担当ウマ娘になったトレーナーのお話 作:Cutterruin
釣り堀で、ボートの貸出をやっていた。海に繋がる小さな入口に小舟を浮かべ、空のように青い髪をしたウマ娘が二人、互いに背を預け合いながら釣り竿を握っていた。
趣味は体に引かれていくものなのだろうか。セイウンスカイになってしまったトレーナーは考えるも、すぐに、どうでもいいか、と投げ出した。うじうじ考えていても始まらない。
問題は、どのように今を楽しむか。そして、スカイを支えていくか。それだけである。
「セイちゃん、そっちどうよ?」
「まだですねー。そちらは?」
「こっちも。……ちゃんと帽子は被ってる?」
聞くまでもなかった。互いに背中を預けあっているのだから、麦わら帽子の縁が互い互いにぶつかり合っているのがわかる。
「それにしても……セイちゃん。椅子を用意しなよ」
「えー。トレーナーさんの背中が一番いいんじゃないですかー」
「今はセイちゃんと同じだよ」
「それでもです。ぬくもりがちがうんですよ」
「なんだそりゃ」
日差しが海面に降り注ぐ。船が生み出す波が、キラキラと宝石のように輝きながら、弾ける。
静かだった。ざあ、ざあ、と水面を割っていく音が心地よい。対岸の林から飛び立つ小鳥のさえずりが、子守唄のように聞こえる。
「なんだか眠くなってきたなぁ」
「あらら、トレーナーさんもですか?セイちゃんもトレーナーさんを枕に一眠りしたいところですねー」
「スカイ?また膝枕するのはごめんだからね?ぐりぐり頭を擦り付けてくるんだから、あのあと足がしびれて……」
「鍛錬が足りませんねー」
「なんだとこら。頭ぐりぐりしてやろうか」
「暴力はんたーい」
合わせた背中にじんわりとぬくもりが伝わってくる。顔を合わせなくとも、そこにパートナーがいるという安心感。トレーナーは少しだけ力を抜いて、セイウンスカイに背中を預けようとした。
「お」
釣り竿になにかかかったのか、スカイが前のめりに釣り竿を握りしめる。ずるっと滑ったトレーナーが、小舟の上にひっくり返る。上下が逆さまになった視界の中で、セイウンスカイがピチピチと跳ねる獲物を手に、ニッコリと笑っている。
「おお、釣れましたよトレーナーさん!……どうしてそこでひっくり返ってるんです?」
「セイちゃんがバランス崩したからだろ」
「いやー、知りませんねー」
「こんにゃろ」
むっつりと、セイウンスカイと同じ顔をしたトレーナーが、ぐい、と後ろに体重をかけた。
小舟がゆらりゆらりと揺れる。潮に任せて、ボートはゆっくりと流れていった。