が集まっているような気がして……うー……」
同じ顔をしたウマ娘が、シンコウウインディの肩を、優しく叩く。
シンコウウインディになってしまった担当トレーナーは、今日も今日とて彼女に付き添い、イタズラの共犯を許容範囲で実行していた。
主な役割は、ドッキリに近いものだったり、時々はエアグルーヴのお説教を引き受けたりする。
もっとも、大抵は近くで隠れてニシシ、と笑っているから、二人揃って正座させられるのだが。
「もしも俺の立場なら、自分と同じ姿の他人が現れたら、自分のものを取られてしまうんじゃないかって、怖くなるよ」
その言葉に、ウインディの肩が跳ねる。じっと瞳を覗き込みながら、トレーナーは言う。
「でもウインディはそうじゃないだろ?だから、そういうふうに考えるのは当たり前だと思うよ」
「で、でも」
「うん。でもな、俺はシンコウウインディのトレーナーであり、子分なんだよ。だから、子分が親分のことを裏切ることはない。だから後は……ウインディが俺をどう使うか、だと思うよ」
「使って、いいのか……?」
「もちろん。担当ウマ娘に頼られることほど、トレーナーにとって嬉しいことはないんだから」
しばらくウインディは黙り込んでいた。しかし、ばっと顔を上げると、ウインディは自分と同じ顔をした少女の腕に、加減しつつ噛みついた。
「いたぁーっ!?」
「ふふんっ!油断したな?これで本物のウインディちゃんと区別がつくのだ!」
「まったくもう……」
二人で、種類の違う笑みを浮かべていた、その時。
「ウインディ!シンコウウインディはどこだ!?落とし穴にドトウがはまり込んで出てこれなくなっているぞ!」
「ヤバっ!子分、足止めするのだ!」
まだこちらを捕捉できていないエアグルーヴの姿を見るなり、身を翻すウインディ。同時に、『逃げ遅れたウインディ』を見つけたエアグルーヴが、憤怒の顔で突進してくる。
「わわわっ」
「こ、こら!なんでウインディちゃんと同じ方向に逃げてくるのだ!?二手に分かれるのだ!」
「いやでもしばらくはここ、廊下で直線……」
「見つけたぞっ!今日という今日は引導を渡してやるっ!トレーナー、貴様も同罪だ!」
シンコウウインディはくるりと振り返り、エアグルーヴにべー、と舌を出した。
「どっちがどっちかもわからないのに、できるはずもないのだ!」
「ふたりとも捕まえたらいいだけだ!」
二人のウインディは、魔の手から逃れるべく、走り出した。