担当ウマ娘になったトレーナーのお話   作:Cutterruin

5 / 13
2024-01-16pixivにて投稿したもの。


バクシンバクシン×2

 

「トレーナーさんも私になったのですから、共にバクシンしましょう!」

「言ってる言葉が狂気でしかないぞバクちゃん」

 

おでこの眩しいサクラバクシンオー、俺の担当ウマ娘に引っ張られて、校舎を駆け抜けていく。何事かとこちらを見送るウマ娘が、突進する2人のバクシンオー、つまり俺と本人の姿に目を見開く。

 

もっとも俺は手を引かれて引っ張られてるので、あんまり自分の意志とは関係ないのだが。

 

とはいえ、いつもならバクシンオーに引っ張られてバランスを崩しているところだが、さすがはウマ娘の体。息切れなくついていけるだけでなく、重心がまったくぶれない。

 

「ええい、この脳筋委員長サマが……」

「なんとひどい!私はただ、トレーナーさんに走ることの楽しさを知ってほしいだけなのに!」

「毎回筋肉痛を起こすこっちの身にもなってみろ!」

「今なら大丈夫でしょう!なんと言ってもトレーナーさんと2人で鍛え上げたこの体なので!」

 

走る。走って走って、そこに一切の加減はなく、まさに名前通りの驀進。

 

そして同じ体になった俺がついていけるという驚き。

 

「って、ちょわーっ!」

「はい!?」

 

出会い頭に何者かの影を認めたバクシンオーが急ブレーキをかける。急に止まれるはずもなく、俺とバクシンオーはバランスを崩して倒れかける。

 

受身を取ることを意識しながら、バクシンオーを抱き寄せる。そのまま怪我のないように、ゴロゴロ転がりながら、廊下を転がる。

 

「いてて……転校生なら絶対入れ替わってたぞ……」

「私になったトレーナーさんが私と入れ替わるというのですか!?」

「双子が入れ替わるくらい違いがわからんぞそれ……」

 

まあ、お互い何事もなかったらしく、よきかなよきかな、といったところ。

 

それにしても廊下は走るもんじゃねーな、本当に。

 

「で、バクちゃんさんや。君は俺をどこに連れて行こうとしているのかね?」

「それはもちろん、走る楽しさを伝えることができる場所へと」

「いやだからどこなのよ」

「競争できる場所です!」

「ターフだろそこ」

 

んで、到着した頃には2人仲良くスタミナ切れである。

 

「おまっ……走る前に疲弊してどうすんの……っ」

「おかしいてますね……ちょっとテンションが、上がってて……」

「テンション上がる要素あったか?」

「ありますとも!トレーナーさんが私と同じ姿になった。それだけがすべてです!」

「仮に俺がお前の立場なら、絶対そんな風に肯定的にはなれんのだが」

「うーん、ウマ娘の性でしょうか。競争、それも自分とできるなんて、めったにないですから!」

「滅多どころじゃないからね?」

「では早速!併走しましょうトレーナーさん!」

 

いつの間にか競争させられることになっている。

 

同じ体になっているとはいえ、馴染んでもいない俺が勝てるはずもないと思うのだが、どうもそのへん、ウマ娘たちは高揚の中でそれをすっかりわすれているっぽい。

 

まあ俺としても、二人三脚をさらに深められるという意味で悪い気はしない。

 

髪をさっとかきあげる。ぴょんぴょんとその場ではねて、準備する。

 

ずっと応援席で見ていたバクシンオーの、走り出す前の構え。

 

スタート地点に並んで、2人視線を合わせる。

 

どちらともなく、笑う。

 

「よーい、ドン!」

 

抜きつ抜かれつ、何度も視線を絡ませ合う。にっとバクシンオーの笑みが後を引く。直線コース、息の入れ方など、細かいコツさえ求められなければ、割とついていける、はずだった。

 

まあそれでも負けたけどさ。

 

「ふふふ、では次は、私がトレーナーさん指導する番ですね!」

 

眼鏡をかけたバクシンオーがストップウオッチを握る。

 

俺をレースに出してどうする。

 

なんてツッコミを入れつつ、走るのが、楽しくなってきた。

 

タイムを縮める試行錯誤。

 

バクシンオーにわからせられつつ、気がつくと、負けたのが悔しくて本格的にトレーニングに励んでいた。

 

「次は負けないからな……」

「いいでしょう、全力で迎え撃って差し上げますよ!」

 

互いの手をパンとぶつけ合いながら、二人して獰猛な笑みを浮かべた。

 

鏡みたいに見えてんだろーな。知らんけどさ。

 

でも偽物なりに、いつかは勝ってみたいものだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。