担当ウマ娘になったトレーナーのお話 作:Cutterruin
「カレンにそっくりな子とツーショット!どっちがカワイイ?」
SNSのリツイートを追いながら、カレンは頬を膨らませている。ちら、と視線をもう一人の自分に向けて、また視線をスマホに戻す。
「お兄ちゃんのほうが人気出てる!『初々しい』って!」
「でも、カレンと間違えてはないんだろ?」
「そーだよ。フクザツ」
今にもぷいぷい言いそうなカレンに、背伸びして頭を撫でた。少しだけ、緊張がほぐれているようだった。
とはいえまあ、本心から拗ねているわけではあるまい。担当トレーナーがカレンと同じ姿になった時、カレンはいつもの笑みで迎えた。
しかし同時にーー早く、お兄ちゃんの手で撫でてほしいな、とも言っていた。
本音と建前、あるいは2つの本音を器用に使い分けながら、自分の姿をしたトレーナーと接しているのかもしれない。
そう思うと、ちょっと申し訳ない。
むー、とまだ頬を膨らませているカレンが、ぴょん、とトレーナーの前に立ち、人差し指でちょいと胸元をつついた。ちょいちょい、ちょいちょい、と繰り返す。
「何やってるの?」
「お兄ちゃん……それ、わざと?」
しらーっとした、というかジトーっと、いかにも私不機嫌です、という顔でカレンが言う。
「何が?」
「お兄ちゃん。今カレンがちょっかい出した時、どういう動きをしたの?今のポーズは?」
視線を下ろす。ツーショットを取るためと目隠しの上でひん剥かれてお揃いさせられたカレンの私服が目に入る。
胸の前で交差された腕。それはちょうど、胸元を視線からかばうようなポーズで。
「……あ」
「天然さんの初々しさに勝てないなんて、私悔しい!お兄ちゃんはカワイイじゃなくてカッコいいほうがいいのに!」
「そう言われても困るんだけど」
もういっそのこと開き直って、フジキセキ流の振る舞いをしてしまったほうがいいのでは?今のカレンの姿ならそこそこサマになるはずだし、カレンのファンは絶対偽物と本物を間違えないだろうから、そこを弁えれば文句も出ないはずだ。
などと考えている間に、カレンがもう一枚写真を撮って、SNSに挙げる。写真はもちろんカレン(トレーナー)で、眉間に少しシワを寄せて、顎に手を当ててプロデュースを考え込んでいる姿。
「カレンのそっくりさんが真剣に悩む!本物よりも凛々しいかも?」
みるみるうちに、賛同のコメントが増えていく。カレンは少しだけ肩の力を緩めて、ふふ、と笑う。
こういうところは、姿が変わっても同じだし、こういうカオは、カレンのそれじゃないとちゃんとわかってくれるファン。
あとは元に戻ることができたら完璧だ。そうすれば、一緒に撮ったこの写真も、不思議で楽しかった思い出として振り返られるはずだから。
たとえカレンと同じカワイイでも、お兄ちゃんはお兄ちゃんのままがいい。
おそろいのコーデも楽しみつつ、カレンはゼイタクにワガママに、そんなことを考えるのだった。